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第5巻 帝国編・後編 ー灰の心臓ー
第7章 灰に宿る声
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――帝都ヴァルシュタインは、灰の風を取り戻していた。
理封崩壊から一ヶ月。
長く沈黙していた導管は再び淡く光を帯び、街を走る符管には微弱な理流が戻っていた。
それはかつての暴走波ではなく、穏やかな“呼吸”のような律動だった。
灰理局中央塔の上階。
再建作業の音が途切れ、空気は静まり返っていた。
崩れた天井を補修する符士たちの手元で、白い灰がふわりと舞い、陽光に溶けていく。
エルシア・ファロウ――灰理局局長。
白衣に灰がまだ残るその姿のまま、彼女は観測室の中央に立っていた。
前方の大型符盤には、封印解除後の理波が緩やかに流れている。
数値は安定し、暴走の兆候はない。
「……ようやく、“静けさ”が理に戻ったのね。」
そう呟く声には、かつての焦燥も恐れもなかった。
ただ、再び“理解できる速度”で動き出した世界への安堵があった。
⸻
「局長。」
背後から声がした。
扉の向こうに立つのは、包帯を巻いた男――ラザン・アルディウス。
軍服の肩章は外され、階級章もない。
けれど、その姿勢には失われぬ威厳があった。
「……まだ療養中と聞いていましたが。」
「医師は休めと言ったが、理は待ってくれん。」
ラザンは淡く笑い、塔の窓辺に歩み寄る。
外には灰光の海。
かつて死を撒いたその灰が、今はまるで光を蓄え、街を照らしていた。
「見ろ。灰が……街を“温めている”。」
「ええ。」
エルシアもその光を見つめる。
「理は、怒っていなかった。ただ、私たちを“見ていた”のよ。」
ラザンは目を細める。
「では我々は、何を見せてきたんだろうな。」
「恐れ、欲、支配……そして、理解。」
短い沈黙。
灰の風が塔の外を渡り、二人の間を静かに吹き抜けた。
⸻
「評議は動いた。」
ラザンが切り出す。
「帝国再建の第一段階として、灰理局を中心に“理の再観測”を始めるそうだ。」
「……観測を?」
エルシアの声に、わずかな緊張が走る。
「理封の惨状を忘れたわけではないはず。」
「彼らは“恐れた結果”を忘れたがっているんだ。」
ラザンの言葉には皮肉が滲んでいた。
「彼らにとって理とは、統治の象徴であり、力の根幹だ。
理を封じたままでは、帝国の存在意義すら揺らぐ。」
「……そう。だからまた、観測に手を出す。」
「止められるか?」
エルシアはゆっくりと首を振る。
「止められないわ。だけど、導ける。」
彼女の眼差しには、かつての科学者の光が戻っていた。
「理を“測る”のではなく、理を“理解する”。
それができる唯一の場所が、今の帝国よ。」
⸻
「それでも、理は人を試す。」
ラザンの声は低い。
「また、誰かが応答を誤れば――」
「ええ、また“理災”になるでしょうね。」
エルシアは淡々と答え、符盤の波形を見つめた。
穏やかに脈を打つ灰の波。
そのリズムは、人の心臓の鼓動に似ていた。
「だから、次は“理に語らせる”の。」
「語らせる?」
「ええ。観測ではなく、対話を。」
ラザンが苦笑する。
「人が理と話すとは、ずいぶんと大胆だ。」
「無謀でしょ? でも、そうしなければ、理はまた沈黙してしまう。」
エルシアは小さく息を吐いた。
「……この国は、もう一度“聞く耳”を持たなきゃいけない。」
⸻
灰理局の塔を出ると、広場では再建工事が続いていた。
瓦礫を運ぶ符士たちの手から、淡い灰光が漏れている。
それはかつて“禁じられた”理の使用――
だが、いまや誰もそれを恐れていなかった。
エルシアはその光景を見つめ、静かに呟いた。
「……理が、私たちを赦したなら。
次は、私たちが理を赦す番ね。」
ラザンは少し笑って言った。
