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レベル51.女騎士と女奴隷と日常②
19.女騎士と女奴隷と変わり始めたもの
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それから。
あの色んな意味で壮絶な後夜祭から一週間が過ぎた。
勝手に一人で悩んで、リファとクローラに怒られて、目が覚めて改めて二人に告白したあの日以来。
俺を取り巻く環境が少しずつ変わり始めた。
まずはクローラ。
例の「愛叫け」ステージでは驚くほどの豹変ぶりを見せた彼女だったが、それ以降はいつもの敬語に戻っていた。
ただし、性格はちょっと……いや、かなり変わった。
さて、今はごくごく普通の平日朝。
いつものようにいち早く起きていた彼女は、普段通りにやさしく俺の身体をゆすりながら、とろけるような甘い声で起こしてくれる。それはもう起こすどころか更に深い微睡みの世界に誘うかのごとく。
……はずだった。
「ほーらっ、主くん! おーきーてーくーだーさいってば!」
だがあの日を境に、それは夢だったのかと疑うほどに全て一変。
彼女は、俺が寝ていた布団をまるごとひっくり返してそう怒鳴る。ごろごろと転がり、強制的に叩き起こされた俺は覚醒しきっていない頭を抑えながら呻く。
「んもうー、わかってるってば。別に起きないなんて言ってないだろ……」
「いーえ、騙されません。ここ最近主くんはやるやる言っておいて結局やらないってのが多すぎます。こういうのやるやる詐欺って言うんでしたよね。昨日ぐーぐる先生に教わりました」
軽くほっぺたを膨らませながら、そのメイド服を着た首輪少女は怒ったように言う。
やるやる詐欺って……そんなに多いのか俺は。
「そうですよ。昨日だってエッチしてくれるって言ったのに、いざ夜になったら『バイトで疲れたからもう寝る』って……これこそまさにヤるヤる詐欺じゃないですか」
「おーう、なかなかうまいこと言いおる」
「主くんは未だに上手になる兆しが見えませんけどね」
「おーう、なかなかうまいことディスりおる」
「まぁ私もかなり疲れてたからどのみち遠慮させていただく予定だったわけですが」
「おーう、なかなかうまいこと自分のことは棚に上げやがってこの野郎」
「とにかくっ!」
ビシィ、とクローラは俺の鼻先に人差し指を突きつけて険しい顔で宣言した。
「今までは奴隷として差し出がましい真似はしてきませんでしたが、これからはそうはいきません。堕落した主の生活を律するのも従者としての務めゆえ」
「まるで今まで差し出がましい真似をしてこなかったみたいな言い草だなおい」
「はいそこ言い訳しない」
してるのは指摘なんだよなぁ。
「大体主たる者ならば、毎日の生活習慣くらいきちんとしてしかるべきでしょう。子どもじゃないのですからしっかりしてくださいな」
「まぁそりゃそうだけども」
「まったく、おちんちんは毎日元気に早起きしているというのに、本体はいつまでたってもねぼすけさんなんですから……」
「まさか自分の体の一部より下に見られる日がくるとは思わなんだ」
「下半身だけにですか? ボケるならもう少しマシな話題にしてくださいまし」
ツッコミに徹してたつもりがボケに回ってたことになってる。何を言ってるのかわからねーと思うがありのまま今起きたことを話したぜ。
「そんなことより早く布団畳んで着替えて、朝ごはんの支度手伝ってください。今日は一限あるんですから」
肩をぐるぐる回しながらキッチンに向かう彼女。
この通り、クローラはなんというか……良く言えばサバサバした、悪く言えば奔放なスタイルに変わった。
物静かだった口数は桁が三つ四つほど増え、かなり舌が回ってる。
常にどこか入っていた天然は見られなくなり、その代わりに今みたいなからからかうような所作が増えた。気づくと彼女のペースに乗せられてるというのはこれまでにもあったことだが、今じゃそれはほぼ日常茶飯事と化していた。
そういった過去の変化を反芻しながら、ぼけーっと彼女の背中を見つめていたら……。
思わず口に出た。
「変わったな、クローラ」
「んー?」
怪訝そうな目でこちらを振り返る愛奴さん。
おっといけない、今のは言い方がまずかったか。俺はしどろもどろになりながら慌てて取り繕う。
「あ、いやあの……変な意味で言ったんじゃなくて。なんていうか……いつも後ろをついてきてたのが、急に手を取ってグイグイ引っ張り始めたような感じになったかなーって」
「……」
「べ、別にイヤってわけじゃないよ!? ただ、ちょっとびっくりしただけで――んっ!?」
その後の弁明は、強制的に口を封じられてできなかった。
そして封じたのは、彼女自身の唇だった。
柔らかく、それでいて湿った感触が伝わってきて、俺はしばらく何も考えられなくなる。
唐突なキス。これもあれ以来変わった要素の一つ。
これまではいつも目を閉じて俺がするのを待っていたのに、今じゃこうして隙あらば不意打ちしてくる。
「どちらでもないですよ」
彼女は顔を離し、閉じていた目を開けながら静かに囁いた。
「どちらでもないって……」
「あなたの恋人になったあの日から、私はあなたの後ろを歩いてるわけでもないし、あなたの前で手を引っ張ってもいません」
「……」
「だってどちらも、あなたを見られないじゃないですか。後ろなら目にうつるのはあなたの背中だけ。そして前だったら、声しか聞こえない」
そう言ってクローラは俺の隣にちょこんと正座。窓の外から差し込む秋晴れの光を二人して浴びる。
雲ひとつない快晴の空はまるで窓という額縁に収められた絵画のようだ。
「だから、こうして隣にいるのですよ」
「となり……」
「そうですとも。横を見ればいつもあなたの顔がある。逆にあなたにも、私を見てもらえる。それが一番の幸せであり、唯一の願い。そしてそれは未来永劫変わることはありません」
その言葉の通りに、クローラは俺を斜に見上げた。つぶらな二つの瞳が、まっすぐこちらを向いている。一瞬でもそらすものかと訴えるように。
俺達は互いに恋人になることを誓った。だけどその関係は、まだ不完全だったことがわかった。
自分勝手に突っ走り、肝心の彼女を見てこなかった。思いを汲み取ってやれてなかった。互いを理解し、尊重し合うのが恋人なはずなのに、それがほぼできてなかったのだ。
「私の方も、至らない点は多々あったと反省してます。誰かとお付き合いするのなんて初めてのことですもの。お互い不器用なのは、仕方がないと言えば仕方がないです」
「……ごめん、色々」
「まーたそうやって謝って……駄目って言ったじゃないですか」
