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第34話
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咲也と俺、そしてなぜかタクの3人の共同生活が始まって1週間。
明日はとうとう花火大会だ。
その前日、咲也はカフェでのバイトが入っていた。
俺も今日はカフェでその様子を見ていた。
実はここ数日は創作の方も忙しかったためカフェの方にはあまりこれていなかったのだけれど、その間もタクはもちろんずっと咲也についていて。
安心と言えば安心だけど、やっぱりどこかもやもやとしていて。
今日は久しぶりにカフェに顔を出すことができた。
で・・・・・
なぜかさっきから、圭くんと幹雄くんの鋭い視線が俺に突き刺さっていた。
「水、いります?」
じろりと俺を見下ろしながら、幹雄くんが低い声で言った。
「あ・・・うん」
そう答えると、空だったグラスに水を注ぎ、どんと勢いよく置かれたグラスから、水が零れる。
「―――ありがと」
ぷいと顔をそむけそのまま立ち去る幹雄くん。
タクが、俺の顔を見て笑いを堪えていた。
「くく・・・・真田さん、超情けない顔してますよ」
「だって・・・・タク、あの2人に何言ったの」
「ふ・・・・別にー。ただ、花火大会が終わったらさっくんもとうとう人のモノになるかもよって言っただけで―――」
「・・・・・要するに、全部話したってことじゃないの?」
そうじゃなきゃあんな態度にはなんないと思う。
「かもしれないですねー。よく覚えてないですけどねー」
―――こいつは・・・・・
「いいじゃないですか、どうせわかることなんだし。だいたい―――さっくんを見てれば、わかりますよ」
そう言って、タクはカウンターにいる咲也の方を見た。
「・・・・あんなにっこにこでご機嫌なさっくん、見ちゃったら・・・・・」
切なげに咲也を見つめるタクの視線に、俺の胸が痛んだ。
こういうとき、なんて言ったらいいんだろう。
俺が何を言っても、なんの意味もないよな・・・・。
「言っときますけど、同情なんてしないでくださいね。俺は、さっくんの親友って立場で充分満足してるんですから」
タクは咲也から視線を外すことなくそう言った。
「真田さんよりもさっくんの傍にいて、さっくんが助けを必要としたときに俺が一番にさっくんを守ってあげるんですよ。ある意味、恋人よりもおいしい立場ですからね」
不敵に笑いながら、満足そうに頷いて俺を見る。
「まあでも、幹ちゃんと圭ちゃんは俺とは立場が違うから、どう思ってるかはわかりませんけど」
そう言って、また楽しそうに接客中の幹雄くんを見て笑った・・・・・。
「―――咲也、休憩」
裏に入ると、圭くんがパソコンの作業を中断させ、立ち上がった。
「あ、うん」
サロンを外していると、圭くんが何か言いたそうに俺を見た。
「?何?圭くん」
「いや・・・・あのさ、タクから聞いたんだけど・・・・」
「タクから?何を?」
「・・・・咲也、お前・・・・・真田さんが、好きなの?」
え・・・・・
圭くんが、じっと俺を見つめていた。
いつもは目があってもすぐにそらせてしまうのに。
でも、だから俺は、圭くんをはぐらかせてはいけない気がして―――
「・・・・・うん。好きだよ、柊真が・・・・」
そう、正直に答えた。
圭くんの瞳が一瞬揺らいだ気がした。
「そ・・・・・っか・・・・・」
「うん・・・・・男同士で、変だと思うかもしれないけど―――」
「・・・・別に、それはいいけど・・・・・でも真田さんはお姉さんの恋人だったんだろ?」
「うん。だから、俺も最初は自分で信じられなかった。でも・・・・それでも好きなんだ。男とか女とか、関係なくなるくらい、なっちゃんの恋人だったことも・・・・・気にならなくなるくらい、好きなんだ。俺、こんなに人を好きになったの、初めてかもしれない」
「・・・・・そうか。そんなに好きなら・・・・・俺は、応援するけど―――」
「ほんと?」
圭くんの言葉が嬉しくて、思わず圭くんの腕を掴む。
圭くんが目を丸くして俺を見た。
「嬉しい!圭くんに応援してもらえたら、俺すげえ頑張れるよ」
そう言って笑うと、圭くんも戸惑いながらも笑ってくれた。
「そう・・・・?」
「うん!圭くんは、俺の憧れだもん!よかった・・・・・ありがと、圭くん」
「・・・・どういたしまして。休憩、入れよ」
「うん」
俺は頷くと、そのまま厨房へ行き自分の食べるパスタを作った。
圭くんの言葉が嬉しくて、たぶんずっと笑っていたと思う。
「咲ちゃん、なんか嬉しそう」
カウンターにいた幹ちゃんの声を掛けられ、思わず手で口を押さえる。
「う・・・・わかる?」
「わかるよ。咲ちゃんわかりやすいもん」
「幹ちゃんに言われたくないけど」
「で、何があったの?」
聞かれて、ちょっと言い淀む。
「圭ちゃんには言えるのに俺には言えないの?」
そう言って口を尖らせる幹ちゃん。
「そうじゃないけど・・・ここじゃ言えない」
「・・・・じゃ、後で裏で教えて」
「えー・・・・うん、わかった」
そう言うと、ようやく納得したように仕事に戻る幹ちゃん。