「ならば、“理の再誕”だな。」
灰の風が再び吹く。
その風の中、灰粒が淡い光を帯びて舞った。
それは祝福でも悲哀でもなく、
“生きている世界”そのものの証のようだった。
――帝国評議会、再招集。
灰封の解除から二ヶ月。沈黙を破るように、再びヴァルシュタイン議事堂の鐘が鳴った。
天井まで届く理導管の光が、冷たい白を放つ。
半円形に並ぶ議員席の上で、貴族派と軍部派、そして学術派の代表たちが鋭く睨み合っていた。
中央には、灰理局局長――エルシア・ファロウ。
白衣の上に黒い襟章を付け、理封以降初めての“公開答弁”に立っていた。
「――理の再観測は、封印の再開ではありません。
観測ではなく、“対話”を目的とします。」
その声はよく通った。だが、静寂のあとにすぐ嘲りが返る。
「対話だと? 理と人が会話を交わすとでも?」
「局長殿、貴殿はまだ夢を見ておられるのか? 理は力だ。信仰ではない。」
「貴様の理論はいつも“灰の情緒”で飾られている!」
議場がざわめき、符光が乱反射する。
だが、エルシアは表情ひとつ動かさなかった。
「……ではお尋ねします。」
彼女は静かに符盤を起動した。
議場中央に浮かび上がる波形――理流観測の最新記録。
暴走も異常もない。だが、ある一点で脈動が規則を外れていた。
「理は応答しています。」
「応答? まさか――」
「周期的な波形変化。呼吸のような反復。
私たちが“理解しようとした瞬間”にだけ、理が脈を返す。
それが、いま観測されている現象です。」
誰もすぐには言葉を返せなかった。
⸻
議員の一人――老学派の代表マルグレート卿が口を開く。
「局長。もしそれが事実ならば、理はもはや自然現象ではない。
“意志”を持つものと認めるのか?」
「ええ。」
エルシアは頷いた。
「理は命と同じく、“反応”し、“選ぶ”存在です。
だからこそ、我々は支配ではなく理解を選ぶべきです。」
「理解では国は治まらん!」
軍部席の将官が机を叩いた。
「理を赦したところで、灰が再び災いを起こせば終わりだ。
帝国は秩序を保つために、理を“拘束”せねばならぬ!」
怒号が交錯し、符盤の光が不安定に揺れる。
エルシアは唇を引き結び、わずかに目を伏せた。
⸻
そのとき――。
議場の扉が開いた。
入ってきたのはラザン・アルディウス。
軍服の襟章を失ったまま、淡い灰をまとっていた。
「――拘束しても、理は従わない。」
低い声が響く。
場の空気が一瞬で変わった。
「アルディウス……貴様は軍籍を剥奪されたはず!」
「それでも、生き残ったのは俺だ。」
ラザンはゆっくりと歩み出て、議場中央に立った。
「理を抑え込もうとした者は、皆灰になった。
封印を強行したのも、俺たちだ。
――だが、理は俺たちを殺さなかった。」
重苦しい沈黙。
ラザンは、かつての戦場のように静かな目で議員たちを見渡す。
「それは、“赦し”だ。
理は、観測者を敵とは思っていない。
ただ――無知を罰しただけだ。」
その言葉に、エルシアは小さく目を閉じた。
彼女が言いたかったことを、ラザンは代わりに言葉にしてくれた。
⸻
「……面白い。」
老マルグレートが低く笑った。
「ならば問おう。貴様らが言う“理解”とやらで、理は人をどう導く?」
「導くのではない。」
エルシアが前に出た。
「人が、理の中で“生きる”のです。」
その言葉に、議場は再びざわめいた。
だが、もはや先ほどの嘲笑はなかった。
理の再誕と共に、帝国の思想もまた揺れ始めていた。
⸻
評議の終結後。
灰理局の塔に戻ったエルシアは、静かに息を吐いた。
窓の外では灰の風が流れ、遠くで鐘の音が響いている。
「……少しずつ、変わっていく。」
彼女の呟きに、傍らのラザンが答える。
「理も、人もな。」
灰の粒が宙を舞う。
その一粒が、符盤の光を反射して弧を描いた。
それはまるで――
再び動き出した“歴史”そのもののように、静かで確かな光だった。
