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鬼の仲間として

52 イマの葬儀

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 翌日はイマさんの葬儀です。
 葬儀と言っても、お坊さんが来て読経とか焼香とかってのは、一切ありません。外部からの弔問者というのもありません。
みんなで食堂に集まり、その前に、煮物というか、具だくさんのスープが置かれているのですから、お食事会って感じですね。
 …ただ、置かれているのはイマさんの脳や内臓を煮込んだもの。これをみんなで食べるのです。
 こんなのが葬儀だなんて、もう、非常識過ぎて訳が分かりません。頭が爆発しそうです!

 ああ、キヅミさん、目を真っ赤に腫らしている…。ずっと泣いていたのでしょうね。
 大好きだったイマさんは、目の前の煮込みになってしまっています。それをこれから、食べなければならない。なんと残酷な事でしょう。
 私の所為せいですね。申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 私とリューサさんの目の前には特別にそれぞれ皿が置かれ、丸い球が一つずつ乗っています。イマさんの目玉です。これは主人が食べるんだとか。
 リューサさん、上座から皆を見渡します。

「では、これから勇者イマの体を戴きます。勇者の肉体は我々の中に受け継がれます。スマキダタイ、テエタタヲ『イマ』シャウユ」

「「「スマキダタイ、テエタタヲ『イマ』シャウユ」」」

 皆での唱和。『勇者イマを讃えて頂きます…』という意味です。

 リューサさんがイマさんの目玉を取り、口に入れます。
 私も同じように…。
 弾力があります。思いっ切り噛むとグシャッと潰れて中からドロッとした液体…。
 前にリューサさん、目玉は美味しいって言っていましたけど…。どうなんでしょう?味なんて分かんないや。

 あ、キヅミさんが私をにらんでる。仕方ないよね。恨まれて当然。憎まれて当然です。
ごめんなさい。ごめんなさい……。

 スプーンをとり、煮物を。…内臓のごった煮です。
 これはレバー、肝臓ね。こっちは脳なのかな?脂っぽい。あれ?これは卵巣だ。これも二つしか無いモノだから、私とリューサさんのところに入ってるんでしょうね。
 多分、とっても良い味付け…なんだと思う。
 でも、味なんか全然分かんないよ。私、既に涙と鼻水でグッチャグチャ。

 あ、キズミさんも、けっこう酷い顔ですね。ボロボロ涙を流し、ヒックヒックしゃくりあげながら食べています…。
 あ、カリさんも泣いてるね。
 うん?リューサさんも泣いてるの?
 あ、ラクッサさんも。ナユさんも、え、みんな泣いてるよ……。

 例外なくその場の全員、大量の涙を流しながら、そしてスープの一滴も残さないように綺麗に、食べ切ったのでした。



 何とも奇妙なイマさんの御葬儀が終わって…。私は、完全放心状態です。

 その日から、私の食事は特別メニューとなり、一人だけの個別で。イマさんのお肉を食べなければなりません。調理はラクッサさんに訊きながら私自身でします。

 その後の十三日間は、イマさんを無駄なく食べ切ることに専念しました。他のことは、何も考えず。いや、考えられず……。




 ・・・そして、十三日目…。

 イマさんの最後のお肉は、お尻のお肉。そういえば、最初に食べたのもお尻の肉だって言っていましたかね、イマさん。
 そう、あのソーセージの中身ですね。
 イマさんの笑顔が浮かんできてしまいます……。

 ついに、全てを食べ切りました。

 イマさん、これで良いのですね。私、イマさんの全てを取り込みましたよ!
これから、私と一緒に生きて行きましょうね!
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