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仙界にて
34 一人目の神子の巫女 …誤解…
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祥子は宝珠に手をかざした。
念をこめる。
宝珠が光りだした。
そして、映像が映ってきた。
人数分、準備されるジュース。
それを一つ持って行き、白い薬を入れる手。
手の主は…。いつも舞衣に意地悪をする、一期生の黒崎里奈。
その周りで、同じく一期生橋本あゆみと、舞衣と同期の北野照子。
三人はニヤニヤ笑っている。
北野が三期生の遠藤スミレを呼び、薬の入ったジュースを渡して何やら言う。
……残念ながら映像のみで音声は聞こえない……
遠藤は美月を見つけ、お盆に乗せたジュースを渡した。
「ほ、本当に美月じゃないのね、犯人は…。で、でもトイレの中でのあれは?」
「私が何を言ったっていうんです!」
舞衣が、聞いた言葉を再現する。
「確か…。私、これからもお二人に付いて行きます。よろしくお願い致しますって」
・・・。
「あ、あれ?」
舞衣の表情が、急速に曇る。
あの時はすっかり動転していたが、よくよく考えてみると、舞衣は、このセリフを別のどこかで聞いた…。
「そうですよね~。私、これからもお二人に付いて行きます。よろしくお願い致します」
美月が、演じるように、その言葉を繰り返した。そして、言う。
「これ、ドラマでの、私のセリフです。みんなでやった学園ものがあったでしょ」
何ということ!
舞衣は口を半開きにして天を仰いだ。
宝珠にトイレが映る。例の三人が入ってくる。
そして、ボイスレコーダーを出して…。
舞衣が中に居るのを承知で話し、美月の録音音声を流していたのだ。二人を仲たがいさせようと…。
「う、うそ、ほんとに美月じゃないのね…」
「当り前じゃないですか! なんで私が舞衣さんにそんなこと!」
舞衣の顔が、みるみる崩れる…。そして、美月にガバッと抱き着いた。
「ごめん。美月! 私、大変な思い違いしてた! それに、引っ叩いちゃった! ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい……」
大声で泣き出した舞衣を、美月はしっかり抱き締めた。
「誤解が解けてよかった…。大丈夫ですよ。痛くありませんから」
「そんなはずないでしょ!私、思いっきり叩いちゃったもの。ほら、赤くなってる!」
確かに、美月の左頬には、赤く、クッキリと、舞衣の手形が残っていた。
取り乱す舞衣…。
慎也は二人に寄った。
「誤解だったんだね。良かったじゃない」
そっと、美月の赤くなった頬に、手をかざす。
知らない男のいきなりの行動で、美月はギョッとしたが…。
「あ、あれ? 痛みが引いていく…」
慎也が、かざしていた手を解く。
美月は、さっきまでジンジンしていた頬に手をやった。
「痛く無くなった…」
「やっぱり、痛かったんじゃない!」
舞衣は、美月を再度しっかり抱き締め、また泣き出した。
舞衣が落ち着くまで待ち、祥子が二人のところへ寄る。
「舞衣よ、そろそろ説明したいのじゃが…」
「ご、ごめんなさい、私ったら! そう、そうよ、美月! 何で、あなたなの?」
何でと言われても、美月には何のことか理解できない。
「舞衣さんが、お婆様のところへ行くって言っていなくなったって、冬木プロデューサーから聞いて。でも舞衣さんのお婆様、亡くなっているでしょ。それ、自殺するってことじゃ?と思って、びっくりしちゃって。
前に聞いてた長野のご実家に行こうってあちこち探して、おうち見つけて。鍵が開いていたから入ったら…」
「ここに送られちゃったのね…」
「ここどこですか? その人たちは? それに舞衣さん、その着物なに? ……そ、その、透けてますよ」
最後は小声で、美月は畳みかけた。
「透けてますよ」と言われても、今更、舞衣はどうとも思わない。
それよりも、どう説明しようか悩む舞衣に替わり、祥子が進み出て話し出した。