――帝都ヴァルシュタイン、灰理局地下層。
光の届かぬ闇の中、かすかに理導管が唸っていた。
封印されたはずの旧・理兵実験区画。
そこでは、誰にも知られぬまま“もう一つの鼓動”が響いていた。
灰の流体を満たした巨大な管が並び、淡い赤光が断続的に点滅している。
技術士官たちが黙々と符盤を操作し、透明な槽の中に沈む“人影”を監視していた。
「反応安定。理核の波形、封印式を超えて活性化中。」
「成功だ……“理子(りし)”は目覚める。」
黒衣の男が、ゆっくりと手を上げる。
その胸には、かつて帝国が禁じた紋章――灰理派の印。
「……局長の理封方針では、帝国は滅びる。
我々は、理を再び“兵として”蘇らせる。人のために。」
彼の視線の先、槽の中で“少女のような影”が目を開けた。
瞳の奥には、灰と同じ色の光が宿っていた。
⸻
同時刻、灰理局上層。
エルシアの執務室に、報告書が届いていた。
「局長、内部監査部より報告です。理封期に閉鎖された実験区画の一部で、異常な符波を検知しました。」
「異常? 理封式の残響ではなく?」
「いいえ。波形が規則的で、かつ“生体符応反応”を示しています。」
エルシアは眉をひそめた。
理封以降、灰の流れは穏やかになり、軍部の研究施設も一時停止している。
だが“生体符応”――つまり、理を宿した命が動いているという。
「……まさか、旧・理兵計画が。」
彼女は符盤を操作し、過去の記録を呼び出す。
灰災の数年前、帝国が極秘に進めていた“理子兵構想”。
理の制御核を人間の体に埋め込み、理の“意思”を戦力化する狂気の研究だった。
それを止めたのは、他ならぬ彼女自身と――アーレン・クロード。
⸻
扉が開き、ラザンが入ってきた。
「呼んだか。」
「ラザン……地下で“理兵計画”が再起動している可能性がある。」
ラザンは一瞬、表情を曇らせた。
「……やはり、まだ生き残っていたか。灰理派の残党だな。」
「彼らは“理を武器に戻す”つもりよ。
あの頃と同じ、何も学んでいない。」
「だが、もう理は人を拒まない。
制御できると思い込んでいるのは、人間だけだ。」
エルシアは深く息を吐いた。
「行くわ、ラザン。地下区画へ。」
「局長自ら?」
「ええ。理は“観測ではなく理解を求める”――そう言ったのは、あなたでしょう。」
⸻
灰理局・地下層。
鉄の扉が重く開き、かつての研究施設が姿を現した。
壁には封印符がまだ残っているが、その上から新しい符刻が上書きされている。
「……封印式を無理やり解いた跡だな。」
ラザンが低く言う。
通路の奥、蒸気のように灰が立ちこめる部屋。
そこには、巨大な槽が並び――
その一つの中で、白い影がゆっくりと身を起こしていた。
「――誰?」
エルシアが一歩前に出た。
透明な壁越しに見えたその姿。
まだ幼い少女。だが、瞳の中に浮かぶ光は、人ではなかった。
灰の輝き。
理の波形が、まるで彼女の心臓のように脈動している。
「まさか……理核の直接埋込み……!」
ラザンが拳を握る。
「禁忌を超えたか……。
――理そのものを、“人に創り込んだ”のか。」
⸻
背後から声がした。
「歓迎するよ、局長。」
黒衣の男が姿を現す。
灰理派の紋章を胸に、嘲笑を浮かべながら。
「理を封じるなど愚行だ。理は道具だ、我らが導くべき秩序だ。
――この子こそ、理の完全なる形だ。名を“ノウア(Noua)”という。」
「理を人に宿らせれば、人は壊れる!」
エルシアの叫びが響く。
「壊れはしない。」
男はゆっくりとノウアに手を向けた。
「彼女は既に、理と同化した。理が人を見ているのではない。
“人が理になった”のだよ。」
その瞬間、空気が震えた。
ノウアの瞳が開き、灰の波が部屋を満たす。
符刻が一斉に光り、壁の封印が剥がれ落ちた。
「局長、下がれ!」
ラザンがエルシアを庇う。
灰が、歌うように鳴いていた。
