838 / 1,191
第三十章 入園前準備
千三十四話 馬鹿なことをしたもの
しおりを挟む
翌日、そのガッシュ男爵が面倒くさいことを引き起こしてしまいました。
なんと、「息子は大物だ、アレクサンダーとエリザベスは大した事ない」と言ってしまったそうです。
というのも、学費の件もあったのでこのままでは資産の差し押さえになると通告したら見栄を切ったそうです。
「全く、本当に馬鹿な当主なのだから……」
「あはは……」
たまたま仕事で来ていた軍の施設の応接室で、ティナおばあさまが紅茶を飲みながらも怒り心頭な表情で話をしていました。
一緒についてきたプリンとローリーさんも、物凄くプリプリしています。
うん、僕からは何もいえないよ。
ちなみに、リズたちは王城でレイナさんたちが作った問題集を解いています。
スラちゃんも、リズたちの監視をしているので軍の施設には来ていません。
ある意味、幸いだったのかもしれません。
「ふふふ、では僭越ながら私が手合わせしてさし上げないといけないわね……」
不敵に笑うティナおばあさまが怖いのだけど、実は今日は訓練の見学も含まれています。
なので、僕とティナおばあさまは騎士服を着て腰から剣を下げていました。
ローリーさんはいつもの仕事用の服だけど、プリンがローリーさんを護るといいたげに肩に乗っていました。
話をした兵も、ティナおばあさまの迫力に若干怯えていました。
なにはともあれ、先ずは訓練を見に行くことにします。
ガキン、ガキン!
「これは、ツーマンセルの訓練だ」
「正解よ。軍は複数で動くことが基本だから、こうして連携を高める訓練を行うのよ」
ティナおばあさまが色々と説明してくれたけど、軍の場合は誰とコンビを組むかは決まっていないことが多いので、こうして訓練を重ねて誰とでもコンビを組めるようにしているそうです。
僕は、リズ、それにスラちゃんとプリンと以心伝心みたいにして戦えるけど、それは長年の関係性があるもんね。
「ほら、どうした! お互いのことを考え、どうしたらスムーズに動けるかを考えないといけないぞ!」
「はあはあ、ち、ちくしょう……」
その一角で、明らかに軍人っぽくない体型の男性が、膝をついて荒い息を吐きながら上官の指導を受けていました。
間違いなく、あの人がガッシュ男爵だ。
実は、訓練が始まってまだ十分しか経っておらず、それでも既に疲労困憊って感じです。
「その、それでもかなりスリムになりました。以前は、もっと肥満体でしたので……」
兵がとても驚くことを言ってきたけど、ダイエットみたいな効果は出ているという。
本人の意思は、一ヶ月では全く変わっていないみたいですね。
すると、息が荒いガッシュ男爵が僕とティナおばあさまの姿を見つけました。
「おい、なんでガキとババアがこの場に来ているんだよ!」
しーん。
この場の空気が、一瞬にして静まり返りました。
それとともに、訓練していた兵も一斉に動きを止めて僕たちとガッシュ男爵を見ていました。
そして、一応に「あのバカ、やっちまった!」って表情をしていました。
というのも、今日僕とティナおばあさまが王城を代表して視察に来ると全員に通告してあったからです。
もちろん、ガッシュ男爵も例外ではありません。
ゾクッ……
「ふふ、皆さん訓練を続けて下さい。指揮官、この場合はどうすれば良いでしょうか?」
「は、はっ! 取り急ぎ、武装解除をして隔離をします!」
「そう、ありがとうね。では、宜しくね」
殺気を垂れ流しているティナおばあさまに、指揮官がガクガクと震えながら返答していました。
良かった、私刑にはしないで冷静に判断しています。
これには、僕だけでなくプリンとローリーさんもホッと胸を撫で下ろしました。
と思ったら、ガッシュ男爵がとんでもない行動に出ました。
「くっ、くそ!」
「「「あっ!」」」
シュッ、ブオン!
