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第一話 ざまぁ中断
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世界のバランスを保つとは、世界の自然のサイクルを乱さないことです。
一つの世界が滅ぶことも、また新しい世界が生まれるためには必要なことなのです。
でも、最近はそれが乱れかけている様子です。
それをどうにかするためのお仕事を僕は今、お手伝いしているのです。
「バカな! Fランクの最低テイマーが、何でドラゴンを操れるんだよ!」
あっ……わぁ、やってるやってる……
「俺をパーティーから追放したお前たちに教える義理はない。お前たちが知らなかっただけだ……本当の俺を」
巨大生物の背に乗る人間の青年。
それを恐怖で怯えた表情で見上げる四人の人間たち。
うん、青年くん。ごめんね。それ、本当は君の力じゃなくて、気まぐれで与えられた力なんです。
神界の『前・創造神さま』がテキトーに与えた力なんです。
「エンシェントドラゴン、共に最果ての地へ行く前に……力を貸して欲しい。こいつらは殺さなくていい。でも、後悔を刻み込んでやりたい」
「グルアアアアアアアアア!」
「「「「ひいいいいい!!!!」」」」
えっと、あの人間が乗ってるのはドラゴンですね。
決め顔で言われている「最果ての地」というのは意味不明だけど、とりあえずあのドラゴンをこの世界の生物百科事典でサーチすると……
「ま、待ってくれ、俺……」
「ね、ねえ、あのとき私たちはあなたを追放するの反対したのよ! でも、リーダーが勝手に!」
「そ、そうよ! ねえ、私たち、幼馴染でしょ? ねえ、小さい頃は仲良くて、お嫁さんにとか、そういう話してたでしょ?」
「た、たすけて……」
あらら、恐怖に怯えて彼らは泣いて……
「ふざけるな。今さら手の平を返してるんじゃない。リーダーも、そして俺をゴミのような扱いしたビッチ共も、思い知らせてやる! 俺の真の力で!」
「「「「ッッ!!??」」」」
「天地に轟け! 世界よ揺れろ! 今こそ……伝説の始まりだ!!」
だからね、君の真の力ではないんです……っと、サーチ完了。
『分かりました、『御主神(ごしゅしん)さま』。あれはエンシェントドラゴン……この世界の創成期から生息する古龍……分かりやすく言うと、伝説のチョー強いドラゴンです!』
すると、僕の言葉を聞いた、僕がお仕えする御主神さまは美しい笑みを浮かべられた。
『ほうほう、そんなスゴそーなのを、バカの気まぐれで使役させられるようにしちゃったと。よく調べた、妾(わらわ)のめんこい『天使・マイン』よ。ほれ、褒美にホッペにチューじゃ』
『ひゃぅ!?』
『ぐふ♡ 初々しい反応をする。あとで死ぬほど抱いてやるぞ~♡』
うぅ、このお方は僕のお気持ちを知りながらこういうことを……たいへん光栄で嬉しいですから僕も困っちゃうんです。
『それで、あの人間はどうされます?』
『もちろん、『チート回収』じゃ、今すぐに♪』
『え、でも何だか今は過去の仲間っぽいのを見返しているようですし、もう少し待ってあげても……』
『そんなの知らぬ』
『そ、そんな……可哀想ですよぉ……』
『黙れ。口にチューする。ちゅ♡』
『っ!?』
そして、僕はこの方には逆らえない。
全宇宙の頂点に君臨する『全神(ぜんしん)さま』より『神命(しんめい)』を与えられ、世界に散らばる『バランスの悪いチート』を回収されるこの御方のアシスタントとして御供をさせて戴いているのに、こういうことばかり……ずっと憧れていたから幸せでもあるんだけど……
『うぅ、わ、分かりました……御心のままに……』
『ごちそーさんじゃ。では、早速……』
そして、僕が折れたことにニンマリと笑みを浮かべた僕の御主神さまは、軽く咳ばらいをされて……
――偶然手にした力でチョーシに乗っ……世界を見下す愚かなる生物よ……
「え? な、なんだ? この声は一体どこから……」
――過ぎた力は世界の崩壊を招く。貴様の力は回収する。
「え? な、なにを……あれ? なんだ、天から僕に光……うわぁ!?」
世界にとってバランスの悪いチート……それを今、『回収』された。
これであの人間の青年は……
「僕は一体……え? エンシェントドラゴン……?」
「……………」
「どうしたんだ、エンシェントドラゴン! 僕の、うわ、ちょ、落ちる……うわぁ!?」
「……グル……!」
「一体どうし、え? 何で? どこへ行くの? 待って、待ってくれよ! どうして! 僕たちは友達だったじゃないか!」
能力で使役したものを友達とは言わないと思いますが、どうやら能力無くなったとたん、ドラゴンは態度を変えて行ってしまいましたね。
『まっ、あの使役の能力には一種の魅了や洗脳の力があったのでのう。これでこの世界の仕事はおしまいじゃ♡ さ~て、あとは宿屋でムフフなお楽しみ……っと、その前に……コホン!』
――悲観するな、人間よ。貴様らが真の友情で結ばれる運命ならば、今度はチートではなく自力で友になれ
御主神さまは、ちゃんと神のメッセージを残される。
本当はこういうのダメなんですけどね……
「な、なにが……」
「は、はは……な、なんだ、ドラゴン行っちまったぞ! ビビらせやがって!」
「え……!?」
「この野郎! ビビらせやがって! おらぁ、もういっぺんさっきみたいにイキがってみろ!」
「ぐへ!? そ、そんな、なんで!? 俺は選ばれた存在じゃなかっ、ぐへええ!?」
