共に生きるため

Emi 松原

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共に生きるため

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「とにかく,誰かが人間界に行って抹殺部隊を止めないと・・・・。」
蒲公英が有水にささやいた。
「あぁ,そうだな。」
有水が相づちをうったその時。

【ヒュッツ】
                                                      
微かな音がしたと思った瞬間,夢華の体に植物のつるが巻き付いた。
有水と秋美が助けようとしたが間に合わない。
夢華は,一気に氷河達の元へ引き寄せられた。

「てめぇぇ!!夢華になにしやがるんだ!!!返せ!夢華に手を出して見ろ!!!てめぇらみんな・・・・・・!!」
叫ぶ秋美を有水が止めた。

つるで夢華を引き寄せたのは,睡蓮だった。

「手荒なまねしてごめんなさいね~けど安心して。貴方を殺す気なんてないから。」
睡蓮が夢華に向かって言った。
夢華は無言で睡蓮を見つめた。そして秋美に視線を戻す。

「夢華は何も悪くない。離すんだ,氷河。」
有水が氷河に鋭い目をして言った。
「この二人の人間には,見物人になってもらおうと思ってよ。」
氷河がニヤリと笑って言った。
「見物人だと!?」
「そう。人間界がめちゃくちゃになる姿を・・・」
「このやろー!!」
秋美が飛びかかろうとしたが,蒲公英に止められた。
「氷河・・・。お前,本当に人間を抹殺することが目的なのか?俺には別の目的があるように思えてならない。」
「ふん・・・なんでそう思った?」
氷河がニヤリと笑いながら言った。
「なんでだろうな。俺はお前の親友だからかな。」
有水もニヤリと笑った。
「あぁ・・よくわかったな。俺と冬美の目的は,人間抹殺なんかじゃねぇ。再生だ。」
氷河が夢華と人間の男の子をちらりと見て言った。
「再生・・・?」
「そうだ。こいつらのように,俺達のみえる本当に純粋な心を持った人間や自然を残そうとする人間,近代とは離れた田舎の人間を残し,心のすさんだ人間達,自然にとって邪魔になるビルや道路など近代的な物を消す。そして再生〈ジェネレーション〉させるんだ。この世界を。人間と,妖精が傷つけ合うことなく自然の中で生きられるように・・・。もっとも,自然を残そうとする人間にも心のすさんだ奴が多いけどな。」
氷河が笑いながらいった。
「つまり,貴方の両親や友達は大丈夫ってことよ。」
睡蓮が,夢華に言った。

夢華は何も言わなかった。
氷河は人間を抹殺しようとしている悪い奴ではないのか・・・。
確かに有水さんは氷河さんをずっとかばっていた。けどそれは親友だから・・・。
氷河も,妖精達を守ろうとしているだけなの?
それも人間達だって,すべてを殺そうとしているのでない。
私の両親や,道哉はかなり田舎の人間だから,被害にあうことはないだろう。

様々な思いが,夢華を駆けめぐる。

確かに,今人間のせいで自然はなくなりそして自分たちを危機におとしいれている。
氷河の言うとおり,そんな人間達がいなくなったら,みんな夢華達が暮らしてきたように自然と暮らしていけるのではないだろうか・・・。そうすれば,妖精達だって殺されることは・・・。

夢華は段々と氷河の言うようにしたらみんな幸せになれるんじゃないかと思い始めた。
殺される人間は心のすさんだ人間・・・・・。けど,本当にそれでいいの?

自問自答を繰り返す。

「そんなこと,ぜってーーにさせねーぞ!!」
秋美の声で,夢華は我に返った。
そして真っ直ぐに秋美を見つめる。
秋美は続けた。
「確かに,あたいらにとって害のない人間だけになったら,誰も傷つかないかもしれない。けどそんなの意味ねぇんだよ!!そんなんで解決しても,幸せになんてなれないんだ!!どんなに心のすさんだ人間だって,生きてるんだよ!!命があるんだよ!家族が,友達がいるんだ!!!誰かの命を犠牲になんかできねぇんだよ!!」
「そんなことない!!」
秋美の言葉をさえぎったのは,あの人間の男の子だった。
「そんなこと・・・・・ない・・・。」
男の子は立ち上がった。そして,ゆっくりと話し出した。
「今の人間の社会なんて・・・家族,友達なんてみんな名だけ。心は本物じゃない。親に愛されるためには,勉強して偏差値を上げて,良い学校に入らなければいけない。親の理想をかなえないと愛されない。テストの点が下がったら落胆されて,遊んだらどなられて,たたかれて。なんのために勉強するのかも分からなくて。
・・・・友達だって。ずっと友達でいたのに,本格的に受験組と受験しない組に別れた瞬間友達でいられなくなった。受験組の友達も,誰かをけ落として自分が上に上がろうとしている・・・。どうやったら騙されないか。どうやったら生き残れるか。そればっかり考えている。愛なんて・・・・・。ない・・・・・。そんな人間なんか,もういらない・・・。俺だって・・・。」