クローラは呆れ顔でそう言いながら、俺の肩にそっと自分の頭を預けてきた。
「今が至らないのであれば、この先頑張っていけばいいんです」
「……そうだね」
悪いとは思ってるけど、平身低頭して謝り続けることが正解なわけではない。それが苦悩の末導き出した答え。
大切なのは、過去のことより未来のこと。躓いても、何度だって起き上がればいい。
だって俺達は……。
「ずっと一緒だもんな」
そこだけ言葉に出して、俺は彼女の肩に手を回して抱き寄せた。
そう、ずっと一緒。恋人同士、決して千切れない絆で結ばれてる。だから何も心配することなんかないんだ。
「さぁさ、こうしていたいのも山々ですけど、早くしないと本当に遅刻してしまいますよ」
クローラは膝をポンと叩いて立ち上がると、朝ごはんの支度に戻ろうとした。
が。
「おっとと、忘れてました」
一旦立ち止まって、俺がさっきまで寝ていた布団の塊に歩み寄る。
そしてその端っこを引っ掴むと……。
「ほーらっ! いい加減起ーきーなーさいってば!」
バッサバッサと、突如始まった室内布団叩き。勢いよく、容赦なくホコリが撒き散らされる。
程なくして、羽毛製のそれは何かを吐き出した。
まるで純金を引き伸ばしたような金髪の少女。身体を丸めてまだぐっすりと眠っている。
肌は白く美しかったが、火傷や切り傷などの痕が目立つ。痛々しくはあったが、彼女の可憐さの方がそれを上回っていた。
「んー……まだねむぃー」
可憐な少女は言うことも可愛らしい。
だがそんな可愛い彼女のほっぺを、容赦なくクローラはつねりあげる。
「なーに寝言を言ってるんですか。さっさと着替えて顔洗って歯を磨いてください!」
「ん、ん……ぅー。寝言は寝て言うもんだからまだ寝るんー」
「常時寝言みたいなこと言ってる人がそんなセリフ吐いても説得力無いですよっと」
そうあしらって没収した布団を素早く畳み、クローラは台所へと戻っていった。
ダンゴムシ状態だった金髪少女は、モゴモゴ言いながらようやく起き上がる。そしてサファイアのように蒼い寝ぼけ眼が、俺の方を向く。
「おー、おはよ。ますたー」
にぱーっ、と無垢な笑顔を振りまきながら少女はそう挨拶した。俺は肩を竦めてその金髪頭に手を伸ばしてクシャクシャと撫でて返事をした。
「おはよう、リファ」
リファ。
俺のもう一人の恋人。
彼女もまた、あの学祭の日から少なからず変化を見せていた。
どのように変わったか有り体に言えば……クローラの逆、のような感じだろうか。
「ん」
リファは顔を離して目を閉じ、そのまま静止した。まるで何かを待っているみたいに微動だにしない。
「んっ」
こっちが何もしないでいると、リファはこっちに顔を近づけてきた。早くしろ、と言わんばかりに。
俺は小さく息を吐くと、そっと彼女の頬に手を添えて……。
軽く、口吻けた。
おはようのキス。
これは今までの日課で、今に始まったことじゃない。変化があったのはこうしておねだりしてくるというところだ。そうなる前は、隙あらば自分からしてくるスタイルだったのに。
騎士特有の押しの強さはどこへやら、完全に受け身な感じになっていたのである。
「えへへ、ますたぁー」
今度はとろけた声で言いながら、俺へとダイブ。ウリウリと胸板に顔を擦り付けてきた。
「ちょ、リファ何してんだよ」
「ふふ、マスターの匂いを満喫してるのだ」
聞いたかよ。寝ぼけてじゃなくてマジで言ってる。彼女の前職は騎士。以前だったら想像もつかないようなセリフだ。
同じことをやるにしても「こ、これはただマスターの体臭をチェックしてるだけだ! 決して私がクンカクンカしたいとかそんなんじゃないんだからなっ!」とかごまかすよ絶対。
すっかり甘えん坊さんになっちまいよってからに。いや、これはこれで可愛いからいいんだけどさ。
そんな事を思いながら元女騎士の頭を撫でていると、案の定それを見かねたクローラがどやしてきた。
「こーらっ、リファさん! いつまでそうやってるつもりですか、主くん困ってるでしょ」
別に困っちゃいないけど。という言葉はすんでのところで抑えた。
しかし別の問題が発生した。
「こ、困ってるっ!?」
俺はいいものの、注意を受けた本人は非常にショックだったようで。
漫画だったらガーン、とでっかく頭上に表示されてそうなわかりやすいリアクションを示した。
「ますたー……め、迷惑だったのか……。私のこと、嫌いになったのか?」
みるみるうちにその目は涙でいっぱいになり、愛らしい笑顔は一気に泣き顔へ早変わりした。
「ちょ、違うよ! 困ってなんかないって!」
「そーいえば最近、マスター私のこと好きって言ってくれてない……。あとはぎゅーってしてくれる回数も減った気がするし、エッチだって昨日も一昨日もしてないし……やっぱり私は嫌われたんだ……うぅ」
「あーはいはいごめんよごめんって!」
涙腺の堤防決壊寸前のところで俺は大仰に彼女をぎゅーっと抱擁した。
朝っぱらからギャン泣きされちゃかなわん。俺はしきりに何度も頭をなでながら慰めた。
「大丈夫、いつも俺はお前のこと大好きだかんよ。嫌いになったりなんて未来永劫ないから安心しなって」
「……ぐす、ほんと?」
嗚咽混じりに彼女はこちらを上目遣いで見つめてそう訊いた。
「ほんとほんと。ほら、涙拭いて鼻かみな」
「うゅ」
差し出したティッシュで涙をふきふき鼻水かみかみ、間一髪で金髪少女は泣き止んでくれた。
「えへへ、よかったぁ」
いい笑顔だなオイ。さっきのはウソ泣きだったのかと疑うくらい晴れやかでやんの。マイペースと言うか喜怒哀楽が極端というか……。
さてと、危機は去ったことだしそろそろ俺達も朝飯の準備に取り掛からねば。
「……」
立ち上がったところでふと横を見ると、リファは女の子座りしたままもそもそと何かの作業に耽っていた。
見てみたら、彼女はペンを持って右手をせわしなく動かしている。
左手にあるのは、アンティークな革製の手帳。そこに文章をつらつらと綴っているのであった。
「何書いてるんだ?」
「……ん、これか」
俺が覗き込みながら尋ねると、女騎士は照れくさそうに中身を見せてくれた。
そこに書かれていたのは……。
『10月23日:今日は朝一でマスターに好きって言ってもらえた。ぎゅーってしてもらえた。嬉しかった』
……。
なにこれ?
「これはな、その……日記だ」
モゴモゴとした口調で彼女は答える。
日記……はぁ、日記。
「嬉しかったこととか、幸せに感じたこととかあったらすかさず書き記しておくようにしているのだ」
「へぇ。でもどうして急にそんなものを?」
「……忘れたくないから」
手帳を閉じてその表紙を撫でながら、リファは儚げな表情で言った。
忘れたくない……だって?
