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第三話 いきなり大ピンチ?
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「はわわわ……」
「グルルルル……」
新しい世界に転生した瞬間、私は早くも命の危機を迎えていた。
眩しい光が収まると、私は周囲を木々に囲まれた森の中にいた。
周囲に茂みがそこまでなく、陽の光も程よく入る環境だった。
しかし、そんな周囲の環境よりも私は目の前で起きている事態に恐れおののき、腰を抜かすようにへたりと地面に尻もちをついていた。
三メートルを優に超える大きいというレベルでは言い表せない、白銀の毛並みを持つオオカミが私を視線におさめていた。
その眼光はとても鋭く、口元や一部の毛並みが真っ赤な血で汚れていた。
巨大なオオカミの足元には、これまた二メートルを超える大きな茶色の毛並みの熊が息絶えていた。
これ程の熊を倒すのだから、私なんて一瞬で命を刈り取られるだろう。
美女が運命を修正してくれたと言ったけど、実は全く直っていないのではと本気で思ってしまった。
しかも、更に事態は悪化した。
「「「キャウン、キャウン!」」」
「なっ、なになに?!」
尻もちをついた私の周囲を、五頭のオオカミが取り囲んだ。
子どもっぽいけど、それでもゴールデンレトリバーくらいの大きさを誇っていた。
なぜか一頭の頭の上に緑色の小さなスライムが乗っているけど、もう私の気持ちはそんなものを気にする余裕はなかった。
ノシッ、ノシッ。
トドメに、大きなオオカミが一歩ずつ私に歩み寄ってきた。
しかも、未だに鋭い視線を私に向けていた。
新しい世界に来て僅か一分、私はまた死んでしまうのではないかという恐怖に震えていた。
しかし、事態は意外な方向へと進んで行った。
「お主、人間か?」
「は、はひ。人間でふ!」
「そうか、それは悪かった。驚かせてしまったようだな」
突然大きなオオカミが渋い声で話し出したのだ。
かみかみだけど何とか返答したら、大きなオオカミの鋭い視線が和らいだ。
それとともに、緊張に包まれていた空気が少し緩んだ気がした。
とにかく何とかしないとと思い、私は意を決して大きなオオカミに話しかけた。
「あ、あの。すみません。私もどこに来たのか全く分からなくて。縄張りを荒らしたのなら直ぐにどこかに行きます!」
「まあ待て、落ち着け。突然大きな魔力とともにお主が現れただけだ。儂も、邪魔ものを倒して気が立っていたところだった」
「「「ガツガツガツ」」」
大きなオオカミは、意外と紳士的に対応してくれた。
その間に、子どもオオカミが熊に群がって食事をしていた。
生き物の命の儚さをまざまざと見せられていたけど、まずは大きなオオカミと話すことにした。
「大方、何かの魔法の作用でこの森に飛ばされたのだろう。お主は、何ものだ? かなり強い魔力を持っておる」
「わ、私は町に行ってこれから冒険者を目指しています。その、回復魔法が使えるみたいですけど魔法がまだ使えなくて……」
「ふむ、そういうことか。なら、儂の前足の怪我を治してみよ。それだけの魔力があるなら、儂の怪我も治せよう」
大きなオオカミは、私の前に左の前足を差し出した。
すると、熊との戦いで怪我をしたのか鋭い引っ掻き傷が見て取れる。
とにかく治療しないとと思い、私は立ち上がって大きなオオカミに近づいた。
そして、傷ついた前足が治るようにと念じてみた。
シュイン、ぴかー!
