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第三十二章 新入生
千二百四話 年末の王都の奉仕作業です
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いよいよ年末になりました。
今日は年末の奉仕作業を行うのだけど、王都でも辺境伯領でも行われます。
なので、午前中は王都の奉仕作業を手伝い、午後から辺境伯領の奉仕作業を手伝います。
でも、王都へ出発前に辺境伯領の教会に顔を出します。
「イザベラ様、すみませんが後で合流します」
「アレク君は本当に律儀ね。こちらのことは気にせずに、王都で色々と頑張ってね」
一足先にリズたちは王都に行っているけど、挨拶はしないと駄目だよね。
ミカエルとブリットたちは辺境伯領に残って治療班として頑張るみたいだし、ポニさんたちもちびっ子たちの護衛としてついています。
あと、ジンさんが必死になってレイナさんとカミラさんを列の整理担当にさせていますね。
「グルル!」
「グルッ……」
そして、飛竜なのに治癒師のドラちゃんは、義妹のリボンちゃんに遊ばないようにと注意を受けていました。
この分なら大丈夫だと思いながら、僕は王都の大教会にゲートを繋いで向かいました。
「お兄ちゃん、やっほー」
大教会に着くと、ドレス姿のリズが僕に挨拶をしてきました。
リズの頭の上に乗っているスラちゃんも、触手をふりふりとしています。
そのまま、僕はティナおばあさまのところに向かいました。
「アレク君、辺境伯領の様子はどうかしら?」
「問題なく動いています。ジンさんが、レイナさんとカミラさんを料理担当にしないように必死になっていましたけど」
「それはしょうがないというか、ジンに頑張ってもらうしかないわね」
ティナおばあさまも、ジンさんたちの構図が思い浮かんだのか少しクスクスとしていました。
大教会には他の貴族も手伝いに来ていて、リズたちはルカちゃんとエドちゃんと共に治療班です。
エリちゃんもスラちゃんを抱きしめて治療班のお手伝いをするけど、若干ネコちゃんがスラちゃんに嫉妬している感じです。
ではでは、僕はいつも通り炊き出しの仕込みをしましょう。
「メアリ、レシステンシアさん、ミリア、遅れてごめん」
僕は、先に炊き出しの準備をしていた三人に声をかけました。
来年入園するミリアに、一学年上の先輩としてメアリとレシステンシアさんが色々と話をしていたみたいです。
「ミリアさんはとってもいい人で、生徒会にもぴったりだと話をしていました」
「そうですわ。お辛い体験があったのに、それでもこうして素敵な方に育つのですね」
「あの、その、褒め過ぎです……」
メアリとレシステンシアさんにベタ褒めされて、ミリアはかなり恐縮していました。
とはいえ、入園試験の成績も第四席だし、そこは自信持っていいと思いますよ。
さて、僕も野菜を切っていきましょう。
よく手を洗って、アイテムボックスから包丁を取り出して。
トトトトトトン。
「相変わらず、アレク様の包丁さばきは凄いですね……」
「そうですわね。速すぎて、手の動きとかがバグって見えていますわ」
「やっぱり、アレク様はとても凄いです」
僕としては身体能力強化魔法を使っている訳でもないし、普通に包丁で野菜を切っているだけなんだよね。
でも、小さい頃から炊き出しとかで料理をすることが多かったし、だいぶ慣れているのは確かです。
今日はたくさんの野菜を切らないといけないから、とっても頑張らないとね。
「ワーナー、さっさと運ぶ」
「だー! お前に言われなくても分かっているよ!」
そして、野菜が入った木箱を身体能力強化魔法を使ってイヨとワーナー君が運んでいるけど、まるで漫才コンビみたいな感じだね。
意外と息ぴったりに見えるし、イヨもワーナー君を嫌ってはいません。
何だか微妙な関係に見えますね。
そして、僕は側にやってきたある人にあることを聞いてみました。
「ルーカスお兄様、年末なので少し豪華にしてもいいですか?」
「常識の範疇なら良い。オーク肉を振る舞うとかは駄目だぞ」
ルーカスお兄様の許可も貰ったので、前にやった方法を使いましょう。
食材は変えずに、料理の手順と調味料を変えよう。
僕はフライパンでお肉を焼きながら、あるものをアイテムボックスから取り出してフライパンに投入しました。
ジュー、ボウ!
