共に生きるため

Emi 松原

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共に生きるため

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夢華は夢を見ていた。
それは、夢華がいつもテレビで見ている都会の町だった。
お洒落な店に沢山の人。かなり華やかだ。
夢華は今の村の暮らしが好きだが、やはり女の子だ。都会に憧れている。
夢華は都会の町を歩いていた。
色々な店を回るのは楽しい。そう思いながら・・・。
しかし、何かが物足りない。
夢華が今まで当たり前のように感じていた事が・・・。
それがなんなのかは分からない。
分からないけど悲しい、辛い、苦しい。
夢華と同じくらいの男の子が居る。
夢華はその子が自分と同じ感情を持っているように感じた。
しかし何かが夢華と違う。何かが・・・。
なぜだろう・・・。
その子に近づこうとした所で、夢華は目が覚めた。


外は明るい。
秋美は一足早く起きていた。春美も起きている。夏美はまだ寝ているようだ。
「おぅ!よく寝れたか?」
朝食を食べていた秋美が夢華に声を掛けた。
「うん、けど、なんだか変な夢見ちゃった。」
椅子に座りながら夢華が言うと、秋美と春美が度肝を抜かれたように目を合わせた。
「夢ちゃんも?」
「えっ・・・?」
「実はあたいらも変な夢を見たんだ。内容は全然違うんだけどな。」
春美が夢華の朝食の準備を終え、席に着いた。
「う~~~ん・・・」
続けて夏美が目を覚ましたようだ。
「ねぇ、今すっごくわけわかんない夢みた・・・」
夏美が寝ぼけ眼で椅子に座りながら言った。
春美が夏美の朝食を持ってこようと立ち上がる。
「夏美も・・・・?」
ホットミルクを口に含みながら夢華が言った。
「・・・・・まさかみんなも・・・?」
「あぁ、あたいは人間界の楠木の下に居たんだ。そしたら、前に,妖精の国に来たことがある女の子が歩いてた。あたいの前を通り過ぎて行こうとしたんだ。けどなんかこっちに来たときと違ってさ。何が違うかって言われてたら困るけど・・・。声を掛けようとするのに声が出ないんだ。足もなぜか動かなかった。」
秋美が話し終えた所で夏美の朝食を持った春美が戻ってきた。
朝食を置くと席に座って話に加わる。
「私は、精霊になって学校で勉強を教えていたの。けど、誰も私の話を聴いてくれなくて・・・一人一人話していったわ。けど、数人の子は何も話してくれないの。同僚っぽい精霊にその事を相談したんだけど、全員を見るなんて無理よ。無理矢理聞き出そうとしたところで攻撃してくるわよ。ほうっておきなさい。自分を守らなきゃ。そう言われたところで目が覚めたわ。」
春美は何かを考えるように少しうつむいた。
朝食を食べながら夏美が話し出した。
「私はさぁ、なんか一生懸命自分の気持ちを伝えようとしてたの。誰にかもわからなかったし、何をかもわからなかったけど。けど、誰も聴いてくれなかった。周りには人が沢山居たんだけどね。最後にはその人達に払いのけられて終わったの。あ~あ、なんか寝た気がしないな。」
夏美が話し終わると三人は夢華の方を向いた。
「で、夢はどんなのを見たんだ?」
夢華は、一つ一つ思い出しながら話していった。
一気に話し終え、みんなの顔を見た。
「なんか、四人ともバラバラの夢なのにまったく違うものでもない気がするんだよね~」
夏美が考えながら言った。
「偶然というより、意図的に見せられたような気がするんだけど・・・」
春美が少し躊躇していたようだが意を決したように言った。
「実は、あたいもそんな気がするんだ。・・・まさか冬美が・・・?」
秋美が春美を見ながら言った。
「そこまではわからない・・・。もう少し私に力があったら分かるんだけど。けど、精霊って感じではないの。そこまでの力は感じないから、妖精だと思う。」
春美が言った。
「春美は、冬美の次ぐらいに能力が高いんじゃないかな?だから、強い力は読みとったりできるんだ。私や秋美もできるけど、細かいところまでは難しいの。」
夏美が説明してくれた。
「そんなことないわよ・・・。」
春美は苦笑いしながら言った。
「とにかく、大精霊様に一応報告しないとね。」
食べ終わった食器を持って立ち上がりながら夏美が言った。

【ドンドン】
その時、ドアをノックする音がした。
夏美は食器を流しにおいて戻ってきた。
「誰?」
そのままドアを開けた。すると麻美が立っていた。
「おはようございます。種子蕾隊緊急連絡があるそうです。至急学校に集まって下さいとのことです。私はまだ連絡があるんで・・・失礼します。」
それだけ言うと麻美は足早に立ち去っていった。
「ちょうどよかったな。行こうぜ。」
秋美が立ち上がった。

