聖女陥落〜この恋は罪ですか?〜

まぁ

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 あの日、燃え盛る庭園の花を見ながらフェリシアは笑った。これでここにある花がエリサのもとへ行く事はない。
 庭園が燃えているのを見つけたのはメイドだった。すぐに執事に連絡し、消化された為に、屋敷や人の被害はなかった。だが薔薇はほぼ全焼だ。
 近くにいたフェリシアが犯人である事は誰もが知っており、その場では誰もフェリシアには理由を問いただしたりはしなかった。帰宅したマルディアスに執事から連絡が入り、マルディアスはすぐにフェリシアを呼んだ。
「どうして薔薇を燃やした?あれの価値がどれほどのものかわかっているのか?」
「価値は知っています。けど、それ以上にあの薔薇は私にとって不快だったのです」
「だからと言ってこんな事、許されると思っているのか?」
「許さないのはマルディアス。貴方だけでしょ?」
 その言葉に無表情で聞いていたマルディアスの眉がピクリと動いた。
「確かにあの薔薇の品種は国宝だと聞いた事はあります。けどここにあるという事は私のものでもあるのよね?なのに別の女に贈って……」
 そこで冷静さを崩すかと思ったが、マルディアスは気丈でいた。
「私が何も知らないと?貴方の想い人に贈っているのでしょ?それくらいすでにお見通しよ。相手はあの時停留所で会ったエリサって人よね?」
「お前は何が言いたい」
「言いたい事など沢山あります。けど、それを聞いて貴方は私に離縁を突きつけますか?出来ませんよね。遊んだ末に子供を作ってしまい、過去の女と不倫をしていたなんて、格好のスキャンダルだわ」
 不快に笑うフェリシアの頬をマルディアスは叩いた。その反動で床に座り込んだフェリシアはマルディアスを睨みつけるように見た。
「私は絶対離縁なんてしない!私は貴方を愛しているわ!あの日出会った時からこの人だって思った。あの女に負けないくらい貴方を想っているわ!あの女と私、何が違うの?」
「君は私に何を望む?」
「私は貴方に愛してもらいたい。それだけなのに……貴方は私を見てくれない。私を抱いてくれないわ!」
「…………」
 一通り言い終えたのか、フェリシアは沈黙し、涙を流した。
「君を蔑ろにした事を悪かった。だが薔薇については別だ。あれは国宝という意味以外に、私にとって思い出深いものだ。それを踏みにじられた。到底許される事ではない」
「ではどうするおつもり?」
「どうもしない。ただ、今後一切私のする事に干渉しないでもらおうか。君が関わると大変な事になる」
「そんな……酷いわ!私達は夫婦なのに!」
「誰かいないか?」
 わあっと泣き始めたフェリシアを見てため息を漏らすマルディアス。すぐに執事がやって来た。
「フェリシアを連れて行ってくれ」
「かしこまりました」
「なっ、何で?酷い酷すぎるわ!」
 無理矢理立たせ、フェリシアの腕を掴んだ執事はフェリシアと共に退室をする。例え奥方であっても主人の命令は絶対だ。
 マルディアスは焼け焦げた庭園を見てため息しか出なかった。あの庭園はエリサとの思い出の場所。そこを土足で踏みにじったのだ。マルディアスの怒りは静かに燃え上がっていた。
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