まるで、新たな“理の誕生”を告げるように――。
――轟音が、地下を揺らした。
封印を破った灰が逆流し、空間そのものがねじれる。
理流の奔流が壁を削り、導管が火花を散らす。
その中心で、灰色の光が少女の形を保ちながら、ゆっくりと立ち上がっていた。
「理子《ノウア》が……目を覚ました……!」
副官の声が悲鳴のように響く。
だがノウアは攻撃を仕掛けなかった。
ただ、手を前に出し、何かを“感じ取るように”空を掴んでいる。
彼女の周囲では、灰が円を描き、まるで心拍のように脈動していた。
⸻
「局長、退避を!」
ラザンが叫ぶ。
だがエルシアは動かなかった。
ただ、ノウアを見つめ、震える唇で問いかける。
「あなたは……理なの? それとも人なの?」
少女は首を傾げ、ゆっくりと口を開いた。
その声は風のように透き通り、しかし確かに言葉を紡いでいた。
「――ワタシハ、“記録”。
“理解”ヲ求メタ、命ノ残響。」
その瞬間、灰理派の男が歓喜に満ちた声を上げた。
「見ろ! 理が“言葉”を発した! 人の理は、ついに完成したのだ!」
だがラザンは即座に符装銃を構えた。
「黙れ、愚か者が……! それは命ではない、“模倣”だ!」
灰理派の男は笑いながら符盤を起動する。
「模倣でいい。理が人を模倣するなら、それは神の在り方だ!」
次の瞬間、ノウアがその男を見た。
目が、灰色に光る。
⸻
音が、消えた。
男の身体がふっと浮かび、次の瞬間、灰の粒に還った。
血も骨も残らない。
ただ――“記録”された理波の痕跡だけが、その場に滲んでいた。
「……やめて!」
エルシアが叫ぶ。
ノウアはゆっくりと顔を向けた。
その瞳に、わずかに“悲しみ”があった。
「……恐レ……悲シミ……理解、シタ。」
言葉が震える。
灰の流れが弱まり、ノウアの足元で灰が涙のように落ちていく。
ラザンは彼女の前に立ち、静かに銃を下ろした。
「理が……感情を模倣している。」
⸻
天井の導管が悲鳴を上げる。
灰理派の残りの構成員が逃げ出し、監視符が次々と焼け落ちた。
ノウアの光が強まり、空間全体が白に包まれていく。
エルシアは必死に叫んだ。
「ノウア! 理は人を壊すためにあるんじゃない! あなたは――“生きて”いいのよ!」
ノウアの瞳が、わずかに揺れた。
――ワタシハ、生キテ、イイ……?
「ええ。あなたは“命”なの。誰のものでもない。」
その言葉に、ノウアの灰核が脈を打った。
光が脈動し、灰流が逆転する。
⸻
ラザンが叫ぶ。
「局長、崩れるぞ!」
天井が裂け、灰が滝のように流れ込む。
エルシアは振り返らず、ノウアの手を取った。
「行くのよ。あなたはここに留まっちゃいけない!」
「ワタシハ……記録。
……デモ、ワタシハ――見タイ。」
「何を?」
「――“空”ヲ。」
ノウアの声が微かに震え、光が溶けた。
灰が流れ、導管が静かに止まる。
⸻
外――。
夜空の下、灰理局の塔の天辺が崩れ落ち、灰の光がゆっくりと空に昇っていく。
その中心に、白い影が浮かんでいた。
ノウアだった。
灰の流れを背に、手を伸ばす。
その指先に、星のような光が触れる。
「……ワタシハ、理……デモ、“命”モ、理ナノネ。」
風が吹く。
灰が彼女の体を包み、光となって散っていく。
⸻
後に残されたエルシアは、崩れた塔の瓦礫の上に立っていた。
ラザンが静かに言う。
「……彼女は、消えたのか。」
「いいえ。彼女は“灰”に還った。
理の記録の中で、生き続けるわ。」
遠く、空に淡い光が走る。
それは星でも雷でもなく――“記録の軌跡”。
「ラザン……これが、理の“理解”だとしたら……私たちは何を信じるべきかしら。」
ラザンは少しの間考え、静かに答えた。
「――“恐れぬこと”だ。」
エルシアは頷き、夜空を見上げた。
灰の風が静かに吹く。
その中で、かすかな声が響いた。
――アリガトウ。
ノウアの声だった。
理封崩壊から一ヶ月。