四人は学校に行った。
大精霊様、桜、栄枝が部屋に居た。ほかの妖精・精霊達はまだのようだ。
四人はちょうどいいと思い,朝見た夢のことと、妖精に意図的に見せられている感覚があることを大精霊様に伝えた。
「ほぅ、それは誠か・・・ふむ、よく言ってくれたのう。感謝するぞ。」
大精霊様が答えた。
桜は考え込んでいる。
栄枝は、ずっとそわそわしている。
種子蕾隊が集まって来た。有樹が人のチェックをしている。
「全員集まりました。」
有樹が叫んだ。
「さてさて、皆集まったかの。忙しいところすまんのう・・・。実は大変な事がおきたんじゃ。草多が、昨日の夜居なくなったんじゃ。」
大精霊様が全員の前に立って言った。
「場所は何処なんですか?」
驚いたようすの有水が、栄枝のことを気遣ったような目で見ながら聞いた。
「・・・冬美が消えた場所の近くじゃ。栄枝の話では、ずっとそこで手がかりを探していたらしいのう。」
大精霊様が少し沈んだ声で言った。
栄枝は、下を向いている。今すぐにでも探しに行きたいようにずっと貧乏揺すりをしている。
有水が歩いていって、栄枝の肩をポンと叩いた。
「・・・とにかく、草多も探さないといけないのう。じゃが、妖精達はあの場所に一人で近づいてはならん。・・・大人数でもさけるのじゃぞ。」
大精霊様がちらりと秋美達を見ながら言った。
四人は動揺していた。
その後、精霊達を残して妖精達は解散となった。

四人は秋美の家に戻ってきた。
「草多が居なくなるなんて・・・」
春美がため息をつきながら言った。
「あぁ・・・」
秋美が椅子に座って頭を抱えながら言った。
「もう、わけわかんねぇ。あたいらには重要なことはなんも教えてもらえねぇし」
「しょうがないわよ。私たちは自分の気持ちだけで行動してしまう。草多だって・・・。それに私たちは力だって不十分なのよ。」
夏美が何処か空中を見つめながらつぶやいた。
みんな、しばらく黙っていた。
その時、誰かがやって来た気配がした。
「誰だ?」
秋美がそっとドアを開けた。
「あたし。睡蓮。」
少しの隙間から睡蓮が飛び込んできた。
「睡蓮!どうしたの?」
春美が疲れてる様子の睡蓮に急いで飲み物を持ってきた。
「はぁ、はぁ・・・春美ちゃん、ありがとう。」
飲み物を飲みながら、睡蓮がしゃべりだした。
「草多くんが・・・見つかったって。」
「えぇ!?」
一同は唖然とした。
「もう!?何処で!?」
夏美が聞いた。
「なんか、自力で戻ってきたらしいよ。今大精霊様の所にいるからくわしくはわからないけど・・・。怪我なんかはないみたい。」
睡蓮が説明した。
「睡蓮、今から何処に行くんだ?」
秋美が聞いた。
「あたしは、水仙さんと情報収集よ。あたしはちっちゃいから情報収集にはもってこいなの。」
睡蓮が答える。
「じゃあよ、大聖堂に行くんなら草多に、あたいの家に来るように伝えてくれねぇか?」
「別にいいわよ。まぁ、あたしも冬美ちゃんは心配だけど、動揺してるらしいからあんま問いつめないようにね。」
「睡蓮達はどこら辺で情報収集をしてるの?」
夢華が聞いた。
「水仙さんとあたし達水仙さんのチームは、楠木付近で聞き込みをしたり痕跡を探したりしてるの。」
睡蓮が帰ろうと立ち上がりながら言った。
「草多くんには伝えとくから。あなた達も気を付けてね。」
言い終えると睡蓮はまた外に飛び出していった。

