聖女陥落〜この恋は罪ですか?〜

まぁ

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 その日は大聖堂での祈りの日だった。聖女としての力が揺らぐエリサはしばらくの暇を言い渡されていたので、セリカと一族の別の聖女が行う予定だった。
「……オリカお姉様……?」
 大聖堂にいたのは、二人の侍女を引き連れたエデンワース本家の長女オリカだった。
「久しぶりねセリカ」
 いつものように毅然とした態度。全ての嘘を許さないといった無機質な表情を浮かべるオリカの事は、正直苦手としているセリカだ。
「どうしてお姉様が?お姉様クラスの大聖女でしたらここにいらっしゃらずとも祈りは捧げるはず。いえ、それよりも今日はお姉様の日ではないのでは……」
「貴女と……エリサに会いたくてここまで来たのですが、どうやらエリサはいないようね」
「エ、エリサは体調を崩していまして……しばらくお休みさせています」
「そう……」
 重々しい空気がその場に立ち込める。おそらく本題はこの事ではないはずだ。エリサとマルディアスの事なのだろう。
「お姉様。立ち話も何ですし、客室でお話しませんか?」
「そうですね。そうさせてもらいましょう」
 エリサに変わり、セリカの言葉でどこまでオリカを納得させられるかはわからない。だが利益や家を重んじるオリカに、少しでもエリサの心が伝わればと思った。


「ここにある紅茶ではお姉様のお口に合うかわかりませんが、どうぞ……」
「貴女は私の口に合わないものを出すの?」
「い、いえ……ではすぐに家より取り寄せます」
「結構よ。時間の無駄です。それよりも私がここへ来た意味をわかっているのですね?」
 ぴしゃりと言い放ったオリカに「はい」とセリカは重い口を開いた。
「全く……エデンワースやレーエンスブルク、ひいては私にまで恥をかかせるとは、エリサも何を考えているのかしら?」
「お姉様……その事ですが、もう少しエリサの言葉にも耳を傾けてあげて下さい」
「何を言っているの?いい縁談だったから結婚をし、家を繁栄に導く。それが私達貴族社会にある姿よ。愛だの恋だのというものは無駄な浪費をするだけです」
「それはオリカお姉様の考えです。私たエリサは違います。確かに私も縁談ですが、それに関しては後悔していません。ですがエリサは後悔したのです」
 思わぬ反撃にオリカは眉をピクリと動かした。妻というのは家の為、夫の為にあると考えるオリカにとって、エリサのとった行動は許しきものなのだ。
「それにエリサとフリーク氏の間には夫婦の契りが交わされる事がないとか……」
「それがどうしたというの?今はなくともその内必然的にならなくてはいけないのですよ」
「ですが……エリサの気持ちもわかります。愛されない事への不安。だからマルディアス氏の元に行ったのでしょう。彼もまた全てを失ってでもエリサといたいと望んでいます」
「全てを失ってでも…?」
 その言葉の何に引っかかったのか、オリカの表情が歪んでいくのが見てわかった。
「あの者は全てを失うどころか、全てを得ようとしているのですよ」
「どういう事ですか?」
「あの者の事……何も知らないのですか?」
 知らないも何も、数代で成り上がった貴族で、主に銀行業を生業としている若き当主。根も真面目で優しい。そんな印象しかなかった。それ以外に何があるというのか……
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