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第十三章 王都生活編その2

第二百七十七話 久々の業務

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「昨日は休みなのに、色々とすまんな」
「いえいえ。実際に危ない状態でしたし、助かって良かったです」

 翌日、宰相に会うと昨日の事を言われた。
 久々の休日だったけど、急患はどうしようもない。
 今朝も運ばれてきた人を治療したけど、病気自体は回復している。
 後は体力の回復が必要だ。

「ちなみにあのナンシーというメイドな、調べてみたらあのマイケルという子どもといとこにあたる様だ」
「え? 何ですか、その関係は」
「どうも嫡男の弟がメイドに手を出した様だ。本人達は全く知らないと思うがな」
「今知ったら、大混乱するでしょうね」
「なので、あのメイドにも貴族の権利が認められる」
「ですよね。はあ、何ともめんどくさい事になっているのやら」
「裁定が明日には出てくる。なので、謁見の間で詳細を伝えよう」
「分かりました。後でフォローしておきます」

 はあ、これは中々に難しい問題だぞ。
 謁見の間で通達されるまで、黙っておこう。

「レイアも明日明らかになるまでは、誰にも言わないでね」
「分かった」

 レイアはキチンと言うことを守る子なので、誰かに言いふらす心配はない。
 後は、判決を言い渡された後の判断だな。

「そういえば、ブレンド領の調査団では、学園生はかなり張り切っていたようだな」
「二人の愛の巣を作ると、皆で頑張ってましたよ」
「まあ何にしろ、いい結果が出るのは良いことだ。閣僚会議で決まるが、原案を閣僚に見せたら一万人案を推していたな」
「そうなると、もはや子爵領ではないですね」
「復興次第では伯爵に復帰する事もあり得る。いずれにせよ、周辺地域の安定を考えると伯爵の方が都合が良いな」

 是非ともカロリーナさんとトール君には、伯爵に戻るまで頑張って貰いたい。
 あの二人の能力を考えれば、全然可能だな。

「これで四領地も飢餓を起こすことなく済むし、ビンドン伯爵の件も落ち着いたわけだ」
「ようやく通常業務に戻れますね」
「今回の件で、街道の整備が重要な事が分かった」
「確かに。陸の孤島にならないように、街道の整備は進めないとな」

 空からの輸送の手段がない以上、如何に街道を整備するかが問題だ。
 闇雲に道を作るわけにもいかないし、計画を立てながら進めないと。

「そして収穫が終わったら、北方の未開地の開拓を始める」
「ノースランド公爵領に隣接する地域ですよね」
「今の所、伯爵か侯爵領が一つに子爵領が二つ、男爵領が四つの予定」
「かなり大掛かりな開拓だが、これは数年かかる」
「いや、普通は数十年かかると思いますよ」
「そこでパパの出番。パパが鬼のように働けば大丈夫」
「おいレイア。俺のことを殺す気かよ」
「それはない。生かさず殺さずでやる」

 レイアの言い分に思わずガックリするが、数年は忙しいのは確定。
 おまけに来年から学園に続々と入園するから、戦力もダウンする。
 それで生かさず殺さずは無理ですよ、レイアさん。
 
 そんな事を言いつつ、ガリガリと業務をこなす。
 今年は好天に恵まれたから、作物の収穫量も良くて税金も一杯入りそうだ。
 今まで税金を誤魔化していた連中も軒並み捕まり、収入は過去最高の見込み。
 復興費用とかで少しは予定外の出費はあるけど、それを差し引いても結構余る。
 なので、来年度は未来への投資をガンガンやるそうだ。

「帰りました」
「お帰りなさい」

 暫く王城にいなかった分大量に溜まっていた仕事をこなして、ヘトヘトになって帰ってきた。
 フローレンスが迎えてくれたので、ついでに他の人の様子を聞いてみよう。

「昨日運ばれた人はどうですか?」
「メイド達は傷以外はだいぶ良くなりました。ナンシーは順調に回復しています。マイケル君が付きっきりで様子を見ています」
「ナンシーは動けるかな。明日、今回の件沙汰の件で二人を王城に連れていかないとならないんだ」
「本人に聞いてみないと何とも。ナンシーも沙汰を聞かないとならないのですね」
「何か事情があるみたいだよ」
「分かりました。マイケル君は確か謁見にも使える服があったので、ナンシーの分をこちらで見繕って置きます」
「済まないね、何から何まで」
「いえ、それが私の仕事ですから」

 ナンシーの服のことはフローレンスに任せて、俺は二人がいる部屋に入った。

「二人とも、体調はどうだ?」
「はい、だいぶ良くなりました」
「何から何まで、本当にありがとうございます」

 見た目には、かなり回復している様に見える。
 治療をしてみるけど、殆ど病は回復しているな。
 
「ナンシー、まだ歩くのは辛いか?」
「長い距離でなければ大丈夫です」

 いつもの控室から謁見の間までは近いし、そこまで歩かないから大丈夫と信じよう。

「二人に話がある。明日の午前中にビンドン伯爵家に対する沙汰が言い渡される。俺も同席するが、二人にも謁見の間に来てほしい」
「はい、分かりました」

 マイケル君は色々と覚悟した表情だったが、ナンシーは少し戸惑った表情だ。

「サトー様、メイドである私もですか?」
「そうだ、これは陛下からの指示だ。だが、拘束するとかそういう事ではない。謁見に必要な服も、こちらで用意する」
「分かりました。よろしくおねがいします」

 ここは無理矢理にでも納得させる。
 後は、明日どんな沙汰が下るかだな。
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