僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら

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第29話

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イルカショーを見終わって会場の外に出ようとすると、外国人の団体客とぶつかってしまい―――


「あれ、悠太は?」

ようやく人並みから逃れたところで、直が言った。

出口を出たところで4人は合流できたが、悠太の姿がなかった。

「え、悠太くん迷子?」

イチもきょろきょろと辺りを見渡す。

「マジか。館内放送してもらう?」

という渉くんに、

「いや、それはやめようさすがに」

と、俺は慌てて言った。

「じゃ、とりあえず探す?見つかったらスマホに連絡してよ」

と直が言って、さっさとその場を後にした。

意外と行動が早い・・・・。

俺たちはそれぞれ違う方向へと向かい、悠太を探すことにした。

休日だから親子連れも多いし意外と混雑している。

人混みをかき分けながら悠太の姿を探す。

そして―――



ひときわ色白の、綺麗な男が目に入る。

所在無げに突っ立ってきょろきょろと周りを見回す悠太の姿はかなり目立っていて、数人の若い女の子がちらちらと悠太を見ていた。

「―――悠太」

俺は手を振りながら悠太の元へ走った。

「あ、龍也くん」

悠太がほっとしたように俺を見てほほ笑んだ。

―――ああ、やっぱりかわいいな。

「よかった見つかって。探してたんだ」

「ごめん、なんか団体客に流されて―――気付いたらここまで来てた」

「いや、無事でよかったよ。あいつらにも知らせとくわ」

「あ、そうか。それで連絡すればよかったね」

「それ言ったら俺らも、別々に探さなくてもよかったんだよな。なんか焦っちゃって」

どうも俺らは、悠太が絡むと冷静に判断できなくなるようだった。

「そうなの?―――あ」

「え?」

悠太が、何やら売店の方を見て声を上げた。

「どうした?」

「あれ、見たい」

そう言うと、悠太は売店の方へ駆け出した。

「あ、おい!」

俺は慌てて後を追った。

「これ、かわいいなあ」

そう言って悠太が手に取ったのは、黒地にシルバーのイルカのスタッツがついた革製のポーチだった。

子供向けのグッズが並ぶ中、そのポーチはちょっと大人っぽく、イルカのスタッツもシンプルな作りでおしゃれだった。

「へえ、いいな」

「だよね。買おうかな」

嬉しそうに目を輝かせる悠太は、なんだか子供みたいでかわいかった。

「―――値段はかわいくないな」

ポーチについている値札を見て、悠太が苦笑いした。

「え、マジ?―――ほんとだ。革製だからかな」

普通のポーチとしても結構な値段。

「どうしようかな・・・・」

悩みながらも、目はそのポーチが欲しいと言っているようで―――

「貸して」

「え?」

俺は悠太の手からそのポーチを取ると、そのままレジに持って行った。

「え、かちょ―――龍也くん?」

「これ、ください」

「あの、それ―――」

「いいから」

俺はさっさと金を払い、そのポーチを袋に入れてもらい店を出た。

「これは、俺からのプレゼント」

「そんなの―――もらえませんよ」

戸惑って首を振る悠太。

でも、俺も引き下がらない。

「俺が、あげたいんだ、悠太に」

「え・・・・?」

「・・・・俺は、悠太のこと――――」


「悠太くん!!」

その声に、俺は反射的に持っていたポーチの入った袋を悠太に押し付けた。

押し付けられた悠太も、動揺したのかそのまま受け取り持っていたバッグにその袋を押し込んだ。

「―――悠太くん、よかった見つかって」

駆けてきたのはイチだった。

ちらりと、一瞬鋭い目で俺を睨むのも忘れない。

「ごめん、すぐ連絡すればよかったね」

「いいよ、無事だったんだから」

「無事だよ。小さい子じゃないんだから」

ちょっと恥ずかしそうに口を尖らせる悠太。

「悠太!」

「悠太、こっちにいたのか」

渉くんと直も駆け付けた。

みんながほっとする中―――

悠太が、ちらりと俺を見てちょっと頭を下げた。

それに俺も頷いて見せ―――

悠太にポーチをプレゼントできたことにほっとしたのだった・・・・。
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