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覚悟と懐中時計
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しおりを挟む「それはできませんよ。サポートロボットには、あなたが本当に、国にとって、間違った道に進もうとしているとき、強制的に、止める権利があります」
「チィ……。本当にごめんね。これを入れたら、どうなるか、僕には、分からない。チィの前では、聞くことすら、できなかったから。チィが、止まってしまうかもしれない。本当は、選びたくなんかない。ギア王国は、僕の故郷だし、この国だって大好きだ。それでも、選ばなくてはいけないなら……」
僕は、時計を握りしめると、空いた手で、チィに手を伸ばした。
本来なら、サポートロボットに、手を加える権限があるのは、国だけだ。僕たちには、緊急時用にのみ、権限があるけれど、それは、他のサポートしてくれるロボットが、側にいることが、前提でもある。
だからこそ、チィに手を加えた瞬間、僕は、本物の、反逆者で、大罪人となる。
「ロキ!! 駄目!! もし、チィちゃんが、ロキの手で止まってしまったら、ロキは、一生、自分を責めてしまう!!」
ルカが、叫ぶ声が聞こえた。
僕は、その声に、答えなかった。これは、僕の選んだ、僕の覚悟で、決断だ。ルカが、ノルさんに、魔法の銃を、習っているように。
「チィ、今までありがとう。……チィのことも、大好きだよ」
そう言うと同時に、僕は、素早く、チィを緊急停止させた。そのまま、チィのコアの部分を開く。考えたら、止まってしまいそうで、僕は、勢いのまま、懐中時計を、チィのコアに、埋め込んだ。
何故か、懐中時計は、チィのコアに、ピッタリとはまる。そして、そのまま、カチカチと、鳴り続けていた。
「わっ……!!」
懐中時計の音と共に、突然鳴った、チィの起動音に、僕は、びっくりして、後ずさる。
「ロキくん。覚悟を、したんだね。君の想いは、しっかりと、伝わってきたよ」
気がついたら、フールさんが、側に立っていた。何も答えられない僕に、ふわふわとした笑顔で、フールさんが微笑む。そして、チィを見た。
「さぁ、チィ。そろそろ、起きるんだ」
「はい。もう、起動は、完了しています」
チィが、いつもと変わらない声で、言った。
「ロキ、驚いていますね。当たり前です。私は、チィですよ。ただ、変わったのは、メインコントロールからの、干渉を受け付けなくなったこと。それによって、体内でのエネルギー生産に、問題は出ますが、懐中時計の中にある魔石が、起動しています。なので、問題ありません。そして、プログラムが、少し変わりました。私は、ロキ。あなたの意思にそって、あなたにとって、周りにとって、最適な提案をして、サポートしていきます」
チィの言っている意味が分からなくて、僕は、フールさんを見た。
「ギア王国の、サポートロボットは、国のプログラムにそった、提案をするよね。適正や、その他のデータを元に、答えを出す。だけれど、このプログラムは、ロキくん。君が主体となって、答えを出して、それを元に、チィが動くんだ。主体が、国から、ロキくんになったんだよ。これはね、ロキくんが、自分が主体で、考えられるくらい、覚悟を決めたときに、使えるように、ロキくんのお爺様が、開発したんだ」
「じゃあ、チィとは、今まで通り……」
「今までより、もっと良い関係が、築けると思うな」
ルカが、僕に、抱きついてきた。その目は、涙で濡れている。
「私が言えることじゃないけど……一人で、背負わないでよ……」
ルカの小さな声に、僕は、少し罪悪感が沸いたけれど、後悔はしていなかった。
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