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――ええい、勉強だけでなく、剣の腕も二流・三流もいいところ! さぁ、立て! まだ特訓は終わらぬぞ! 私から一本取るまで今日は帰らせんぞ!
剣の指導も行った。
だが、奴は全てにおいてからきしだった。
何か陛下や周囲が認めるような才覚でもあればと思ったが、残念ながらそういった才能は持ち合わせていなかった。
――貴様というやつは~~~~、勉強もダメ! 剣もダメ! 一体何が……ん? ああ、さっき服を引っかけてボタンがほつれたようだが、こんなものどうでも……え? き、貴様何で裁縫道具などを持って……え? あ、ああ、いつも転んでばかりで服を破いたりするのでか……お、ほぉ、随分と手馴れているではないか……あ、か、かたじけない……
そんな奴の特技と言えば、しょうもないものであった。
――さて、今日も遅くなってしまったな。明日もみっちりと勉強を……わ、は、腹が……ち、ちが! べ、別にお腹が空いたとかそういうわけでは……え? 食事を作る? 貴様が? ふざけるな、貴様が料理など―――――――――――う、うまい……宮廷などで出される贅の極みの食事とはまた違う、ありふれた食材でありながらもここまで美味いとは……この素朴な味もまた……え!? しょ、将来コックになりたいだと!?
裁縫や料理といった、男にしては意外な特技があるだけでなく、まさかの将来の夢に面食らってしまった。
――ま、街のコックに……皆を笑顔にできるような……う、うむ、あ、いや、た、確かに素敵な夢ではあるがだな……あ~、その……
そして困ってしまった。私はこの男を姫様にふさわしい男になる様にと思っていたのだが、この男の抱いている夢は、姫様との未来を想像できなかったからだ。
王位継承権を持つ第一王女である姫様は、婿を取らねばならない。そして、その座を争うために日々欲に狂った者たちが水面下で政権争いをしている。
この男はその争いに参入し、その上で姫様との未来を勝ち取らねばならないのだと思っていたところ、この男はそんな未来をまるで考えていなかったのだ。
それは困る。
姫様の悲しむ顔を見たくはない。
何とかせねば……
剣の指導も行った。
だが、奴は全てにおいてからきしだった。
何か陛下や周囲が認めるような才覚でもあればと思ったが、残念ながらそういった才能は持ち合わせていなかった。
――貴様というやつは~~~~、勉強もダメ! 剣もダメ! 一体何が……ん? ああ、さっき服を引っかけてボタンがほつれたようだが、こんなものどうでも……え? き、貴様何で裁縫道具などを持って……え? あ、ああ、いつも転んでばかりで服を破いたりするのでか……お、ほぉ、随分と手馴れているではないか……あ、か、かたじけない……
そんな奴の特技と言えば、しょうもないものであった。
――さて、今日も遅くなってしまったな。明日もみっちりと勉強を……わ、は、腹が……ち、ちが! べ、別にお腹が空いたとかそういうわけでは……え? 食事を作る? 貴様が? ふざけるな、貴様が料理など―――――――――――う、うまい……宮廷などで出される贅の極みの食事とはまた違う、ありふれた食材でありながらもここまで美味いとは……この素朴な味もまた……え!? しょ、将来コックになりたいだと!?
裁縫や料理といった、男にしては意外な特技があるだけでなく、まさかの将来の夢に面食らってしまった。
――ま、街のコックに……皆を笑顔にできるような……う、うむ、あ、いや、た、確かに素敵な夢ではあるがだな……あ~、その……
そして困ってしまった。私はこの男を姫様にふさわしい男になる様にと思っていたのだが、この男の抱いている夢は、姫様との未来を想像できなかったからだ。
王位継承権を持つ第一王女である姫様は、婿を取らねばならない。そして、その座を争うために日々欲に狂った者たちが水面下で政権争いをしている。
この男はその争いに参入し、その上で姫様との未来を勝ち取らねばならないのだと思っていたところ、この男はそんな未来をまるで考えていなかったのだ。
それは困る。
姫様の悲しむ顔を見たくはない。
何とかせねば……
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