転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

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第三十二章 新入生

千百六十六話 文化祭の展示物を作成中です

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 無事に合格発表も終わったので、暫くは大きなイベントもありません。
 合格後の説明会もあるけど、それは特に大きな準備は必要ありません。
 そんな中、僕たちは秋の学園の大きな行事である文化祭に向けて作品を作っていました。
 文化祭は部活活動の発表もあるけど、各教室で生徒が作成した作品も飾ります。
 表現活動の一環なので、自由に色々な物を作っていきます。

「ふんふんふーん」
「わあ、リズ様凄い物を作っていますね」
「リズ様は、本当に手先が器用ですわ」

 リズは、お得意のブーケ作りを応用して籠の中にフラワーアートを作っていた。
 勿論生花ではなくドライフラワーを使っているけど、僕から見ても中々の出来だった。
 サキさんやレシステンシアさんだけでなく、クラスの女子生徒も時々リズの作品を見にきていました。
 スラちゃんもリズの側で触手で編み棒を持って器用に服を編んでいくけど、服を作るスライムっていうのも何だか凄いね。

 カキカキカキ。

「ふんふんふーん」
「エレノア様も、とても絵がお上手ですわ。しかも、こんなに小さなキャンバスに精密な絵を描かれるなんて凄いです」

 エレノアは、そんなに大きくないキャンパスにクラスメイトの絵を精密に書いていた。
 文化祭で出すものは生徒が頑張って作った物であれば問題ないが、展示スペースが自分の机の上なので限られていた。
 実は、学園側としても意図してやっていることで、限られたスペースの中でどんな作品を考えるかという想像力を養うためだった。
 なので、リズもエレノアも机の上に置ける大きさの物を製作していた。
 工作系でも良いので、木を削って彫刻を作ったり版画を作ったりしている人もいました。
 プリンも僕の側で絵を書いているけど、カッコいい自画像という中々面白い作品を作っていました。

「あ、アレク様はとんでもない物を作っておりますね。私達の作品のレベルを、遥かに超越しておりますわ……」
「本当にそうですね。学園の文化祭の出し物で、何故このレベルの物を作ろうとするのでしょうか……」

 クラスの皆が芸術の時間で一生懸命に作品を作る中、必ず一回は僕の作っている物を見にやってきました。
 レシステンシアさんとサキさんだけでなく、芸術のお爺ちゃんみたいな先生も「なんじゃこりゃ?」って表情をしていました。
 僕が作っているのは魔導具みたいなもので、見た目はインラインスケートみたいなものです。
 昔、何かのアニメで女の子がインラインスケートを履いて登校していた気がするんだよね。
 この間副宰相として魔導具研究所に視察に行った時に、似たような物を作っていました。
 僕も興味を持ったので、魔導具研究所の人と一緒に作って完成度を上げようって事になりました。
 車輪の構造とかも本を読んで勉強しているし、魔導具の本も読んでいます。
 車輪のところが魔導具になっていて、本人の魔力を使ってよりスピードが出る様にしています。
 研究の一環も兼ねているのでレポートとかも書いているけど、アカデミーの論文形式で書いて下さいって指定があったんだよね。

「あっ、お兄ちゃん。新しい物を作っているんだね。出来上がったら、またリズに履かせてね」
「リズ、文化祭で展示を終えたら出来たものを軍の施設でテストをするよ。それまで待っていてね」
「うん! 楽しみにしているね!」

 休憩を兼ねてリズが僕の制作風景の様子を見に来たけど、実は魔導具研究所と共同で作った試作品第一号をリズが履いてテストしていました。
 軍の訓練場でテストしたんだけど、土煙を上げながらもの凄い勢いで滑るリズはとても楽しそうでした。
 しかし、リズの膨大な魔力に車輪の所にある魔導具が耐えられず、煙を上げて壊れてしまいました。
 でも、実際に魔導具が動いたのは間違いなく、一緒に見ていた閣僚も面白い物だと実験続行を指示しました。
 僕も普通の物を作るよりもとても楽しくて、つい製作に熱中しちゃうんだよね。
 この車輪の機能を使えば、エンジン型魔導具を開発しなくても車とかが出来ちゃうかもしれないね。

「普通、学園の一年生が魔導具研究所と共同で魔導具を作って、更にアカデミーの論文を書くとかありえませんわ」
「その、論文だけで最優秀賞とか取れそうですわ。アレク様は、私達の想像を遥かに超えております」

 レシステンシアさんとサキさんがちょっと呆れながら自席に戻って行ったけど、僕が作っているものは工作の一環で間違いないと思っています。
 それに、小説を書いている人もいるし、論文も立派な製作物だもんね。
 さてさて、今日の芸術の時間はあと十分だし、僕もラストスパートをしようっと。
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