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第32話
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風呂に入り、その後はリビングでチャーハンを食べていた2人に声をかけ、そうそうに部屋に戻ることにした。
これ以上あの2人を見ていると、さらに落ち込みそうだったから。
『コンコン』
ノックの音に、どきりとする。
―――咲也・・・・?
「―――はい」
ガチャリとドアが開き、顔を覗かせたのはタクだった。
「ちょっと、いいですか?」
「ああ・・・・・。咲也は?」
「風呂に入ってます。―――今日ね、俺、さっくんに告白しました」
ドクンと、心臓が嫌な音をたてた。
「へ・・・え・・・」
「―――で、押し倒して、キスして―――」
「な―――!!」
ほとんど反射的に動いていた。
タクの胸ぐらを掴み、壁に押し付ける―――。
「―――っ、痛いですよ」
「咲也に・・・・手ぇ出すな!!」
「・・・・何でもっと早く、それ言わないんですか」
「は・・・・・?」
タクが俺の手を振り払い、ベッドに腰を下ろす。
「すげえ嫉妬してたくせに、何でもっと早く言わないんですか?俺に・・・・。さっくんて、すごい繊細なんですよ。あんたが怒ってるのが自分が原因だってこともすぐ察知できる。なのに自分に自信がないからあんたに嫌われたくなくて、あんたから逃げ出そうとするんですよ」
「・・・・よくわかってるんだね、咲也のこと」
「そりゃね、伊達に10年以上も一緒にいないですよ」
「・・・・やっぱり、敵わねえな・・・・・」
俺の言葉に、タクは呆れたような溜息をつき―――
「ばっかじゃないの、あんた」
「へ・・・・?」
「どんなにさっくんのことわかってたって、さっくんが好きなのは俺じゃないんですよ。どんなに俺が想ってたって、俺はさっくんの恋人にはなれないんですよ。さっくんが好きなのは、真田さん、あんたなんだから」
「え・・・・・?」
―――今、なんて・・・・?
「あ・・・・やべ、口が滑った・・・・あー、もう!!あんたがバカだから!」
「な・・・何だよ、それ!」
「あんたがわかりやすく落ち込んでるから、さっくんがまた心配してるんですよ!自分のせいなんじゃないかって。まったく・・・・お互い想いあってるくせに何をぐずぐずしてるんだか」
「あの・・・・咲也が、言ったの?俺を好きって・・・・?」
そう聞くと、タクはちらりと俺を意味ありげに見た。
「はっきりと言われたわけじゃないけど、さっくんもわかりやすく顔に出るから・・・・すげえムカつきましたよ。俺の方がずっと前からさっくんを好きだったのに、なんであんたなんだって・・・・で、頭にきてさっくんを無理やり押し倒したとき―――なっちゃん・・・・夏美さんが、出てきたんですよ」
「え・・・・ええ?マジで?」
「―――さっくんは拒否したらしいけど、さっくんを守ろうとして代わったみたいですよ。超びっくりした」
「そりゃ、そうだろうね。で―――」
「・・・・・話した内容は秘密ですよ」
「ええ?」
そこまで言っといて?
「けど・・・・なんか、良かった。さっくんの気持ちがちゃんとわかって・・・・俺は、恋人にはなれなくてもずっとさっくんの傍にいていいんだって思えたから。辛いと思うこともたぶんあるけど―――それでも俺は、ずっとさっくんの親友でいられると思いますよ」
「親友・・・・・」
「そう、親友。あなたとは全く違う立場で、俺はさっくんに一番近いところにいるってことです。だから、あなたが俺に嫉妬する必要は全くないわけですよ」
「だ・・・けど!」
「ま、気持ちはわかりますけどね。でも、あれが俺たち2人の距離感だから。もし見ていられないなら、諦めたらいいんじゃないですか?さっくんのこと。でも―――」
タクが、俺をじろりと睨みつけた。
「もしもさっくんを傷つけるようなことがあったら―――俺は絶対にあんたを許さない」
本気の、脅し。
タクの目が、それを語っていた。
「タク・・・・」
「別に、あんたを認めたわけじゃないですよ。俺はさっくんを傷つけたくないだけ。もう、同じことは繰り返さない」
そう言って、タクは部屋を出て行った。
夏美がタクと何を話したのか、結局わからなかったけど―――
俺は一つ、心に決めていた。
逃げるのは、やめようって。
俺は、咲也の親友にはなれない。
タクが咲也と過ごしてきた日々。
それは俺にはないけれど―――
でも、俺の咲也に対する気持ちは本物で、それは誰にも負けないって思ってる。
タクにも。
だから―――
俺は、絶対に咲也を傷つけたりはしない。
咲也が部屋に戻った頃を見計らって、俺は咲也の部屋へ行った。
声をかけると、すぐに扉が開き―――戸惑った表情の咲也が、顔を覗かせた。
「―――入ってもいい?」
「・・・・どうぞ」
部屋に入ると、咲也は不安げな表情でその場に立ったまま俺を見つめた。
「今日は・・・・ごめん。待っててくれたのに、連絡もしないで遅くなって・・・」
俺の言葉に、咲也は首を振った。
「―――付き合いなんでしょ?しょうがないよ」
「そうだけど、これからはちゃんと連絡するから。だから・・・・俺、これからもここにいていい?」
「え・・・・そんなの・・・・いいに決まってるじゃん・・・・」
「タクじゃなくても・・・・いい?」
「え?」
目を瞬かせる咲也。
俺は、咲也に近づき―――
戸惑っている咲也を、力いっぱい抱きしめた・・・・・。
これ以上あの2人を見ていると、さらに落ち込みそうだったから。
『コンコン』
ノックの音に、どきりとする。
―――咲也・・・・?