「ふむ、やはり強い魔力を持っておるな」
大きなオオカミが何かを言っているが、私の意識は怪我を治すことに集中していた。
怪我を包み込むように私の中を不思議な力が流れているのを感じたけど、これが魔力なんだとはっきりと分かった。
そして、一分ほど全力で回復魔法をかけてみた。
「はあはあ、こ、これでどうですか? 痛いのは良くなりましたか?」
「うむ、見事な腕前だ。お主は中々の治癒師になれるだろう」
まるで全力疾走をしたかのように息が荒くなったけど、何とか大きなオオカミから治療のお墨付きをもらった。
先ほどは私を試すような話しぶりだったけど、本当に私のことを試していたのだろう。
もし私が大きなオオカミに危害を加えるような存在だったら、一瞬で命を失っただろう。
更に私は大きなオオカミから血で汚れた毛並みを生活魔法で綺麗にしろと言われたので、綺麗になるようにと念じて生活魔法を放った。
すると、まるで光沢を持つようなとても素晴らしい白銀色の毛並みに生まれ変わった。
すると、大きなオオカミが綺麗になったのをみた子どもオオカミが、一斉に私の元にやってきた。
全頭熊肉を食べ終えたのか、口の周りが血塗れだった。
「「「ウォン、ウォン!」」」
「分かったから、順番にやるからね」
「「「ウォン!」」」
こうして、私は順番に子どもオオカミに生活魔法をかけていった。
つやつやピカピカの毛並みに戻り、子どもオオカミはとってもご満悦だった。
そして、何と子どもオオカミが私を押し倒して顔を舐めてきた。
「「「ペロペロ」」」
「わ、分かったから、ありがとうってことね」
「うむ、もう子どもを手懐けるとは中々やるな」
大きなオオカミがなぜか感心する中、私は暫くの間子どもオオカミに顔中を舐められていた。
数分してようやく満足して私から離れたけど、私の顔はヨダレでベトベトになってしまった。
間髪入れず、自分の顔を生活魔法で綺麗にした。
その後も子どもオオカミは私にじゃれついてきて、特に頭にスライムを乗せた子どもオオカミは積極的にかまってとアピールしていた。
ひっくり返ってお腹を見せてきたので、両手でワシャワシャしてあげると満足そうな表情をしていた。
こうして見ると、結構可愛いものですね。
すると、大きなオオカミがとんでもないことを言ってきた。
「お主よ、その子を連れて行くが良い。その子は外への好奇心が強く、お主についていきたいみたいだ」
「えっ、良いんですか? まだ子どもオオカミっぽいですけど……」
「どの子どもも、もうそろそろ独り立ちの時期を迎える。少し早くても何も問題はない」
何だか動物の世界って厳しいんだなと思ったけど、自然の摂理だからオオカミたちにとっては当たり前なのかもしれない。
そして、大きなオオカミは更にびっくりすることを言ってきた。
「その子よりも、頭の上に乗っているスライムの方が賢いぞ。何らかの時に儂の血を吸って以降、普通のスライムではなくなったのだ」
マジかって思い子どもオオカミに視線を移すと、スライムがぷよぷよと震えてそうだよとリアクションしてくれた。
確かに言葉も分かるし、賢いのは間違いなさそうだ。
そして、大きなオオカミはあるものをプレゼントしてくれた。
「この熊の毛皮を持って行くのが良い。我らにとって不要なものだが、人間にとっては貴重なものだ」
既に肉は子どもオオカミによって食い尽くされているが、確かに立派な毛皮が残っていた。
せっかくなので、熊の毛皮を生活魔法で綺麗にしてから魔法袋の中にしまった。
何だかんだあったけど、これで一件落着だ。
すると、子どもオオカミが期待を込めた目で私のことを見上げていた。
「ハッハッハ!」
「もしかして、名前をつけて欲しいの?」
「ウォン!」
元気よくひと鳴きする姿にほっこりしつつ、こういうのは深く考えても駄目だと思った。
綺麗な白銀色の毛並みから思いついた名前は……
「ふふ、待ちきれないみたいね、あなたは『シルバ』よ」
「ウォンウォン!」
シルバは、尻尾をぶんぶんと千切れそうなほど振って喜びを体全体で表現していた。
他の子どもオオカミが羨ましそうな表情を見せているけど、流石に今はこれ以上連れて行くのは無理ですよ。
