鬼に飼われて生きる少女 ~異世界転移し、鬼と一緒にヒトを食べて生きています~

しんいち

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鬼の世界へ

6 赤首輪と夕食

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 その後の話によりますと、食肉にする人間は、12~20歳ころが一番美味しいのだそうです。特に商品価値が高いのは女で、男より美味しいとのこと。さらに、本当は飼育品よりも天然モノが断然美味いんですって。
 ちなみに、人間界に行って人間を狩ってくることは固く禁じられていますが、迷い込んできた人間は食べても良いのだそうです。
 そういう迷い込んだのが、天然モノってことなんですね。

 えっと、私は今、15歳です…。オマケに女……。
リューサさんも言っていましたけど、まさに美味しそうな食べ時なんですよね。
 更には、貴重な天然モノってことじゃない!

 となると、赤首輪は、天然モノの極上肉って意味?
 特別に扱って超高級肉として売るってことなの?

 いやいや、でも飼育されていた人にも少数ですが赤首輪がありましたよ。
おかしいよね。あの中の人間は、全てこの異界で産まれた者だって、確か言っていましたよね。念のため、双子さんに再度確認してみますと、それに関しては間違いないとのこと。
 それにリューサさんは、私は食べないと明言してくれています。
ということは、食肉とは別の区分ってことですよね。
 じゃあ、どういうことなんでしょう?

 食肉用でも、労働力でもない…。その他……。う~ん…。
 あ、もしかすると、愛玩動物用だったりとか?
 ほら、人間でも、ミニ豚とかをペットとして飼ってる人いるでしょう。あんな感じかも。
食肉用に交じっている赤首輪の子は、特に可愛い子だったよ。だから、この候補なのかもしれない。
 私はリューサさんのお屋敷内で生活することになるって言われています。つまり、リューサさんのペット扱い。
 で、あの混じっている牧場の赤首輪の子は、愛玩動物して販売予定ということなんじゃない? きっと、そうよ!
 そういうことなら、嫌われないように精一杯尽くさなければなりませんね。
でないと、待っている運命は、白首輪に付け替えられて、高級お肉ちゃん……。

 そんなの、絶対、ぜ~ったい、嫌ですよ~!!
 


 夕ご飯……。
 食堂には大きな机。だけど、席は二つだけ。
 リューサさんが先に坐り、私も席に着くよう促されます。イマさんカリさんは一緒には食べないようです。従者だからですかね。
 じゃあ、私は同席させてもらってよいのかな。ペット(なのかな?)の分際で…。
 どうしても落ち着かなく、迷いましたが直接聞いてみることにします。

「あ、あの、私だけこんな待遇してもらっちゃって、良いのでしょうか?」

「ふふふ~っ。オーケーよ~。だ~って~、あなたは希少な天然モノなのよ~。天然モノは自由にしていなきゃね~。同じように飼育シチャッタら~、天然モノとしての価値が落ちちゃうじゃな~い」

 え、えええ~!
そ、それって、やっぱり最後は食べるの前提発言に聞こえますけど?!

 う、うう~ん。でも、この語尾を延ばす話し方…。私を怖がらせて面白がっている風でもあるし、真意はよく分かんないな……。
 リューサさんは続けます。

「だからね、ここの塀で囲まれている部分内だったら、あなたは自由に行動しても良いわよ。
但し、塀の外は絶対ダメ。あっと言う間に河童に捕獲されて食べられちゃうからね」

 今度は語尾を延ばさない。ということは、真面目な話ですね。

「それから、中に居る時も、なるべくその区域担当の鬼の近くに居なさい。念の為ね。
特に農場は、別の意味で襲われる可能性もあるからね」

「え? 別の意味?」

「そう、別の意味でね。まあ、ナユがシッカリ統制とってるから、めったなことは無いはずだけどね。そうなったらそうなったでも、構わないと言えば構わないし…。まあ、念の為ヨ。
さあ、もういいでしょ。食事にしましょう」

 ナユ? そうなったらそうなったでも構わない?
 いや、襲われて構わないなんて、冗談じゃないんですけど……。
 疑問点は多々ありますが、この場では、このお話は打ち切りになってしまいました。


 食事の給仕はイマさんカリさんがしてくれます。いつもはメイド鬼ちゃんの仕事のようですが、今日は特別ということです。
 ナイフとフォークが置かれ、洋食スタイルみたいです。が、箸も用意されました。

「使いやすい方で食べて良いわよ。何にも遠慮はしなくてよいからね」

 リューサさんのお言葉。

 そうは言われてもですね。これ、明らかに試されていますよね。
だって、リューサさん、興味深そうに私の手元を見てきますもん!

 リューサさんには箸は用意されない。じゃあ、私もナイフとフォークにした方が良いですよね。慣れてはいませんけど、一応作法は知っていますからね。
 あ、だけども、こっちの世界の作法と、向こうの作法が同じとは限りません。
であるのなら、箸という選択もありなのかな…。
 困ったぞ。どうしよう……。

 まあ、いいや。気にしすぎると余計に混乱しちゃいます。

 迷いながらも、「郷に入れば郷に従え」ってことで、結局ナイフとフォークを使うことにした私。箸は横へ除けます。
 そんな私の心の葛藤もリューサさんは見透かすように、ニヤッと笑います。

 前に置かれたのはサラダ。茹でたブロッコリーと生野菜です。この世界ではサラダからという順番のようですね。
 リューサさんは目を閉じて合掌し、唱えます。

「スマキダタイ、シシャンカ ニミグメノンテ。
天の恵みに感謝し、頂きます」

 食事前の感謝の言葉? あ、私も言わなきゃね。
 同じように言えばよいかな?
でも、前半の意味わかんなかったし、覚えきれなかった。
 じゃあ、私なりに、ちょっとアレンジして……。

 手を合わせ、目を閉じて、

「天の恵みと偉大なるリューサさんの御慈悲に感謝し、頂きます」

 目を開け、チラッとリューサさんを見ると、またニヤッと笑っています。
なんだか自分でも恥ずかしくなって目を逸らしました。
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