王様のいいなり!

まぁ

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 驚く川田の横で、加奈はとても恥ずかしそうにしていた。
 加奈が入社した歓迎会の二次会でカラオケに連れて行かれたのがきっかけだった。他の人達が盛り上がる曲を熱唱する中、加奈だけはおじさん好みの演歌を大熱唱。それが好評化を得たというわけだが……
「それじゃ、霧島さんの演歌を案に……」
「ちょっと待ってよ!川田君何もしてないじゃない!」
「俺は総合司会って事で!」
「ずるい。こういう時、川田君はそのかわいらしい容姿を生かして女装して女の子の曲歌わないと!」
「えぇ!いきなりなんですか!」
「おぉ!いいじゃないか!なら川田は女装で霧島は演歌っと、後はしっかり内容詰めろよ」
 ははははと笑いながら去っていく上司。決定事項となってしまった事に、川田は困惑した様子だった。加奈は自分一人が笑いのネタにならなくてよかったと思った。
「上司命令じゃ仕方ないよね!って事で頑張ろうね!」
「うぅ、俺が女装……」
「大丈夫!大変身には女子社員の中から精鋭部隊揃えてメイクアップしてもらうようにするから!」
「……わかりました!でも霧島さん!」
「な、何?」
「この際女装だろうとなんだろうとやりますよ。けど、旅行中に二人っきりになってくれるって約束して下さいね」
 そんな約束出来るわけない……とは言えなかったが、旅行に明人はいない。知られる事もないのだから大丈夫だろうと加奈は「わかった」と頷いた。


「はぁ?社員旅行?」
 マンションに戻り、社員旅行がある事を明人に告げると、盛大に眉をしかめ不機嫌そうになった。
「いや、二年連続黒字達成祝いとかで……強制参加なわけですよ。だから明人が反対しても行かなくては、社会人として…」
「それはわかった。で?いつでどこだ?」
「七月の後半で、場所は……」
 やたらと細かく聞かれた加奈は、さすがに川田との事は言えないので黙っておいた。明人もそこについては何も聞いてこなかったのでホッとした。
「それにしても、羽振りのいい話だな」
「まぁ、そこは会社の事情で……」
「まっ、楽しんで来ればいいだろう」
 ん?今楽しんで来いと言わなかったか?あの独占欲の塊のような男が文句一つ言わず。なんだか信じられない加奈は、不思議そうな表情で明人を見た。するとそれに気が付いた明人が眉をしかめて加奈を見た。
「なんだよ」
「いや、あんたの事だから、なんとしてでも阻止!意地でも行くなって言うかと思った」
「会社の強制参加旅行だろ?俺に止める権利はないぞ。なんだ?もしかして止めて欲しかったのか?」
「全然!むしろ楽しみだなぁ!社員旅行」
 そう軽口を叩いたが、明人は不気味なほどなにも言わない。むしろ小気味良い程に笑っている。その意味が何か、社員旅行ではっきりとわかる事になるのだが……
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