男の子は涙を流していた。

「妖精って・・・本当にいいよな・・・。ありのままでみんなに愛される。喧嘩したって,自分の思いを思いっきりぶつけて仲直りできる。陰湿なことなんてない・・・。氷河さんや冬美さんのように,社会から背いたことをしているのにもかかわらず,命をかけて信じてくれている友達がいる・・・・。地位で友達を選ばなくていい・・・。」

「なぜ・・・受験するしないで友達でいられなくなるの??友達に,そんなの関係ないじゃない。」
夢華が口を開いた。
「・・・僕だって,そう思ってた。初めは,周りのみんなもそう思ってた。けど・・・・・・。遊んでる友達を見たらイライラして,嫌み言ってしまって・・・。みんなも受験する奴はとかしない奴はとかって・・・。僕は親のいいなりになってるのかもしれない。けど・・・けど・・・・・・。」
夢華は,この男の子ともっとゆっくり話がしたいと思っていた。
蒲公英の言ったとおり,この男の子も心に傷をおっているだけだったのだ。

「さて・・・そろそろいくかな。」
氷河が立ち上がった。冬美もそれに続く。
そして冬美は,夢華と男の子に向かって何か呪文を唱えた。
夢華には理解できない言葉だった。

「冬美・・・お前,そんな高度な呪文いつのまに・・・。」
秋美が言った。
「これは,しばらくの間人間界に行っても夢華達の姿が見えなくなる呪文よ。安心して,体に害はないから。」
冬美が夢華と男の子に向かって言った。
そして秋美達に向き直る。
「私が夢華と一緒に行く。約束するわ,夢華に害はなさない。」
「んなこと聞いてんじゃねーよ!!」
秋美が叫ぶ。
氷河が,ささやくように呪文を唱えていた。
「大地の神,月の神よ,我の声を聞き賜え。我が敵の,周りを囲む白き壁。一時の,時を我らに与え賜え。氷使わし我の名は,凍える寒さ,氷河なる。」

地面から,氷の壁が秋美達を取り囲んだ。
色は白く,雪の固まりのようだ。

「俺達の呪文じゃこの壁はやぶれない!上に飛ぶぞ!!」
有水のかけ声で,秋美達は一斉に飛び上がった。
氷の壁の上に着地する。
秋美が下を見ると,そこに夢華と男の子,冬美の姿はなかった。
氷河と睡蓮が,秋美達を見上げていた。

「俺が追います。」
草多が有水にささやいた。
有水が無言で頷く。
「あたいも行くぜ!!」
秋美が言った。
蒲公英が,呪文を唱えた。
「大地の神,太陽の神よ,我の声を聞き賜え。暖かい,日の光をあび散る花びらよ。我が敵惑わせ眠りに誘う。花使わし我の名は,風乗る綿毛,蒲公英なる!!」
氷河と睡蓮の頭上に,色とりどりの花びらが舞い落ちる。
「行くんだ!!」
有水が秋美と草多に向かって言った。
二人は出口に向かって走り出した。
後ろから,植物のツルが伸びてくる。
夢華を捕らえた物と同じだ。
有水がいち早く対応し,ツルをはじき返す。
すると有水と蒲公英の正面に向かって氷のナイフが幾多も飛んできた。
蒲公英と有水がはじき返そうと気を取られた瞬間,ツルが二人の背後に伸びる。
草多が振り返り,ツルをはじき返した。そのまま秋美に向かって伸びるツルをはじき返そうと秋美の背後にかまえる。
「草多!」
秋美が叫ぶ。
「行け!」
草多がツルをはじき返しながら秋美に向かって叫んだ。
秋美は前を向き,外に飛び出していった。
氷のナイフが,草多にも迫る。
草多は横にかわしたが,よけた瞬間足にツルが巻き付いた。
素早く呪文を唱えてツルを切り裂く。
草多の目の前に,水の壁が吹き上がった。
敵と有水達が見えなくなる。
有水の声が聞こえてきた。                     
「草多!!!!行け!!!!!!!」
草多はそのまま入り口に向かって走った。
水の音と,激しい戦いの音を聞きながら・・・。

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