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最終話 神もこんなもん
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「バカ野郎! どこ見て歩いてやがる! 死にてーのか!」
「え……あれ?」
事故直前に時を戻し、彼が事故にあわない運命に。
フェイトくんから、元のソノタくんに戻った彼は周囲の風景、さらにメタボリックでハゲの今の自分の肉体に呆然とし、腰を抜かしています。
「あれ? なんで? ロリの……あれ?」
あっ、そういえば記憶をまだ消してませんね。
転生した後の記憶を……
「なんで!? なんで俺、もとに……転生は!? チートは!? なんで?」
錯乱して騒ぎ出すソノタくん。まぁ、急でビックリしますよね……
「ねえ、何よあれ?」
「クスリでもやってるんじゃないの? こわい……」
「ママ、あの人どうしたの?」
「見ちゃいけません!」
横断歩道で腰を抜かして錯乱している彼を、周囲の人たちは冷たい目で見ます。
しかしその視線に構わずにソノタくんは騒ぎます。
「おい、どうなってんだよ! 転生の神! 俺に土下座したジーさん! 俺は死んだんだろ? パーフェクトなチート無双ハーレム人生を送るはずだろ! 何で元に戻ってんだよ!」
それは予定になかったことで……ちなみに、その前の転生神さまは懲戒免職で……
「そ、そうだ、これは夢だ! こんなはずはねえ! あの異世界ファンタジーは間違いなく現実……へへ、そうだよ、これは夢だよ! よし、こうなったら……」
ソノタくんは……って、何を!
「夢の中なら好きなことやってやる! あっちが俺にとっての元の世界で現実なんだ! こっちは夢……なら、こっちにしかいない制服着たJKを――――」
「おい、そこのお前、何をしている! ええい、大人しくしろ!」
「え? 警察……ッ、ちょ、何をするんだよ、話せよ! クソ公務員が!」
「こら、危ないだろ。ええい、一旦歩道へ戻りなさい!」
「うるせえ、俺の邪魔をするなら、俺の最強チート魔法でテメエら全員ぶちのめすぞ!」
「いかんな……相当頭が……とにかく落ち着いて、な?」
と、ここでどうやらこの世界の正義の味方の役職お巡りさんが丁度駆けつけて大事にならずに済みましたね。
これであとは……
「くそ、何でだよ! 魔法が、俺のスキルが何も、それに夢が全然覚めねえ……どうなってんだよ、畜生! 出て来いよ! なぁ、転生神、もう一回出て来いよ畜生ぅ!!」
にしても、随分と抵抗をされますね。
挙句の果てに……
「何が神だ、ふざけるな! 俺をもう一度死なせて転生させろよぉぉぉぉ!!!!」
なんてことを……どうして?
元々何も持っていなかった人を、ただ元に戻しただけなのに……
『努力をする者とは、その状況をどうにかしようとする者たち。努力をしない者たちとは、その状況を何もしないで文句しか言わない者たちなのだ』
『御主神さま?』
『自らの努力で手にしたものではなく、所詮は与えられたものだというのに……人間というのは身勝手なものなのだ』
そのとき、御主神さまは呆れたように溜息を吐かれました。
『にしても、せっかく生き返れたのに……こんなに恨まれるだなんて……』
『理想が詰め込めて与えられた第二の生を……またこっちの都合で奪われた……そう思っているんだろうな』
『まぁ、実際に……そう……なのかもしれませんね……でも……』
『ん?』
『僕もこれで全てが丸く収まると思ったのですが、ソノタくんは事故で死んだというのに、今となっては自ら死を望むだなんて……そして……ここまで恨まれるだなんて……』
御主神さまは呆れてますが、僕は少し気が重くなりました。