長く沈黙していた導管は再び淡く光を帯び、街を走る符管には微弱な理流が戻っていた。
それはかつての暴走波ではなく、穏やかな“呼吸”のような律動だった。
灰理局中央塔の上階。
再建作業の音が途切れ、空気は静まり返っていた。
崩れた天井を補修する符士たちの手元で、白い灰がふわりと舞い、陽光に溶けていく。
エルシア・ファロウ――灰理局局長。
白衣に灰がまだ残るその姿のまま、彼女は観測室の中央に立っていた。
前方の大型符盤には、封印解除後の理波が緩やかに流れている。
数値は安定し、暴走の兆候はない。
「……ようやく、“静けさ”が理に戻ったのね。」
そう呟く声には、かつての焦燥も恐れもなかった。
ただ、再び“理解できる速度”で動き出した世界への安堵があった。
⸻
「局長。」
背後から声がした。
扉の向こうに立つのは、包帯を巻いた男――ラザン・アルディウス。
軍服の肩章は外され、階級章もない。
けれど、その姿勢には失われぬ威厳があった。
「……まだ療養中と聞いていましたが。」
「医師は休めと言ったが、理は待ってくれん。」
ラザンは淡く笑い、塔の窓辺に歩み寄る。
外には灰光の海。
かつて死を撒いたその灰が、今はまるで光を蓄え、街を照らしていた。
「見ろ。灰が……街を“温めている”。」
「ええ。」
エルシアもその光を見つめる。
「理は、怒っていなかった。ただ、私たちを“見ていた”のよ。」
ラザンは目を細める。
「では我々は、何を見せてきたんだろうな。」
「恐れ、欲、支配……そして、理解。」
短い沈黙。
灰の風が塔の外を渡り、二人の間を静かに吹き抜けた。
⸻
「評議は動いた。」
ラザンが切り出す。
「帝国再建の第一段階として、灰理局を中心に“理の再観測”を始めるそうだ。」
「……観測を?」
エルシアの声に、わずかな緊張が走る。
「理封の惨状を忘れたわけではないはず。」
「彼らは“恐れた結果”を忘れたがっているんだ。」
ラザンの言葉には皮肉が滲んでいた。
「彼らにとって理とは、統治の象徴であり、力の根幹だ。
理を封じたままでは、帝国の存在意義すら揺らぐ。」
「……そう。だからまた、観測に手を出す。」
「止められるか?」
エルシアはゆっくりと首を振る。
「止められないわ。だけど、導ける。」
彼女の眼差しには、かつての科学者の光が戻っていた。
「理を“測る”のではなく、理を“理解する”。
それができる唯一の場所が、今の帝国よ。」
⸻
「それでも、理は人を試す。」
ラザンの声は低い。
「また、誰かが応答を誤れば――」
「ええ、また“理災”になるでしょうね。」
エルシアは淡々と答え、符盤の波形を見つめた。
穏やかに脈を打つ灰の波。
そのリズムは、人の心臓の鼓動に似ていた。
「だから、次は“理に語らせる”の。」
「語らせる?」
「ええ。観測ではなく、対話を。」
ラザンが苦笑する。
「人が理と話すとは、ずいぶんと大胆だ。」
「無謀でしょ? でも、そうしなければ、理はまた沈黙してしまう。」
エルシアは小さく息を吐いた。
「……この国は、もう一度“聞く耳”を持たなきゃいけない。」
⸻
灰理局の塔を出ると、広場では再建工事が続いていた。
瓦礫を運ぶ符士たちの手から、淡い灰光が漏れている。
それはかつて“禁じられた”理の使用――
だが、いまや誰もそれを恐れていなかった。
エルシアはその光景を見つめ、静かに呟いた。
「……理が、私たちを赦したなら。
次は、私たちが理を赦す番ね。」
ラザンは少し笑って言った。
「ならば、“理の再誕”だな。」
灰の風が再び吹く。
その風の中、灰粒が淡い光を帯びて舞った。
それは祝福でも悲哀でもなく、
“生きている世界”そのものの証のようだった。
――帝国評議会、再招集。
灰封の解除から二ヶ月。沈黙を破るように、再びヴァルシュタイン議事堂の鐘が鳴った。
天井まで届く理導管の光が、冷たい白を放つ。
