転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

文字の大きさ
1,008 / 1,191
第三十二章 新入生

千二百四話 年末の王都の奉仕作業です

しおりを挟む
 いよいよ年末になりました。
 今日は年末の奉仕作業を行うのだけど、王都でも辺境伯領でも行われます。
 なので、午前中は王都の奉仕作業を手伝い、午後から辺境伯領の奉仕作業を手伝います。
 でも、王都へ出発前に辺境伯領の教会に顔を出します。

「イザベラ様、すみませんが後で合流します」
「アレク君は本当に律儀ね。こちらのことは気にせずに、王都で色々と頑張ってね」

 一足先にリズたちは王都に行っているけど、挨拶はしないと駄目だよね。
 ミカエルとブリットたちは辺境伯領に残って治療班として頑張るみたいだし、ポニさんたちもちびっ子たちの護衛としてついています。
 あと、ジンさんが必死になってレイナさんとカミラさんを列の整理担当にさせていますね。

「グルル!」
「グルッ……」

 そして、飛竜なのに治癒師のドラちゃんは、義妹のリボンちゃんに遊ばないようにと注意を受けていました。
 この分なら大丈夫だと思いながら、僕は王都の大教会にゲートを繋いで向かいました。

「お兄ちゃん、やっほー」

 大教会に着くと、ドレス姿のリズが僕に挨拶をしてきました。
 リズの頭の上に乗っているスラちゃんも、触手をふりふりとしています。
 そのまま、僕はティナおばあさまのところに向かいました。

「アレク君、辺境伯領の様子はどうかしら?」
「問題なく動いています。ジンさんが、レイナさんとカミラさんを料理担当にしないように必死になっていましたけど」
「それはしょうがないというか、ジンに頑張ってもらうしかないわね」

 ティナおばあさまも、ジンさんたちの構図が思い浮かんだのか少しクスクスとしていました。
 大教会には他の貴族も手伝いに来ていて、リズたちはルカちゃんとエドちゃんと共に治療班です。
 エリちゃんもスラちゃんを抱きしめて治療班のお手伝いをするけど、若干ネコちゃんがスラちゃんに嫉妬している感じです。
 ではでは、僕はいつも通り炊き出しの仕込みをしましょう。

「メアリ、レシステンシアさん、ミリア、遅れてごめん」

 僕は、先に炊き出しの準備をしていた三人に声をかけました。
 来年入園するミリアに、一学年上の先輩としてメアリとレシステンシアさんが色々と話をしていたみたいです。

「ミリアさんはとってもいい人で、生徒会にもぴったりだと話をしていました」
「そうですわ。お辛い体験があったのに、それでもこうして素敵な方に育つのですね」
「あの、その、褒め過ぎです……」

 メアリとレシステンシアさんにベタ褒めされて、ミリアはかなり恐縮していました。
 とはいえ、入園試験の成績も第四席だし、そこは自信持っていいと思いますよ。
 さて、僕も野菜を切っていきましょう。
 よく手を洗って、アイテムボックスから包丁を取り出して。

 トトトトトトン。

「相変わらず、アレク様の包丁さばきは凄いですね……」
「そうですわね。速すぎて、手の動きとかがバグって見えていますわ」
「やっぱり、アレク様はとても凄いです」

 僕としては身体能力強化魔法を使っている訳でもないし、普通に包丁で野菜を切っているだけなんだよね。
 でも、小さい頃から炊き出しとかで料理をすることが多かったし、だいぶ慣れているのは確かです。
 今日はたくさんの野菜を切らないといけないから、とっても頑張らないとね。

「ワーナー、さっさと運ぶ」
「だー! お前に言われなくても分かっているよ!」

 そして、野菜が入った木箱を身体能力強化魔法を使ってイヨとワーナー君が運んでいるけど、まるで漫才コンビみたいな感じだね。
 意外と息ぴったりに見えるし、イヨもワーナー君を嫌ってはいません。
 何だか微妙な関係に見えますね。
 そして、僕は側にやってきたある人にあることを聞いてみました。

「ルーカスお兄様、年末なので少し豪華にしてもいいですか?」
「常識の範疇なら良い。オーク肉を振る舞うとかは駄目だぞ」

 ルーカスお兄様の許可も貰ったので、前にやった方法を使いましょう。
 食材は変えずに、料理の手順と調味料を変えよう。
 僕はフライパンでお肉を焼きながら、あるものをアイテムボックスから取り出してフライパンに投入しました。

 ジュー、ボウ!

「あ、アレク様、肉をワインでフランベしているのですか?」
「そうだよ。これなら素材はそのままだし、アルコールを飛ばして子どもにも食べられるようにするよ」
「料理の技術もとんでもないのですね……」

 レシステンシアさんは僕の料理に少し呆然としているけど、フランベして旨味を凝縮したりお肉の臭みを取ったりするのは前にもやったもんね。
 スープの大鍋にフランベしたお肉とソースを投入して、味を整えていきます。
 隠し味に少しだけ刻んだ生姜を投入して、マロード男爵領名産の醤油も入れます。

「こんな感じになったけど、味はどうかな?」

 僕は、メアリ、レシステンシアさん、ミリアに味を整えたスープを試食してもらいます。
 すると、何故か三人とも複雑な表情に変わりました。

「その、かなり美味しいのですけど、もはや炊き出しのレベルを超えています……」
「そうですわね。貴族の食卓に出てきてもおかしくない味わいのあるスープですわ」
「美味しすぎて、何杯も食べられそうです……」

 総じて貴族の食卓に出ても大丈夫なスープという評価だったけど、食材を変えずに調味料を加えただけだもんね。
 試食したシスターさんも微妙な表情だったけど、美味しいのは確かなのでそのまま出してもらうことになりました。
 その結果がこちらです。

「うめー! 何だこのスープは?」
「今まで生きてきて、一番美味いぞ!」
「こりゃすげー! 作ったのが『双翼の天使様』ってのもすげーな!」

 炊き出しのスープを食べた人は、みんな満面の笑みになっていました。
 一年間頑張ったのだから、年末くらい美味しいスープを食べたいよね。
 大評判なので、その後も僕は頑張って炊き出しの仕込みをしていました。
しおりを挟む
感想 287

あなたにおすすめの小説

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。