聖女陥落〜この恋は罪ですか?〜

まぁ

文字の大きさ
72 / 91

72

しおりを挟む
「本当に目障り……」
 マルディアスから香ったその匂いにフェリシアは怒りすらも覚えた。自分はマルディアスから薔薇も贈られた事もない。それどころか夫婦としての営みすらもないのだ。
 自分とマルディアスを引き割くものは全てなくなればいい。
 気が付くとフェリシアは一人庭園にいた。その手には油と火種があった。


 あの日を境にエリサとセリカの間でギスギスとした空気が流れていた。エリサ本人もマルディアスには未練がない。そう言質もとったのだが、セリカにはそうは思えなかった。
 まだ二人が完全に別れる前、エリサはマルディアスから酷い言葉を浴びせられたと言っていた。それはエリサをけなすわけではないが、自分との子ではないミリアを殺して欲しいと。それを聞いた時、マルディアスは正気の沙汰ではないと感じたし、それがきっかけでエリサの心が離れたまではよかった。だがそれは一時的のものだったのかもしれない。
 時が経ち、マルディアスの現状もエリサと同じような状況になれば条件は同じだ。だがその先に進み悲しませる人間は数知れずになる。エリサ自身もかつて愛した人が結婚し、子供まで出来ていた事に動揺したのだろう。それがきっかけで何か心に引っかかるものが出来たのかもしれない。
「マルディアス様とエリサはどんな事をしてでも離さなくてはいけないかもしれないわね」
 そう呟いたセリカの元には数枚の紙が置かれていた。


「えっ?お見合いですか?」
「そうよ。やはり一人で何もかもこなすには大変でしょう?」
「そ、そうですが……」
 突然セリカに呼び出され何を言われるかと思ったら、エリサは数枚の調査書や写真を渡された。どれもが貴族だが、年齢も高めなのが気になる。
「さすがに貴女と同じような年齢の方っていうのは見つからなかったのよ。ましてや貴女には子供がいる事だし。だから少々条件は劣るけど、皆子供がいる事に快諾して下さいったわ」
「そんな……」
 言葉が出なかった。まさかお見合いを勧めてくるとは思いもしなかった。エリサは以前セリカに言った。自分一人でミリアは育てると。だがこうして強行してくるという事は、マルディアスとの事が関係あるのだろう。
「お姉様……私は結婚しません」
「どうして?子供には父親がいた方がいいと思うわ」
「それはただのエゴです!たとえ片親でも幸せに育っている子だっています!」
「でも私は貴女の事を心配しているのよ……だって」
「わかってます。お姉様の言いたい事はマルディアス様との事ですよね?関係ありません!私はマルディアス様と元の関係に戻りたいと思っていません!」
「本当にそう言い切れるの?」
「はい!」
 そう強く言ったエリサ。ここで心の揺らぎなど見せたら本当にお見合いさせられてしまう。マルディアスとの事があるからではないが、エリサはもう誰とも一緒になりたいと思っていないのだ。
「わかりました。とりあえずお見合いに関しては一旦保留にしておきます。けど覚えておいて。私は貴女が幸せだと思う事なら応援はしてあげる。けど、自分にも周りにも犠牲を伴う幸せならそれを阻止します」
 セリカの言いたい事はわかっている。自分自身相手の家庭を壊すような事はしたくないし、しないと誓える。ただマルディアスの愛の言葉が耳から離れない事だけはどうしたものかと思った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

ナタリーの騎士 ~婚約者の彼女が突然聖女の力に目覚めました~

りつ
恋愛
 リアンは幼馴染のナタリーに昔から淡い恋心を抱いていた。それは彼が成長して、王女殿下の護衛騎士となっても変わりはしなかった。両親や王女に反対されても、ナタリーと結婚したい、ずっと一緒にいたい……そう願い続けた彼の望みはようやく叶い、ナタリーと婚約することができた。あと少しで彼女は自分の妻となる。そう思っていたリアンだが、ある日ナタリーが王女に呼ばれ……

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

姉の婚約者と結婚しました。

黒蜜きな粉
恋愛
花嫁が結婚式の当日に逃亡した。 式場には両家の関係者だけではなく、すでに来賓がやってきている。 今さら式を中止にするとは言えない。 そうだ、花嫁の姉の代わりに妹を結婚させてしまえばいいじゃないか! 姉の代わりに辺境伯家に嫁がされることになったソフィア。 これも貴族として生まれてきた者の務めと割り切って嫁いだが、辺境伯はソフィアに興味を示さない。 それどころか指一本触れてこない。 「嫁いだ以上はなんとしても後継ぎを生まなければ!」 ソフィアは辺境伯に振りむいて貰おうと奮闘する。 2022/4/8 番外編完結

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

貴方だけが私に優しくしてくれた

バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。 そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。 いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。 しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー

処理中です...