それって、どういう……。
「ふ、深い意味はないさ。こうして形にしておけば、いつでも思い出せて便利だろうなぁって。それだけだ」
「……そっか」
「それに私……いろいろ忘れっぽいところあるし」
それに対して俺はかける言葉がすぐに見つからなかった。
別にその行動自体は何らおかしくないはずなのに、なんだか……妙に気になって仕方がない。
「マスター、大丈夫か? 深刻そうな面持ちでいるようだが」
その心境が顔にもろに出ていたのか、怪訝そうにリファが言った。
「いや、なんでもないよ。リファにしてはマメなことやり始めたなって、ちょっと感心しただけ」
「そ、そうだったのか。まぁ自分でもちゃんと続けられるかわからないけどな……もしかしたら、日記を書くこと自体忘れてしまうかも、なんてな」
苦笑しながら自虐気味に彼女は答えた。
そして俺の方をちらっと一瞥して続ける。
「なぁマスター」
「ん?」
「私……頑張るから。もっとマスターに好きになってもらえるように」
「……な、なんだよ突然」
「どれだけ忘れっぽくても、この恋心だけは絶対になくしたくないから。そのためにはマスターに今以上に好きになってもらわなくちゃって。恋人としても、自宅警備隊としても」
「リファ……」
「だから、こうしてほしいこととかあったら、遠慮なく言ってくれ。できる限り、応えられるよう務めるから……」
「……ありがとう」
健気なその思いに心を動かされた俺の口から、礼の言葉が自然に漏れた。それほど嬉しかったのだ。
だから俺も、応えないと。好きになって欲しいというのは互いに同じだから。
「もっと好きになってほしい……ですか」
ずいっ!!
と、クローラがいつの間にか俺たちの間に割って入った。
音も立てず気配も感じさせず、恐ろしく速い移動。俺でも見逃しちゃうね。
「そーですねぇ。クローラ的には、朝きちんと起きて、身支度から食事の準備まで滞りなくやってくれたら、好感度大幅アップかもですぅ」
リファに負けず劣らず愛嬌たっぷりのスマイルだ……目以外は。
手に持ったフライ返しで今にも襲いかかってきそうな気迫に、俺らは揃って萎縮する。
「リファさん? 私達は三人で恋人同士なんですよ? 主くんだけじゃなくクローラだってあなたにもっと好きになってもらいたいですし、そのための努力だってしてます。そのへんわかってますか?」
「……あい」
ややむくれ顔でそう言う彼女に、リファはしょげたように頷いた。こういうところも素直になったもんだよな。
「主くんも、あんまりリファさんを甘やかさないでくださいまし! 好きであることは過保護にしていい理由にはなりませんよ?」
「……心得ておきます」
俺も正座して軽く頭を下げて謝る。
確かに俺も最近少し甘くなりすぎたかもな。あの学祭のことで、そういう気が引けてるんだろうけど……ちゃんと直さなきゃ互いのために良くない。
そう思っているとクローラはその場にしゃがみ、俺とリファの肩に両腕を回して組んだ。
「好きだからこそ、時には厳しく接せねばならないのです。言うべきだと思ったことはことは、どのようなことであれ包み隠さず伝える。それが恋人同士ってものでしょう?」
「……ああ、そーだな」
それができてなかったからこそ、あの学祭のようなすれ違いが起きた。
だからもう迷ったりしない。自分で抱え込まない。そう決めたんだ。
「クローラ」
「はい?」
「好きだよ」
「……私もです」
静かに答えて、メイド服の少女は俺の頬に再びキスをした。
そして今度は反対側にいるリファにも、耳たぶのあたりに軽く口吻ける。
「リファさんもね」
「……ん」
顔を紅潮させてリファは短く返した。
そんな甘ったるい雰囲気もそこそこに、クローラは膝をポンと叩いて切り上げた。
「さぁ、朝ごはんにしましょう」
○
三十分後。
歯磨き洗顔そして着替えを終わらせ、みんなで朝食を共にし、出発の準備が整った。
向かうは俺達の学び舎、岩倉大学。
「よーし、そんじゃ行くとすっか」
「ん」
「ですっ!」
掛け声を上げていつものようにアパートの階段を降りて、近所のバス停まで向かう。そこまではいつもどおりだった。
いや、ごめん嘘。あと一つプロセスがあった。
「おはようございます」
ふいに背後にかかる声。
冷たく、つまらなそうで、何の感情もこもってないような挨拶。
それを聞くだけで、姿を見ずとも発言者がわかる。
俺達は三人同時に振り返り、その人物と向かい合った。
ミディアムボブの髪に眼鏡をかけた、地味そうな女の子。こちらをジト目で睨むように見つめてきていた。
「お、おはよ……未來」
「未來ちゃん!」
「……」
苦笑しながら俺は軽く手を上げて挨拶を返し。クローラは嬉しそうに飛び跳ね。リファは俺の背中にさっと隠れた。
八越未來。
常にツンケンした態度でいる、サド気味な後輩だ。
「どうもクソ先輩。相変わらずボケッとした面構えですね。本当に脳みそ起きてるんですか?」
「開口一番辛辣だなオイ」
「あぁすみません間違えました。本当に脳みそあるんですか?」
「世の中にはね、間違えたままのほうがいい選択というものもあるんだよ」
「よくわかりませんが先輩の生き方は間違ったものであるとは胸を張って言えます」
人の生き方にいちゃもんつけるのは間違った行為じゃないんですかねぇ……。
「ですが安心してください。その何から何まで間違いだらけの人生を是正するために私が教育係をしてるのですから」
人の人生設計に勝手に介入するのは間違った以下略。
「まったくほら、シャツの襟が立ってますよ。それに口元にソースがついたまま。拭いてあげますから、動かないでください」
「お、おう。悪い……」
「あと今日のお弁当は筑前煮と八宝菜ですので。嫌いなのは知ってますけど、栄養があるんですからちゃんと残さず食べてくださいよ」
「あ、ありがとう」
教育係。
俺に対してきつく当たりつつも、こうしてあれこれ世話を焼いてくれる。
異世界人二人と比べてこいつは全然変わんないな。
……と思うじゃん? どっこい、そーでもないんだよな。
彼女にもしっかり異変は起きている。それは……。
「……おはよ、クローラちゃん」
「うん。おはよう未來ちゃん!」
……はい、おわかりいただけただろうか。
わかんない人のためにもう少し続けてご覧いただこう。
「あれ、未來ちゃん髪型変えた?」
「うん……昨日美容院行ったから」
「へーそうなんだ! すごくよく似合ってる!」
「そ、そうかな……あんまし変わってないかなーって自分では思ってたんだけど」
