王様のいいなり!

まぁ

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 詩織の部屋を後にした加奈は、ホテルのラウンジをぶらぶらと歩いた。すると茫然としながら外を見る川田と遭遇したのだ。川田の方は加奈に気が付くと気まずそうな表情をした。それは加奈も同じだった。
「あの川田君……」
「霧島さん昨日は、本当にすみませんでした!」
「えっ?い、いや……」
 いきなり頭を下げた川田に、「大丈夫だから頭上げて」と言った。二人の間に気まずい空気が立ち込める。だがここで出会ったのも何かの縁だ。加奈は先ほどの詩織の言葉を思い返した。
「あのね川田君……」
「何ですか?」
「こんな事言うのも何だけど。昨日の事は気にしないでいいよ。てか、変にあおり食らったのは川田君の方だと思うし……」
「霧島さんってこういう時にまで優しいんですね……」
 優しいのだろうか?むしろ明人が勝手に腹を立て川田を殴った。もっと紐解けば加奈と明人は付き合ってないのだから、加奈が何をされても明人に怒る権利はないはずだ。
「実はねその……」
「どうしたんですか?」
「私、川田君と付き合ってみようと思うの!」
 真剣な表情で川田に言うと、川田は驚いたような表情を見せた。それもそうだろう……
「あっ、いや……あの、ホントに明人とは付き合ってないっていうか、お試しであって……てかそれを退けても本当に川田君と付き合うつもりでいたし」
 自分でも何を言ってるのかわからなかった。だが川田は何も言わず加奈を抱きしめた。抱きしめられた腕からは川田の優しさが伝わってくるような感覚がした。
「嬉しいです!それが嘘でも」
「いや、嘘じゃなくて……うぅん。正直まだちゃんと川田君の事を好きとか認識してないけど、嫌いじゃないの。だから、ちゃんと好きになるのは待って欲しいっていうか……」
「それでもいいです。俺、霧島さんの事振り向かせる自身も、幸せにする自身もありますから!」
 加奈を抱きしめる腕を緩めた川田は、満面の笑みを見せた。なんだか心がほっこりとする。
「ごめんね。ずっと保留にしておきながらまだ優柔不断な状態で……」
「いいです。待ちます」
 でも、と言って川田は加奈に言葉を綴った。それは明人のマンションを出てもう、関わらないようにとの事だった。それはわかっている。この旅行から戻れば加奈は明人の元を去るつもりでいた。川田と付き合うと決めたのに、いつまでも明人の家にいるわけにはいかない。そんな不誠実な事は出来ない。
「これからよろしくお願いします!」
「こ、こちらこそ」
 これでよかったのだ。ようやく前に進める。そんな気がした。
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