「―――はい」
ガチャリとドアが開き、顔を覗かせたのはタクだった。
「ちょっと、いいですか?」
「ああ・・・・・。咲也は?」
「風呂に入ってます。―――今日ね、俺、さっくんに告白しました」
ドクンと、心臓が嫌な音をたてた。
「へ・・・え・・・」
「―――で、押し倒して、キスして―――」
「な―――!!」
ほとんど反射的に動いていた。
タクの胸ぐらを掴み、壁に押し付ける―――。
「―――っ、痛いですよ」
「咲也に・・・・手ぇ出すな!!」
「・・・・何でもっと早く、それ言わないんですか」
「は・・・・・?」
タクが俺の手を振り払い、ベッドに腰を下ろす。
「すげえ嫉妬してたくせに、何でもっと早く言わないんですか?俺に・・・・。さっくんて、すごい繊細なんですよ。あんたが怒ってるのが自分が原因だってこともすぐ察知できる。なのに自分に自信がないからあんたに嫌われたくなくて、あんたから逃げ出そうとするんですよ」
「・・・・よくわかってるんだね、咲也のこと」
「そりゃね、伊達に10年以上も一緒にいないですよ」
「・・・・やっぱり、敵わねえな・・・・・」
俺の言葉に、タクは呆れたような溜息をつき―――
「ばっかじゃないの、あんた」
「へ・・・・?」
「どんなにさっくんのことわかってたって、さっくんが好きなのは俺じゃないんですよ。どんなに俺が想ってたって、俺はさっくんの恋人にはなれないんですよ。さっくんが好きなのは、真田さん、あんたなんだから」
「え・・・・・?」
―――今、なんて・・・・?
「あ・・・・やべ、口が滑った・・・・あー、もう!!あんたがバカだから!」
「な・・・何だよ、それ!」
「あんたがわかりやすく落ち込んでるから、さっくんがまた心配してるんですよ!自分のせいなんじゃないかって。まったく・・・・お互い想いあってるくせに何をぐずぐずしてるんだか」
「あの・・・・咲也が、言ったの?俺を好きって・・・・?」
そう聞くと、タクはちらりと俺を意味ありげに見た。
「はっきりと言われたわけじゃないけど、さっくんもわかりやすく顔に出るから・・・・すげえムカつきましたよ。俺の方がずっと前からさっくんを好きだったのに、なんであんたなんだって・・・・で、頭にきてさっくんを無理やり押し倒したとき―――なっちゃん・・・・夏美さんが、出てきたんですよ」
「え・・・・ええ?マジで?」
「―――さっくんは拒否したらしいけど、さっくんを守ろうとして代わったみたいですよ。超びっくりした」
「そりゃ、そうだろうね。で―――」
「・・・・・話した内容は秘密ですよ」
「ええ?」
そこまで言っといて?
「けど・・・・なんか、良かった。さっくんの気持ちがちゃんとわかって・・・・俺は、恋人にはなれなくてもずっとさっくんの傍にいていいんだって思えたから。辛いと思うこともたぶんあるけど―――それでも俺は、ずっとさっくんの親友でいられると思いますよ」
「親友・・・・・」
「そう、親友。あなたとは全く違う立場で、俺はさっくんに一番近いところにいるってことです。だから、あなたが俺に嫉妬する必要は全くないわけですよ」
「だ・・・けど!」
「ま、気持ちはわかりますけどね。でも、あれが俺たち2人の距離感だから。もし見ていられないなら、諦めたらいいんじゃないですか?さっくんのこと。でも―――」
タクが、俺をじろりと睨みつけた。
「もしもさっくんを傷つけるようなことがあったら―――俺は絶対にあんたを許さない」
本気の、脅し。
タクの目が、それを語っていた。
「タク・・・・」
「別に、あんたを認めたわけじゃないですよ。俺はさっくんを傷つけたくないだけ。もう、同じことは繰り返さない」
そう言って、タクは部屋を出て行った。
夏美がタクと何を話したのか、結局わからなかったけど―――
俺は一つ、心に決めていた。
逃げるのは、やめようって。
俺は、咲也の親友にはなれない。
タクが咲也と過ごしてきた日々。
それは俺にはないけれど―――
でも、俺の咲也に対する気持ちは本物で、それは誰にも負けないって思ってる。
タクにも。
だから―――
俺は、絶対に咲也を傷つけたりはしない。
咲也が部屋に戻った頃を見計らって、俺は咲也の部屋へ行った。
声をかけると、すぐに扉が開き―――戸惑った表情の咲也が、顔を覗かせた。
「―――入ってもいい?」
「・・・・どうぞ」
部屋に入ると、咲也は不安げな表情でその場に立ったまま俺を見つめた。
「今日は・・・・ごめん。待っててくれたのに、連絡もしないで遅くなって・・・」
俺の言葉に、咲也は首を振った。
「―――付き合いなんでしょ?しょうがないよ」
「そうだけど、これからはちゃんと連絡するから。だから・・・・俺、これからもここにいていい?」
「え・・・・そんなの・・・・いいに決まってるじゃん・・・・」
「タクじゃなくても・・・・いい?」
「え?」
目を瞬かせる咲也。
俺は、咲也に近づき―――
戸惑っている咲也を、力いっぱい抱きしめた・・・・・。
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