「ぜんぜん違うよ! さっぱりして顔がよく見えるようになったし、こっちのほうが断然いいって!」
「ありがと……。よかったら、今度クローラちゃんも同じところで切る? 友達紹介すると安くなるんだって」
「ほんと!? ありがとー!」
……めっちゃ仲良しである。
クローラは前々から親密になろうと試みていたみたいだが、未來は冷めた反応を返すだけだった。
だのに。今はこれである。
こうして通学中は楽しそうにお喋りしてるし、大学でもノート見せ合ったり、弁当分け合ったり。
誰もが予想だにしていなかったデレ期がここに来て急遽襲来とはね。驚くばかりだぜほんと。
氷の張ったような表情も、かなり綻んでる。安らいでるというか、少し嬉しそうな感じ。
あいつ……あんな顔できたんだな。
「……なんですかクソ先輩。人の顔ジロジロ見て」
と思ってたら再び瞬間冷却。絶対零度の眼差しが俺に容赦なく襲いかかる。
氷柱のように尖った言葉の弾丸を浴びる前に俺は決死の言い訳。
「いや、なんていうかその……ちょっと丸くなったかなーって」
「まるで私の性格に角が立ってたような言い草ですね」
立ってなかったとでも思ってんのかオメー。
「でも、今まで突っぱねてたにしちゃ仲良くしてんじゃん。どういう心境の心変わり?」
「……ふん、心が不潔な方には理解できませんよ」
ごめん間違えたわ。角が立ってんのは今もだわ。
丸く見えてんのは表面だけだわ。後ろ側はバッチリ尖ってますわ。心が円錐形だわ。
「でも、私も気になるな。仲良くなれたのは嬉しいけど、なんか急だったし」
すると今度はクローラも同じ質問をした。
そうくるとは思ってなかったのか、少しだけ未來はむくれて不満げに返す。
「……なんでそんなこと訊くの? 友だちになってって、最初に言ったのそっちじゃない」
「ああごめん、そういうんじゃないの。ただ、無理とかさせちゃってないかなーって。嫌々合わせてくれてるんだったら、逆に悪いし」
クローラは少しだけ目を伏せて、申し訳なさそうに言った。
それを見てバツが悪くなったのか、未來は小さく肩を落として彼女の隣に立った。そしてそっと耳元に口を近づけてなにやら耳打ちを始める。
盗み聞きしてやろうとしたが、すぐに話は終わってしまった。
一体何を吹き込まれたのかはわからないが、その内容を知るクローラは目を丸くしていた。
「……そっか。そうだったんだね」
納得したらしいクローラはそう言って少し笑った。それを横目に、未來はやや恥ずかしそうにしている。
マジで何喋ったんだよ、めちゃんこ気になるんだけど。
それとなーく、クローラに目配せしてこっそり教えるよう指示したのだが。彼女は微笑を続けるのみ。
いや、含み笑いはいいから教えろよ。何言われたんだよオイ。
「秘密です」
「ひょ?」
「だから秘密です。ほら、あれですよ。ラグジュアリー、の権利? ってやつです」
「……プライバシー?」
「そうそれ」
……。
いや、正論なんだけど非常に腑に落ちないんですが。こちらが普段未來に侵害されまくってる権利なんですが。
「それに、無理に聞き出そうとせずとも、答えは自ずと導けると思いますよ?」
「はぁ? なんだよそれ?」
「少しは自分で考えろってことですよ」
げしっ、と軽く俺のケツに未來が膝蹴りを浴びせた。
自分で考えろって……それってもしかして察してほしいってことか? 隠したいわけじゃないらしい……でもなぜ俺だけ?
純粋に疑問に思い、頭を捻っているとその眼鏡地味子は露骨なまでに大きなため息を吐く。
「はぁ……まず一番教育し直すべき点はそういうところなのかもですね」
「そういうとこって……」
「でもまぁいいですよ。それはそれでやりがいがあるってもんです」
怒っているようではあったが、それでも口角は若干吊り上がっていた。
意図が読めない俺はどうリアクションすればいいのか困惑するばかり。そんな反応を楽しむようにクローラと未來はクスクスと笑った。
何がおかしいんだよぅ……。
「心配いりませんよ。私の教育にきちんと従えば、いずれ嫌でも理解できるようになりますから」
「その教育を受けること自体嫌なんですけど」
「駄目ですよ、先輩は絶対に逃しませんから……絶対に。何があっても、何を犠牲にしても」
さらっと恐ろしいこと言ったな今。
だが本人はそうとは露程にも思ってないのか羞恥と高揚が入り混じったような笑顔で俺に一歩近づいた。
「だから覚悟してくださいね、先輩」
……。
「行こっか、クローラちゃん」
「そうね、未來ちゃん」
結局二人は最後まで言葉を濁したまま、仲良く先に行ってしまった。
否めない疎外感に苛まれる中、俺は思案にくれた。
自ずと答えは出る、ねぇ……。ああは言うけど、一体いつになるのやら。女の察してほど難解なものはないからなぁ。
「マスター。行こ……」
くいくい、とリファが俺の袖を引っ張って小さな声で言ってきた。
おっといけない、もたもたしてっとバスに遅れちゃう。
俺はリファとしっかり手を繋ぎ、十数メートル前を行く二人を追いかけた。
学祭も終わり、いよいよ年末が近づいている。
不思議だな。異世界人二人を家に迎えたときは、一日一日がとても長く感じられたけど、今は何もかもあっという間に過ぎていく。それだけ慣れてきたってことなんだろうか。
だけど焦ることはない。こうして俺達はいつも一緒にいる。
そしてそれに期限はない。この「いつも」は「いつまでも」続く。
リファ、クローラ、そして未來。それぞれ変わったところは多々あるけれど、築き上げた絆だけは絶対に変わらない。
その絆を紡ぎ続けることが、俺の……俺達の意思だから。
「主くーん。はやくはやくー!」
「クソせんぱーい! バスのがしたら先輩の責任ですよー!」
「はいはいはいわーってるよ」
目に見える変化を見守りながら、心の中にある不変の意思を強く持ちながら、俺達は今日も共に歩き続ける。
今以上に色んな事が起きるであろう未来に向かって。
これからも、ずっと。ずっと。
■リファの日記
【10月23日】
今日は朝一でマスターに好きって言ってもらえた。ぎゅーってしてもらえた。嬉しかった。
クローラにもぎゅーってしてもらったし、キスもしてくれた。
よかった、今日も二人はちゃんと私のことを好きでいてくれた。
おかげで傷の痛みが少し和らいだ。最近はいつもよりすごく痛くて苦しかったから、それでちょっぴり救われた気分になった。
二人と一緒にいれば、どんな苦痛も乗り越えられる。改めてそう思った。
今日のこの幸せを、私は絶対に忘れない。
