十年目の恋情

まぁ

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 スッと俺の下半身を撫でた伊織の手にピクリと反応した。いや、正確にはその前から反応していたであろう俺の下半身。全然気が付かなかった。
「このままじゃ辛いんじゃない?」
「あっ……っ!触るな……」
 あくまでも撫でる程度の伊織の手。なんだかそれがもどかしい。むしろ一度ならず二度も、伊織に……男相手に反応するとは思いもしなかった。俺の愚息は本当にだらしない!
「また抜いてあげようか?」
「そんな事しなくていい!収まるまで待つから!」
「いいの?」
「お、おう!」
「わかった」
 潔く俺の下半身から手を引いた伊織は、俺の首筋に顔を埋めたまま寝る。
 伊織の匂いが鼻腔をくすぐり、温かな吐息が肌に刺さる。これでは俺の愚息が落ち着きを取り戻しそうにない。こいつ……こうなる事わかってたな。なんだか腹立たしい。
「どうしたの?寝ないの?」
 俺の事など露知らず、こんな風にした伊織はしれっと聞いてきた。
「寝るよ!」
「うん。おやすみ」
 そう言って完全に寝る体制に入り始めた伊織。これじゃ眠れそうにない。どうしたものか……しばらく俺は心を無心にしようとしたが、背後の伊織がそうさせない。こうなっているのに収まるのを待つというなんとも言えない状況で俺は当然眠れるわけもなかった。
「お、おい……伊織?」
「何?」
 まだ寝ていなかったようだ。伊織が俺の声に反応したが、俺は言葉を紡げずそのまま黙っていた。すると伊織の手が俺の下半身に再び伸びてきた。
「辛いんでしょ?」
「んっ……!」
「正直に言えば抜いてあげるのに」
「あのなぁ……そう思うなら俺から離れてくれ」
「この状況じゃ難しいでしょ」
「でもっ!あぁ!」
 上へ下へと撫でるようにして伊織の手が動いた。そうされる度に身体がゾクゾクとしてくる。
「男の生理現象なんて珍しいものでもないし、こうなったら処理した方が楽になるでしょ?」
「わかって……あっ、あぁ!」
 これじゃ本当にヤバい。風呂場での二の舞だと思った時、伊織がガバッと起き上がった。
「伊織?」
「ただ触ってただけなのに、コウちゃんがそんな声出すから悪いんだよ」
「なっ……ん!」
 誰のせいでと抗議しようとする前に、覆いかぶさってきた伊織の唇に全てかき消された。
「んっ、あっ……はぁ……」
 湿った舌が俺の唇をなぞり、それにビクッとした俺が声を漏らす。その瞬間に伊織の舌が入り込んだ。
 薄暗い室内で完勃ちした俺。そんなシュチュエーションが伊織とのキスを甘くしている気もした。嫌じゃない。それは初めの時も思った事だ。
「コウちゃん……好きだよ。愛してる」
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