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第三十三章 二年生
千二百五十七話 先代子爵夫人と二人の孫
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スラちゃんから送られてきた通信内容を、王妃様とジンさんに見せました。
すると、二人とも思わず溜息をついてしまいました。
「何となく予想がついたけど、またこんな状況になるとはね」
「悪の巣窟になっている可能性はあったが、まさかここまでとは」
なんと、屋敷の半分以上の使用人に罪状が見つかり、次々と捕縛されていったのです。
中には、違法薬物の元となる森の中から見つかった違法植物を専門に育てるものもいました。
そして、当主案件として冒険者に違法薬物の荷運びをさせていたのです。
マジカルラット部隊だけでなく、リズたちも加わって大量の証拠品を押収しているそうです。
そんな中、こんな情報もスラちゃんからもたらされました。
「子爵には二人の子どもがいて、前子爵夫人の祖母が育てているそうです。今は、食堂で朝食を食べているみたいですね」
「子爵夫妻は、実の子の養育をしていなかったのね。呆れて物が言えないわ」
また王妃様が溜息をついちゃったけど、それだけ子爵夫妻が滅茶苦茶な事をしていたんですね。
事件の指揮はジンさんに任せて、僕と王妃様が子爵の二人の子どもと祖母に会うことにしました。
三人で子爵家に繋げたゲートを潜り、それぞれの場所に向かいます。
ガチャ。
「あっ、アレク様、王妃様」
「王妃様!?」
王妃様と一緒に食堂に入ると、サンディ、初老の女性、小さい男の子と女の子がテーブルに座っていました。
サンディの呟きを聞いた白髪交じりの初老の女性が、急いで立ち上がって王妃様に深々と頭を下げた。
「王妃様、この度は息子夫婦がとんでもないことをしてしまいお詫びのしようもありません。誠に申し訳ありません」
「先ずは、謝罪を受け入れましょう。話を聞かないといけませんね」
「はい……」
初老の女性は、土下座しそうな程の勢いで王妃様にしゃざいしていました。
この女性が、先代子爵夫人で間違いなさそうです。
そして、念の為に鑑定したけど、男の子と女の子が子爵の双子の兄妹みたいですね。
サンディに双子の様子を見てもらい、僕と王妃様は先代子爵夫人から話を聞きます。
「息子夫婦は、主人が存命中から怪しい行動をしていたみたいです。そして、子どもが生まれても全く養育に関与しませんでした。主人の看病と平行しながら孫を育てており、正直なところ息子夫婦を止めるまで手が回りませんでした……」
先代子爵夫人は、経緯を話しながらハンカチで涙を押さえています。
更に子爵夫妻は領内の政務を放棄していて、代わりに先代子爵夫人が行っていたそうです。
その裏で、子爵夫妻はやりたい放題していたということですね。
「あなたの気持ちはよく分かるわ。私も、似たような環境に置かれた貴族を見てきたから。ただ、早めに国に調査依頼をすることはできたはずよ」
「はい、その通りになります。育児をしていたとはいえ、そのくらいはできたはずだと後悔しております」
自分が行わなくとも、信頼できる使用人に手続きを任せることもできたはずです。
その点は、先代子爵夫人の落ち度と言えましょう。
ただ、間違いなく情状酌量の余地はあると思います。
そして、僕はパンを食べ終えた双子にある質問をしました。
「ねえ、お父さんとお母さんは好きかな?」
「「大嫌い!」」
わお、とてもわかりやすい返事ですね。
実の子どもに、これだけ嫌われている親も珍しいと思います。
「じゃあ、お祖母ちゃんは好きかな?」
「「大好き!」」
今度は、先ほどの質問から一変して満面の笑みで返事をしていました。
双子ちゃんが先代子爵夫人を慕っている良い証拠ですね。
この双子ちゃんの回答に、王妃様も満足そうに頷いていました。
「あなたへの聴取は、屋敷内で行うこととしましょう。引き続き領内の政務と孫の養育を優先して下さい」
「ご配慮頂き、感謝申し上げます」
王妃様の采配で、先代子爵夫人にはかなりの配慮をすることになりました。
配慮をするだけの要因もあるし、僕が鑑定しても何も犯罪履歴が出なかったのもあります。
使用人が多数捕まったので、何とかして補充しないといけません。