あの色んな意味で壮絶な後夜祭から一週間が過ぎた。
勝手に一人で悩んで、リファとクローラに怒られて、目が覚めて改めて二人に告白したあの日以来。
俺を取り巻く環境が少しずつ変わり始めた。
まずはクローラ。
例の「愛叫け」ステージでは驚くほどの豹変ぶりを見せた彼女だったが、それ以降はいつもの敬語に戻っていた。
ただし、性格はちょっと……いや、かなり変わった。
さて、今はごくごく普通の平日朝。
いつものようにいち早く起きていた彼女は、普段通りにやさしく俺の身体をゆすりながら、とろけるような甘い声で起こしてくれる。それはもう起こすどころか更に深い微睡みの世界に誘うかのごとく。
……はずだった。
「ほーらっ、主くん! おーきーてーくーだーさいってば!」
だがあの日を境に、それは夢だったのかと疑うほどに全て一変。
彼女は、俺が寝ていた布団をまるごとひっくり返してそう怒鳴る。ごろごろと転がり、強制的に叩き起こされた俺は覚醒しきっていない頭を抑えながら呻く。
「んもうー、わかってるってば。別に起きないなんて言ってないだろ……」
「いーえ、騙されません。ここ最近主くんはやるやる言っておいて結局やらないってのが多すぎます。こういうのやるやる詐欺って言うんでしたよね。昨日ぐーぐる先生に教わりました」
軽くほっぺたを膨らませながら、そのメイド服を着た首輪少女は怒ったように言う。
やるやる詐欺って……そんなに多いのか俺は。
「そうですよ。昨日だってエッチしてくれるって言ったのに、いざ夜になったら『バイトで疲れたからもう寝る』って……これこそまさにヤるヤる詐欺じゃないですか」
「おーう、なかなかうまいこと言いおる」
「主くんは未だに上手になる兆しが見えませんけどね」
「おーう、なかなかうまいことディスりおる」
「まぁ私もかなり疲れてたからどのみち遠慮させていただく予定だったわけですが」
「おーう、なかなかうまいこと自分のことは棚に上げやがってこの野郎」
「とにかくっ!」
ビシィ、とクローラは俺の鼻先に人差し指を突きつけて険しい顔で宣言した。
「今までは奴隷として差し出がましい真似はしてきませんでしたが、これからはそうはいきません。堕落した主の生活を律するのも従者としての務めゆえ」
「まるで今まで差し出がましい真似をしてこなかったみたいな言い草だなおい」
「はいそこ言い訳しない」
してるのは指摘なんだよなぁ。
「大体主たる者ならば、毎日の生活習慣くらいきちんとしてしかるべきでしょう。子どもじゃないのですからしっかりしてくださいな」
「まぁそりゃそうだけども」
「まったく、おちんちんは毎日元気に早起きしているというのに、本体はいつまでたってもねぼすけさんなんですから……」
「まさか自分の体の一部より下に見られる日がくるとは思わなんだ」
「下半身だけにですか? ボケるならもう少しマシな話題にしてくださいまし」
ツッコミに徹してたつもりがボケに回ってたことになってる。何を言ってるのかわからねーと思うがありのまま今起きたことを話したぜ。
「そんなことより早く布団畳んで着替えて、朝ごはんの支度手伝ってください。今日は一限あるんですから」
肩をぐるぐる回しながらキッチンに向かう彼女。
この通り、クローラはなんというか……良く言えばサバサバした、悪く言えば奔放なスタイルに変わった。
物静かだった口数は桁が三つ四つほど増え、かなり舌が回ってる。
常にどこか入っていた天然は見られなくなり、その代わりに今みたいなからからかうような所作が増えた。気づくと彼女のペースに乗せられてるというのはこれまでにもあったことだが、今じゃそれはほぼ日常茶飯事と化していた。
そういった過去の変化を反芻しながら、ぼけーっと彼女の背中を見つめていたら……。
思わず口に出た。
「変わったな、クローラ」
「んー?」
怪訝そうな目でこちらを振り返る愛奴さん。
おっといけない、今のは言い方がまずかったか。俺はしどろもどろになりながら慌てて取り繕う。
「あ、いやあの……変な意味で言ったんじゃなくて。なんていうか……いつも後ろをついてきてたのが、急に手を取ってグイグイ引っ張り始めたような感じになったかなーって」
「……」
「べ、別にイヤってわけじゃないよ!? ただ、ちょっとびっくりしただけで――んっ!?」
その後の弁明は、強制的に口を封じられてできなかった。
そして封じたのは、彼女自身の唇だった。
柔らかく、それでいて湿った感触が伝わってきて、俺はしばらく何も考えられなくなる。
唐突なキス。これもあれ以来変わった要素の一つ。
これまではいつも目を閉じて俺がするのを待っていたのに、今じゃこうして隙あらば不意打ちしてくる。
「どちらでもないですよ」
彼女は顔を離し、閉じていた目を開けながら静かに囁いた。
「どちらでもないって……」
「あなたの恋人になったあの日から、私はあなたの後ろを歩いてるわけでもないし、あなたの前で手を引っ張ってもいません」
「……」
「だってどちらも、あなたを見られないじゃないですか。後ろなら目にうつるのはあなたの背中だけ。そして前だったら、声しか聞こえない」
そう言ってクローラは俺の隣にちょこんと正座。窓の外から差し込む秋晴れの光を二人して浴びる。
雲ひとつない快晴の空はまるで窓という額縁に収められた絵画のようだ。
「だから、こうして隣にいるのですよ」
「となり……」
「そうですとも。横を見ればいつもあなたの顔がある。逆にあなたにも、私を見てもらえる。それが一番の幸せであり、唯一の願い。そしてそれは未来永劫変わることはありません」
その言葉の通りに、クローラは俺を斜に見上げた。つぶらな二つの瞳が、まっすぐこちらを向いている。一瞬でもそらすものかと訴えるように。
俺達は互いに恋人になることを誓った。だけどその関係は、まだ不完全だったことがわかった。
自分勝手に突っ走り、肝心の彼女を見てこなかった。思いを汲み取ってやれてなかった。互いを理解し、尊重し合うのが恋人なはずなのに、それがほぼできてなかったのだ。
「私の方も、至らない点は多々あったと反省してます。誰かとお付き合いするのなんて初めてのことですもの。お互い不器用なのは、仕方がないと言えば仕方がないです」
「……ごめん、色々」
「まーたそうやって謝って……駄目って言ったじゃないですか」
クローラは呆れ顔でそう言いながら、俺の肩にそっと自分の頭を預けてきた。
「今が至らないのであれば、この先頑張っていけばいいんです」
「……そうだね」
