月の影に隠れしモノは

しんいち

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仙界にて

33 一人目の神子の巫女 …不和…

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 四月二十六日。この日も、いつも通り。巫女は、まだ来ない。
 二十七日、二十八日、二十九日、三十日。やはり来ない。
 祥子によると、今まで大抵五人程度だったとのこと。少なくても四人。それも、こんなに待たされることも例が無いとのことだ。


 五月一日。やっと、一人送られてきた。最初の『神子かんこの巫女』だ。
 それは畑での収穫が終わって、交合の準備に入っていた時であった。
 突如、白い光が現れ、光が消えると同時に一人の女性が立っていた。

「あ、な、なに? どうなったの?」

 慌てた様子の女性…。彼女を見て、慎也は、おや?と思った。
 どこかで見覚えがある…。
 たしか、舞衣と同じグループのアイドル、細田美月じゃないか?
 祥子と雰囲気的に似た感じの少しキツメの顔立ちは、ファンから目力めぢからが強いと表現されている。髪型はショートボブだ。舞衣ほどでは無いにせよ、人気者の美女である。

「あ、ま、舞衣さん! 無事だったんですね。探していたんですよ!」

 美月は舞衣の姿を視認し、嬉しそうに駆け寄る。
 しかし、その美月が向かう先の舞衣は…。美月の顔を見て、目つきが変わった。明らかに不機嫌になる。いや、それを通り越して憎しみが目に宿る…。

 嬉々として舞衣の手を握ろうとする美月。
 そんな彼女に、舞衣は、強烈な平手打ちを食らわせた。

 パシーンと、響き渡る鋭い音!

 張り倒されて崩れ落ちたまま、打たれたほおに手をやり、呆然ぼうぜんとする美月。その目からは、みるみる大粒の涙があふれてくる。
 美月には、こんな仕打ちを受ける理由に全く覚えが無いのだ。舞衣は、敬愛する先輩であり、妹分的な立場を認められて、いつも一緒に居たはずなのに…。

「ひ、ひどいです。舞衣さん! なんで?」

「なんで?ですって! 白々しい!」

「わ、私が何をしたって言うんですか! ずっと心配して、ご実家まで探しに来たのに!」

 突然始まったアイドルのバトルを、呆気あっけに取られて見つめる慎也と祥子…。

「ふ、ふざけるんじゃないわよ!」

 さらにもう一発、引っぱたこうとする舞衣を、慎也が羽交はがい絞めにして引き止めた。
 美月は完全に泣き崩れている。
 じっと美月の目を見つめていた祥子も、舞衣の前に立ちはだかった。

「待て待て、この子、素直な良い目をしておる。悪い子には見えぬぞ。いったい、何があったのじゃ」

 羽交い絞めにされたままの舞衣も、悔し気に涙を流している。

「この子は、私を裏切って下剤を盛ったの! おかげで私はコンサートの最中に粗相してしまって…。そ、それで、私は引退したのよ!」

「ええーっ、わ、私そんなことしてません! するはずないじゃないですか!尊敬する舞衣さんに!」

「まだ、そんなこと言うの! もう許さない!」

 再度、美月に攻撃を加えんと舞衣は力を入れるが、慎也がガッチリ抱え込んでいて離さず、動けない。

「舞衣さん、落ち着いて!冷静に! 詳しい状況を話して!」

 耳元での慎也の大声で、やっと舞衣は力を抜いた。
 慎也が舞衣を解放すると、その場でペタッと彼女は坐り込む。そして項垂うなだれながら話し出した。
 美月に渡されたジュースを飲み、下してしまったこと。トイレ内で、舞衣に敵対する三人にびを売る美月の声を聞いたことを。

「そ、そんな…。あの時私は、スミレちゃんに、舞衣さんの分って言われたのを渡しただけです! それに、私があの三人に媚びを売るなんて、絶対ありえません!」

「何だか、えらい行き違いがあるようじゃな。少し待て」

 祥子は一旦部屋を出て、直径二十センチくらいの水晶玉を持って戻ってきた。
 これは、宝珠…。
 慎也と舞衣の儀式を盗み見していたという、例の玉である。

「過去を見るのはなかなか難しいがの、当事者二人がおるから、何とかなるじゃろ。よく見ておれ」

 祥子は宝珠に手をかざした。
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