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第十六章 収穫祭

第三百三十四話 臨時のベビーシッター

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「わかった、道中気にしておくよ」
「ポチも一緒なので、不審者は直ぐに拘束します」

 街に繰り出すエステル達に、不審者がいることを伝えておいた。
 ドラコ達もいるから、何かあっても直ぐに対処してくれるだろう。

「アイス屋は落ち着いたか?」
「もう平常に戻っていました」
「それは上々。ミケの店を襲うとは、とんだバカもいたもんじゃな」

 屋敷に戻ると、ビアンカ殿下と王太子様夫妻がいた。
 ウィリアム様が、早速シングルのアイスクリームを美味しそうに食べていた。
 そして、パタパタと飛んできたのはショコラ。
 主人が街で食べ歩きをしているのに色々な人をワープで連れてきてくれてお疲れ様です。
 陛下と閣僚は、変装をして護衛を付けて街に繰り出したらしい。

「サトーは会場に向かうのか?」
「いえ、暫くは屋敷にいます。実はちょっと子守を頼まれていまして」
「はは、それは仕方ないな」

 俺は両手に赤ちゃんを抱いている。
 一人はヘレーネ様の弟のノア君。
 もう一人は、カロリーナさんの弟のカーター君。
 何故だか、俺が抱いてあげたら離れないんだよな。
 しょうがないので、お姉さんが帰ってくるまで臨時のベビーシッターに早変わりだ。
 ビアンカ殿下は、ミケの店に行って売り子をやるらしい。
 普段できない経験だからなのか、エプロンを付けて張り切っていた。

「すみません、お邪魔してしまって」
「いえいえ、これはしょうがないですわ」
「もう、すっかりお父さんですね」
「でも、いまの格好だとお母さんかしら」

 王妃様達や王太子夫妻と一緒の部屋にいさせて貰うことに。
 ここなら、赤ちゃんの安全も確保できるだろう。
 腕の中の赤ちゃんを見つめながら、王妃様達は将来の訓練といっている。
 もうちょい先だけど、子どもの世話をしないとすることにはなるだろうな。
 
 二人を足の上に乗せる形で抱いていると、二人はあうあうとお喋りをするように喋っている。
 と、思ったら、床に降りてハイハイをし始めた。
 おお、二人が別々の方向に向かっていくから、中々大変だ。
 
「ハハハ、サトーでも子守は苦戦するか」
「二人同時なのだから、仕方ありませんわ」

 王太子夫妻からも少し笑われているが、新米ベビーシッターなので本当に大変ですよ。

「あうー」
「あうあう」

 ようやく二人を捕まえたと思ったら、今度はウィリアム様が食べているアイスクリームに興味を示した。

「ちょっとまっていてね」

 俺はアイテムボックスに入れておいたアイスクリームを取り出して、スプーンで少しずつ食べさせてあげた。
 添加物が一切入っていない安全なアイスクリームだから、赤ちゃんに食べさせても大丈夫。
 二人とも美味しそうに食べてくれた。
 少し水分を飲ませてあげたら、今度は少し臭うような。
 二人のお尻を嗅ぐと、同時にうんちをしたようだ。

「あ、同時にうんちしている!」

 アイテムボックスからタオルを出して、おむつとおしり拭きも準備する。
 順番におむつを交換してあげると、二人ともとってもスッキリとした表情になった。

「すみません、こんな所でおむつを替えて」
「いやいや、赤ん坊のすることだから仕方ない」
「それにしても、手際がいいですわね」
「うちでカーター君を預かった時に、何回か替えたことがありますので」

 おむつ替えは大変だよな。
 王太子夫妻も大変だと苦笑していた。

 おむつを替えたら今度は眠くなったのか、ウトウトし始めた。
 抱っこをしていると、何故かぐずることもなくストンと寝てしまった。

「サトーは寝かしつけも上手いわね」
「エステルはグズって大変でしたよ」
「これなら、将来の育児も全く心配ないわ」

 王妃様達が褒めてくれるけど、臨時のベビーシッターなのでもう疲れた。
 世の中のお母さん達は、本当に凄いな。
 ウィリアム様が、恐る恐る寝ている二人のほっぺをツンツンしているのが面白い。

「そういえば、ルイの所に赤ちゃんが出来たみたいなの」
「そうなんですか、それはおめでたいですね」
「やはり男の子がいいなっておもいますわ」
「私は元気に育ってくれるなら、男の子でも女の子でもどちらでも問題ありませんわ」

 ここで思い出した様に王妃様達が、ルイ様の事を話しだした。
 トップシークレットの様な気もするが、ここは素直にお祝いしておこう。

 ドン!

「帰ったぞ! お土産もあるぞ」
「「うわーん」」
「おお、よしよし。泣かないでね」
「あれ? もしかして起こしちゃった?」

 突然ドアがあき、陛下が入ってきた。
 両手に出店で売られていた物をもって、楽しんできたという顔だ。
 しかしそれどころではない。
 ドアの音に驚いて、二人が泣いてしまったのだから。

 懸命にあやす俺の事を尻目に、王妃様達の説教タイムが始まった。

「あなた、正座!」
「ウィリアムが寝ていた可能性もありますよ」
「あんなに大きな音を出して入ってきて、恥ずかしいですわ」
「えっと、スマン」

 部屋の隅で説教タイムとなっているのを尻目に、俺は大泣きをしている二人をひたすらなだめていた。
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