半円形に並ぶ議員席の上で、貴族派と軍部派、そして学術派の代表たちが鋭く睨み合っていた。
中央には、灰理局局長――エルシア・ファロウ。
白衣の上に黒い襟章を付け、理封以降初めての“公開答弁”に立っていた。
「――理の再観測は、封印の再開ではありません。
観測ではなく、“対話”を目的とします。」
その声はよく通った。だが、静寂のあとにすぐ嘲りが返る。
「対話だと? 理と人が会話を交わすとでも?」
「局長殿、貴殿はまだ夢を見ておられるのか? 理は力だ。信仰ではない。」
「貴様の理論はいつも“灰の情緒”で飾られている!」
議場がざわめき、符光が乱反射する。
だが、エルシアは表情ひとつ動かさなかった。
「……ではお尋ねします。」
彼女は静かに符盤を起動した。
議場中央に浮かび上がる波形――理流観測の最新記録。
暴走も異常もない。だが、ある一点で脈動が規則を外れていた。
「理は応答しています。」
「応答? まさか――」
「周期的な波形変化。呼吸のような反復。
私たちが“理解しようとした瞬間”にだけ、理が脈を返す。
それが、いま観測されている現象です。」
誰もすぐには言葉を返せなかった。
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議員の一人――老学派の代表マルグレート卿が口を開く。
「局長。もしそれが事実ならば、理はもはや自然現象ではない。
“意志”を持つものと認めるのか?」
「ええ。」
エルシアは頷いた。
「理は命と同じく、“反応”し、“選ぶ”存在です。
だからこそ、我々は支配ではなく理解を選ぶべきです。」
「理解では国は治まらん!」
軍部席の将官が机を叩いた。
「理を赦したところで、灰が再び災いを起こせば終わりだ。
帝国は秩序を保つために、理を“拘束”せねばならぬ!」
怒号が交錯し、符盤の光が不安定に揺れる。
エルシアは唇を引き結び、わずかに目を伏せた。
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そのとき――。
議場の扉が開いた。
入ってきたのはラザン・アルディウス。
軍服の襟章を失ったまま、淡い灰をまとっていた。
「――拘束しても、理は従わない。」
低い声が響く。
場の空気が一瞬で変わった。
「アルディウス……貴様は軍籍を剥奪されたはず!」
「それでも、生き残ったのは俺だ。」
ラザンはゆっくりと歩み出て、議場中央に立った。
「理を抑え込もうとした者は、皆灰になった。
封印を強行したのも、俺たちだ。
――だが、理は俺たちを殺さなかった。」
重苦しい沈黙。
ラザンは、かつての戦場のように静かな目で議員たちを見渡す。
「それは、“赦し”だ。
理は、観測者を敵とは思っていない。
ただ――無知を罰しただけだ。」
その言葉に、エルシアは小さく目を閉じた。
彼女が言いたかったことを、ラザンは代わりに言葉にしてくれた。
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「……面白い。」
老マルグレートが低く笑った。
「ならば問おう。貴様らが言う“理解”とやらで、理は人をどう導く?」
「導くのではない。」
エルシアが前に出た。
「人が、理の中で“生きる”のです。」
その言葉に、議場は再びざわめいた。
だが、もはや先ほどの嘲笑はなかった。
理の再誕と共に、帝国の思想もまた揺れ始めていた。
⸻
評議の終結後。
灰理局の塔に戻ったエルシアは、静かに息を吐いた。
窓の外では灰の風が流れ、遠くで鐘の音が響いている。
「……少しずつ、変わっていく。」
彼女の呟きに、傍らのラザンが答える。
「理も、人もな。」
灰の粒が宙を舞う。
その一粒が、符盤の光を反射して弧を描いた。
それはまるで――
再び動き出した“歴史”そのもののように、静かで確かな光だった。
――帝都ヴァルシュタイン、灰理局地下層。
