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第十二章 ルキアさんの結婚式

第二百五十一話 王妃様達のストレス発散方法其の二

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「ふう、やっと一息つけましたわ」

 またもや仕事中にやってきたのは王妃様達。
 今日は、軍務卿も含めて人神教国に対する事を話していた。
 王妃様達はようやく結婚式の準備が終わったらしく、張り詰めていたものが薄らいでいる。
 ここの所、本当にピリピリしていたからな。

「これで、後は当日を迎えるだけですか?」
「基本的にはね」
「明日には現地に向かうわよ」
「スラタロウに送迎を頼んでいるから、足は大丈夫よ」

 いつの間にスラタロウに送迎を頼んだのだろうか。
 もう万全だといった感じになっている。

「軍務卿は、明後日の朝ですよね」
「ああ、前日の式典に参加するからな。担当は既に現地に行っているぞ」
「獣人部隊は、短期間で大きな成果を上げましたからね」
「人種問題の対応も含まれるが、あげた功績は十分だな」

 前日の式典では、獣人部隊への表彰も含まれている。
 これには俺も参加予定だ。
 勿論渡す側だけど。

「サトーは、女装して聖女姿で参加ね」
「え?」

 ここで王妃様が、俺にリクエストをしてきた。
 思わず、ビックリして聞き返してしまった。

「ブルーノ侯爵領での聖女の活躍は、聖女伝説の始まりですよ」
「住民に再び聖女の姿を見せるのは、ブルーノ侯爵領が聖女の加護を受けているとの印象を与える事ができるわ」

 フローラ様とライラック様が、さも当たり前の様に理由を言ってきた。
 これでは逃げるのは不可能だぞ。

「サトー諦めた方が良いぞ。参加者リストにも聖女様になっていた」
「そんなあ」

 思わず崩れ落ちてしまった。
 もう決定しているじゃんかよ。
 と、ここで軍務卿の部下が部屋に入ってきた。
 少し慌てている様だが。

「軍務卿、国境で人神教国の魔物が複数現れました」
「またかよ。最近よくちょっかい出してくるな」

 散発的に人神教国から魔物が現れているらしく、今日も現れたらしい。
 近所迷惑もいいところだよ。

「ランドルフ領は直ぐに鎮圧できたと報告がありましたが、ギース伯爵領では魔物の数が多く手間取っています」
「はあ、仕方ない。丁度会議の内容も人神教国に対するものだったし、現場視察といくか」
「そうですね。こんな事で結婚式が潰されたら、大変な事になりますよ」

 俺と軍務卿とレイアは、ギース伯爵領の国境の砦に向かうことに。
 そこに、同乗を名乗り上げた人がいた。

「はあ、ふざけたやつがいるものですわね」
「こんな時に魔物を放つなんて」
「せっかくの結婚式を、何だと思っているのかしらね」

 あ、王妃様達の不機嫌レベルが上っていく。
 せっかく準備が落ち着いて、気持ちが穏やかになったのに。
 ということで、王妃様達も一緒に行くことに。
 俺と軍務卿に、拒否権はありません。

「うーん、確かに数だけは多いですね」
「ここの防壁が落ちることはないが、この数は面倒だな」
「ハッキリ切ってウザい」

 砦に着くと、防壁の周りに沢山の魔物が現れていた。
 魔獣がいないので砦が落ちることはないけど、オークやクマ型の魔物にゴブリンがうじゃうじゃいる。
 兵も直接の攻撃は避けていて、防壁の上からの魔法や投石に弓矢での攻撃を主としている。
 これでは、時間がかかるのも納得だ。
 
「軍務卿、サトー。この魔物は全滅させても?」
「はい、全く問題ありませんが」
「兵も外には出ていないので」
「ふふふ、有難うございます」
「少しストレス発散をしますか」

 あ、ライラック様までストレス発散って言っている。
 不敵に笑う王妃様を見て、俺と軍務卿はかなり慌てた。

「総員、防御体制!」
「俺も魔法障壁を張ります」

 軍務卿が兵に防御に専念することを指示し、俺もこちらに被害が出ないように防壁を中心として魔法障壁を張った。

 ズドーン、ズドーン、ズドーン!

「消えてなくなりなさい」
「結婚式の邪魔なんですわよ」
「全滅させますわ」
「えーい」

 どさくさに紛れてレイアも魔法を放っているけど、王妃様達が遠慮なく広域魔法を放っている。
 なんか魔法を放っている王妃様達の横顔が、すごく怖いのですが。
 魔物は突然の広域魔法になすすべなく、あっという間に殲滅されていく。

 ズドーン、ズドーン、ズドーン。

 それでも王妃様達は、魔法を放つのをやめていない。
 俺も全力で魔法障壁を展開している。
 少しでも気を抜けば、こちらにも大ダメージがくるからだ。
 それくらい、王妃様の魔法は遠慮がない。
 爆撃音が聞こえる間、俺も必死になっていた。

「はあ、久々にスッキリしましたわね」
「結婚式の邪魔者もいなくなって、一石二鳥ですわ」
「良いことをしましたわね」
「楽しかった」
「俺は疲れた……」

 俺は物凄く疲れているけど、王妃様達はとてもいい笑顔だ。
 そりゃ、あれだけ遠慮なく魔法を放てばスッキリするでしょう。
 余波で周囲に影響が出ないように、俺は結構必死だった。
 防壁の周りは正に死屍累々。
 周囲の探索をかけたけど、一匹も生きていない。
 兵が急いで魔物を片付けている。

「軍務卿、全滅できた様です」
「そうだな、帰るか」

 軍務卿はこうなるのが分かっていたので、結構サバサバしていた。
 だいぶスッキリしたのか、王城に戻っても王妃様達は笑顔のままだった。
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