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 月日は巡り、あれから一年が経った。その間に様々な出来事があった。
 まずは放置されていたフリークとの関係だが、こちらは離婚の申請書にエリサは記載をし、正式に離婚する事になった。お互い弁護士を通じての事だったので、フリークに会う事はなかった。慰謝料や財産の分配等はなく、お互いこれで他人同士となったのだ。この時、ミリアの事についても触れたのだが、親権はエリサに一任する代わり、養育費等は一切は出さないとの事だ。
「ミリアに会われますかね?」
 なんだかんだと言っても、一応フリークはミリアの父親でもある。弁護士にそう訊ねてみた。しかし……
「フリーク様より、産んだのはそちらが勝手にした事だ。なので会う必要はない。だそうです」
 なんとなくわかってはいたが、相変わらずエリサに関する事には一切の興味がないのだなと思った。その事についてもエリサは了承した。
 だがフリークとの縁が切れたのはこの離婚だけではなかった。あれから変わらない交友を続けているディアナに会いに行った際、ディアナからふと言われたのだ。
「おそらくフリーク様はもううちには来ないわ」
「えっ?」
 さすがにこれは驚いて聞き返してしまった。
「だって知らなかったとはいえ、エリサさんとの事をフリーク様の口から聞いて、私自身腹が立ったのよ。私の大切な友人を傷つけた事に」
 どうやらエリサと久々に再会した日。エリサを見送った後にフリークがディアナの家を訪ねて来たようだ。何をディアナに言ったかは知らないが、ディアナは心底腹が立ったようだ。
「それに……この曖昧な関係にはいつかけじめをつけなくちゃって思っていたの。だから丁度いいタイミングだったのかもしれない」
 それからフリークがディアナの家に来ることもなくなったそうだ。
 次にエリサの夢だ。保育関係の仕事に就くにはまず資格が必要になる。エリサはこれまでにないくらい必死の勉強をしてなんとか保育の資格を得た。もちろん母親としての義務も果たしつつだが、勉強に手が詰まっている時は姉セリカの手を借りたりもした。
 それ以降も忙しかった。まず場所だ。これに関してはエリサの名前より、事業をしているセリカの夫ルーフェンスの方が融資を受けやすかったので、ルーフェンス名義で場所や建物、その他必要備品などのお金の借り入れをした。細かな経営方法なども教えてもらい、一年でそれなりに形を整える事が出来た。
「すでに申し込まれている人も多いようね」
「そうですね。やはりこういうのやってみてよかったわ」
 開園は一週間後。最後の大詰めでエリサはバタバタしていたが、セリカはそんなエリサを応援してくれる。
 従業員は二人ほど雇った。一応経営なので、なるべく負担の少ない金額で預けられるように工夫もしている。借り入れたお金を返しり、従業員に賃金を払ったり、受け入れる子供達のケアや、何より安全な安全な運営をしていかなくてはいけない。不安は多少なりとあるが、それでもやっていく。そんなエリサは一週間後が楽しみだった。
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