僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら

文字の大きさ
20 / 50

第20話

しおりを挟む
「ちょっと遅くなっちゃったね」

悠太くんと2人、坂井の店を出たのはもう10時近かった。

仕事のことやお互いの学生時代の話など、時折坂井が話に割り込んできたりして盛り上がり、気付いたらこんな時間になってしまっていた。

「ほんとだね。悠太くんの家は駅と逆方向なんだっけ」

「うん。今日は楽しかった。また一緒にご飯食べようね」

そう言って笑う悠太くん。

ちょっと冷たい印象さえ受けるようなイケメンなのに、笑うと途端に幼く、かわいくなるのは反則だ。

ひらひらと手を振って行こうとする悠太くんに、俺は離れがたくて―――

「―――悠太くん!」

思わず、その腕を掴んでいた。

「え?」

悠太くんがきょとんとして俺を見る。

「―――送る」

そう言って横に並ぶと、悠太くんは首を傾げた。

「送るって―――大丈夫だよ、近いし。大体、俺男なんだから―――」

「でも、悠太くん危ないし」

俺の言葉に、悠太くんはむっと顔をしかめた。

「なにそれ」

だって。

こんなにきれいでかわいい悠太くんが1人で夜道を歩くなんて、絶対危ない。

俺は純粋にそう思ったんだ。

だけど、悠太くんには伝わらなかったみたいで―――

「子供じゃないんだから、大丈夫だよ。そんなに酔ってもないし―――年下だからってガキ扱いすんなよ」

そう言ってプイっと顔をそむけるとそのまま歩き出す。

俺は慌ててその後を追った。

「悠太くん!待って、俺そんなつもりで言ったんじゃないよ!」

それでも悠太くんは足を止めることなく、足早にそのまま行ってしまう。

「じゃ、どういうつもり?」

「その―――悠太くん、かわいいし、変なやつに狙われたら―――」

「ばっかじゃないの?女の子じゃないんだからそんなわけないじゃん!」

「でも―――」

「とにかく、1人で平気だから。駅逆方向なんだから、もう行きなよ」

「ちょ―――っと、待って!」

俺は悠太くんに追いつくと、再びその腕を強くつかんだ。

意外と歩くの早いんだから!

「何だよ!」

完全にへそを曲げてしまった悠太くんの前に回り込み、その肩を掴んだ。

「そうじゃなくて!俺がまだ、悠太くんと一緒にいたいの!」

「―――――え?」

怒るのも忘れ、目を瞬かせる悠太くん。

「その・・・・話、盛り上がったし・・・・もうちょっと話したいと思って・・・・ごめん、変な言い方して。でも、馬鹿にしたわけじゃないよ。本当に悠太くんが心配なんだよ」

「イチ・・・・」

「悠太くん、自覚なさそうだけど・・・・本当にかわいいから」

俺が真剣に悠太くんを見つめながらそう言うと、悠太くんはちょっと困ったように、それでいて照れたように頬を赤らめた。

「何言ってんの・・・・。俺なんてイチよりでかいしどこからどう見たって男なのに」

「そういうことじゃないんだよ」

俺がため息をつくと、悠太くんはますます訳が分からないというように首を傾げた。

わかってないんだ、悠太くんは。

自分がどれだけ危うい空気をまとっているか―――

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

処理中です...