聖女陥落〜この恋は罪ですか?〜

まぁ

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 それから一週間後。エリサが理事を務める保育施設が開園した。定員は十名。従業員は二名なので、これ以上の負担は増やせない。もちろん今後この幅は増やしていきたい。まだまだ駆け出しなのもあるので、エリサも現場に出て出来る限り従業員の手伝いをしたり、子供にとって危険となる場所がないかなど、不備を探したりしなくてはいけない。
 施設の名前は「鳥のゆりかご」。開園にあたり、この園について大々的に園児を応募をしたわけではない。新聞の広告の隅に載せてもらう形だったが、それでも応募が殺到した。安価な料金設定に加え、施設として子供を預けられるとあって、この国のシングルや共働きの人達がこぞって応募したのだ。金額に関して、それでも当月払えないなどの事もないとは言えない。この手の補助が受けられるように国に申請している。どんな回答が出るかはまだまだ先なのだ。
 本当は希望する人達全てを受け入れたかったが、施設の収容出来る人数や、現行の従業員の業務負担なども考慮すると、これが限界なのだ。
「この調子だと別施設開設も早いかもしれないわね」
 開園祝いにやって来たディアナ。縁故で入れてもらうのは悪いと言って、ディアナはここにマルタを入れる事はしなかった。マルタは他に預けられる人がいるという事で、そちらで預かってもらっているのだそうだ。
「今はここで手一杯なので……もちろん将来的には枠を増やしていきたいですけどね」
 家庭の事情など、厳選に厳選を重ねた結果、ここに通う事が出来た十人の子供達の賑やかな声が施設内に響き渡る。
「ミリアはどうしてるの?」
「今日は姉にお願いしてます」
 ミリアもこの施設で面倒を見ようかとも考えたが、セリカが「面倒見るわ」と言って引き受けてくれた。
「それにしても……この仕事に就くからって髪切ったのね」
「さすがに邪魔になると思って……」
 以前までは腰近くまであった長い髪を、肩につくかつかないか程のミディアムまで切り落としたのだ。
「でも今までで一番生き生きしてるわ。頑張ってね」
 ディアナに励まされ、エリサは今日一日をなんとか無事終えた。閉園は午後六時だが、家庭の事情なども考慮して三十分程は余裕を見ている。すでに従業員も帰った後なので、エリサも急ぎ帰ろうとエデンワースの屋敷へ急ぐ事にした。
 仕事と育児の事もあるので、セリカからはもうしばらくエデンワースの屋敷にいるようにいわれた。ミリア自身が大きくなるまでは実際にこのままなのだろう。迷惑をかけているのはわかっているが、甘えられる時に甘えておこうと思った。それでなくともミリアには父親がいない。寂しい思いだけはさせたくなかった。
「すっかり暗くなってるわね……」
 馬車が停留している場所までは施設から少し歩く。まだ冬の名残が残る季節で、日が落ちると一気に肌寒くなる。
 手を合わせ、急ぎ足で停留所に向かっていると、前方に見覚えのある後ろ姿が見えた。
(えっ……嘘……)
 その後ろ姿はとても懐かしい、かつて愛したマルディアスのものだ。一気に心臓の鼓動が早くなる。どうしてこの場にいるのかよりも、どうかこのまま気が付かず去って欲しいと思った。だがこういう時は振り向くものだ。マルディアスが何かの気配に気が付いたのか振り返る。そしてエリサの顔を見て驚いた。
「エリサ……様……?」
「お、お久ぶり……です」
 ぎこちない挨拶をしたエリサ。このまま立ち去ろう。そう思った時だった。
「マルディアス?どうかしたの?」
 フッと横から現れたのは肩程あるウェーブかかった髪に襟のある膝丈ほどのワンピースを着た女性。女性の腕には小さな赤子が抱えられている。それを見た時、エリサの鼓動はマルディアスに会った時以上に大きくなっていった。
「どうもしていないよ。この方は知り合いの元奥方さんだよ」
「あら、初めまして。妻のフェリシアです」
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