【ドンドン】
二時間ほどたったとき、部屋を叩く音がした。
「草多かしら?」
春美がドアを開けると、そこには草多と桜が立っていた。
「桜ねぇさん。なんでここに?」
「話があるからよ。」
桜が少し微笑みながら言った。
「話って?」
夏美が聞いた。
桜と草多は椅子に座り、春美も椅子に座った。
「あなた達に仕事よ。」
唐突に桜が言った。
「仕事?」
秋美が聞き直した。
「えぇ。あなた達は種子蕾隊のメンバーだし、普通の妖精より力があるのにここ数日何も仕事が言われないのは不思議に思わなかった?冬美が消えて動揺しているあなた達を仕事には出せなかったの。それに夢華ちゃんを守ってもらわないといけなかったからね。」
「で、その仕事は何をするんだ?」
「秋美、焦らないで。その前に、草多。貴方が居なくなっていたとき何があったのか、貴方の口から四人に言いたいんでしょう?」
桜が草多を見ながら言った。
ずっとうつむいていた草多が顔を上げた。
四人は草多を見つめた。
ゆっくりと、草多はしゃべりだした。
「栄枝さんとの会議が終わった後、また冬美の痕跡を探しに行ったんだ。そこで、駄目元で冬美に念を送ってみた。俺の力は未熟だし、シャットダウンはされてたんだけど、冬美には一応何かが伝わってるようで・・・。・・いきなり冬美が目の前に現れたんだ。」
「それで!?」
秋美がせかす。
「冬美は、今何が起こってるか教えてくれた。その時、何か呪文をかけてたらしい。探しに来た人たちに、俺達の姿は見えなかったらしいんだ。俺も、探しに来た人の姿は見えなかったし声も聞こえなかった。・・・冬美が言うには、今色々やらかしてるのは、ジェネレーション《再生》っていう名前で主に陰の妖精を主体とした集まりらしい。まぁそんなことはみんなわかってんだけど。その目的は・・・。」
「目的は?」
夏美が待ちきれないように言った。
「人間を・・・この世から抹消することらしい・・・。」
「・・・・・えぇ?・・・・じゃあ・・・ってことは・・・みんなどうなるの!?私は・・・人間の世界に居る私の家族や友達は・・・。」
夢華が言った。
「・・・・・」
「冬美の様子はどうなの?」
押し黙ってしまった草多を気遣うように春美が聞いた。
「なんか・・・無理矢理連れて行かれたんじゃないみたいだった。自分から行ったみたいだ。向こうで何かされてるわけでもないらしい。けど、俺にこんな情報を教えてくれた。正直、どっちの味方なのかも、何を考えてるのかもわからねぇ・・。」
草多がまた下を向いた。
「俺には、連れ戻せなかった・・・。」
草多がそうつぶやくと、一同は黙り込んだ。
夢華は焦っていた。人間界のみんなが危ない・・・の・・・・。
「とにかく、ジェネレーションを止めなくてはいけません。人間や異世界の生物にに危害を加えた者はこの世界で一番の重罪になります。最悪冬美も・・・。そうなる前になんとか止めなくては。」
桜がキッっと目をつり上げて言った。
「どうするんだ?」
秋美が待ちきれないように聞いた。
「取り合えず何人かメンバーの調べは付いてるから、その子達から情報を聞き出して、完璧に分かった所でやつらのアジトに突入するわ。・・・間に合えばいいけど、妖精達の安全も大事だし、もし突入する情報が向こうにばれてしまったら・・・。それなのに突入なんてしたら,返り討ちなんて事になりかねないからね。・・・その突入に能力が高い種子蕾隊のあなた達妖精も組み込もうという話が出ているの。草多も・・・。海起はもう決定してるわ。どうする?これは危険だから、妖精は強制ではない。けど何かしら仕事はすることになるわ。・・・睡蓮のように裏方でもいいのよ?突入だって私は精霊がやるべきだと思うけど・・・・。ほかの重要な仕事もあるから難しくて・・・。」
桜は全員を見据えながら言った。桜には、春美・夏美・秋美・草多は何を言っても来ると分かっていた。しかし大事な若いメンバーだ。危険な目に遭わせたくないのが本音だった。だが、そうなると今情報収集や探索の任務に出ている蒲公英や水仙、蜜柑に有水に栄枝・・・そのほか精霊の仲間達のことはどうなるのか・・・。      
そんな複雑な気持ちが交錯していた。

「あたいらが断るとでも思ってんのか?」
秋美がニカッと笑いながら親指を突き上げた。
「そうそう。そんな一番おいしい役、逃すわけないじゃない。」
夏美も笑っている。
「私たちは、冬美も含めて四人で四季の妖精よ。下に引き継ぐまでは、誰も抜けさせないわ。」
春美が桜を真っ直ぐ見ながら、そして口元に笑みを浮かべながら言った。
「俺は・・・冬美が居なくなるなんて嫌だ。想いが届かなくたっていいんだ。あの笑顔さえ戻ってくれば。」
草多も覚悟を決めたように言った。
夢華は初めて草多の本音を聞いた気がした。
そして、夢華も桜・みんなを見つめながら言った。
「桜さん、私はきっと連れて行けないと言われるでしょう。けど、私も連れて行ってください。前にも言いましたが、何もできないし、役にも立てないけど・・・。けど、もう私だって巻き込まれてるんです。それに人間も関係してます。私だけ、守られて,待ってるなんて嫌です。結局は守ってもらうけど・・・けど・・・私、秋美達も、人間界に居る友達や家族も大好きです。両方を救いたい。何かしたいんです。」
夢華が言い終えると、桜以外は微笑んだ。
「夢、何言ってんだ。夢が居なかったら、あたいはどうなってたか。役に立ってない奴なんかここにいねぇよ。あたいらを思ってくれるその気持ちが、一番の力になるんじゃねぇの?みんな一緒さ。」
秋美が合い変わらずニカッとしながら夢華に言った。
春美・夏美・草多も頷いた。
桜が夢華の肩に手を置きながら言った。
「・・・あなたも何を言っても来ると思っていましたよ。秋美が言うように、あなたが秋美達を思う気持ちが、一番役に立つんですよ。いえ、役に立つなんて言葉はありません。役に立つとは、能力や力なんてものではありません。誰かのために何かをしようという心こそが皆を守ることに繋がるのです。」
夢華はその言葉を聞いて、スッと心が楽になっていることを感じていた。
私は何もできない。ここに来てからいつも思っていた。
何かしたい。
ずっと考えていた。
しかし、何かしたいその気持ちが、何かしようとする心が,そして,その気持ちを伝えようとする一歩の勇気が,どんなものよりも必要な物だったのだ。
夢華は力強く頷いた。
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