光の届かぬ闇の中、かすかに理導管が唸っていた。
封印されたはずの旧・理兵実験区画。
そこでは、誰にも知られぬまま“もう一つの鼓動”が響いていた。
灰の流体を満たした巨大な管が並び、淡い赤光が断続的に点滅している。
技術士官たちが黙々と符盤を操作し、透明な槽の中に沈む“人影”を監視していた。
「反応安定。理核の波形、封印式を超えて活性化中。」
「成功だ……“理子(りし)”は目覚める。」
黒衣の男が、ゆっくりと手を上げる。
その胸には、かつて帝国が禁じた紋章――灰理派の印。
「……局長の理封方針では、帝国は滅びる。
我々は、理を再び“兵として”蘇らせる。人のために。」
彼の視線の先、槽の中で“少女のような影”が目を開けた。
瞳の奥には、灰と同じ色の光が宿っていた。
⸻
同時刻、灰理局上層。
エルシアの執務室に、報告書が届いていた。
「局長、内部監査部より報告です。理封期に閉鎖された実験区画の一部で、異常な符波を検知しました。」
「異常? 理封式の残響ではなく?」
「いいえ。波形が規則的で、かつ“生体符応反応”を示しています。」
エルシアは眉をひそめた。
理封以降、灰の流れは穏やかになり、軍部の研究施設も一時停止している。
だが“生体符応”――つまり、理を宿した命が動いているという。
「……まさか、旧・理兵計画が。」
彼女は符盤を操作し、過去の記録を呼び出す。
灰災の数年前、帝国が極秘に進めていた“理子兵構想”。
理の制御核を人間の体に埋め込み、理の“意思”を戦力化する狂気の研究だった。
それを止めたのは、他ならぬ彼女自身と――アーレン・クロード。
⸻
扉が開き、ラザンが入ってきた。
「呼んだか。」
「ラザン……地下で“理兵計画”が再起動している可能性がある。」
ラザンは一瞬、表情を曇らせた。
「……やはり、まだ生き残っていたか。灰理派の残党だな。」
「彼らは“理を武器に戻す”つもりよ。
あの頃と同じ、何も学んでいない。」
「だが、もう理は人を拒まない。
制御できると思い込んでいるのは、人間だけだ。」
エルシアは深く息を吐いた。
「行くわ、ラザン。地下区画へ。」
「局長自ら?」
「ええ。理は“観測ではなく理解を求める”――そう言ったのは、あなたでしょう。」
⸻
灰理局・地下層。
鉄の扉が重く開き、かつての研究施設が姿を現した。
壁には封印符がまだ残っているが、その上から新しい符刻が上書きされている。
「……封印式を無理やり解いた跡だな。」
ラザンが低く言う。
通路の奥、蒸気のように灰が立ちこめる部屋。
そこには、巨大な槽が並び――
その一つの中で、白い影がゆっくりと身を起こしていた。
「――誰?」
エルシアが一歩前に出た。
透明な壁越しに見えたその姿。
まだ幼い少女。だが、瞳の中に浮かぶ光は、人ではなかった。
灰の輝き。
理の波形が、まるで彼女の心臓のように脈動している。
「まさか……理核の直接埋込み……!」
ラザンが拳を握る。
「禁忌を超えたか……。
――理そのものを、“人に創り込んだ”のか。」
⸻
背後から声がした。
「歓迎するよ、局長。」
黒衣の男が姿を現す。
灰理派の紋章を胸に、嘲笑を浮かべながら。
「理を封じるなど愚行だ。理は道具だ、我らが導くべき秩序だ。
――この子こそ、理の完全なる形だ。名を“ノウア(Noua)”という。」
「理を人に宿らせれば、人は壊れる!」
エルシアの叫びが響く。
「壊れはしない。」
男はゆっくりとノウアに手を向けた。
「彼女は既に、理と同化した。理が人を見ているのではない。
“人が理になった”のだよ。」
その瞬間、空気が震えた。
ノウアの瞳が開き、灰の波が部屋を満たす。
符刻が一斉に光り、壁の封印が剥がれ落ちた。
「局長、下がれ!」
ラザンがエルシアを庇う。
灰が、歌うように鳴いていた。
まるで、新たな“理の誕生”を告げるように――。
――轟音が、地下を揺らした。