そうそう、スライムにも名前をつけてあげないと。
「安直だけど『スラちゃん』って名前はどうかしら?」
名前が気に入ったのか、スラちゃんはシルバの頭の上でぴょんぴょんと跳ねていた。
そして、またもや羨ましそうにシルバたちを見る子どもオオカミたち。
だから、流石に名前をつけて連れて行くことはできないですよ。
あっ、そうだ。
肝心な私の名前を教えていなかった。
「シルバ、スラちゃん、私はリンよ。これから宜しくね」
「ウォン!」
こうして、異世界転生してからいきなり大変な場面に出くわしたけど、その代わりに魔法の実践とお友達もできた。
ひとりきりで異世界を生きていかないのかと思ったけど、種族は違うけどこうしてお友達がいるだけでだいぶ気持ちが楽になった。
「グルルルル……」
新しい世界に転生した瞬間、私は早くも命の危機を迎えていた。
眩しい光が収まると、私は周囲を木々に囲まれた森の中にいた。
周囲に茂みがそこまでなく、陽の光も程よく入る環境だった。
しかし、そんな周囲の環境よりも私は目の前で起きている事態に恐れおののき、腰を抜かすようにへたりと地面に尻もちをついていた。
三メートルを優に超える大きいというレベルでは言い表せない、白銀の毛並みを持つオオカミが私を視線におさめていた。
その眼光はとても鋭く、口元や一部の毛並みが真っ赤な血で汚れていた。
巨大なオオカミの足元には、これまた二メートルを超える大きな茶色の毛並みの熊が息絶えていた。
これ程の熊を倒すのだから、私なんて一瞬で命を刈り取られるだろう。
美女が運命を修正してくれたと言ったけど、実は全く直っていないのではと本気で思ってしまった。
しかも、更に事態は悪化した。
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「なっ、なになに?!」
尻もちをついた私の周囲を、五頭のオオカミが取り囲んだ。
子どもっぽいけど、それでもゴールデンレトリバーくらいの大きさを誇っていた。
なぜか一頭の頭の上に緑色の小さなスライムが乗っているけど、もう私の気持ちはそんなものを気にする余裕はなかった。
ノシッ、ノシッ。
トドメに、大きなオオカミが一歩ずつ私に歩み寄ってきた。
しかも、未だに鋭い視線を私に向けていた。
新しい世界に来て僅か一分、私はまた死んでしまうのではないかという恐怖に震えていた。
しかし、事態は意外な方向へと進んで行った。
「お主、人間か?」
「は、はひ。人間でふ!」
「そうか、それは悪かった。驚かせてしまったようだな」
突然大きなオオカミが渋い声で話し出したのだ。
かみかみだけど何とか返答したら、大きなオオカミの鋭い視線が和らいだ。
それとともに、緊張に包まれていた空気が少し緩んだ気がした。
とにかく何とかしないとと思い、私は意を決して大きなオオカミに話しかけた。
「あ、あの。すみません。私もどこに来たのか全く分からなくて。縄張りを荒らしたのなら直ぐにどこかに行きます!」
「まあ待て、落ち着け。突然大きな魔力とともにお主が現れただけだ。儂も、邪魔ものを倒して気が立っていたところだった」
「「「ガツガツガツ」」」
大きなオオカミは、意外と紳士的に対応してくれた。
その間に、子どもオオカミが熊に群がって食事をしていた。
生き物の命の儚さをまざまざと見せられていたけど、まずは大きなオオカミと話すことにした。
「大方、何かの魔法の作用でこの森に飛ばされたのだろう。お主は、何ものだ? かなり強い魔力を持っておる」
「わ、私は町に行ってこれから冒険者を目指しています。その、回復魔法が使えるみたいですけど魔法がまだ使えなくて……」
「ふむ、そういうことか。なら、儂の前足の怪我を治してみよ。それだけの魔力があるなら、儂の怪我も治せよう」
大きなオオカミは、私の前に左の前足を差し出した。
すると、熊との戦いで怪我をしたのか鋭い引っ掻き傷が見て取れる。
とにかく治療しないとと思い、私は立ち上がって大きなオオカミに近づいた。
そして、傷ついた前足が治るようにと念じてみた。
シュイン、ぴかー!
