記憶を嫌う少年と記憶を探す少女の物語

Rin凜Lin

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1章 出会い

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「──よし。」

 俺は通信用の魔道具をポケットにしまった。
 一応騎士団の連中に今回の件を報告した。
 まぁ、これだけの騒ぎを起こせば、この街の住人がとっくに報告しているだろうが。
 騎士達が到着するのも遅くはないだろう。
 イリスも拘束したし、後はこの街から脱出するだけだ。

 皆のいる方に目をやると、ベルが少女にも回復魔法ヒールをかけていた。
 サヘラは興味深そうにそれを見ている。
 ……ベルに助けられてばかりだな。

「ありがとうベル。」

「!」

「お前が剣を届けてくれなかったら危なかった。」

 突然感謝の言葉をされたベルが戸惑い、頬を赤らめた。

「私からも!シエルとベル、二人ともありがとう!」

 サヘラも頭を下げ、俺とベルに感謝を伝えてきた。

「俺が戦っている間にお前が逃げていれば完璧だった。」

「う……ごめん……」

 そんな感謝の言葉をぶっ壊す感じでそう返した。
 それにしても疲れた。
 ここの所はベルとのんびり過ごしていることが多かった。
 戦闘の感覚が鈍っている。
 特に対人戦なんていつぶりだっただろうか。
 ……と、そんなことを考えてる余裕は無さそうだ。
 今にも建物が崩れそうだ。
 この付近もいずれ潰されてしまうだろう。
 俺は拘束したイリスを背負った。

「─────?」

 どうして連れていくの?か……

「……確かにこいつはこの騒動を起こした諜報人だ。許すべき人間じゃない。だが、こいつは情報を持ってるはずだ。騎士団に預けて情報を吐かせた方がいいだろ?」

 ベルは納得したのか、脱出口を探しに向かった。

「おいサヘラ。その子をちゃんと連れていけよ?」

「言われるまでもないよ。」

 サヘラはすでに少女を背中に抱えていた。

「─────。」

「うん。分かった。」

 ベルが脱出できそうなところを見つけてくれたみたいだ。
 そこは火が弱く、瓦礫も少なかった。
 確かにここからなら出られそうだ。

「行くぞ。」

 俺たちは街の外を目指して走り出した。
 しかし、思っていた以上に建物の倒壊は酷く、道が塞がれているところが多々ある。
 迂回しながらなんとか進んでいる状況だ。

「きゃあ!」

 目の前で建物が倒壊し、道が塞がれてしまった。

「また行き止まりか。」

「これ、本当に出られるの!?」

 サヘラが焦った表情で聞いてきた。
 ……正直出られる保証はない。
 倒壊だけでなく、出火もしているため、時間もあまりない……

「ぐすっ……うぅ……」

「ど、どうしたの~?大丈夫だよ~」

 サヘラの背中にいた少女が泣き出してしまった。
 こんな状況だ。無理もない。
 幼い子供にとって、目の前の光景は恐怖そのものなのだろう。
 サヘラがなんとか少女をあやそうとしているが、泣き止む様子はない。
 これは急いでここを出た方がよさそうだ。
 そう思いつつ、別の道を探そうとしたその時だった。

「________♪」

「え。」

 サヘラが突然歌い出した。
 子守唄……では無さそうだが、その歌は静かで、優しかった。
 ……でも……なんだ……?
 この歌を俺は知っている気がする……
 どこか……懐かしさを感じる……
 俺とベルはいつの間にかボーっとサヘラの姿を見ていた。

「_____……寝ちゃった。」

 歌い終えると、サヘラの背中にいた少女は眠っていた。
 本当にこいつはなんなんだ……?

「……お前……あの歌──」

 ガラガラガラ────!

 サヘラにそう聞こうとした瞬間、近くの建物が崩壊した。
 頭上から瓦礫が俺たちに目掛けて迫ってくる。
 この距離じゃベルの魔法も間に合わない!
 俺は咄嗟に全員を庇うように身構えた。



 ────……?

 確かに瓦礫が落ちてきたはずだ。
 それなのになぜか衝撃が伝わってこない。
 一体何が起きているんだ……?
 俺はそっと目を開いた。

「なっ……!?」

 目の前の光景に思わず声が出た。
 崩れてきたはずの瓦礫が宙に浮いて止まっていたのだ。
 
「えぇ!?これシエルの魔法!?」

「違う。」

 謎の力のせいで、俺は魔法が使えない。
 ベルの新しい魔法かと思い、ベルを見つめるが、首を横に振った。
 イリスは気を失っていて、少女は眠っている。
 ……となると、

「……え?どうして私の方を見てるの?」

 サヘラが首を傾げた。
 この中で一番の候補はサヘラだ。
 記憶喪失で魔法の正体も分からないわけだし、無意識に魔法が発動してもおかしくはない。
 ベルも同じようなことを考えているのかサヘラの方をジッと見ている。
 すると、頭上から小さな瓦礫が地面に落ちる音がした。
 見上げると、瓦礫が少しずつ迫ってきている。

「……今はここから出ることに専念するぞ。」

 態勢を立て直し、俺たちは再び走り始めた。
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