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第十一章 帝国編

第二百二十一話 巡回部隊一日目

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「ということで、短期集中で悪い人を捕えます」
「「「「はーい!」」」」

 翌日から巡回を開始したので、残り二日。
 巡回メンバーを総動員しての、ノースランド公爵領内不審者捜索。
 ちょうど学園も休みなので、エスメやカロリーナさん達も参加します。
 さらにマシュー君達やコタローも参加する。

「バーちゃんも頑張ろう!」
「グルルルル」

 飛龍のバハムートに乗っていれば、手出しする馬鹿はいないだろう。
 軍部も兵を出し周辺を巡回するので、結構大掛かりなだ。
 
「海外から要人を迎えるので、できる限りの事はやりましょう」
「それにしても、そうそうたる光景だね」
「ついでと言うのもあるので」

 ノースランド公爵は苦笑していたが、それもよく分かる。
 港がある湾内を、数頭の赤龍が飛んでいる。
 昨日王都のお屋敷に帰ったときに、たまたまドラコの母親がやってきていた。
 スラタロウの料理がおきに召した様で、たまに旦那を放置してやってくる。
 その時に今回の事を話したら、協力してくれる事になった。
 お代はノースランド公爵領特産の海の幸。
 龍はお金よりも美味しい物が嬉しいそうで、火山噴火の時にスラタロウの料理を食べた若い衆が、また食べたいと名乗り上げた。
 スラタロウはというと、港の市場で大量の海産物を買い込んでいた。
 市場で魚を買うスライム、何だか奇妙な光景だ。

 巡回開始から二時間。
 ノースランド公爵と屋敷で待っていたのだが、既に沢山の不審者が捕まった。
 どんどんと集まる不審者を騎士が尋問し、ノースランド公爵領で犯罪をしたものはそのまま引き取られ、今回の件や人神教国絡みは全て王都に送っている。

「ははは、うちの騎士団が探しても見つけられなかった犯罪組織を、こうもあっさりと見つけ出すとは」
「うちのメンバーは、特に鼻がききますからね」

 ノースランド公爵もビックリする成果がでているが、今回はご褒美も影響している。

「仕事が終わったら、スラタロウの作った海鮮尽くし!」
「「「おー!」」」

 うちの子もお金よりも食欲が優先。
 特に久々に開放されたエステルが、食に飢えた狼みたいになっていた。
 明らかにほっそりしたエステルだが、王城で何があったかは頑なに言わなかった。
 レイアがふざけて「あ、フローラ様だ」って言ったらガクガクブルブルと震えたので、きっと記憶から消したい何かがあったのだと思う。
 臨時参戦の学園生には、国からのお金にプラスして俺からも払う。

「美味しいよ!」
「流石はスラタロウ」
「ガツガツ」

 お昼御飯に出されたのは、海鮮丼。
 お好みでわさびもついている。
 スラタロウは時間がなかったとわびていたが、それでも流石のクオリティ。
 腹ペコ軍団が大満足する完成度だった。
 特に飢えていたのか、エステルは一心不乱に丼をかきこんでいた。
 ちなみにスラタロウが時間取れなかった理由は、屋敷内で不審者を見つけたから。
 料理の片手間で不審者を捕まえる方が凄いと思う。
 
 夜はうちのメンバー大好物の鍋料理が出るとあって、午後は更に巡回の気合が入っていた。
 それもあってか、多くの不審者が捕まっている。
 一部は港湾で活動を始めていて、違法操業なども捕まえていた。
 というのもドラコとホワイトが空を飛べるようになり、ララとリリも飛行できるようになった。
 空からの捜索も可能になったので、色々な角度から不審者を探せるようになった。
 
 夕方になったので、不審者捜索は一旦終了。
 明日朝から、また不審者捜索を再開する。

「初日なので、まあまあの成果ですね」
「いや、これでまあまあの成果なのか?」
「王都では、この五倍以上を捕まえましたから。人口比もありますが、ノースランド公爵領は治安が良いですよ」

 面積もノースランド公爵領の街の方が王都より狭いから、その分集中して人員をさけるのも大きい。
 これなら、明日には殆どの地域を捜索できる。

「「「「お鍋! お鍋!」」」」

 それよりも巡回班から腹ペコ軍団になったうちの子が、お鍋を待ち切れない様だ。
 人数が多いので、屋敷の庭先をお借りしてイスとテーブルを出す。
 そこにスラタロウ特製の海鮮鍋が並べられ、鍋の蓋をあけるととてもいい匂いが辺りに広がった。

「「「「いただきまーす!」」」」

 準備が整った所で一斉に食べだした腹ペコ軍団。
 美味しいのか、みんな笑顔で食べている。
 今日は冒険者や騎士として参加しているので、上下関係なくワイワイやっている。
 それが面白そうなのか、いつの間にかノースランド公爵の孫が子ども達に混ざっていた。

「ああ、今日の鍋は冷酒に合うね」
「そうですね、姉さん。こんな美味しい料理はたまんないっす」

 手伝ってくれた赤龍達も、鍋は好評だった。
 米酒とよく合うと、ドラコの母親もご機嫌だった。

「鍋というのは初めて食べたが、中々美味いのう」
「うちは子ども達が多いので、鍋は楽しみなんです。勿論お一人様鍋もありますので、メニュー次第で公的な場でも出すことが出来ます」
  
 ノースランド公爵も、海鮮鍋に感動してくれた。
 うまく行けば、各地で独自の作物を使った鍋ができそうだ。
 腹ペコ軍団は、シメの雑炊も堪能していた。

「明日朝、また来ます」

 ノースランド公爵に挨拶をして、俺達は王都のお屋敷に戻る。
 人数が多いので、流石に泊めてくれとはいえない。
 ノースランド公爵領には、海外からのお客さんを泊める迎賓館もあるが、流石に俺達が使うわけにもいかない。
 軍はこのまま皇女を迎えるまで駐留するというので、ノースランド公爵領の空いている騎士駐屯地を借りていた。
 明日で色々決着がつけばいいな。
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