「ふむ、やはり強い魔力を持っておるな」
大きなオオカミが何かを言っているが、私の意識は怪我を治すことに集中していた。
怪我を包み込むように私の中を不思議な力が流れているのを感じたけど、これが魔力なんだとはっきりと分かった。
そして、一分ほど全力で回復魔法をかけてみた。
「はあはあ、こ、これでどうですか? 痛いのは良くなりましたか?」
「うむ、見事な腕前だ。お主は中々の治癒師になれるだろう」
まるで全力疾走をしたかのように息が荒くなったけど、何とか大きなオオカミから治療のお墨付きをもらった。
先ほどは私を試すような話しぶりだったけど、本当に私のことを試していたのだろう。
もし私が大きなオオカミに危害を加えるような存在だったら、一瞬で命を失っただろう。
更に私は大きなオオカミから血で汚れた毛並みを生活魔法で綺麗にしろと言われたので、綺麗になるようにと念じて生活魔法を放った。
すると、まるで光沢を持つようなとても素晴らしい白銀色の毛並みに生まれ変わった。
すると、大きなオオカミが綺麗になったのをみた子どもオオカミが、一斉に私の元にやってきた。
全頭熊肉を食べ終えたのか、口の周りが血塗れだった。
「「「ウォン、ウォン!」」」
「分かったから、順番にやるからね」
「「「ウォン!」」」
こうして、私は順番に子どもオオカミに生活魔法をかけていった。
つやつやピカピカの毛並みに戻り、子どもオオカミはとってもご満悦だった。
そして、何と子どもオオカミが私を押し倒して顔を舐めてきた。
「「「ペロペロ」」」
「わ、分かったから、ありがとうってことね」
「うむ、もう子どもを手懐けるとは中々やるな」
大きなオオカミがなぜか感心する中、私は暫くの間子どもオオカミに顔中を舐められていた。
数分してようやく満足して私から離れたけど、私の顔はヨダレでベトベトになってしまった。
間髪入れず、自分の顔を生活魔法で綺麗にした。
その後も子どもオオカミは私にじゃれついてきて、特に頭にスライムを乗せた子どもオオカミは積極的にかまってとアピールしていた。
ひっくり返ってお腹を見せてきたので、両手でワシャワシャしてあげると満足そうな表情をしていた。
こうして見ると、結構可愛いものですね。
すると、大きなオオカミがとんでもないことを言ってきた。
「お主よ、その子を連れて行くが良い。その子は外への好奇心が強く、お主についていきたいみたいだ」
「えっ、良いんですか? まだ子どもオオカミっぽいですけど……」
「どの子どもも、もうそろそろ独り立ちの時期を迎える。少し早くても何も問題はない」
何だか動物の世界って厳しいんだなと思ったけど、自然の摂理だからオオカミたちにとっては当たり前なのかもしれない。
そして、大きなオオカミは更にびっくりすることを言ってきた。
「その子よりも、頭の上に乗っているスライムの方が賢いぞ。何らかの時に儂の血を吸って以降、普通のスライムではなくなったのだ」
マジかって思い子どもオオカミに視線を移すと、スライムがぷよぷよと震えてそうだよとリアクションしてくれた。
確かに言葉も分かるし、賢いのは間違いなさそうだ。
そして、大きなオオカミはあるものをプレゼントしてくれた。
「この熊の毛皮を持って行くのが良い。我らにとって不要なものだが、人間にとっては貴重なものだ」
既に肉は子どもオオカミによって食い尽くされているが、確かに立派な毛皮が残っていた。
せっかくなので、熊の毛皮を生活魔法で綺麗にしてから魔法袋の中にしまった。
何だかんだあったけど、これで一件落着だ。
すると、子どもオオカミが期待を込めた目で私のことを見上げていた。
「ハッハッハ!」
「もしかして、名前をつけて欲しいの?」
「ウォン!」
元気よくひと鳴きする姿にほっこりしつつ、こういうのは深く考えても駄目だと思った。
綺麗な白銀色の毛並みから思いついた名前は……
「ふふ、待ちきれないみたいね、あなたは『シルバ』よ」
「ウォンウォン!」
シルバは、尻尾をぶんぶんと千切れそうなほど振って喜びを体全体で表現していた。
他の子どもオオカミが羨ましそうな表情を見せているけど、流石に今はこれ以上連れて行くのは無理ですよ。
そうそう、スライムにも名前をつけてあげないと。
「安直だけど『スラちゃん』って名前はどうかしら?」
名前が気に入ったのか、スラちゃんはシルバの頭の上でぴょんぴょんと跳ねていた。
そして、またもや羨ましそうにシルバたちを見る子どもオオカミたち。
だから、流石に名前をつけて連れて行くことはできないですよ。
あっ、そうだ。
肝心な私の名前を教えていなかった。
「シルバ、スラちゃん、私はリンよ。これから宜しくね」
「ウォン!」
こうして、異世界転生してからいきなり大変な場面に出くわしたけど、その代わりに魔法の実践とお友達もできた。
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