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侮辱
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Q.私は何のために帝国の側室になったのかな?
A.公務や縛りから抜け出てぐーたらな生活を送るためである。
大正解。 花丸な模範解答。
(うんうん、そうだよね私)
なのに何故!!
「こ、この日程はなに?」
早朝にたたき起こされたかと思えば、朝食を食べる前に日程表を渡された。
何かと思えば、おはようからおやすみまで、予定がびっしりみっちり。
え。 私、側室だよね。 あれ??
(側室の定義が帝国と母国とでは違うのか)
そう思って困惑していると、アリスは無情にも淡々と話しだす。
「ジゼル様が書類作業が嫌だと申されたので。 暇な時間を私たちが僭越ながら埋めさせていただきました」
「いや、いらなんですけど。 返してくださいよ」
「この国唯一の妃ですから。 やることがいっぱいなんですよ」
「私、寝たいです。 お菓子作ったり、庭に行ったりしたいです。 遊びたい」
「忙しいですからね。 取り合えず、乗馬はできますか?」
「……」
こいつ、人の話を聞きゃしないよ。
*
「陛下……」
「久しいな、ジゼル。 後宮での暮らしはどうだ、不便はないか」
「お陰様で…」
(不便だらけですよ、陛下)
久しぶり、とは言っても数日ぶりに見上げる陛下の尊顔は相変わらず美麗だった。
太陽の光に当てられた金髪はきらきらと輝き、神秘さえ感じさせる姿には恍惚とならざるを得ない。 あの時は気づかなかったけれど、よく見ると筋肉質で伊達に剣を握っていないだけあり、逞しく丈夫さを感じさせる。
美形で筋肉質でおそらく頭もいい。
(天は二物を与えずとか嘘ばっかりだわ)
だが騙されてはならない。 彼は顔だけ男だ。
中身はぺっらぺらで、遠路遥々やってきた新妻を労わるどころか、「俺を愛するな、求めるな」と言いやがる人である。(根に持っている)
「ところで、陛下。 普通、私の立場ですとここに来ることはないと思うのですが」
すると陛下が微笑む。
「そうつれないことを言うな。 君は俺の唯一の妃なんだ、注目を浴びるのは当然だろう」
(そうなのか…だったら早く別の妃を娶ってくれないかな)
私は心の中でそう願いながら、遠くを見つめる。
その先には貴族の方々が乗に乗り、和気藹々と楽しんでいる。
が、ここは正式な社交の場で皇帝の御前である。
だからか、娘を持つ貴族は陛下に近づこうと画策し、他の貴族連中は私は上から下まで見たあと「まじかよ、あれが異国の姫君?!」とドン引くか「あらあら、おかわいらしいこと」と鼻で嗤うかのどちらかである。
(悪かったな、平凡王女で)
私ははん、と鼻で躱しながらそう思った。
「このあと、俺を含め男たちは白い狐を狩りに出かける。 その間、おまえがここを仕切ることになるから、任せた」
「任せないでくださいよ」
ん?
てゆーか……。
「白い狐?」
白い狐って確か、母国の象徴動物のひとつだったあれだろうか。 真っ白な雪の肌を持ち、血は聖なる神の生き血、鳴き声は聖母の声、その瞳は女神のなんたらとか言われてた、あの狐?
「え、あの、陛下。 この催しって恒例なんですか?」
「いや、違う。 公爵がジゼルが嫁いできた宴と兼ねてと。 アリスから事前に聞いていなかったのか?」
(そうだ)
どうして止めないんですか! と言おうとして私は口を噤む。
(この皇帝、私のことにまったく興味ないんだった!)
A.公務や縛りから抜け出てぐーたらな生活を送るためである。
大正解。 花丸な模範解答。
(うんうん、そうだよね私)
なのに何故!!
「こ、この日程はなに?」
早朝にたたき起こされたかと思えば、朝食を食べる前に日程表を渡された。
何かと思えば、おはようからおやすみまで、予定がびっしりみっちり。
え。 私、側室だよね。 あれ??
