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「それではどうぞ召し上がって下さい」
「俺利き手が使えないんだけど?」
「はい、そうですね……」
嫌な予感がする……
「そこは普通食べさせるのが定石じゃないか?」
やはりそう来たかっ!
食べやすいようにとわざわざ箸を使わない料理にし、ちゃんとスプーンを置いたのに、目の前の男は加奈が食べさせてくれるのを待っているようだ。介護なのだが……加奈にとってはもはや罰ゲームとしか思えなかった。
「さっさとしろよ。腹減ってんだ」
「わ、わかりましたよ!」
仕方なくスプーンにオムライスを一口大すくい上げ、それを明人の口元まで持って行ったが、明人は口を開けようとしない。
「あの、食べないんですか?」
「あーんとか言わないわけ?」
「そんな事いちいち言いません!早くして下さい!手が疲れます……」
仕方ないなぁ……と呟いた明人は、スプーンに乗ったオムライスを口に含んだ。
(何が仕方ないんだよぉ!)
一人心の中で葛藤する加奈だったが、今日出会って初めて明人の笑顔を見る事が出来た。
「美味いな。あんた腕いいよ」
「あ、ありがとうございます……」
まるで子供のような笑顔を見せる明人に、加奈はどう対応していいものか戸惑ってしまった。とりあえず変な事は考えず、目の前の作業に集中しよう!そう言い聞かせ、明人に「食べさせる」という作業を終えた加奈は、すっかり冷えたオムライスを食べた。
その後は風呂掃除をし、湯を溜め、その間に食器を片づけたりして、ようやく一息つけると思った。……のも束の間だった。
「おい!風呂入るぞ!」
「は、はいぃ?何言ってるんですか!」
「身体はまだしも、髪は洗いにくい。あんたの仕事だ」
相手に怪我を負わせた代償とは、こんな罰ゲームにも似た代償なのか?痛くなりそうな頭を抱え、加奈はどうしたものかと考えたが、考える暇など正直なかった。
「ほら、さっさとしろ!」
手をグイッと引っ張られ、そのまま脱衣所に連れ込まれた加奈は、もう覚悟を決めるしかないと思った。明人はというと自由の利く左手で器用に服を脱いでいく。
「わ、わかりましたから、とりあえずタオルで隠して下さい!」
相手がポイポイ服を脱いでいくのを黙っているわけにもいかない。うわっ!となった加奈は後ろを向いてタオルを差し出した。恥ずかしい……
「俺は全然見られても構わないぞ」
「私は全然構わなくないです!いいからタオルだけはちゃんとして下さい!」
男性免疫力が皆無な加奈にとって、この羞恥がこの後一か月も続くのかと思うと、やっていく自信が加奈にはまったくなかった。
何かあってはいけない!浴室に入った加奈は、手元にシャンプーとシャワーを置き、自分の目にタオルを巻き、万が一何があっても大丈夫なようにした。
「なんで服脱がないんだ?てか何そのタオル……」
「万が一に備えての防御です。そして服は脱ぎません!」
「まっ、別いいか。そういうプレイもあるしな」
「プレイ?ここはそういうお店じゃないですっ!」
冗談じゃない!
そう思いながら明人の髪を洗髪する加奈。意外にもサラサラなその髪をわしわしと勢いよく洗っていく。
「あのさ、痛いんだけど……」
「大丈夫です!頭皮の血行よくしてるんですから!」
「俺利き手が使えないんだけど?」
「はい、そうですね……」
嫌な予感がする……
「そこは普通食べさせるのが定石じゃないか?」
やはりそう来たかっ!
食べやすいようにとわざわざ箸を使わない料理にし、ちゃんとスプーンを置いたのに、目の前の男は加奈が食べさせてくれるのを待っているようだ。介護なのだが……加奈にとってはもはや罰ゲームとしか思えなかった。
「さっさとしろよ。腹減ってんだ」
「わ、わかりましたよ!」
仕方なくスプーンにオムライスを一口大すくい上げ、それを明人の口元まで持って行ったが、明人は口を開けようとしない。
「あの、食べないんですか?」
「あーんとか言わないわけ?」
「そんな事いちいち言いません!早くして下さい!手が疲れます……」
仕方ないなぁ……と呟いた明人は、スプーンに乗ったオムライスを口に含んだ。
(何が仕方ないんだよぉ!)
一人心の中で葛藤する加奈だったが、今日出会って初めて明人の笑顔を見る事が出来た。
「美味いな。あんた腕いいよ」
「あ、ありがとうございます……」
まるで子供のような笑顔を見せる明人に、加奈はどう対応していいものか戸惑ってしまった。とりあえず変な事は考えず、目の前の作業に集中しよう!そう言い聞かせ、明人に「食べさせる」という作業を終えた加奈は、すっかり冷えたオムライスを食べた。
その後は風呂掃除をし、湯を溜め、その間に食器を片づけたりして、ようやく一息つけると思った。……のも束の間だった。
「おい!風呂入るぞ!」
「は、はいぃ?何言ってるんですか!」
「身体はまだしも、髪は洗いにくい。あんたの仕事だ」
相手に怪我を負わせた代償とは、こんな罰ゲームにも似た代償なのか?痛くなりそうな頭を抱え、加奈はどうしたものかと考えたが、考える暇など正直なかった。
「ほら、さっさとしろ!」
手をグイッと引っ張られ、そのまま脱衣所に連れ込まれた加奈は、もう覚悟を決めるしかないと思った。明人はというと自由の利く左手で器用に服を脱いでいく。
「わ、わかりましたから、とりあえずタオルで隠して下さい!」
相手がポイポイ服を脱いでいくのを黙っているわけにもいかない。うわっ!となった加奈は後ろを向いてタオルを差し出した。恥ずかしい……
「俺は全然見られても構わないぞ」
「私は全然構わなくないです!いいからタオルだけはちゃんとして下さい!」
男性免疫力が皆無な加奈にとって、この羞恥がこの後一か月も続くのかと思うと、やっていく自信が加奈にはまったくなかった。
何かあってはいけない!浴室に入った加奈は、手元にシャンプーとシャワーを置き、自分の目にタオルを巻き、万が一何があっても大丈夫なようにした。
「なんで服脱がないんだ?てか何そのタオル……」
「万が一に備えての防御です。そして服は脱ぎません!」
「まっ、別いいか。そういうプレイもあるしな」
「プレイ?ここはそういうお店じゃないですっ!」
冗談じゃない!
そう思いながら明人の髪を洗髪する加奈。意外にもサラサラなその髪をわしわしと勢いよく洗っていく。
「あのさ、痛いんだけど……」
「大丈夫です!頭皮の血行よくしてるんですから!」
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