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第20話
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「ちょっと遅くなっちゃったね」
悠太くんと2人、坂井の店を出たのはもう10時近かった。
仕事のことやお互いの学生時代の話など、時折坂井が話に割り込んできたりして盛り上がり、気付いたらこんな時間になってしまっていた。
「ほんとだね。悠太くんの家は駅と逆方向なんだっけ」
「うん。今日は楽しかった。また一緒にご飯食べようね」
そう言って笑う悠太くん。
ちょっと冷たい印象さえ受けるようなイケメンなのに、笑うと途端に幼く、かわいくなるのは反則だ。
ひらひらと手を振って行こうとする悠太くんに、俺は離れがたくて―――
「―――悠太くん!」
思わず、その腕を掴んでいた。
「え?」
悠太くんがきょとんとして俺を見る。
「―――送る」
そう言って横に並ぶと、悠太くんは首を傾げた。
「送るって―――大丈夫だよ、近いし。大体、俺男なんだから―――」
「でも、悠太くん危ないし」
俺の言葉に、悠太くんはむっと顔をしかめた。
「なにそれ」
だって。
こんなにきれいでかわいい悠太くんが1人で夜道を歩くなんて、絶対危ない。
俺は純粋にそう思ったんだ。
だけど、悠太くんには伝わらなかったみたいで―――
「子供じゃないんだから、大丈夫だよ。そんなに酔ってもないし―――年下だからってガキ扱いすんなよ」
そう言ってプイっと顔をそむけるとそのまま歩き出す。
俺は慌ててその後を追った。
「悠太くん!待って、俺そんなつもりで言ったんじゃないよ!」
それでも悠太くんは足を止めることなく、足早にそのまま行ってしまう。
「じゃ、どういうつもり?」
「その―――悠太くん、かわいいし、変なやつに狙われたら―――」
「ばっかじゃないの?女の子じゃないんだからそんなわけないじゃん!」
「でも―――」
「とにかく、1人で平気だから。駅逆方向なんだから、もう行きなよ」
「ちょ―――っと、待って!」
俺は悠太くんに追いつくと、再びその腕を強くつかんだ。
意外と歩くの早いんだから!
「何だよ!」
完全にへそを曲げてしまった悠太くんの前に回り込み、その肩を掴んだ。
「そうじゃなくて!俺がまだ、悠太くんと一緒にいたいの!」
「―――――え?」
怒るのも忘れ、目を瞬かせる悠太くん。
「その・・・・話、盛り上がったし・・・・もうちょっと話したいと思って・・・・ごめん、変な言い方して。でも、馬鹿にしたわけじゃないよ。本当に悠太くんが心配なんだよ」
「イチ・・・・」
「悠太くん、自覚なさそうだけど・・・・本当にかわいいから」
俺が真剣に悠太くんを見つめながらそう言うと、悠太くんはちょっと困ったように、それでいて照れたように頬を赤らめた。
「何言ってんの・・・・。俺なんてイチよりでかいしどこからどう見たって男なのに」
「そういうことじゃないんだよ」
俺がため息をつくと、悠太くんはますます訳が分からないというように首を傾げた。
わかってないんだ、悠太くんは。
自分がどれだけ危うい空気をまとっているか―――
悠太くんと2人、坂井の店を出たのはもう10時近かった。
仕事のことやお互いの学生時代の話など、時折坂井が話に割り込んできたりして盛り上がり、気付いたらこんな時間になってしまっていた。
「ほんとだね。悠太くんの家は駅と逆方向なんだっけ」
「うん。今日は楽しかった。また一緒にご飯食べようね」
そう言って笑う悠太くん。
ちょっと冷たい印象さえ受けるようなイケメンなのに、笑うと途端に幼く、かわいくなるのは反則だ。
ひらひらと手を振って行こうとする悠太くんに、俺は離れがたくて―――
「―――悠太くん!」
思わず、その腕を掴んでいた。
「え?」
悠太くんがきょとんとして俺を見る。
「―――送る」
そう言って横に並ぶと、悠太くんは首を傾げた。
「送るって―――大丈夫だよ、近いし。大体、俺男なんだから―――」
「でも、悠太くん危ないし」
俺の言葉に、悠太くんはむっと顔をしかめた。
「なにそれ」
だって。
こんなにきれいでかわいい悠太くんが1人で夜道を歩くなんて、絶対危ない。
俺は純粋にそう思ったんだ。
だけど、悠太くんには伝わらなかったみたいで―――
「子供じゃないんだから、大丈夫だよ。そんなに酔ってもないし―――年下だからってガキ扱いすんなよ」
そう言ってプイっと顔をそむけるとそのまま歩き出す。
俺は慌ててその後を追った。
「悠太くん!待って、俺そんなつもりで言ったんじゃないよ!」
それでも悠太くんは足を止めることなく、足早にそのまま行ってしまう。
「じゃ、どういうつもり?」
「その―――悠太くん、かわいいし、変なやつに狙われたら―――」
「ばっかじゃないの?女の子じゃないんだからそんなわけないじゃん!」
「でも―――」
「とにかく、1人で平気だから。駅逆方向なんだから、もう行きなよ」
「ちょ―――っと、待って!」
俺は悠太くんに追いつくと、再びその腕を強くつかんだ。
意外と歩くの早いんだから!
「何だよ!」
完全にへそを曲げてしまった悠太くんの前に回り込み、その肩を掴んだ。
「そうじゃなくて!俺がまだ、悠太くんと一緒にいたいの!」
「―――――え?」
怒るのも忘れ、目を瞬かせる悠太くん。
「その・・・・話、盛り上がったし・・・・もうちょっと話したいと思って・・・・ごめん、変な言い方して。でも、馬鹿にしたわけじゃないよ。本当に悠太くんが心配なんだよ」
「イチ・・・・」
「悠太くん、自覚なさそうだけど・・・・本当にかわいいから」
俺が真剣に悠太くんを見つめながらそう言うと、悠太くんはちょっと困ったように、それでいて照れたように頬を赤らめた。
「何言ってんの・・・・。俺なんてイチよりでかいしどこからどう見たって男なのに」
「そういうことじゃないんだよ」
俺がため息をつくと、悠太くんはますます訳が分からないというように首を傾げた。
わかってないんだ、悠太くんは。
自分がどれだけ危うい空気をまとっているか―――
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