(側室の定義が帝国と母国とでは違うのか)
そう思って困惑していると、アリスは無情にも淡々と話しだす。
「ジゼル様が書類作業が嫌だと申されたので。 暇な時間を私たちが僭越ながら埋めさせていただきました」
「いや、いらなんですけど。 返してくださいよ」
「この国唯一の妃ですから。 やることがいっぱいなんですよ」
「私、寝たいです。 お菓子作ったり、庭に行ったりしたいです。 遊びたい」
「忙しいですからね。 取り合えず、乗馬はできますか?」
「……」
こいつ、人の話を聞きゃしないよ。
*
「陛下……」
「久しいな、ジゼル。 後宮での暮らしはどうだ、不便はないか」
「お陰様で…」
(不便だらけですよ、陛下)
久しぶり、とは言っても数日ぶりに見上げる陛下の尊顔は相変わらず美麗だった。
太陽の光に当てられた金髪はきらきらと輝き、神秘さえ感じさせる姿には恍惚とならざるを得ない。 あの時は気づかなかったけれど、よく見ると筋肉質で伊達に剣を握っていないだけあり、逞しく丈夫さを感じさせる。
美形で筋肉質でおそらく頭もいい。
(天は二物を与えずとか嘘ばっかりだわ)
だが騙されてはならない。 彼は顔だけ男だ。
中身はぺっらぺらで、遠路遥々やってきた新妻を労わるどころか、「俺を愛するな、求めるな」と言いやがる人である。(根に持っている)
「ところで、陛下。 普通、私の立場ですとここに来ることはないと思うのですが」
すると陛下が微笑む。
「そうつれないことを言うな。 君は俺の唯一の妃なんだ、注目を浴びるのは当然だろう」
(そうなのか…だったら早く別の妃を娶ってくれないかな)
私は心の中でそう願いながら、遠くを見つめる。
その先には貴族の方々が乗に乗り、和気藹々と楽しんでいる。
が、ここは正式な社交の場で皇帝の御前である。
だからか、娘を持つ貴族は陛下に近づこうと画策し、他の貴族連中は私は上から下まで見たあと「まじかよ、あれが異国の姫君?!」とドン引くか「あらあら、おかわいらしいこと」と鼻で嗤うかのどちらかである。
(悪かったな、平凡王女で)
私ははん、と鼻で躱しながらそう思った。
「このあと、俺を含め男たちは白い狐を狩りに出かける。 その間、おまえがここを仕切ることになるから、任せた」
「任せないでくださいよ」
ん?
てゆーか……。
「白い狐?」
白い狐って確か、母国の象徴動物のひとつだったあれだろうか。 真っ白な雪の肌を持ち、血は聖なる神の生き血、鳴き声は聖母の声、その瞳は女神のなんたらとか言われてた、あの狐?
「え、あの、陛下。 この催しって恒例なんですか?」
「いや、違う。 公爵がジゼルが嫁いできた宴と兼ねてと。 アリスから事前に聞いていなかったのか?」
(そうだ)
どうして止めないんですか! と言おうとして私は口を噤む。
(この皇帝、私のことにまったく興味ないんだった!)
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これ側室名義で仕事する奴が欲しかったたけでは?
にしてもジゼル様欲に忠実で好きです(直球)
話は変わりますが、「婚約者を想うのをやめました」書籍化おめでとうございます㊗️
質問ですがあちらの感想欄はもう開放されないのでしょうか?
感想ありがとうございます!
ジゼルさんはかなり自分に甘く、欲望に忠実な性格ですよね笑
好きと言ってもらえて嬉しいです(*´∇`*)
「婚約者を想うのをやめました」を、応援してくださってありがとうございました(*´꒳`*)♡
完結した作品ですので、開けるつもりは今のところないです💦
こちらの更新もどうか宜しくお願いします🙇。
そう言ってもらえて光栄です(*´ー`*)
気長にお待ち頂けると嬉しいです!
お、お邪魔します!
えーと。
第1話 『側室です』
下から9行目
「夫に閨も共に『去れない』…」→ 『されない』?
第3話 『侮辱』
下から22行目
「その先には、貴族の方々が『乗馬に乗り』…」→ 『乗馬を』『馬に乗り』?
やすらぎを求めて、つい。こちらを再読していたら目についたもので。つい。
大変失礼致しました!
アリスさん、独断でコキ使っている?
公爵とやら共々、呪いでも引き寄せようとされているのか。
ジゼル様、人生観が素晴らしい。
ご承認不要です!
感想ありがとうございます!
不要とのことでしたが、つい癖で(;´Д`)
お許しくださいませ<(_ _)>
ご指摘ありがとうございます! 修正しておきますね((´∀`))
アリスさんは独断で扱き使っております(笑)
ジゼル様は平凡な顔ですが、頭が良いので、それが原因かなと苦笑
ありがとうございました!
そう言ってもらえてとても嬉しかったです((´∀`*))♡
引き続き楽しんでいただければ光栄です!!