ただ、子爵夫人の実家に要請することは可能です。
というか、子爵夫人はあれだけの大犯罪を犯したのだから、実家は協力せざるを得ないですね。
すると、二人とも思わず溜息をついてしまいました。
「何となく予想がついたけど、またこんな状況になるとはね」
「悪の巣窟になっている可能性はあったが、まさかここまでとは」
なんと、屋敷の半分以上の使用人に罪状が見つかり、次々と捕縛されていったのです。
中には、違法薬物の元となる森の中から見つかった違法植物を専門に育てるものもいました。
そして、当主案件として冒険者に違法薬物の荷運びをさせていたのです。
マジカルラット部隊だけでなく、リズたちも加わって大量の証拠品を押収しているそうです。
そんな中、こんな情報もスラちゃんからもたらされました。
「子爵には二人の子どもがいて、前子爵夫人の祖母が育てているそうです。今は、食堂で朝食を食べているみたいですね」
「子爵夫妻は、実の子の養育をしていなかったのね。呆れて物が言えないわ」
また王妃様が溜息をついちゃったけど、それだけ子爵夫妻が滅茶苦茶な事をしていたんですね。
事件の指揮はジンさんに任せて、僕と王妃様が子爵の二人の子どもと祖母に会うことにしました。
三人で子爵家に繋げたゲートを潜り、それぞれの場所に向かいます。
ガチャ。
「あっ、アレク様、王妃様」
「王妃様!?」
王妃様と一緒に食堂に入ると、サンディ、初老の女性、小さい男の子と女の子がテーブルに座っていました。
サンディの呟きを聞いた白髪交じりの初老の女性が、急いで立ち上がって王妃様に深々と頭を下げた。
「王妃様、この度は息子夫婦がとんでもないことをしてしまいお詫びのしようもありません。誠に申し訳ありません」
「先ずは、謝罪を受け入れましょう。話を聞かないといけませんね」
「はい……」
初老の女性は、土下座しそうな程の勢いで王妃様にしゃざいしていました。
この女性が、先代子爵夫人で間違いなさそうです。
そして、念の為に鑑定したけど、男の子と女の子が子爵の双子の兄妹みたいですね。
サンディに双子の様子を見てもらい、僕と王妃様は先代子爵夫人から話を聞きます。
「息子夫婦は、主人が存命中から怪しい行動をしていたみたいです。そして、子どもが生まれても全く養育に関与しませんでした。主人の看病と平行しながら孫を育てており、正直なところ息子夫婦を止めるまで手が回りませんでした……」
先代子爵夫人は、経緯を話しながらハンカチで涙を押さえています。
更に子爵夫妻は領内の政務を放棄していて、代わりに先代子爵夫人が行っていたそうです。
その裏で、子爵夫妻はやりたい放題していたということですね。
「あなたの気持ちはよく分かるわ。私も、似たような環境に置かれた貴族を見てきたから。ただ、早めに国に調査依頼をすることはできたはずよ」
「はい、その通りになります。育児をしていたとはいえ、そのくらいはできたはずだと後悔しております」
自分が行わなくとも、信頼できる使用人に手続きを任せることもできたはずです。
その点は、先代子爵夫人の落ち度と言えましょう。
ただ、間違いなく情状酌量の余地はあると思います。
そして、僕はパンを食べ終えた双子にある質問をしました。
「ねえ、お父さんとお母さんは好きかな?」
「「大嫌い!」」
わお、とてもわかりやすい返事ですね。
実の子どもに、これだけ嫌われている親も珍しいと思います。
「じゃあ、お祖母ちゃんは好きかな?」
「「大好き!」」
今度は、先ほどの質問から一変して満面の笑みで返事をしていました。
双子ちゃんが先代子爵夫人を慕っている良い証拠ですね。
この双子ちゃんの回答に、王妃様も満足そうに頷いていました。
「あなたへの聴取は、屋敷内で行うこととしましょう。引き続き領内の政務と孫の養育を優先して下さい」
「ご配慮頂き、感謝申し上げます」
王妃様の采配で、先代子爵夫人にはかなりの配慮をすることになりました。
配慮をするだけの要因もあるし、僕が鑑定しても何も犯罪履歴が出なかったのもあります。
使用人が多数捕まったので、何とかして補充しないといけません。
ただ、子爵夫人の実家に要請することは可能です。
というか、子爵夫人はあれだけの大犯罪を犯したのだから、実家は協力せざるを得ないですね。
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