「あ、アレク様、肉をワインでフランベしているのですか?」
「そうだよ。これなら素材はそのままだし、アルコールを飛ばして子どもにも食べられるようにするよ」
「料理の技術もとんでもないのですね……」
レシステンシアさんは僕の料理に少し呆然としているけど、フランベして旨味を凝縮したりお肉の臭みを取ったりするのは前にもやったもんね。
スープの大鍋にフランベしたお肉とソースを投入して、味を整えていきます。
隠し味に少しだけ刻んだ生姜を投入して、マロード男爵領名産の醤油も入れます。
「こんな感じになったけど、味はどうかな?」
僕は、メアリ、レシステンシアさん、ミリアに味を整えたスープを試食してもらいます。
すると、何故か三人とも複雑な表情に変わりました。
「その、かなり美味しいのですけど、もはや炊き出しのレベルを超えています……」
「そうですわね。貴族の食卓に出てきてもおかしくない味わいのあるスープですわ」
「美味しすぎて、何杯も食べられそうです……」
総じて貴族の食卓に出ても大丈夫なスープという評価だったけど、食材を変えずに調味料を加えただけだもんね。
試食したシスターさんも微妙な表情だったけど、美味しいのは確かなのでそのまま出してもらうことになりました。
その結果がこちらです。
「うめー! 何だこのスープは?」
「今まで生きてきて、一番美味いぞ!」
「こりゃすげー! 作ったのが『双翼の天使様』ってのもすげーな!」
炊き出しのスープを食べた人は、みんな満面の笑みになっていました。
一年間頑張ったのだから、年末くらい美味しいスープを食べたいよね。
大評判なので、その後も僕は頑張って炊き出しの仕込みをしていました。
今日は年末の奉仕作業を行うのだけど、王都でも辺境伯領でも行われます。
なので、午前中は王都の奉仕作業を手伝い、午後から辺境伯領の奉仕作業を手伝います。
でも、王都へ出発前に辺境伯領の教会に顔を出します。
「イザベラ様、すみませんが後で合流します」
「アレク君は本当に律儀ね。こちらのことは気にせずに、王都で色々と頑張ってね」
一足先にリズたちは王都に行っているけど、挨拶はしないと駄目だよね。
ミカエルとブリットたちは辺境伯領に残って治療班として頑張るみたいだし、ポニさんたちもちびっ子たちの護衛としてついています。
あと、ジンさんが必死になってレイナさんとカミラさんを列の整理担当にさせていますね。
「グルル!」
「グルッ……」
そして、飛竜なのに治癒師のドラちゃんは、義妹のリボンちゃんに遊ばないようにと注意を受けていました。
この分なら大丈夫だと思いながら、僕は王都の大教会にゲートを繋いで向かいました。
「お兄ちゃん、やっほー」
大教会に着くと、ドレス姿のリズが僕に挨拶をしてきました。
リズの頭の上に乗っているスラちゃんも、触手をふりふりとしています。
そのまま、僕はティナおばあさまのところに向かいました。
「アレク君、辺境伯領の様子はどうかしら?」
「問題なく動いています。ジンさんが、レイナさんとカミラさんを料理担当にしないように必死になっていましたけど」
「それはしょうがないというか、ジンに頑張ってもらうしかないわね」
ティナおばあさまも、ジンさんたちの構図が思い浮かんだのか少しクスクスとしていました。
大教会には他の貴族も手伝いに来ていて、リズたちはルカちゃんとエドちゃんと共に治療班です。
エリちゃんもスラちゃんを抱きしめて治療班のお手伝いをするけど、若干ネコちゃんがスラちゃんに嫉妬している感じです。
ではでは、僕はいつも通り炊き出しの仕込みをしましょう。
「メアリ、レシステンシアさん、ミリア、遅れてごめん」
僕は、先に炊き出しの準備をしていた三人に声をかけました。