悪いとは思ってるけど、平身低頭して謝り続けることが正解なわけではない。それが苦悩の末導き出した答え。
大切なのは、過去のことより未来のこと。躓いても、何度だって起き上がればいい。
だって俺達は……。
「ずっと一緒だもんな」
そこだけ言葉に出して、俺は彼女の肩に手を回して抱き寄せた。
そう、ずっと一緒。恋人同士、決して千切れない絆で結ばれてる。だから何も心配することなんかないんだ。
「さぁさ、こうしていたいのも山々ですけど、早くしないと本当に遅刻してしまいますよ」
クローラは膝をポンと叩いて立ち上がると、朝ごはんの支度に戻ろうとした。
が。
「おっとと、忘れてました」
一旦立ち止まって、俺がさっきまで寝ていた布団の塊に歩み寄る。
そしてその端っこを引っ掴むと……。
「ほーらっ! いい加減起ーきーなーさいってば!」
バッサバッサと、突如始まった室内布団叩き。勢いよく、容赦なくホコリが撒き散らされる。
程なくして、羽毛製のそれは何かを吐き出した。
まるで純金を引き伸ばしたような金髪の少女。身体を丸めてまだぐっすりと眠っている。
肌は白く美しかったが、火傷や切り傷などの痕が目立つ。痛々しくはあったが、彼女の可憐さの方がそれを上回っていた。
「んー……まだねむぃー」
可憐な少女は言うことも可愛らしい。
だがそんな可愛い彼女のほっぺを、容赦なくクローラはつねりあげる。
「なーに寝言を言ってるんですか。さっさと着替えて顔洗って歯を磨いてください!」
「ん、ん……ぅー。寝言は寝て言うもんだからまだ寝るんー」
「常時寝言みたいなこと言ってる人がそんなセリフ吐いても説得力無いですよっと」
そうあしらって没収した布団を素早く畳み、クローラは台所へと戻っていった。
ダンゴムシ状態だった金髪少女は、モゴモゴ言いながらようやく起き上がる。そしてサファイアのように蒼い寝ぼけ眼が、俺の方を向く。
「おー、おはよ。ますたー」
にぱーっ、と無垢な笑顔を振りまきながら少女はそう挨拶した。俺は肩を竦めてその金髪頭に手を伸ばしてクシャクシャと撫でて返事をした。
「おはよう、リファ」
リファ。
俺のもう一人の恋人。
彼女もまた、あの学祭の日から少なからず変化を見せていた。
どのように変わったか有り体に言えば……クローラの逆、のような感じだろうか。
「ん」
リファは顔を離して目を閉じ、そのまま静止した。まるで何かを待っているみたいに微動だにしない。
「んっ」
こっちが何もしないでいると、リファはこっちに顔を近づけてきた。早くしろ、と言わんばかりに。
俺は小さく息を吐くと、そっと彼女の頬に手を添えて……。
軽く、口吻けた。
おはようのキス。
これは今までの日課で、今に始まったことじゃない。変化があったのはこうしておねだりしてくるというところだ。そうなる前は、隙あらば自分からしてくるスタイルだったのに。
騎士特有の押しの強さはどこへやら、完全に受け身な感じになっていたのである。
「えへへ、ますたぁー」
今度はとろけた声で言いながら、俺へとダイブ。ウリウリと胸板に顔を擦り付けてきた。
「ちょ、リファ何してんだよ」
「ふふ、マスターの匂いを満喫してるのだ」
聞いたかよ。寝ぼけてじゃなくてマジで言ってる。彼女の前職は騎士。以前だったら想像もつかないようなセリフだ。
同じことをやるにしても「こ、これはただマスターの体臭をチェックしてるだけだ! 決して私がクンカクンカしたいとかそんなんじゃないんだからなっ!」とかごまかすよ絶対。
すっかり甘えん坊さんになっちまいよってからに。いや、これはこれで可愛いからいいんだけどさ。
そんな事を思いながら元女騎士の頭を撫でていると、案の定それを見かねたクローラがどやしてきた。
「こーらっ、リファさん! いつまでそうやってるつもりですか、主くん困ってるでしょ」
別に困っちゃいないけど。という言葉はすんでのところで抑えた。
しかし別の問題が発生した。
「こ、困ってるっ!?」
俺はいいものの、注意を受けた本人は非常にショックだったようで。
漫画だったらガーン、とでっかく頭上に表示されてそうなわかりやすいリアクションを示した。
「ますたー……め、迷惑だったのか……。私のこと、嫌いになったのか?」
みるみるうちにその目は涙でいっぱいになり、愛らしい笑顔は一気に泣き顔へ早変わりした。
「ちょ、違うよ! 困ってなんかないって!」
「そーいえば最近、マスター私のこと好きって言ってくれてない……。あとはぎゅーってしてくれる回数も減った気がするし、エッチだって昨日も一昨日もしてないし……やっぱり私は嫌われたんだ……うぅ」
「あーはいはいごめんよごめんって!」
涙腺の堤防決壊寸前のところで俺は大仰に彼女をぎゅーっと抱擁した。
朝っぱらからギャン泣きされちゃかなわん。俺はしきりに何度も頭をなでながら慰めた。
「大丈夫、いつも俺はお前のこと大好きだかんよ。嫌いになったりなんて未来永劫ないから安心しなって」
「……ぐす、ほんと?」
嗚咽混じりに彼女はこちらを上目遣いで見つめてそう訊いた。
「ほんとほんと。ほら、涙拭いて鼻かみな」
「うゅ」
差し出したティッシュで涙をふきふき鼻水かみかみ、間一髪で金髪少女は泣き止んでくれた。
「えへへ、よかったぁ」
いい笑顔だなオイ。さっきのはウソ泣きだったのかと疑うくらい晴れやかでやんの。マイペースと言うか喜怒哀楽が極端というか……。
さてと、危機は去ったことだしそろそろ俺達も朝飯の準備に取り掛からねば。
「……」
立ち上がったところでふと横を見ると、リファは女の子座りしたままもそもそと何かの作業に耽っていた。
見てみたら、彼女はペンを持って右手をせわしなく動かしている。
左手にあるのは、アンティークな革製の手帳。そこに文章をつらつらと綴っているのであった。
「何書いてるんだ?」
「……ん、これか」
俺が覗き込みながら尋ねると、女騎士は照れくさそうに中身を見せてくれた。
そこに書かれていたのは……。
『10月23日:今日は朝一でマスターに好きって言ってもらえた。ぎゅーってしてもらえた。嬉しかった』
……。
なにこれ?
「これはな、その……日記だ」
モゴモゴとした口調で彼女は答える。
日記……はぁ、日記。
「嬉しかったこととか、幸せに感じたこととかあったらすかさず書き記しておくようにしているのだ」
「へぇ。でもどうして急にそんなものを?」
「……忘れたくないから」
手帳を閉じてその表紙を撫でながら、リファは儚げな表情で言った。
忘れたくない……だって?
