恋人が乗り移った君に恋をした

まつも☆きらら

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第33話

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ドクン ドクン ドクン

咲也の心臓の音が聞こえてきた。

ちょっと早いその音が、咲也の戸惑いを表しているようだった。

「柊真・・・・?」
 
「ずっと、こうしたかった」

「え・・・・?」

「帰ってきたら、咲也に触れたかった。抱き締めたかった・・・・早く、会いたかった。だから・・・・悔しかった。タクに抱きしめられて、安心している咲也を見たら、悔しくて―――切なかった」

「あのさ、それってさ・・・・」

「夏美との約束だから、言わないけど。でも、あんなのはやだ。俺、咲也のこと―――」

きゅっと唇をかみしめる。

「・・・・・俺が、言うのはいい?」

「え?」

驚いて、咲也の顔を見つめる。

咲也の頬が染まる。

「なっちゃんとどんな約束したのか知らないけど―――それ、俺には関係ないんでしょ?」

「そうだけど・・・・え、言うって、でも、俺は―――」

もしそれが俺の期待した言葉でも、答えられないじゃん!

思わず焦る俺を見て、咲也はちょっと考えていたけれど―――

「じゃ、言わない。でも、それずるいよ」

「ずるいって」

「だって、ヤキモチは妬くのに柊真の気持ちがわからないって、ずるいじゃん。だいたい、俺とタクは柊真がヤキモチ妬くような関係じゃないし」

ぷいっとそっぽを向かれ、ちょっと俺もむきになる。

「だって、抱きあって寝てたんだよ?あんなの見たら誰だって誤解するじゃん」

「しねえよ」

「する!少なくとも俺はショックだった!2人の間には何かあるんじゃないかって―――」

「ばっかじゃないの」

「タクと同じこと言うなよ!」

「なんのことだよ?だいたい、何かあるって何があるんだよ?俺とタクの間に!」

「何って、だから、それは」

「それは?」



俺は咲也の腰を引き寄せると、そのまま強引に口付けた。

「!?―――っ、ん、しゅ・・・っ」

何度も何度も繰り返しキスをして―――

ようやくその唇を解放した頃には、咲也の息はあがってて。

潤んだ瞳と濡れた唇が艶っぽかった。

「―――タクと、キスしたんでしょ?」

「あ―――れは!」

「無理やりだって、聞いたよ、タクに。でも、やっぱりやだ」

咲也が困ったように眉を寄せ、赤い顔のまま俯く。

「俺以外のやつとキス、しないで。抱き合ったりしないで。ちゃんと自分の気持ち言ってもないのに、わがままだってわかってるけど―――」

俺は、もう一度咲也にキスをして、コツンとおでこをくっつけた。

「―――咲也とキスできるのは、俺だけでありたい」

そう言って咲也の頬を撫でる。

咲也の瞳が揺れた。

「―――じゃあ、柊真も、だよ」

「へ?俺?」

「うん―――画廊の人って・・・・女?」

思いもしなかった言葉に、一瞬固まる。

「女の人と、食事してた?」

「してない・・・・よ。そんなこと、気にしてたの?」

「そりゃ・・・・気にするよ。だって、柊真は元々なっちゃんと付き合ってたんだし、ゲイじゃないじゃん」

「そうだけど・・・・いや、男だよ?おっさん。結婚して子供もいるし、勘弁してよ」

本気で気持ち悪くなって顔をしかめると、咲也が目を丸くして―――次の瞬間ぷっと吹き出した。

「笑うなよ」

「んふふ・・・ごめん。じゃあ、そっちの心配もないんだ?」

「当たり前じゃん・・・今日だって、本当は早く帰りたかったのに」

「そうなの?」

「そうだよ。―――タクと2人きりにしたくなかった」

「―――俺が想ってるのは、1人だけだよ」

蕩けそうに甘いその声に、ドキッとする。

「1人だけ―――って、それ・・・・」

「まだ言わない」

「え・・・・・」

「花火大会までは、言わない。なっちゃんとそう約束したんでしょ?なら、俺もそうする」

咲也の言ってることは間違ってない。

だけど・・・・・

俺を見て楽しそうに笑う咲也は、どう見ても楽しんでいた。

「わかった・・・・・じゃあ・・・・・俺、もう寝るよ」

「寝ちゃうの?」

咲也が小首を傾げて俺を見つめる。

ベッドに腰掛け、上目遣いで俺を見つめるその表情はまさしく小悪魔だ。

「あ・・・明日は、バイトあるんだろ?」

「でも、明日は遅番だから」

「でも、タクが―――」

「タクがいたらダメなの?」

「ダメってわけじゃ―――でも・・・」

「柊真・・・・」

咲也の手が、俺の手に触れる。

「・・・・!!」

俺の体に、電流が走ったような衝撃が。

―――うわ、どうするんだよ?こんなの、理性が・・・・・!

俺の手を引き、そのしなやかな腕を俺の首に回す咲也。

瞳を閉じた咲也の顔が近付き、そのまま重なり―――



「―――なんてね」



「・・・・・・・へ?」


目を開ければ、いたずらっぽい瞳で俺を見つめる咲也。

「ちゃんと、花火大会までは我慢するよ」

「は・・・・・?」

「おやすみ、柊真」

そう言って、チュッと触れるだけのキス。



気付けば、ぱたんと扉は閉じられ、俺は部屋の外にいた。

「・・・・・え?」

あれ・・・・・?

「―――何してんすか」

「うわ、タク!?」

廊下の片隅に、腕を組み俺を呆れた顔で見るタクがいた。

「・・・・さっくんが早まらないように見張ってやろうと思って来てみれば・・・・」

早まらないようにって・・・・・

「完全に、さっくんのペースに呑まれてんじゃないですか」

「いや、だって、あれ・・・・あれ、ずるいだろ!」

「あれ・・・・さっくんのは、計算じゃないですからね」

「え?」

「本気であなたと夏美さんとの約束のことを考えただけですから」

「うそだろ?」

「マジです。あの子は、真面目で天然な小悪魔なんですよ」

「マジか・・・・・」

「―――俺、花火大会まではここにいますからね」

「ええ?」

「なんか、心配だから。じゃ、おやすみなさ~い」

そう言って行ってしまうタクを呆然と見送リ、ようやく思い当たった。


―――あいつ・・・・・話、全部聞いてたのか・・・・・

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