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真実と立ち位置
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しおりを挟む「スティブはね、ルカちゃん、君が産まれた直後、君と、ネリーを連れて、ここへ逃げようとしたんだ。その時に、協力を申し出たのが、ロキくん、君のご両親だよ。ロキくんのご両親は、お爺様と共に、レインボーローズの中心で、活動していた。君が産まれたばかりで、スティブと、ネリーの子を、守りたいという気持ちが、強かったんだ。そして、何かあってはいけないと、産まれたばかりのロキくんを、お爺様に預けて、四人と、ルカちゃんで、国を出た。だけれど……。逃げ切れなかった」
キラさんは、何かを決意するように、真っ直ぐに、僕たちを見た。
「ネリーと、ロキくんのご両親は、その場で、大罪人として、処刑された。スティブは、捕らえられ、療養という名で、幽閉された。そして、ルカちゃん……。君は、王族の血を引くもの、そしてハーフであるとして。ロキくんは、国の研究者である、お爺様の孫でありながら、大罪人の子供で、反逆者になる可能性があるとして。一番監視が行き届く、王国孤児院へ送られ、そして今回、利用されたんだ」
「利用、ですか……?」
ルカが、声を絞り出すように聞いた。僕は、驚きと、今までに、感じたことのない恐怖で、何も言えない。
「ルカちゃんは、ハーフであり、スティブの子供だ。ロキくんは、お爺様の孫。つまり、国の重要人物の子供と、孫であるということ。だから、ギア王国は、ヴィーヴル王国に、手を出すつもりはないという、人質という意味で、君たちがここに来ることになったんだよ。そして、二人とも、反逆者になる可能性を、秘めているから……」
キラさんが、ここで、言いずらそうに、言葉を切った。
「でも、ギア王国は、ここに攻撃を……」
ルカの言葉に、キラさんが、頷く。そして、フールさんを見た。
「ギア王国としてはね、君たちという、人質を送って、ヴィーヴル王国に、攻撃する意思はないと、油断させ、リィノを復活させ、リィノを使い、ここへの攻撃を、正当化させるつもりなんだよ。そして、君たちに、もし何かあっても、英雄の子が、自分の使命を果たした、と、美談にするつもりだったんだ」
フールさんの言葉に、僕は、体が、勝手に震えた。
「じゃあ、僕たちは……ギア王国にとって、死んでも良い、存在なんですか……?」
僕の言葉に、フールさんは、何も言わず、悲しそうに、微笑んだだけだった。
「ギア王国は、リィノを目覚めさせ、ここの皆が裏切ったと洗脳して、リィノの怒りを増幅させた。そして、破壊の衝動のまま、リィノは、ここを目指しているはず。その後、ギア王国のロボットが、攻め込むんだろうね。僕は……僕も、レインボーローズも、ブルーローズも、長も……こうなることを想定して、ずっと協力しながら、活動をしていたんだよ」
「リィノさんは、また、宝玉を使って、封印するのですか」
フールさんに向けて、チィが言った。フールさんは、苦しそうに微笑むと、黙って、エミリィさんを見る。
「……リィノは、私の手で殺すよ」
エミリィさんの、強い言葉に、誰も、何も言わない。
「それが、最善だと、私は思っているから。分かるのよ。リィノが、苦しみ続けているのが。解き放って、楽にしてあげる為には、殺すしかないことも。それを、リィノが望んでいることも……それをやらなくてはいけないのが、私だということも」
僕は、スモ爺が死ぬと知った時、エミリィさんが言ってくれたことを、考えていた。誰よりも、エミリィさんを愛したのに、二度と、一緒にいることが、叶わない人……。それが、双子の妹の、リィノさんだったのだ。
二人を引き裂いたのが、人族なんだ。
僕も、ルカも、ずっと、何も言えなかった。
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