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第二十四話 震動
しおりを挟む『な、なんだ……何が起こった!? あのガラクタは何をした!?』
ハーラムはただそう叫ぶしかなかった。
将として、戦場においてはたとえ目の前で親しい者が死のうとも毅然とした振る舞いで冷静にいなければならない。
指揮官の動揺は直接、隊に、軍に、戦の勝敗に繋がるからだ。
だが、それでもこの状況はありえないと叫ぶしかなかった。
『アヌル!』
『うそ、うそだよ……巨神兵が……無敵の巨神兵が!』
そう、女神より与えられた無敵の巨神兵。操れば戦の勝利は約束され、屈強なモンスターの攻撃も大魔導士のいかなる魔法をも跳ね返す力を持っていた。
しかし、その巨神兵の四肢がアッサリと砕け散った。
「さぁ……行くぞッ!!」
クエイクが振動しながらダッシュ。
動揺が収まらない銀百合乙女騎士団だが、逃げるわけにはいかず、ただ剣を振り回した。
『ひっ、来た!』
『臆するな! あ、相手は一人、う、く、来るなぁあ!」
それは勇敢に戦おうという意思ではなく、怖くてただ相手に「来るな」と威嚇するような怯えた剣をただひたすら振り回した。
「動き回られると迷惑だし……なら!」
身を捩ってブンブン剣を振り回す巨神兵に溜息を吐きながら、クエイクは巨神兵との間合いギリギリで止まり、そこで両手を地面について振動を放つ。
「超震動!!」
大地の揺れ。それは巨神兵たちの足元周辺に起こった。
『うわ、なに?! 地面が揺れて、土魔法!?』
『体勢を崩すな! この程度の揺れで膝をつく巨神兵ではない!』
『ぐぬぬぬぬ、倒れるもんかぁぁ!!』
地面の揺れにバランスを崩して倒れそうになる巨神兵たちだったが、何とかその両足で踏ん張って堪えた。
そう、踏ん張った。
だからこそ、その両足は停止した状態。
「砕けろ!」
『なっ?!』
「粉砕!」
『う、わ!?』
動きを止めてしまえば、触れて粉砕することなど訳もない。
クエイクは巨神兵たちの膝を次々と砕いていき、立つことが出来ない状態にしていく。
『うそ、な、なにが……何が起こって……なんで? なぜ、あのガラクタにこれほどの力が!?』
無敵の巨神兵を操る銀百合乙女騎士団が次々と膝をついていく。
悪夢。
もはや、冷静に対処し、何かをどうにかしようという乙女たちはいない。
『ひ、いや、殺され……いや、やめて、いやあああ!』
『なんでよ、なんで! だって、巨神兵は無敵なのになんで!?』
一騎当千の巨神兵が十体。しかし、その一体に大して苦戦しなければ十体の数など大した数ではなく、何よりも戦う意思も折れた者たちなど、もはやクエイクの敵ではなかった。
「あとは……お前だけだ……」
『ッッ!!??』
気付けば銀百合乙女騎士団九体の巨神兵が膝を砕かれて倒れてしまい、残るはハーラムの巨神兵一体だけとなってしまった。
『あ……あ……』
もはや、震えが止まらず、涙も溢れ、失禁してしまいそうな恐怖のどん底に。
このままでは殺される。
いや、殺されるだけならまだいいかもしれない。
クエイクの後ろに控える魔王軍。
その中には涎を垂らした醜いオークたちもいる。
そして、自分は女……
『いや、だ……あ、んなやつらに……』
敗戦の将が、ましてや女がどうなるかなど想像も容易い。
負けて死ぬよりも、抗えない苦痛と辱めを受けることだけは耐えられない。
しかし、人智を超えた今のクエイクの力に勝てる気がまったくしなかった。
それならばいっそ舌でも噛んで……
「うっ、うぐっ……」
『え?』
しかし、その時だった。
「っ、はあ、はあ……うぐっ」
突如、動悸を激しく息荒くしたクエイクが片膝をついた。
「な、だ、旦那様ッ!?」
「クエイクッ!?」
「こ、これは……まさか……もう副作用が!?」
「クエイク様ッ!?」
「まずいぞ、クエイク様が……!」
クエイクの予想外の姿に魔王軍と三姉妹姫にも動揺が走る。
そして、クエイク自身も……
(く、思ってたよりも早く……いけない……早めにこいつだけでも倒さないと!)
自分の想定よりも早く限界が近づいてしまった。
超振動攻撃を連発して、体が熱くなってしまった。
そして……
『な、なにが? ……いや、これは……ッ、死ねええええ!』
「ッ!?」
これは千載一遇のチャンスだと、ハーラムは逃さない。
恐怖を抱きながらも、剣を振り上げてクエイクに向かって振り下ろす。
地面を転がって何とか回避するクエイク。
だが、その動きのキレは先ほどとは比べ物にならないほど落ちている。
「今、助けます! レビテーションッ!!」
「っ、クロース……」
「しっかりしてください、クエイク……っ、あつい!?」
慌ててクロースが浮遊の魔法でクエイクを引き寄せて救助する。
その身体を抱きしめると、異常なまでの熱に思わず声を上げてしまった。
『うおおおお、今が好機! 銀百合乙女騎士団の誇りを見せてくれる! 裏切り者のガラクタと共に滅びよ、魔王軍ッッ!!』
しかし、そんな状況をハーラムも待ってはくれない。
半ばやけくそのように声を上げながらも、勢いよく走って攻めてきた。
だが、今のクエイクの状況では……
「ちっ、仕方ない! わらわたちが出るぞ、敵は一体だ! 関節の狭間を狙え!」
ならば、自分たちがどうにかするしかない。
システィアが槍を掲げて前へ出る。
「うぬなのだ! 旦那様に一から十まで任せてどうするのだ! 儂ら魔王軍の力を見せてやるのだ!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおッッッ!!!!」」」」」
そして、魔王軍が意地となって前へ出る。
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