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覚悟と懐中時計
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しおりを挟む「さぁ、時間がありません。エミリィさんと、ライキさんの動きは、ロキと、ルカの、動体視力では、追いつけません。スタウロに、フォローしてもらいながら、私が、指示を出すのが良いでしょう。ロキは、私の指示にそって、スタウロに指示を。それと同時に、ルカの、魔法の銃を支えてください。ルカは、魔力を込めることと、的確に当てることに、集中してください」
「さぁ、もう時間がない。続けよう」
チィの言葉に、誰もが驚いたけれど、フールさんが、僕たちを促したのだった。
夜、魔力をほぼ使い切った、ルカと、体力が、かなり消耗された僕は、くたくたになりながらも、今の気持ちを、正直に、話し合っていた。
「私ね、ずっと、エミリィさんと一緒にいたけれど、エミリィさんは、とても優しい人だと思うの。私に合わせて教えてくれたし、街の人からも慕われている。だけど、どこかいつも寂しそうで……。心を閉ざした、って言葉が、本当にしっくりときたの」
「うん。エミリィさんを、一番愛してくれて、きっとエミリィさんも、誰よりも愛していた、リィノさんを、自分で殺すなんて、辛いだけだと思うんだ。かといって、封印されても、今までと何も変わらないし……。どうしたら良いんだろう」
「ロキ、ルカ、二人にとって、エミリィさんと、リィノさんが、どうなることが、幸せだと思いますか?」
チィの言葉に、僕とルカは、顔を見合わせる。
「それは……。リィノさんの洗脳がとけて、二人が、穏やかに、暮らせることじゃないかと、思うけれど……」
「なるほど。それにはまず、攻めてくる人族を、どうするかが前提となりますが、その問題が解決できたとして、リィノさんの洗脳をとく方法と、破壊の衝動を抑える方法、それから、エミリィさんの、閉じてしまった心が、開くことが重要ですね」
僕とルカは、チィの変化に、驚いてばかりだ。
「人族のデータでは、リィノさんの洗脳をとく、方法は提案できますが、他の方法が、見つけられません。明日、この国の全ての書籍を、インプットさせてもらいます。そこから、方法を探しましょう。時間がないので、朝、早くから動きます。大丈夫ですか?」
チィの言葉に、僕とルカは、しっかりと頷く。
いつだって、チィには助けられてきたけれど、今のチィは、誰よりも、心強かった。
※※※
ギア王国では、国民の緊急避難が行われていた。
緊急事態、ということのみで、国民達は、何故、避難をするか知らされていない。
だが、それを、不信に思う国民もいない。
誰もが、自らのサポートロボットに従い、避難する。
「避難所で行う、新作ゲームを、ピックアップしますね」
「避難所では、息子さんと、この話題をするのが良いでしょう」
「結婚相手の方と、同じ避難所になります。この機会に、お話をしましょう」
サポートロボットたちの言葉を、誰もが疑わない。
それが、間違いがないことを知っているから。
それが、幸せになれる方法だと、信じているから。
そしてそれは、全てが間違っているわけではないから。
「父上は?」
第二王子、セラフィが、ロボットに聞く。
「国王様は、国王の間で、指揮をとられています。しばらくは、誰も近づけさせるなとのことですので、セラフィ様も、お会いすることはできません」
「分かった。そうしよう」
リィノが目覚め、ヴィーヴル王国に攻め込む今、国の内情に、全く目を向けることのない国王。ロボットが、全て上手くやってくれると、信じているからこそ。
セラフィは、レインボーローズに向かう。
「……いつからだろうな。父上が、人のためではなく、自分の為のみに、ロボットを扱うようになってしまったのは」
セラフィのつぶやきは、誰も聞いていなかった。
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