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第二章 バスク子爵領

第六十三話 ワース商会との戦闘

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「テリー様、大丈夫ですか?」
「ああ、サトー殿が咄嗟に魔法障壁を展開してくれたお陰で、かすり傷ひとつ無いぞ」
「アルス殿下は無事ですか?」
「大丈夫だ。サトーが叫んだタイミングで、魔法障壁を展開した。しかしこれはいよいよワース商会も手段を選ばなくなったぞ」

 テリー様もアルス王子も馬から降りて剣を構える。
 どうやら、咄嗟だったがうちのメンバーが魔法障壁を展開したので、騎士の怪我人も少ない。
 商会の方は爆発の衝撃で土煙が上がっていてよく見えないが、冒険者は急いで回避したようだ。流石はベテランの冒険者。

「全員戦闘準備、抜剣せよ」
「主人、魔法剣の使用許可をするぞ。今回は手加減なしだぞ」
「よし、俺達も戦闘準備だ。魔法剣は各自判断して使用する様に。念の為、魔法障壁を展開」

 すぐさま戦闘準備を開始し、土煙がなくなるのを待つ。
 何が出てくるかわからないので、魔法障壁を展開したままにする。

「おや、不意をついたと思ったのだが殆ど無傷か。流石サトー、一筋縄ではいかないか」
「ビルゴ、何故お前がここにいる」
「ビルゴさんだろ。一応冒険者として先輩で、初心者講習の教官だったのだから」

 土煙の中から現れたのは、闇の魔道士とビルゴと二人の仲間だった。
 ここにいるということは、もしかしたら転移か変装して侵入したのだろう。

「ふう、バスク領を混乱させる為に色々仕掛けたが、まあ見事にやられたよ。こればっかりは完敗を認めないとな」
「なら、大人しく縄に着くが良い」
「ははは、これは領主様。自ら出陣とは恐れ入りました。アルス殿下においてもお久しぶりです」
「貴様に久しぶりとは言われたくないわ。表の顔に騙される所だったよ」
「そのまま騙されてくれればよかったのですよ。ではせっかく役者が揃っているのですから、あなた達は死んで下さい」

 ビルゴの裏の顔は快楽殺人者か?
 この状況をあえて楽しんでいる様にも見える。
 冒険者としてあった顔とはまるで正反対だ。
 そして闇の魔法使いと共に何かをし始めた。

「「グオオオオ」」

 おい、ビルゴの仲間が魔獣化したぞ。
 いきなりやってくるのか。

「「「ガァァァ」」」

 俺達の目の前にはオーガが二体いる。
 背後にはオークの大群が。百体はいるんじゃないか。

「ふふ、住民を守りながらでは流石にサトーと言えども無理があるのでは?」
「ビルゴ、住民を盾にする気か!」
「なんと卑劣だ。騎士よ住民を守る様に配置を」
「これは問答無用で殺しに来たね。まあ、そう簡単にはやられないよ」

 住民を盾にして俺達の動きを牽制するつもりだ。
 テリー様は素早く騎士に指示をし、アルス様も素早く俺の背後についた。

「リンさん達はオークの大群を、ミケとビアンカ殿下とエステル殿下はオーガと魔獣を」
「ふん、また魔獣かえ。妾の魔法で葬り去ってやるのじゃ」
「こんな卑怯者には負けてられないね」

 スラタロウとルキアさんとリーフが魔獣とオーガの方に、マリリさんとタコヤキがオーガの方に向いて、それを俺達が囲んで護衛する。

「先手必勝じゃ。スラタロウ、フランソワ。サンダーウォールじゃ」
「マスター、了解」

 ビアンカ殿下が、スラタロウとフランソワ共に広域魔法を展開する。
 狙いは全方向。一気に仕留める気だ。
 しかし、闇の魔道士が展開したであろう魔法障壁によって防がれた。

「なるほど。敵も学習するしたのじゃ。では、身体強化して肉弾戦といこう」
「ビアンカちゃんって結構好戦的だよね。わたしも行くよ」
「魔法が効かないとなると、魔法剣ですね。わたしの鞭をくらいなさい」
「メイドといえば薙刀ですよ。細切れになりなさい」

 魔法使い陣も武器に切り替えて、立ち向かっていく。
 魔法剣は使える様で、順当に敵にダメージを与えていく。 

「魔法使いまで物理攻撃とは。サトーの所はすごいなあ」
「鬼軍曹にしごかれましたから。アルス王子も大丈夫ですか?」
「余裕とはいかないが、何とかしないとな」

 スラタロウとタコヤキとリーフは、物理攻撃の手段がないので魔法障壁を専念してもらう。
 正確にはスラタロウには魔力の物理化が出来るのだが、今は防御に専念だ。
 この間も、闇の魔道士から絶え間なく攻撃魔法が飛んでくるのだ。
 くそ、やはりこの魔道士は特級の魔法使いだ。

「ははは、粘るなサトーよ。魔法を封じられてもなおこの戦力とは」
「それはどうも、こっちは常に必死さ」

 魔獣の一人を俺が受け止め、アルス王子がもう一体の魔獣に対する。
 ミケとシルがオーガの一体を、ビアンカ殿下とエステル殿下がもう一体のオーガに対峙している。
 シルの特訓と魔物討伐で得た危機察知と魔法障壁のお陰で何とか防御出来ているが、このままだと防戦一方だ。
 特にオーガと対峙しているのが苦戦しているのがおかしい。
 攻撃力と防御力共に何か仕掛けがあるな?

「くそ、オーガがあんなに手強いとは。オーガに何か使ったな?」
「戦いながら分析するとは、流石はサトーだ。種明かしはしないがな」

 やっぱりビルゴはオーガに何かをしていた。
 オーガを一体でも倒せればかなり有利になるのに、このままではジリ貧だ。

「おや? 騎士の方が限界の様だね。防衛ラインが突破されそうだ。助けに行かなくていいのかい?」
「な、オークが圧力の方向を変えている。そうか、ビルゴ、お前がオークの指揮を取っていたのだな」
「ご名答。しかしもう遅い。オークが商店街になだれ込んで、人々を虐殺するのをただ見るがいい」

 オークが一箇所に集中して、騎士の防衛ラインを破ろうとしている。
 ってか、もう破られそうだ。

「騎士よ。防衛ラインを何としても守るのだ」
「ダメです、持ちません」
「うわー、破られる!」

 やばい、防衛ラインが破られた。
 騎士を蹴っ飛ばし、オークが商店街になだれ込む。
 人々が悲鳴を上げながら逃げ惑っている。

「ははは、防衛ラインが突破されたぞ。人々の悲鳴を堪能するがいい」

 ビルゴがいやらしい笑いを上げながら叫んでいる。
 この間にも、オークはどんどん進んでいく。
 
 その時、俺達に援軍が現れた。
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