さて、もう終わりのようですし、僕はこれから役目が……とりあえず人間の君、頑張ってくださいね。
一つの世界が滅ぶことも、また新しい世界が生まれるためには必要なことなのです。
でも、最近はそれが乱れかけている様子です。
それをどうにかするためのお仕事を僕は今、お手伝いしているのです。
「バカな! Fランクの最低テイマーが、何でドラゴンを操れるんだよ!」
あっ……わぁ、やってるやってる……
「俺をパーティーから追放したお前たちに教える義理はない。お前たちが知らなかっただけだ……本当の俺を」
巨大生物の背に乗る人間の青年。
それを恐怖で怯えた表情で見上げる四人の人間たち。
うん、青年くん。ごめんね。それ、本当は君の力じゃなくて、気まぐれで与えられた力なんです。
神界の『前・創造神さま』がテキトーに与えた力なんです。
「エンシェントドラゴン、共に最果ての地へ行く前に……力を貸して欲しい。こいつらは殺さなくていい。でも、後悔を刻み込んでやりたい」
「グルアアアアアアアアア!」
「「「「ひいいいいい!!!!」」」」
えっと、あの人間が乗ってるのはドラゴンですね。
決め顔で言われている「最果ての地」というのは意味不明だけど、とりあえずあのドラゴンをこの世界の生物百科事典でサーチすると……
「ま、待ってくれ、俺……」
「ね、ねえ、あのとき私たちはあなたを追放するの反対したのよ! でも、リーダーが勝手に!」
「そ、そうよ! ねえ、私たち、幼馴染でしょ? ねえ、小さい頃は仲良くて、お嫁さんにとか、そういう話してたでしょ?」
「た、たすけて……」
あらら、恐怖に怯えて彼らは泣いて……
「ふざけるな。今さら手の平を返してるんじゃない。リーダーも、そして俺をゴミのような扱いしたビッチ共も、思い知らせてやる! 俺の真の力で!」
「「「「ッッ!!??」」」」
「天地に轟け! 世界よ揺れろ! 今こそ……伝説の始まりだ!!」
だからね、君の真の力ではないんです……っと、サーチ完了。
『分かりました、『御主神(ごしゅしん)さま』。あれはエンシェントドラゴン……この世界の創成期から生息する古龍……分かりやすく言うと、伝説のチョー強いドラゴンです!』
すると、僕の言葉を聞いた、僕がお仕えする御主神さまは美しい笑みを浮かべられた。
『ほうほう、そんなスゴそーなのを、バカの気まぐれで使役させられるようにしちゃったと。よく調べた、妾(わらわ)のめんこい『天使・マイン』よ。ほれ、褒美にホッペにチューじゃ』
『ひゃぅ!?』
『ぐふ♡ 初々しい反応をする。あとで死ぬほど抱いてやるぞ~♡』
うぅ、このお方は僕のお気持ちを知りながらこういうことを……たいへん光栄で嬉しいですから僕も困っちゃうんです。
『それで、あの人間はどうされます?』
『もちろん、『チート回収』じゃ、今すぐに♪』
『え、でも何だか今は過去の仲間っぽいのを見返しているようですし、もう少し待ってあげても……』
『そんなの知らぬ』
『そ、そんな……可哀想ですよぉ……』
『黙れ。口にチューする。ちゅ♡』
『っ!?』
そして、僕はこの方には逆らえない。
全宇宙の頂点に君臨する『全神(ぜんしん)さま』より『神命(しんめい)』を与えられ、世界に散らばる『バランスの悪いチート』を回収されるこの御方のアシスタントとして御供をさせて戴いているのに、こういうことばかり……ずっと憧れていたから幸せでもあるんだけど……
『うぅ、わ、分かりました……御心のままに……』
『ごちそーさんじゃ。では、早速……』
そして、僕が折れたことにニンマリと笑みを浮かべた僕の御主神さまは、軽く咳ばらいをされて……
――偶然手にした力でチョーシに乗っ……世界を見下す愚かなる生物よ……
「え? な、なんだ? この声は一体どこから……」
――過ぎた力は世界の崩壊を招く。貴様の力は回収する。
「え? な、なにを……あれ? なんだ、天から僕に光……うわぁ!?」
世界にとってバランスの悪いチート……それを今、『回収』された。
これであの人間の青年は……
「僕は一体……え? エンシェントドラゴン……?」
「……………」
「どうしたんだ、エンシェントドラゴン! 僕の、うわ、ちょ、落ちる……うわぁ!?」
「……グル……!」
「一体どうし、え? 何で? どこへ行くの? 待って、待ってくれよ! どうして! 僕たちは友達だったじゃないか!」
能力で使役したものを友達とは言わないと思いますが、どうやら能力無くなったとたん、ドラゴンは態度を変えて行ってしまいましたね。
『まっ、あの使役の能力には一種の魅了や洗脳の力があったのでのう。これでこの世界の仕事はおしまいじゃ♡ さ~て、あとは宿屋でムフフなお楽しみ……っと、その前に……コホン!』
――悲観するな、人間よ。貴様らが真の友情で結ばれる運命ならば、今度はチートではなく自力で友になれ
御主神さまは、ちゃんと神のメッセージを残される。
本当はこういうのダメなんですけどね……
「な、なにが……」
「は、はは……な、なんだ、ドラゴン行っちまったぞ! ビビらせやがって!」
「え……!?」
「この野郎! ビビらせやがって! おらぁ、もういっぺんさっきみたいにイキがってみろ!」
「ぐへ!? そ、そんな、なんで!? 俺は選ばれた存在じゃなかっ、ぐへええ!?」
さて、もう終わりのようですし、僕はこれから役目が……とりあえず人間の君、頑張ってくださいね。
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