共に生きるため

Emi 松原

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共に生きるため

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「学生時代,よく二人で喧嘩しては怒られてたわね。」
夏美が言った。
再雪は無言だ。
ちらりとだけ再雪を見て,夏美は話を再会した。
「けど,仕事をするようになってからはなかなか会えなかったし,夏の仕事と冬の仕事じゃ真反対の時間だったもんね~」
「そんなこと話しててもいいの?私は敵よ?」
再雪が言った。しかし立ち上がることもかまえることもせずただ座っている。
「あんたも私も戦うかまえをしていない今は・・・・ただの友達よ。」
さらりと夏美が言った。
「あんたさぁ,なんでジェネレーションに?」
「そっちこそ,なんで人間を守ろうとする種子蕾隊なんかに?」
お互いに顔を見合わせた。
しばらく見つめ合った後,夏美が話し始めた。
「初めて,友達が人間界で死んだ時のこと覚えてるでしょ?学校を卒業したすぐ後。私はまだ研修中だったな~。練習してたら,いきなり桜さんが来てさ。この間まで学校で一緒に遊んでたはずの友達が死んだとか言うんだもん。マジあせっちゃった。」
再雪がかすかに頷いた。
「泣いて,泣いて,乗り越えた・・・って思ったら何人も友達やら先輩やらが死んでってさ・・・。私たちは人間と共存する気満々なのにね。なんでこんな悲しい事ばっかおこっちゃうんだろうって,そう思った。」
こんどははっきりと再雪は頷いた。そして,静かに話し出した。
「数ヶ月前ね,初めて,後輩が死んだんだ。」
夏美は黙って再雪を見つめながら聞いている。
「なんでも考えなしに飛び込んでいくやつでさぁ。人間に手出しできないし,どうせ自然も壊されるんだから逃げりゃあいいのに。生きてればまた・・・・。けどほかの死んでった奴らと同様に最後まで持ち場を離れなかった。」
再雪も夏美を見つめた。
「・・・なんでこんなことになったんだろうね。水も,木も,何千年も妖精達と人間達と生きてきた。花は短い一時を妖精・人間と過ごし,枯れる前に種になり,また一から同じ妖精や新しい妖精と過ごしてきた。人間達を慰めながら。私たちは冬になったら雪を人間達に降り注ぎ,氷の妖精によって雪と水が氷になり,それを人間が使って共存してたよね。」
再雪の言葉に夏美が大きく頷いた。
「もう,誰も妖精に死んでほしくないんだよ。その気持ちは分かるでしょ?」
「もちろん」
「じゃあ人間は死んでもいいのなんて質問はやめてよ。」
「分かってるわよ,あんただって辛いことくらい。」
夏美が微笑んだ。そしてまた話し始めた。
「私さ,もう一度人間とちゃんと共存したいんだ。昔も妖精が見えない人の方がいっぱいだったよね。けど,それに負けないくらい共存できる人が居た。今はほとんど居ない。悲しいけど・・・。それでもまだ,ゼロじゃないじゃない。」
「共存なんて,もう・・・」
再雪が何か言いかけたが,夏美が話を続けた。
「本当にゼロになるまで,諦めたくないんだ。たとえ私たちが見えなくても,自然を守ろうとしてくれる人だって一人くらい居ると思うから。」
夏美が言い終えると,再雪がほほえんだ。
「もう,遅いと思うわよ。人間は,自らまいた種のせいで自然をなくし自滅するのよ。」
「人間が一人も居なくなるまで,自滅したとは思いたくないんだ。」
二人はお互いを見てまた笑い合った。
「本当に,私たちって一回も意見があったことないよね」
夏美が立ち上がりながら言った。
再雪も立ち上がった。
「どうしようか?」
再雪が聞いた。
「そうね,殺し合いでもする?」
夏美が冗談交じりに言った。
「・・・念のため言っておくけど,ジェネレーションのメンバーは全員,口では殺すって言って手加減もしてないけど本気で妖精を殺す気なんかないのよ。殺したくないからって全員,相手が死にかけた瞬間捕らえるつもりなんだから。鈴蘭も,水湖さんも,大樹さんもね。・・・人間は別だけど。」
「それなら,安心して戦えるわね。」
二人は軽く微笑んだ。
「ジェネレーションに来てくれたら戦わなくていいのに。」
「種子蕾隊に戻ってくれたら戦わなくていいのに。」
二人は同時にかまえた。
「まったく・・・結局こうなるのか。それじゃ,手加減しないわよ。」
夏美が今度こそ本当に呪文を唱え始めた。
「私だって。」
再雪も呪文を唱え始めた。

戦いが,始まった。


有水達一行は北部へと進んでいた。

「変だな,夏美と別れてから一度も戦いの音が聞こえない。」
有水が言った。
「まさか,戦ってないなんて・・・。」
蒲公英が相づちをうった。
「あり得ないこともないかもな。あの二人は同期だし。」
そう言いながら有水が立ち止まった。
そして後ろを振り向いた。
「誰も,追ってこないな・・・。」
そう言うと,また進み始めた。
「増援部隊と一緒に来るわよ。」
蒲公英が後ろからささやいた。
「もう誰もいないのか?」
秋美が有水に聞いた。
「さぁ,どうだろうな。もうすぐ集会所なのに、誰も居ないなんて・・・。氷河は俺たちが来ることを知らないはず。・・・冬美が言ってなければな。」
有水が前を向いたまま言った。

夢華はそんな会話を聞きながら緊張していた。

人間の男の子が居る。夢華が必ず必要となる。

そんな大精霊様の言葉を思い出していた。
(私に,何ができるかしら?)
そう考えていた。
「けど,おかしな話だよな。ジェネレーションに居る人間の子供って,妖精が見えるからこの世界に来れたんだろ?ッてことは本当に純粋な心を持ってるはずなのに,人間を抹消しようなんてさ。」
秋美が夢華に話しかけた。
「うん・・・。いったい何でなんだろう。同じ人間として,何ができるかな?」
夢華が首をかしげた。
すると蒲公英が振り向いて立ち止まった。
有水,夢華達もつられて立ち止まった。
「私の考えだけど・・・。その男の子も,ジェネレーションのメンバーと同じじゃないかしら。純粋な心に傷を負ってるだけなんじゃないのかな?」
蒲公英が夢華の目を見つめていった。
「そうだな。確かに考えてることはいけないことだけど,完全に否定だけはしないでやってくれないかな。助けられるものなら,助けたいんだ。その男の子も,氷河も,冬美も・・・。・・・こんな事言うなんて俺は隊長失格かもな。」
有水が少しほほえんだ。
夢華は静かに頷いた。

残り三十七時間の時だった・・・。

目の前に,集会所が見えた。
「予定時間より大分早く着いたな。人間抹殺実行の時間までまだ三十七時間もある。」
有水がいったん立ち止まって言った。
「そうね,でも,油断は禁物よ。」
蒲公英も有水の隣で立ち止まった。
「よっしゃ!!んじゃあさっそく行こうぜ!!!!」
秋美が明るく進み出た。
「大丈夫か??」
草多が夢華に問いかけた。
「うん。大丈夫!」
夢華も少し笑って答えた。
「何が起こるか分からないから,気を付けるんだぞ。」
有水はそう言うと,集会所に向かって歩き始めた。

一行は集会所の前に立った。集会所の隣には、冬美が移したと思われる人間界のゲート、楠木が立っている。

「やはり」
有水がつぶやいた。
「上等!」
秋美が夢華の前で意気込んでいる。
「じゃあ,行くぞ!!!」
有水の声と共に,集会所のドアが一気に開かれた。
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