なんと、ガッシュ男爵を捕らえようとした兵が辿り着く僅かな時間で、ガッシュ男爵が真剣を僕たち目掛けて投げつけてきたのです。
なんというか、そんな咄嗟の判断ができるんですね。
カランカラン……
残念ながら、投げつけた真剣は僕たちのはるか前方に落ちました。
もちろん僕とプリンは念の為にダブルで魔法障壁を準備していたけど、必要にならなくて良かったよ。
でも真剣を視察団の僕たちに投げつけたのは間違いなく罪になるので、ガッシュ男爵は重犯罪用の牢屋に連行されました。
「て、て、て、ティナ様、あ、アレク様。こ、この度のことは、お詫びのしようもなく……」
「貴方が悪いのではないわ。それに、訓練もわざと後方に配置して万が一のことがないように配慮していたみたいですし。そのことがあって、何事もなかったのです。これからも、訓練に励んで下さい」
「はっ、はい!」
指揮官は、逆にティナおばあさまに褒められてホッとしていた。
実際に何が起こっても良いように対応していたみたいだし、僕としても問題ないと思うなあ。
真剣も刃引きしてあるし、殺傷能力は落ちています。
こういうトラブルは今回に限らず起こる可能性もあるし、しっかり対応すればいいと思います。
なんと、「息子は大物だ、アレクサンダーとエリザベスは大した事ない」と言ってしまったそうです。
というのも、学費の件もあったのでこのままでは資産の差し押さえになると通告したら見栄を切ったそうです。
「全く、本当に馬鹿な当主なのだから……」
「あはは……」
たまたま仕事で来ていた軍の施設の応接室で、ティナおばあさまが紅茶を飲みながらも怒り心頭な表情で話をしていました。
一緒についてきたプリンとローリーさんも、物凄くプリプリしています。
うん、僕からは何もいえないよ。
ちなみに、リズたちは王城でレイナさんたちが作った問題集を解いています。
スラちゃんも、リズたちの監視をしているので軍の施設には来ていません。
ある意味、幸いだったのかもしれません。
「ふふふ、では僭越ながら私が手合わせしてさし上げないといけないわね……」
不敵に笑うティナおばあさまが怖いのだけど、実は今日は訓練の見学も含まれています。
なので、僕とティナおばあさまは騎士服を着て腰から剣を下げていました。
ローリーさんはいつもの仕事用の服だけど、プリンがローリーさんを護るといいたげに肩に乗っていました。
話をした兵も、ティナおばあさまの迫力に若干怯えていました。
なにはともあれ、先ずは訓練を見に行くことにします。
ガキン、ガキン!
「これは、ツーマンセルの訓練だ」
「正解よ。軍は複数で動くことが基本だから、こうして連携を高める訓練を行うのよ」
ティナおばあさまが色々と説明してくれたけど、軍の場合は誰とコンビを組むかは決まっていないことが多いので、こうして訓練を重ねて誰とでもコンビを組めるようにしているそうです。
僕は、リズ、それにスラちゃんとプリンと以心伝心みたいにして戦えるけど、それは長年の関係性があるもんね。
「ほら、どうした! お互いのことを考え、どうしたらスムーズに動けるかを考えないといけないぞ!」
「はあはあ、ち、ちくしょう……」
その一角で、明らかに軍人っぽくない体型の男性が、膝をついて荒い息を吐きながら上官の指導を受けていました。
間違いなく、あの人がガッシュ男爵だ。
実は、訓練が始まってまだ十分しか経っておらず、それでも既に疲労困憊って感じです。
「その、それでもかなりスリムになりました。以前は、もっと肥満体でしたので……」
兵がとても驚くことを言ってきたけど、ダイエットみたいな効果は出ているという。
本人の意思は、一ヶ月では全く変わっていないみたいですね。
すると、息が荒いガッシュ男爵が僕とティナおばあさまの姿を見つけました。
「おい、なんでガキとババアがこの場に来ているんだよ!」
しーん。
この場の空気が、一瞬にして静まり返りました。
それとともに、訓練していた兵も一斉に動きを止めて僕たちとガッシュ男爵を見ていました。
そして、一応に「あのバカ、やっちまった!」って表情をしていました。
というのも、今日僕とティナおばあさまが王城を代表して視察に来ると全員に通告してあったからです。
もちろん、ガッシュ男爵も例外ではありません。
ゾクッ……
「ふふ、皆さん訓練を続けて下さい。指揮官、この場合はどうすれば良いでしょうか?」
「は、はっ! 取り急ぎ、武装解除をして隔離をします!」
「そう、ありがとうね。では、宜しくね」
殺気を垂れ流しているティナおばあさまに、指揮官がガクガクと震えながら返答していました。
良かった、私刑にはしないで冷静に判断しています。
これには、僕だけでなくプリンとローリーさんもホッと胸を撫で下ろしました。
と思ったら、ガッシュ男爵がとんでもない行動に出ました。
「くっ、くそ!」
「「「あっ!」」」
シュッ、ブオン!
なんと、ガッシュ男爵を捕らえようとした兵が辿り着く僅かな時間で、ガッシュ男爵が真剣を僕たち目掛けて投げつけてきたのです。
なんというか、そんな咄嗟の判断ができるんですね。
カランカラン……
残念ながら、投げつけた真剣は僕たちのはるか前方に落ちました。
もちろん僕とプリンは念の為にダブルで魔法障壁を準備していたけど、必要にならなくて良かったよ。
でも真剣を視察団の僕たちに投げつけたのは間違いなく罪になるので、ガッシュ男爵は重犯罪用の牢屋に連行されました。
「て、て、て、ティナ様、あ、アレク様。こ、この度のことは、お詫びのしようもなく……」
「貴方が悪いのではないわ。それに、訓練もわざと後方に配置して万が一のことがないように配慮していたみたいですし。そのことがあって、何事もなかったのです。これからも、訓練に励んで下さい」
「はっ、はい!」
指揮官は、逆にティナおばあさまに褒められてホッとしていた。
実際に何が起こっても良いように対応していたみたいだし、僕としても問題ないと思うなあ。
真剣も刃引きしてあるし、殺傷能力は落ちています。
こういうトラブルは今回に限らず起こる可能性もあるし、しっかり対応すればいいと思います。
807
あなたにおすすめの小説
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。