それって、どういう……。
「ふ、深い意味はないさ。こうして形にしておけば、いつでも思い出せて便利だろうなぁって。それだけだ」
「……そっか」
「それに私……いろいろ忘れっぽいところあるし」
それに対して俺はかける言葉がすぐに見つからなかった。
別にその行動自体は何らおかしくないはずなのに、なんだか……妙に気になって仕方がない。
「マスター、大丈夫か? 深刻そうな面持ちでいるようだが」
その心境が顔にもろに出ていたのか、怪訝そうにリファが言った。
「いや、なんでもないよ。リファにしてはマメなことやり始めたなって、ちょっと感心しただけ」
「そ、そうだったのか。まぁ自分でもちゃんと続けられるかわからないけどな……もしかしたら、日記を書くこと自体忘れてしまうかも、なんてな」
苦笑しながら自虐気味に彼女は答えた。
そして俺の方をちらっと一瞥して続ける。
「なぁマスター」
「ん?」
「私……頑張るから。もっとマスターに好きになってもらえるように」
「……な、なんだよ突然」
「どれだけ忘れっぽくても、この恋心だけは絶対になくしたくないから。そのためにはマスターに今以上に好きになってもらわなくちゃって。恋人としても、自宅警備隊としても」
「リファ……」
「だから、こうしてほしいこととかあったら、遠慮なく言ってくれ。できる限り、応えられるよう務めるから……」
「……ありがとう」
健気なその思いに心を動かされた俺の口から、礼の言葉が自然に漏れた。それほど嬉しかったのだ。
だから俺も、応えないと。好きになって欲しいというのは互いに同じだから。
「もっと好きになってほしい……ですか」
ずいっ!!
と、クローラがいつの間にか俺たちの間に割って入った。
音も立てず気配も感じさせず、恐ろしく速い移動。俺でも見逃しちゃうね。
「そーですねぇ。クローラ的には、朝きちんと起きて、身支度から食事の準備まで滞りなくやってくれたら、好感度大幅アップかもですぅ」
リファに負けず劣らず愛嬌たっぷりのスマイルだ……目以外は。
手に持ったフライ返しで今にも襲いかかってきそうな気迫に、俺らは揃って萎縮する。
「リファさん? 私達は三人で恋人同士なんですよ? 主くんだけじゃなくクローラだってあなたにもっと好きになってもらいたいですし、そのための努力だってしてます。そのへんわかってますか?」
「……あい」
ややむくれ顔でそう言う彼女に、リファはしょげたように頷いた。こういうところも素直になったもんだよな。
「主くんも、あんまりリファさんを甘やかさないでくださいまし! 好きであることは過保護にしていい理由にはなりませんよ?」
「……心得ておきます」
俺も正座して軽く頭を下げて謝る。
確かに俺も最近少し甘くなりすぎたかもな。あの学祭のことで、そういう気が引けてるんだろうけど……ちゃんと直さなきゃ互いのために良くない。
そう思っているとクローラはその場にしゃがみ、俺とリファの肩に両腕を回して組んだ。
「好きだからこそ、時には厳しく接せねばならないのです。言うべきだと思ったことはことは、どのようなことであれ包み隠さず伝える。それが恋人同士ってものでしょう?」
「……ああ、そーだな」
それができてなかったからこそ、あの学祭のようなすれ違いが起きた。
だからもう迷ったりしない。自分で抱え込まない。そう決めたんだ。
「クローラ」
「はい?」
「好きだよ」
「……私もです」
静かに答えて、メイド服の少女は俺の頬に再びキスをした。
そして今度は反対側にいるリファにも、耳たぶのあたりに軽く口吻ける。
「リファさんもね」
「……ん」
顔を紅潮させてリファは短く返した。
そんな甘ったるい雰囲気もそこそこに、クローラは膝をポンと叩いて切り上げた。
「さぁ、朝ごはんにしましょう」
○
三十分後。
歯磨き洗顔そして着替えを終わらせ、みんなで朝食を共にし、出発の準備が整った。
向かうは俺達の学び舎、岩倉大学。
「よーし、そんじゃ行くとすっか」
「ん」
「ですっ!」
掛け声を上げていつものようにアパートの階段を降りて、近所のバス停まで向かう。そこまではいつもどおりだった。
いや、ごめん嘘。あと一つプロセスがあった。
「おはようございます」
ふいに背後にかかる声。
冷たく、つまらなそうで、何の感情もこもってないような挨拶。
それを聞くだけで、姿を見ずとも発言者がわかる。
俺達は三人同時に振り返り、その人物と向かい合った。
ミディアムボブの髪に眼鏡をかけた、地味そうな女の子。こちらをジト目で睨むように見つめてきていた。
「お、おはよ……未來」
「未來ちゃん!」
「……」
苦笑しながら俺は軽く手を上げて挨拶を返し。クローラは嬉しそうに飛び跳ね。リファは俺の背中にさっと隠れた。
八越未來。
常にツンケンした態度でいる、サド気味な後輩だ。
「どうもクソ先輩。相変わらずボケッとした面構えですね。本当に脳みそ起きてるんですか?」
「開口一番辛辣だなオイ」
「あぁすみません間違えました。本当に脳みそあるんですか?」
「世の中にはね、間違えたままのほうがいい選択というものもあるんだよ」
「よくわかりませんが先輩の生き方は間違ったものであるとは胸を張って言えます」
人の生き方にいちゃもんつけるのは間違った行為じゃないんですかねぇ……。
「ですが安心してください。その何から何まで間違いだらけの人生を是正するために私が教育係をしてるのですから」
人の人生設計に勝手に介入するのは間違った以下略。
「まったくほら、シャツの襟が立ってますよ。それに口元にソースがついたまま。拭いてあげますから、動かないでください」
「お、おう。悪い……」
「あと今日のお弁当は筑前煮と八宝菜ですので。嫌いなのは知ってますけど、栄養があるんですからちゃんと残さず食べてくださいよ」
「あ、ありがとう」
教育係。
俺に対してきつく当たりつつも、こうしてあれこれ世話を焼いてくれる。
異世界人二人と比べてこいつは全然変わんないな。
……と思うじゃん? どっこい、そーでもないんだよな。
彼女にもしっかり異変は起きている。それは……。
「……おはよ、クローラちゃん」
「うん。おはよう未來ちゃん!」
……はい、おわかりいただけただろうか。
わかんない人のためにもう少し続けてご覧いただこう。
「あれ、未來ちゃん髪型変えた?」
「うん……昨日美容院行ったから」
「へーそうなんだ! すごくよく似合ってる!」
「そ、そうかな……あんまし変わってないかなーって自分では思ってたんだけど」
「ぜんぜん違うよ! さっぱりして顔がよく見えるようになったし、こっちのほうが断然いいって!」
