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鬼の仲間として

51 イマの解体

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 これからイマさんの御葬儀の準備に入ります。……つまるところ、遺体の解体なんですけども。
 しかし、牧場の塀の修理や、割れてしまった屋敷内のガラスの入れ替え等、全く人手が足らない状況。オマケに、主人に遺骸の解体されるのが、戦士にとって最大の栄誉なんだとか。
 イマさんは私にしもべの証を差し出していましたし、私を助けるために命を差し出しました。
 だから、私がイマさんを解体してあげなければなりません。これは私の義務なのです。

 いつも私に優しくしてくれていたイマさんを、私が解体する…。そんなことって、あり得ます?!

 私ってば、何でこんな世界に来ちゃったんでしょう? 何か悪いことしましたか?
自分の運命を呪いたくなります。

 考えてみれば、訳も分からずいきなり異世界転移。すぐに河童に襲われかけ、助けられたかと思えば「ニンゲンは食材だ」なんて言われて、いつ食べられてしまうかビクビク…。
 そんな中で、人肉を食べさせられて、鬼の肉までも!
 次には繁殖母体として望まないセックスさせられるかと思わされ、ニンゲンの無残な解体も見て…。
 更には、この手で七人のニンゲンを殺した!
 そして自分も内臓を抜かれて串刺しにされた!!
 その上、今、命の恩人の遺体を解体しようとしている……。

 これ、発狂してても、おかしくないですよね!

 泣き叫びながら飛び出しちゃっても、それ普通ですよね!!

 だけど…、だけど……、だけど……。

 イマさんの解体は、私一人では無理です。なので、カリさんが補助してくれます。
 双子のカリさんにとっては、イマさんは同じ顔をした自分の分身と言っても良い存在。いつも一緒に居た、大切なお姉さん。カリさんは、お姉さんの解体を間近で見て、手伝わなければならないのです。
 それを思えば、私が泣きわめいていたり、逃げ出したりだなんてことは許されませんよね……。

 シッカリしなきゃ!!


 横たわるイマさんの遺体。改めて、よく見ます。
 全裸でお腹がザックリ割け、中身が無くなっています。その中身は現在、私のお腹に入っているのですね。本当に、本当に、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 目の前の、青白い顔。でも、なんだか安らかな顔……。

 イマさん。私、精一杯生きますよ。イマさんの分も、精一杯。
イマさんの命、絶対無駄にしませんからね!


 カリさんの指示で、まずお腹と胸に残っている内臓を抜き取ります。
 私に移植されたのはイマさんの小腸と大腸の部分であり、他の臓器はそのままイマさんの中に残っているのです。
 これらの臓物は、御葬儀の際に皆で分けて食べるのだそうです。

 ううう、イマさんの内臓…。ゴメンナサイ、イマさん。ゴメンナサイ……。

 次にするのは、首の切断。ニンゲンの解体でも、やりましたよね…。
上から首に刃物を当て、ゴリゴリ切り離します。

 うううううっ……。ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ……。

 流れ出る涙と鼻水でグシャグシャになりながら、実行……。

 次にすることは…。
 えっ、えええっ! 目玉を抜き出すの?! それから、脳を出す?!
 葬儀では、必要なんですって?!?!
 そ、そんな…イマさんの目玉と脳を出すなんて……。

 え? 無理なら私がやろうかって?

 だ、ダメです! 妹さんにそんな惨いことをさせられません。私がやります!!

 イマさん、ゴメンナサイ! ゴメンナサイ! ゴメンナサイ!

 ゴメンナサイ、ゴメンナサイ……。

 ………。

 と、取り敢えずこれで…。
御葬儀に必要な主要部分の処理が出来ました……。
 カリさんがそれらを容器に入れ、運び出します。ラクッサさんが調理するのだそうです。


 後は体を食べやすいようにバラします。こっちは全て私が食べる分です。
イマさんの遺言なんです。拒否なんてできません。
 でも、一人の鬼さんのお肉、量が多いので一度には食べられません。一日分ずつ小分けし、冷凍保存します。
 手足から肉を削ぎ取り、袋へ入れていきます。お腹の肉、胸の肉、お尻の肉。出来る限り綺麗に削ぎとり、無駄のないように…。
 できたお肉の入った十三の袋。これもカリさんが運び出し、冷凍庫へ。

 最後に残ったのが骨です。
ですが、取り切れなかったお肉がついていますし、この骨もイマさんの一部。絶対無駄には出来ません。
 どうするかというと、煮込んでスープをとるのです。
 骨をハンマーで割って、寸胴っていう大きな鍋に入れて行きます。

 全部入ってしまうと、カリさんが台車に載せて運び出してくれます。
こっちの処理もラクッサさんがしてくれます。とったスープで、葬儀の際の脳や内臓を煮るんだそうです。

 ううう…。兎に角、終わった・・・。

 イマさんの遺体の処理は、こうして完了したのでした。
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