封印を破った灰が逆流し、空間そのものがねじれる。
理流の奔流が壁を削り、導管が火花を散らす。
その中心で、灰色の光が少女の形を保ちながら、ゆっくりと立ち上がっていた。
「理子《ノウア》が……目を覚ました……!」
副官の声が悲鳴のように響く。
だがノウアは攻撃を仕掛けなかった。
ただ、手を前に出し、何かを“感じ取るように”空を掴んでいる。
彼女の周囲では、灰が円を描き、まるで心拍のように脈動していた。
⸻
「局長、退避を!」
ラザンが叫ぶ。
だがエルシアは動かなかった。
ただ、ノウアを見つめ、震える唇で問いかける。
「あなたは……理なの? それとも人なの?」
少女は首を傾げ、ゆっくりと口を開いた。
その声は風のように透き通り、しかし確かに言葉を紡いでいた。
「――ワタシハ、“記録”。
“理解”ヲ求メタ、命ノ残響。」
その瞬間、灰理派の男が歓喜に満ちた声を上げた。
「見ろ! 理が“言葉”を発した! 人の理は、ついに完成したのだ!」
だがラザンは即座に符装銃を構えた。
「黙れ、愚か者が……! それは命ではない、“模倣”だ!」
灰理派の男は笑いながら符盤を起動する。
「模倣でいい。理が人を模倣するなら、それは神の在り方だ!」
次の瞬間、ノウアがその男を見た。
目が、灰色に光る。
⸻
音が、消えた。
男の身体がふっと浮かび、次の瞬間、灰の粒に還った。
血も骨も残らない。
ただ――“記録”された理波の痕跡だけが、その場に滲んでいた。
「……やめて!」
エルシアが叫ぶ。
ノウアはゆっくりと顔を向けた。
その瞳に、わずかに“悲しみ”があった。
「……恐レ……悲シミ……理解、シタ。」
言葉が震える。
灰の流れが弱まり、ノウアの足元で灰が涙のように落ちていく。
ラザンは彼女の前に立ち、静かに銃を下ろした。
「理が……感情を模倣している。」
⸻
天井の導管が悲鳴を上げる。
灰理派の残りの構成員が逃げ出し、監視符が次々と焼け落ちた。
ノウアの光が強まり、空間全体が白に包まれていく。
エルシアは必死に叫んだ。
「ノウア! 理は人を壊すためにあるんじゃない! あなたは――“生きて”いいのよ!」
ノウアの瞳が、わずかに揺れた。
――ワタシハ、生キテ、イイ……?
「ええ。あなたは“命”なの。誰のものでもない。」
その言葉に、ノウアの灰核が脈を打った。
光が脈動し、灰流が逆転する。
⸻
ラザンが叫ぶ。
「局長、崩れるぞ!」
天井が裂け、灰が滝のように流れ込む。
エルシアは振り返らず、ノウアの手を取った。
「行くのよ。あなたはここに留まっちゃいけない!」
「ワタシハ……記録。
……デモ、ワタシハ――見タイ。」
「何を?」
「――“空”ヲ。」
ノウアの声が微かに震え、光が溶けた。
灰が流れ、導管が静かに止まる。
⸻
外――。
夜空の下、灰理局の塔の天辺が崩れ落ち、灰の光がゆっくりと空に昇っていく。
その中心に、白い影が浮かんでいた。
ノウアだった。
灰の流れを背に、手を伸ばす。
その指先に、星のような光が触れる。
「……ワタシハ、理……デモ、“命”モ、理ナノネ。」
風が吹く。
灰が彼女の体を包み、光となって散っていく。
⸻
後に残されたエルシアは、崩れた塔の瓦礫の上に立っていた。
ラザンが静かに言う。
「……彼女は、消えたのか。」
「いいえ。彼女は“灰”に還った。
理の記録の中で、生き続けるわ。」
遠く、空に淡い光が走る。
それは星でも雷でもなく――“記録の軌跡”。
「ラザン……これが、理の“理解”だとしたら……私たちは何を信じるべきかしら。」
ラザンは少しの間考え、静かに答えた。
「――“恐れぬこと”だ。」
エルシアは頷き、夜空を見上げた。
灰の風が静かに吹く。
その中で、かすかな声が響いた。
――アリガトウ。
ノウアの声だった。
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