「ありがと……。よかったら、今度クローラちゃんも同じところで切る? 友達紹介すると安くなるんだって」
「ほんと!? ありがとー!」
……めっちゃ仲良しである。
クローラは前々から親密になろうと試みていたみたいだが、未來は冷めた反応を返すだけだった。
だのに。今はこれである。
こうして通学中は楽しそうにお喋りしてるし、大学でもノート見せ合ったり、弁当分け合ったり。
誰もが予想だにしていなかったデレ期がここに来て急遽襲来とはね。驚くばかりだぜほんと。
氷の張ったような表情も、かなり綻んでる。安らいでるというか、少し嬉しそうな感じ。
あいつ……あんな顔できたんだな。
「……なんですかクソ先輩。人の顔ジロジロ見て」
と思ってたら再び瞬間冷却。絶対零度の眼差しが俺に容赦なく襲いかかる。
氷柱のように尖った言葉の弾丸を浴びる前に俺は決死の言い訳。
「いや、なんていうかその……ちょっと丸くなったかなーって」
「まるで私の性格に角が立ってたような言い草ですね」
立ってなかったとでも思ってんのかオメー。
「でも、今まで突っぱねてたにしちゃ仲良くしてんじゃん。どういう心境の心変わり?」
「……ふん、心が不潔な方には理解できませんよ」
ごめん間違えたわ。角が立ってんのは今もだわ。
丸く見えてんのは表面だけだわ。後ろ側はバッチリ尖ってますわ。心が円錐形だわ。
「でも、私も気になるな。仲良くなれたのは嬉しいけど、なんか急だったし」
すると今度はクローラも同じ質問をした。
そうくるとは思ってなかったのか、少しだけ未來はむくれて不満げに返す。
「……なんでそんなこと訊くの? 友だちになってって、最初に言ったのそっちじゃない」
「ああごめん、そういうんじゃないの。ただ、無理とかさせちゃってないかなーって。嫌々合わせてくれてるんだったら、逆に悪いし」
クローラは少しだけ目を伏せて、申し訳なさそうに言った。
それを見てバツが悪くなったのか、未來は小さく肩を落として彼女の隣に立った。そしてそっと耳元に口を近づけてなにやら耳打ちを始める。
盗み聞きしてやろうとしたが、すぐに話は終わってしまった。
一体何を吹き込まれたのかはわからないが、その内容を知るクローラは目を丸くしていた。
「……そっか。そうだったんだね」
納得したらしいクローラはそう言って少し笑った。それを横目に、未來はやや恥ずかしそうにしている。
マジで何喋ったんだよ、めちゃんこ気になるんだけど。
それとなーく、クローラに目配せしてこっそり教えるよう指示したのだが。彼女は微笑を続けるのみ。
いや、含み笑いはいいから教えろよ。何言われたんだよオイ。
「秘密です」
「ひょ?」
「だから秘密です。ほら、あれですよ。ラグジュアリー、の権利? ってやつです」
「……プライバシー?」
「そうそれ」
……。
いや、正論なんだけど非常に腑に落ちないんですが。こちらが普段未來に侵害されまくってる権利なんですが。
「それに、無理に聞き出そうとせずとも、答えは自ずと導けると思いますよ?」
「はぁ? なんだよそれ?」
「少しは自分で考えろってことですよ」
げしっ、と軽く俺のケツに未來が膝蹴りを浴びせた。
自分で考えろって……それってもしかして察してほしいってことか? 隠したいわけじゃないらしい……でもなぜ俺だけ?
純粋に疑問に思い、頭を捻っているとその眼鏡地味子は露骨なまでに大きなため息を吐く。
「はぁ……まず一番教育し直すべき点はそういうところなのかもですね」
「そういうとこって……」
「でもまぁいいですよ。それはそれでやりがいがあるってもんです」
怒っているようではあったが、それでも口角は若干吊り上がっていた。
意図が読めない俺はどうリアクションすればいいのか困惑するばかり。そんな反応を楽しむようにクローラと未來はクスクスと笑った。
何がおかしいんだよぅ……。
「心配いりませんよ。私の教育にきちんと従えば、いずれ嫌でも理解できるようになりますから」
「その教育を受けること自体嫌なんですけど」
「駄目ですよ、先輩は絶対に逃しませんから……絶対に。何があっても、何を犠牲にしても」
さらっと恐ろしいこと言ったな今。
だが本人はそうとは露程にも思ってないのか羞恥と高揚が入り混じったような笑顔で俺に一歩近づいた。
「だから覚悟してくださいね、先輩」
……。
「行こっか、クローラちゃん」
「そうね、未來ちゃん」
結局二人は最後まで言葉を濁したまま、仲良く先に行ってしまった。
否めない疎外感に苛まれる中、俺は思案にくれた。
自ずと答えは出る、ねぇ……。ああは言うけど、一体いつになるのやら。女の察してほど難解なものはないからなぁ。
「マスター。行こ……」
くいくい、とリファが俺の袖を引っ張って小さな声で言ってきた。
おっといけない、もたもたしてっとバスに遅れちゃう。
俺はリファとしっかり手を繋ぎ、十数メートル前を行く二人を追いかけた。
学祭も終わり、いよいよ年末が近づいている。
不思議だな。異世界人二人を家に迎えたときは、一日一日がとても長く感じられたけど、今は何もかもあっという間に過ぎていく。それだけ慣れてきたってことなんだろうか。
だけど焦ることはない。こうして俺達はいつも一緒にいる。
そしてそれに期限はない。この「いつも」は「いつまでも」続く。
リファ、クローラ、そして未來。それぞれ変わったところは多々あるけれど、築き上げた絆だけは絶対に変わらない。
その絆を紡ぎ続けることが、俺の……俺達の意思だから。
「主くーん。はやくはやくー!」
「クソせんぱーい! バスのがしたら先輩の責任ですよー!」
「はいはいはいわーってるよ」
目に見える変化を見守りながら、心の中にある不変の意思を強く持ちながら、俺達は今日も共に歩き続ける。
今以上に色んな事が起きるであろう未来に向かって。
これからも、ずっと。ずっと。
■リファの日記
【10月23日】
今日は朝一でマスターに好きって言ってもらえた。ぎゅーってしてもらえた。嬉しかった。
クローラにもぎゅーってしてもらったし、キスもしてくれた。
よかった、今日も二人はちゃんと私のことを好きでいてくれた。
おかげで傷の痛みが少し和らいだ。最近はいつもよりすごく痛くて苦しかったから、それでちょっぴり救われた気分になった。
二人と一緒にいれば、どんな苦痛も乗り越えられる。改めてそう思った。
今日のこの幸せを、私は絶対に忘れない。
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