転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

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第三十一章 五歳の祝い

千六十七話 とある貴族からの治療の依頼

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 今日は安息日です、僕の屋敷の部屋のベッドでゴロゴロとしています。
 新年からずっと働いていて疲れたので、今日は久々にゆっくりしようと思います。
 冷蔵用魔導具の中にはたくさんのプリンがあるし、急いで用意する必要もありません。
 スライムのプリンも枕元にいて、一緒に寝ています。
 あー、惰眠最高……

 ドドドド、ガチャ。

「お兄ちゃん、冒険者活動しよう!」
「「「しよー!」」」

 部屋の中に、リズとミカエルたちが入ってきたのだ。
 しかし、忘れてはいけない。
 僕たちは入園前なので、危険な依頼を受けてはいけないのだ。
 何よりも……

「今日は雨だよ。だから、冒険者活動はお休みだよ」

 そうです、今日は生憎の雨模様です。
 しかも、冬の雨なのでとても寒いのです。
 なので、流石にリズたちも冒険者活動はしないはずです。
 しかし、リズは最初から辺境伯領で冒険者活動をするつもりはなかったようです。

「王都で冒険者活動をするんだよ! スラちゃんが確認してくれたけど、王都は晴れているって!」
「「「行くよー!」」」

 なんと、既にスラちゃんまで動員して王都の天候調査をしていたとは。
 もうみんなを止めるのは難しいと思って、僕はベッドから体を起こしました。
 プリンも、仕方ないなあって感じで起き上がります。
 ちなみに、お隣の辺境伯家とジンさんのところは、今日は屋敷でのんびりするそうです。
 いや、僕もそうして欲しかったんだけど。
 そして、王家も来客対応があるそうでお休みだそうです。
 うちからは、サンディとイヨに加えてメイちゃんとリラちゃんが加わります。
 メイちゃんとリラちゃんの弟くんが冒険者登録するのは、もう少し先になってからですね。
 ということで、装備を整えて王都にゲートを繋ぎました。
 念のために、ティナおばあさまに連絡しておこう。

「うーんと、何の依頼を受けようかな?」
「「「うーん」」」

 冒険者ギルドに着いた僕たちは、依頼掲示板を眺めていました。
 でも、掲示してあるのは力仕事関係者が殆どですね。
 こういう時は、受付に掲示していない依頼があるかを確認します。

「えーっと、治療の指名依頼があります。貴族家からですので、信頼のおけるものに治療してもらいたいそうです」
「治療なら、リズにお任せだよ!」

 どうやら、教会の治療施設に行けないほど具合が悪い人のようです。
 でも、貴族名を見てビックリしました。
 伯爵家が三つと侯爵家が一つで、その侯爵家がなんとレシステンシアさんの実家のサザビーズ侯爵家でした。
 こういうことなら早めに言ってくれればいいのにって思いながら、僕たちは依頼受付をしました。
 レシステンシアさんの屋敷には迎えに行ったことがあったので、さっそくゲートを繋いで現地に向かいました。

「「「こんにちはー、冒険者ギルドからの依頼で来ました!」」」
「り、リズ様! それにアレク様も。しょ、少々お待ち下さいませ」

 ケートを使ったのでいきなり屋敷の目の前に着いたけど、リズたちは普通に門番に挨拶をしていました。
 レシステンシアさんを迎えに行った際に門番は僕たちのことを知っていたので、門番の一人が急いで屋敷の中に入っていきました。
 すると、程なくしてレシステンシアさんが息を切らしながら急いでやってきました。

「はあはあはあ、あ、アレク様、り、リズ様、お待たせ、しました……」

 なんというか、だいぶ急いで来てもらって申し訳ないです。
 取り敢えず依頼書を見てもらうと、間違いなくサザビーズ侯爵家が出したものだそうです。

「その、最近お祖父様の具合が悪くなりまして。でも、前侯爵家の当主なので、信頼のおけるものでないと治療を受けないと言っております」

 中々難しいおじいさんなんですね。
 でも、孫娘の言うことなら聞くそうです。
 ちなみに、サザビーズ侯爵夫妻は別件で出かけているので不在だそうです。
 ということで、僕たちも屋敷に入ります。

 コンコン。

「お祖父様、冒険者ギルド経由で治癒師が来ました」
「取り敢えず、中に入れ」

 なんというか、僕たちを試そうとするような発言ですね。
 レシステンシアさんがごめんなさいって小声で言っていたけど、こればっかりは仕方ないですね。
 では、中に入りましょう。

「「「失礼します」」」
「ふん、子どもか……」

 ベッドに横になっているのは、白髪の短髪でかなり痩せ細っているおじいさんでした。
 目は僕たちのことをギョロリと見ているけど、浅黒い顔色からしてかなり体調が悪そうです。
 どうやら、僕たちがまだ子どもなのが気にいらないみたいですね。
 取り敢えず、自己紹介をしないと。

「あの、アレクサンダーと言います。Cランク冒険者です」
「エリザベスです。同じくCランク冒険者だよ」
「アレクサンダー? エリザベス? って、もしかして……」

 僕たちが自己紹介をすると、おじいさんは何かに気がついたみたいです。
 うん、改めて説明をした方がよさそうですね。

「えっと、副宰相兼国王補佐官のアレクサンダーです。リズは、前国王の妹であるティナおばあさまの孫になります」
「あのね、冒険者ギルドに行って信頼のおける人じゃないと駄目って依頼書に書いてあったの。リズたちじゃ駄目かな?」
「あ、ああ……」

 あっ、おじいさんが僕たちを見て固まっちゃったよ。
 とんでもない人が来たって、そう思っているんだね。

 ととと。

 そして、僕とリズが話をしている間に、ミカエルとブリットがおじいさんの側に移動していました。
 うん、既に魔力も溜めているみたいだね。

 シュイン、ぴかー!

「「えーい!」」
「おお、なんじゃこりゃ。体が軽くなっていくぞ……」

 ミカエルとブリットは合体魔法が使えるので、治療の効果も抜群です。
 試しに僕が治療を終えたおじいさんの様子を確認すると、だいぶ体調が良くなっていました。

「おじいさん、今できる治療は終わりました。後は、消化の良いものを食べて、体力を付けて下さいね」
「食べないと、また直ぐに病気になっちゃうよ」
「う、うむ。治療、感謝する……」

 ミカエルとブリットがあっという間に治療を終えたので、おじいさんもまだ状況が飲み込めていないみたいです。
 それでも体調が良くなったのは間違いないので、一旦応接室に移動してレシステンシアさんと話をすることになりました。
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