何しろ千年の間、約六十年毎に、こんなことを繰り返しているのだから…。
念をこめる。
宝珠が光りだした。
そして、映像が映ってきた。
人数分、準備されるジュース。
それを一つ持って行き、白い薬を入れる手。
手の主は…。いつも舞衣に意地悪をする、一期生の黒崎里奈。
その周りで、同じく一期生橋本あゆみと、舞衣と同期の北野照子。
三人はニヤニヤ笑っている。
北野が三期生の遠藤スミレを呼び、薬の入ったジュースを渡して何やら言う。
……残念ながら映像のみで音声は聞こえない……
遠藤は美月を見つけ、お盆に乗せたジュースを渡した。
「ほ、本当に美月じゃないのね、犯人は…。で、でもトイレの中でのあれは?」
「私が何を言ったっていうんです!」
舞衣が、聞いた言葉を再現する。
「確か…。私、これからもお二人に付いて行きます。よろしくお願い致しますって」
・・・。
「あ、あれ?」
舞衣の表情が、急速に曇る。
あの時はすっかり動転していたが、よくよく考えてみると、舞衣は、このセリフを別のどこかで聞いた…。
「そうですよね~。私、これからもお二人に付いて行きます。よろしくお願い致します」
美月が、演じるように、その言葉を繰り返した。そして、言う。
「これ、ドラマでの、私のセリフです。みんなでやった学園ものがあったでしょ」
何ということ!
舞衣は口を半開きにして天を仰いだ。
宝珠にトイレが映る。例の三人が入ってくる。
そして、ボイスレコーダーを出して…。
舞衣が中に居るのを承知で話し、美月の録音音声を流していたのだ。二人を仲たがいさせようと…。
「う、うそ、ほんとに美月じゃないのね…」
「当り前じゃないですか! なんで私が舞衣さんにそんなこと!」
舞衣の顔が、みるみる崩れる…。そして、美月にガバッと抱き着いた。
「ごめん。美月! 私、大変な思い違いしてた! それに、引っ叩いちゃった! ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい……」
大声で泣き出した舞衣を、美月はしっかり抱き締めた。
「誤解が解けてよかった…。大丈夫ですよ。痛くありませんから」
「そんなはずないでしょ!私、思いっきり叩いちゃったもの。ほら、赤くなってる!」
確かに、美月の左頬には、赤く、クッキリと、舞衣の手形が残っていた。
取り乱す舞衣…。
慎也は二人に寄った。
「誤解だったんだね。良かったじゃない」
そっと、美月の赤くなった頬に、手をかざす。
知らない男のいきなりの行動で、美月はギョッとしたが…。
「あ、あれ? 痛みが引いていく…」
慎也が、かざしていた手を解く。
美月は、さっきまでジンジンしていた頬に手をやった。
「痛く無くなった…」
「やっぱり、痛かったんじゃない!」
舞衣は、美月を再度しっかり抱き締め、また泣き出した。
舞衣が落ち着くまで待ち、祥子が二人のところへ寄る。
「舞衣よ、そろそろ説明したいのじゃが…」
「ご、ごめんなさい、私ったら! そう、そうよ、美月! 何で、あなたなの?」
何でと言われても、美月には何のことか理解できない。
「舞衣さんが、お婆様のところへ行くって言っていなくなったって、冬木プロデューサーから聞いて。でも舞衣さんのお婆様、亡くなっているでしょ。それ、自殺するってことじゃ?と思って、びっくりしちゃって。
前に聞いてた長野のご実家に行こうってあちこち探して、おうち見つけて。鍵が開いていたから入ったら…」
「ここに送られちゃったのね…」
「ここどこですか? その人たちは? それに舞衣さん、その着物なに? ……そ、その、透けてますよ」
最後は小声で、美月は畳みかけた。
「透けてますよ」と言われても、今更、舞衣はどうとも思わない。
それよりも、どう説明しようか悩む舞衣に替わり、祥子が進み出て話し出した。
何しろ千年の間、約六十年毎に、こんなことを繰り返しているのだから…。
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