まさか、元に戻したことを恨まれるだなんて……
『やっぱり、記憶だけ消してあの世界に居させてあげた方が良かったのでしょうか?』
『知らん。しかしそうなると、こっちの世界の方がバランス悪くなるのだ』
『でも……』
『は~……まったくおぬしは……』
『あっ……』
すると、御主神さまは優しく僕を抱きしめられ……
『恨まれたから何だ? 憎まれたから何だ? 人間なんてこんなものだ。そして言ってみれば……神とて、こんなもんだ。願われている一方で、意味もなく恨まれるものなのだ』
『御主神さま……』
『片方を救えば、その救いに伴って誰かが不幸になる。見捨てればその者が不幸になる。全てが望む救いなど不可能。ゆえに、神は声を聴くし、下界を見守る。しかし願いを叶えるかはまた別』
そう仰られ、御主神さまはいつものいやらしい笑みから、とても切なそうに僕に微笑みかけ……
『結局、一番宇宙のバランスを崩すのは、宇宙に住む生命がどうのこうのではなく……神々が『何か』を与えすぎてしまうことが、一番のバランス崩壊に繋がるのだ』
『そ、それは……』
『そう、本来はチートを持った奴らに自重させるのではなく、神々が自重しなければならんということだ。今回のチート騒動回収は、自重しない神々の手によって引き起こされたことなのだ』
言ってみれば身も蓋も無いことではありますが、一つの答えを僕は教えてもらったような気がしました。
本来僕たちが、干渉することも与えることも、あまりし過ぎず、下界の方たちの手によって考え、そして行動させることが……
『まっ、むっずかしー話はもうこれで終わり! ほれ、今日の仕事は終わりなのだ。というわけで、今日は……うむ、あそこのラブホというものに行ってヤリまくりなのだ♡』
と、またまじめな表情を一変させて僕を脇に抱えて走り出す御主神さま。
どうやら、御主神さまは御主神さまなりの神様としての在り方を最初から持たれているようですね。
一方で僕はまだ神界の住人として悩んでばかりです。
でも……
『分かりました。今日も僕がいっぱい動きます!』
『うむ、今日も凶暴に気張るのだ! アレもせよ。尻のやつ。結構ハマったのだ』
『分かりました! 御主神さまの意識がぶっとぶまで頑張ります!』
『おほ、こやつめ♡』
僕はこの旅でもっと学んでいこうと思います。
『そういえば、次の世界はどこなのですか?』
『ん? 火星』
「え……あれ?」
事故直前に時を戻し、彼が事故にあわない運命に。
フェイトくんから、元のソノタくんに戻った彼は周囲の風景、さらにメタボリックでハゲの今の自分の肉体に呆然とし、腰を抜かしています。
「あれ? なんで? ロリの……あれ?」
あっ、そういえば記憶をまだ消してませんね。
転生した後の記憶を……
「なんで!? なんで俺、もとに……転生は!? チートは!? なんで?」
錯乱して騒ぎ出すソノタくん。まぁ、急でビックリしますよね……
「ねえ、何よあれ?」
「クスリでもやってるんじゃないの? こわい……」
「ママ、あの人どうしたの?」
「見ちゃいけません!」
横断歩道で腰を抜かして錯乱している彼を、周囲の人たちは冷たい目で見ます。
しかしその視線に構わずにソノタくんは騒ぎます。
「おい、どうなってんだよ! 転生の神! 俺に土下座したジーさん! 俺は死んだんだろ? パーフェクトなチート無双ハーレム人生を送るはずだろ! 何で元に戻ってんだよ!」
それは予定になかったことで……ちなみに、その前の転生神さまは懲戒免職で……
「そ、そうだ、これは夢だ! こんなはずはねえ! あの異世界ファンタジーは間違いなく現実……へへ、そうだよ、これは夢だよ! よし、こうなったら……」
ソノタくんは……って、何を!
