異世界転生したので、のんびり冒険したい！

第十四章 公国

第二百九十話 王城とサトーの屋敷での攻防

「各門については、王国軍が優勢です」

　軍からもたらされる情報が、良いものになってきた。
　しかしまだ油断はできない。
　そう思っていたら、王城を囲む様な気配が急に現れた。

「王城が囲まれれているぞ！」
「何！」

　直ぐに周りの人に声をかけながら窓から外の様子を見ると、口をあけている魔獣がいる。
　魔法が集まる気配が、目の前の魔獣からだけでなく三方からする。
　やばい、多方面から王城にあの強烈な魔法を放つつもりだ。
　俺は急いで魔法障壁を王城全体に展開し、周りの人に叫んだ。

「多方面から、王城に魔法を打たれるぞ。伏せろ！」
「「「えっ！」」」

　ドーン！

　皆がビックリする中、王城に魔法が放たれた。
　魔法障壁で防いでいるとはいえ、衝撃とかは伝わる。
　周囲の人は、急いで床に伏せている。
　流石に三方向からの攻撃を広範囲で防ぐのはキツイが、一分もすれば魔法攻撃は収まった。
　しかし、街中ではまだ魔物が発生している気配がする。
　ひょっとして誰かが、意図的にやっている？

　再び窓をあけて外を見ると騒ぎを聞きつけたのか、ちょうど王城の門の所にミケの姿が見えた。
　声が届くかわからないが、とりあえず叫んでみよう。

「ミケ！　街中で誰かが魔物を呼んでいるから捕まえて！」
「分かった！」
「何人かいるかも！」
「了解！」

　おお、距離があったけど聞こえたよ。
　流石は獣人だけある。

「陛下、どうも王城も狙われていますね」
「これだけ大掛かりなら当然だろう」
「俺は王城に残ります。また魔法攻撃があるかもしれませんので」
「というか、これだけの広範囲を防御するサトーも化け物だな」

　失礼な、俺だって必死にやっているんだから。
　陛下からのボヤキに苦笑していると、探索に新たな反応があった。
　またもや窓の外を見ると、新たな魔物が現れていた。
　あれは、ガーゴイル？
　空を飛んで、こちらに向かってくるぞ。
　近くで待機していた、ララとリリに声をかける。

「空からも魔物が来た。ホワイトと共に魔物を落として」
「任せて、お兄ちゃん」
「頑張っちゃうよ！」

　ララとリリは、バハムートに乗っているホワイトと共にガーゴイルの群れに突っ込んでいった。
　三人が撃ち漏らしたガーゴイルを、レイアとビアンカ殿下が魔法で迎撃している。

「ほら、あなたは会議に集中して」
「ここは、私達が対応します」
「宮廷魔術師もついてきて」

　そして、窓から外の様子を見ていた陛下や閣僚を押しのけて、王妃様達が三方の窓に陣取り魔法攻撃を始めた。
　押しのけられて尻もちをついた陛下は、王妃様の余りの迫力にポカーンとしていた。
　いざって時は、女性は強いな。
　城の周りも兵の再配置が完了し、地上の魔物と上空の魔物の両方に対応している。
　指揮官がシルとリーフっぽいな。
　二人の声がよく聞こえるぞ。
　戦局が安定したけど俺は動けないから、ミケ達に頑張って貰わないと。

　その頃、実はサトーの屋敷でも、戦闘が始まっていた。
　
「カミラ、そっちに行ったよ」
「分かった。ノラは大丈夫？」
「大丈夫！　アメリアも気をつけて！」

　街中に魔物が現れたということは、勿論サトーの屋敷の周りにも魔物は現れていた。
　アメリアとカミラとノラは、屋敷から離れない様に気をつけながら魔物を倒していく。
　屋敷の前では馬が仁王立ちしていて、時々風魔法で魔物を倒している。
　更に屋敷の周囲を囲むように、ニードルラットのニーとテオとはりちゃんが構えている。
　この三匹も、時折風魔法で魔物を倒していた。
　そんな中、マシュー君達とマチルダはというと、屋敷の中から魔法の練習だといって交代で魔法障壁を張っていた。
　ジュリエット様とリディア様には、侍従に加えてマールとローゼがガッチリと護衛している。
　何故かタローくんとコタローも、マールとローゼの真似をして二人の護衛中。
　マイケルとナンシーもいるから、大物の魔物がこない限り大丈夫。

　カロリーナさんは、カーター君達を屋敷にいれて自分は屋敷の前で魔物を倒している。
　ちなみにトール君も一緒だという。
　クラスメイトが見たら、夫婦での共同作業と言われそうだ。