俺はホッと息をつくと、パスタを盛った皿を持って、柊真とタクの待つテーブルへ行ったのだった。
明日はとうとう花火大会だ。
その前日、咲也はカフェでのバイトが入っていた。
俺も今日はカフェでその様子を見ていた。
実はここ数日は創作の方も忙しかったためカフェの方にはあまりこれていなかったのだけれど、その間もタクはもちろんずっと咲也についていて。
安心と言えば安心だけど、やっぱりどこかもやもやとしていて。
今日は久しぶりにカフェに顔を出すことができた。
で・・・・・
なぜかさっきから、圭くんと幹雄くんの鋭い視線が俺に突き刺さっていた。
「水、いります?」
じろりと俺を見下ろしながら、幹雄くんが低い声で言った。
「あ・・・うん」
そう答えると、空だったグラスに水を注ぎ、どんと勢いよく置かれたグラスから、水が零れる。
「―――ありがと」
ぷいと顔をそむけそのまま立ち去る幹雄くん。
タクが、俺の顔を見て笑いを堪えていた。
「くく・・・・真田さん、超情けない顔してますよ」
「だって・・・・タク、あの2人に何言ったの」
「ふ・・・・別にー。ただ、花火大会が終わったらさっくんもとうとう人のモノになるかもよって言っただけで―――」
「・・・・・要するに、全部話したってことじゃないの?」
そうじゃなきゃあんな態度にはなんないと思う。
「かもしれないですねー。よく覚えてないですけどねー」
―――こいつは・・・・・
「いいじゃないですか、どうせわかることなんだし。だいたい―――さっくんを見てれば、わかりますよ」
そう言って、タクはカウンターにいる咲也の方を見た。
「・・・・あんなにっこにこでご機嫌なさっくん、見ちゃったら・・・・・」
切なげに咲也を見つめるタクの視線に、俺の胸が痛んだ。
こういうとき、なんて言ったらいいんだろう。
俺が何を言っても、なんの意味もないよな・・・・。
「言っときますけど、同情なんてしないでくださいね。俺は、さっくんの親友って立場で充分満足してるんですから」
タクは咲也から視線を外すことなくそう言った。
「真田さんよりもさっくんの傍にいて、さっくんが助けを必要としたときに俺が一番にさっくんを守ってあげるんですよ。ある意味、恋人よりもおいしい立場ですからね」
不敵に笑いながら、満足そうに頷いて俺を見る。
「まあでも、幹ちゃんと圭ちゃんは俺とは立場が違うから、どう思ってるかはわかりませんけど」
そう言って、また楽しそうに接客中の幹雄くんを見て笑った・・・・・。
「―――咲也、休憩」
裏に入ると、圭くんがパソコンの作業を中断させ、立ち上がった。
「あ、うん」
サロンを外していると、圭くんが何か言いたそうに俺を見た。
「?何?圭くん」
「いや・・・・あのさ、タクから聞いたんだけど・・・・」
「タクから?何を?」
「・・・・咲也、お前・・・・・真田さんが、好きなの?」
え・・・・・
圭くんが、じっと俺を見つめていた。
いつもは目があってもすぐにそらせてしまうのに。
でも、だから俺は、圭くんをはぐらかせてはいけない気がして―――
「・・・・・うん。好きだよ、柊真が・・・・」
そう、正直に答えた。
圭くんの瞳が一瞬揺らいだ気がした。
「そ・・・・・っか・・・・・」
「うん・・・・・男同士で、変だと思うかもしれないけど―――」
「・・・・別に、それはいいけど・・・・・でも真田さんはお姉さんの恋人だったんだろ?」
「うん。だから、俺も最初は自分で信じられなかった。でも・・・・それでも好きなんだ。男とか女とか、関係なくなるくらい、なっちゃんの恋人だったことも・・・・・気にならなくなるくらい、好きなんだ。俺、こんなに人を好きになったの、初めてかもしれない」
「・・・・・そうか。そんなに好きなら・・・・・俺は、応援するけど―――」
「ほんと?」
圭くんの言葉が嬉しくて、思わず圭くんの腕を掴む。
圭くんが目を丸くして俺を見た。
「嬉しい!圭くんに応援してもらえたら、俺すげえ頑張れるよ」
そう言って笑うと、圭くんも戸惑いながらも笑ってくれた。
「そう・・・・?」
「うん!圭くんは、俺の憧れだもん!よかった・・・・・ありがと、圭くん」
「・・・・どういたしまして。休憩、入れよ」
「うん」
俺は頷くと、そのまま厨房へ行き自分の食べるパスタを作った。
圭くんの言葉が嬉しくて、たぶんずっと笑っていたと思う。
「咲ちゃん、なんか嬉しそう」
カウンターにいた幹ちゃんの声を掛けられ、思わず手で口を押さえる。
「う・・・・わかる?」
「わかるよ。咲ちゃんわかりやすいもん」
「幹ちゃんに言われたくないけど」
「で、何があったの?」
聞かれて、ちょっと言い淀む。
「圭ちゃんには言えるのに俺には言えないの?」
そう言って口を尖らせる幹ちゃん。
「そうじゃないけど・・・ここじゃ言えない」
「・・・・じゃ、後で裏で教えて」
「えー・・・・うん、わかった」
そう言うと、ようやく納得したように仕事に戻る幹ちゃん。
俺はホッと息をつくと、パスタを盛った皿を持って、柊真とタクの待つテーブルへ行ったのだった。
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