「夢の中なら好きなことやってやる! あっちが俺にとっての元の世界で現実なんだ! こっちは夢……なら、こっちにしかいない制服着たJKを――――」
「おい、そこのお前、何をしている! ええい、大人しくしろ!」
「え? 警察……ッ、ちょ、何をするんだよ、話せよ! クソ公務員が!」
「こら、危ないだろ。ええい、一旦歩道へ戻りなさい!」
「うるせえ、俺の邪魔をするなら、俺の最強チート魔法でテメエら全員ぶちのめすぞ!」
「いかんな……相当頭が……とにかく落ち着いて、な?」
と、ここでどうやらこの世界の正義の味方の役職お巡りさんが丁度駆けつけて大事にならずに済みましたね。
これであとは……
「くそ、何でだよ! 魔法が、俺のスキルが何も、それに夢が全然覚めねえ……どうなってんだよ、畜生! 出て来いよ! なぁ、転生神、もう一回出て来いよ畜生ぅ!!」
にしても、随分と抵抗をされますね。
挙句の果てに……
「何が神だ、ふざけるな! 俺をもう一度死なせて転生させろよぉぉぉぉ!!!!」
なんてことを……どうして?
元々何も持っていなかった人を、ただ元に戻しただけなのに……
『努力をする者とは、その状況をどうにかしようとする者たち。努力をしない者たちとは、その状況を何もしないで文句しか言わない者たちなのだ』
『御主神さま?』
『自らの努力で手にしたものではなく、所詮は与えられたものだというのに……人間というのは身勝手なものなのだ』
そのとき、御主神さまは呆れたように溜息を吐かれました。
『にしても、せっかく生き返れたのに……こんなに恨まれるだなんて……』
『理想が詰め込めて与えられた第二の生を……またこっちの都合で奪われた……そう思っているんだろうな』
『まぁ、実際に……そう……なのかもしれませんね……でも……』
『ん?』
『僕もこれで全てが丸く収まると思ったのですが、ソノタくんは事故で死んだというのに、今となっては自ら死を望むだなんて……そして……ここまで恨まれるだなんて……』
御主神さまは呆れてますが、僕は少し気が重くなりました。
まさか、元に戻したことを恨まれるだなんて……
『やっぱり、記憶だけ消してあの世界に居させてあげた方が良かったのでしょうか?』
『知らん。しかしそうなると、こっちの世界の方がバランス悪くなるのだ』
『でも……』
『は~……まったくおぬしは……』
『あっ……』
すると、御主神さまは優しく僕を抱きしめられ……
『恨まれたから何だ? 憎まれたから何だ? 人間なんてこんなものだ。そして言ってみれば……神とて、こんなもんだ。願われている一方で、意味もなく恨まれるものなのだ』
『御主神さま……』
『片方を救えば、その救いに伴って誰かが不幸になる。見捨てればその者が不幸になる。全てが望む救いなど不可能。ゆえに、神は声を聴くし、下界を見守る。しかし願いを叶えるかはまた別』
そう仰られ、御主神さまはいつものいやらしい笑みから、とても切なそうに僕に微笑みかけ……
『結局、一番宇宙のバランスを崩すのは、宇宙に住む生命がどうのこうのではなく……神々が『何か』を与えすぎてしまうことが、一番のバランス崩壊に繋がるのだ』
『そ、それは……』
『そう、本来はチートを持った奴らに自重させるのではなく、神々が自重しなければならんということだ。今回のチート騒動回収は、自重しない神々の手によって引き起こされたことなのだ』
言ってみれば身も蓋も無いことではありますが、一つの答えを僕は教えてもらったような気がしました。
本来僕たちが、干渉することも与えることも、あまりし過ぎず、下界の方たちの手によって考え、そして行動させることが……
『まっ、むっずかしー話はもうこれで終わり! ほれ、今日の仕事は終わりなのだ。というわけで、今日は……うむ、あそこのラブホというものに行ってヤリまくりなのだ♡』
と、またまじめな表情を一変させて僕を脇に抱えて走り出す御主神さま。
どうやら、御主神さまは御主神さまなりの神様としての在り方を最初から持たれているようですね。
一方で僕はまだ神界の住人として悩んでばかりです。
でも……
『分かりました。今日も僕がいっぱい動きます!』
『うむ、今日も凶暴に気張るのだ! アレもせよ。尻のやつ。結構ハマったのだ』
『分かりました! 御主神さまの意識がぶっとぶまで頑張ります!』
『おほ、こやつめ♡』
僕はこの旅でもっと学んでいこうと思います。
『そういえば、次の世界はどこなのですか?』
『ん? 火星』
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