来年入園するミリアに、一学年上の先輩としてメアリとレシステンシアさんが色々と話をしていたみたいです。
「ミリアさんはとってもいい人で、生徒会にもぴったりだと話をしていました」
「そうですわ。お辛い体験があったのに、それでもこうして素敵な方に育つのですね」
「あの、その、褒め過ぎです……」
メアリとレシステンシアさんにベタ褒めされて、ミリアはかなり恐縮していました。
とはいえ、入園試験の成績も第四席だし、そこは自信持っていいと思いますよ。
さて、僕も野菜を切っていきましょう。
よく手を洗って、アイテムボックスから包丁を取り出して。
トトトトトトン。
「相変わらず、アレク様の包丁さばきは凄いですね……」
「そうですわね。速すぎて、手の動きとかがバグって見えていますわ」
「やっぱり、アレク様はとても凄いです」
僕としては身体能力強化魔法を使っている訳でもないし、普通に包丁で野菜を切っているだけなんだよね。
でも、小さい頃から炊き出しとかで料理をすることが多かったし、だいぶ慣れているのは確かです。
今日はたくさんの野菜を切らないといけないから、とっても頑張らないとね。
「ワーナー、さっさと運ぶ」
「だー! お前に言われなくても分かっているよ!」
そして、野菜が入った木箱を身体能力強化魔法を使ってイヨとワーナー君が運んでいるけど、まるで漫才コンビみたいな感じだね。
意外と息ぴったりに見えるし、イヨもワーナー君を嫌ってはいません。
何だか微妙な関係に見えますね。
そして、僕は側にやってきたある人にあることを聞いてみました。
「ルーカスお兄様、年末なので少し豪華にしてもいいですか?」
「常識の範疇なら良い。オーク肉を振る舞うとかは駄目だぞ」
ルーカスお兄様の許可も貰ったので、前にやった方法を使いましょう。
食材は変えずに、料理の手順と調味料を変えよう。
僕はフライパンでお肉を焼きながら、あるものをアイテムボックスから取り出してフライパンに投入しました。
ジュー、ボウ!
「あ、アレク様、肉をワインでフランベしているのですか?」
「そうだよ。これなら素材はそのままだし、アルコールを飛ばして子どもにも食べられるようにするよ」
「料理の技術もとんでもないのですね……」
レシステンシアさんは僕の料理に少し呆然としているけど、フランベして旨味を凝縮したりお肉の臭みを取ったりするのは前にもやったもんね。
スープの大鍋にフランベしたお肉とソースを投入して、味を整えていきます。
隠し味に少しだけ刻んだ生姜を投入して、マロード男爵領名産の醤油も入れます。
「こんな感じになったけど、味はどうかな?」
僕は、メアリ、レシステンシアさん、ミリアに味を整えたスープを試食してもらいます。
すると、何故か三人とも複雑な表情に変わりました。
「その、かなり美味しいのですけど、もはや炊き出しのレベルを超えています……」
「そうですわね。貴族の食卓に出てきてもおかしくない味わいのあるスープですわ」
「美味しすぎて、何杯も食べられそうです……」
総じて貴族の食卓に出ても大丈夫なスープという評価だったけど、食材を変えずに調味料を加えただけだもんね。
試食したシスターさんも微妙な表情だったけど、美味しいのは確かなのでそのまま出してもらうことになりました。
その結果がこちらです。
「うめー! 何だこのスープは?」
「今まで生きてきて、一番美味いぞ!」
「こりゃすげー! 作ったのが『双翼の天使様』ってのもすげーな!」
炊き出しのスープを食べた人は、みんな満面の笑みになっていました。
一年間頑張ったのだから、年末くらい美味しいスープを食べたいよね。
大評判なので、その後も僕は頑張って炊き出しの仕込みをしていました。
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