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第1章
07 レヴィ
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コンコン。
「入れ」
扉から顔を覗かせたレヴィは無愛想に言った。
「お邪魔します」
レヴィは床に座る。家にはどうやら椅子や机がないらしい。というか、物が衣服を除いて、何一つない。
他に扉がないところを見ると、どうやら他の部屋や、お風呂もないようだ。ご飯とかお風呂ってどうしてんのかな?
「ご飯とかお風呂は隣の家でしている」
俺の目線から察してか、心の声にレヴィは答えた。
「座って」
俺はレヴィの前に座る。
と、同時にレヴィは話し始める。
「さて、とりあえず礼を言っておこう。先程は私のピンチを助けてくれてありがとう」
「あ、あぁ」
「それで、お前は何が目的だ?」
「へ?」
言っている意味がよく分からなかった。
「貧民街なんかに何の用が合ってきた? と、聞いている」
「何の用……か」
「私を捕まえに来たのか? ゴールド目当てで。」
重々しい表情で俺を見つめるレヴィ。
「うん、そうだよ」
俺は正直に言った。
「やっぱり──」
「──そのつもりだったんだけどね、ここに来る前までは」
「え……?」
「でも、無理だった。子供達のあの笑顔を奪うような真似は俺にはできない」
レヴィは、真剣な目で俺を見つめてくる。
「所詮レヴィは泥棒で、どんな理由があろうと泥棒は泥棒。悪い人間に変わりはない、そう思っていた。でもレヴィの子供達に向ける笑顔は、悪人とは程遠いものだったんだ。あぁこの子達からレヴィは奪えない、奪っちゃいけないんだってさ」
これは紛れもない俺の本音だ。
「そうか……」
最早疑いの目などなく、安堵とも笑みとも取れないような表情をしているレヴィ。
「それにさ、好きになっちゃんだよ。貧民街のみんなのこと」
「そう……か……」
と、レヴィは突然泣き出した。
「お、おい。どうしたんだ?」
「いや、その……他所の奴が、貧民街の人達を好きになってくれたっていうのがなんか嬉しくてさ」
潤みを帯びた瞳で上目遣いに俺を見る。
その姿が、その仕草がとても可愛くって、俺は不覚にもときめいてしまった。
「あ、そ、そうか……」
俺は慌てて目をそらす。
こ、こんなん惚れてまうやろ!
「なぁ、その……お前のことなんて呼べばいい? ていうか、名前知らないし」
と、レヴィは聞いてくる。
「あぁ、俺は凪 隼人。隼人でいいよ」
「わかった、ハヤト。私はレヴィだ」
「あ、あぁ。わかったよ、レヴィ」
なんかこんな可愛い子に下の名前呼ばれるのって少し照れ臭いな。
なんか恥ずかしくて、別の話題を出すことにした。
「レヴィって何をきっかけに泥棒をはじめたの?」
少し間を開け、レヴィは話し始めた。
「私は元々貧民街に捨てられた子でね。3歳だった私には帰る場所もゴールドを稼ぐ方法もなかった。そんな私を暖かく迎えてくれたのは、ジェイルおじさんだった。
それから10年後、家にメルがやってきて、一気に家計は苦しくなった。
でも、ちょうどその頃、貧民街という制度を無くそうという声が、貴族から上がり始めてたらしいんだ。その中心人物は、ドレッド・グランベルクだった」
グランベルク……。そういえば超勇者もそんな名前だったな。
「つまり、超勇者の父ね。で、その人が働きかけてくれたお陰で、一応は暮らしていけてた。もちろん私も簡単なクエストで稼ぎに出てたけど。
でも……3年前になって、突然グランベルク家が、また税金を増やそうと言い出した。意味がわからないだろ」
「流石あいつの親、やはりクズだったか」
「そう、結局貴族にとっては、貧民街のことなんてただの暇つぶし程度だったんだ。
だから私は思った。こんなに理不尽なのは間違ってる。貧民街の人達も貴族の奴らも同じ人間のはずなのに!ってさ。
だから、私のスキルを使って、貴族専門の泥棒を始めたわけ。迷惑をかけないように、別の家で暮らし始めたのもその頃」
「そうか……。レヴィはすごいな……」
「え、何が?」
「いや、俺と同い年くらいなのに、色々抱えて、頑張っててさ」
「そ、そう?」
〇△〇
俺達は二時間以上話していた。
メルの子供の時の話、ジェイルさんの話、
面白かった話、悲しかった話、なんでも話した。
それから、俺達は普通に同い年だったらしいことも判明した。話している間はとてもたのしかった。
そんな楽しかった時間も終わりへと近づいていた。
「じゃあ俺そろそろジェイルさんの家に戻るわ」
「なぁ、ハヤト?」
「ん?」
「私がもし誰かに捕まったりしたら、あの子達の事頼んでもいいか?」
「あぁ、もちろんだよ」
「良かった! ありがとう、ハヤト! まぁ捕まる気なんて全然ないんだけどな」
と言って、少年のような無垢な笑顔を浮かべるレヴィ。
「もし捕まりそうになったら、俺がまた助けてやるよ」
と言って、俺もニカッと笑った。
「じゃあ」
「あぁ……また明日、な?」
「おう、また明日」
俺はジェイルさんの家に戻り、メルとジェイルさんを起こさないように布団に潜った。
明日はまた子供達と遊んで、それから新しいクエストでも探しに行こう。
それで夕方には、レヴィとまた話そう。
そうだ! 明日は俺の暮らしていた世界について話そう。
と、明日を楽しみにしながら、俺は眠りについた。
しかし、そんな明日が訪れることはなかった。
「入れ」
扉から顔を覗かせたレヴィは無愛想に言った。
「お邪魔します」
レヴィは床に座る。家にはどうやら椅子や机がないらしい。というか、物が衣服を除いて、何一つない。
他に扉がないところを見ると、どうやら他の部屋や、お風呂もないようだ。ご飯とかお風呂ってどうしてんのかな?
「ご飯とかお風呂は隣の家でしている」
俺の目線から察してか、心の声にレヴィは答えた。
「座って」
俺はレヴィの前に座る。
と、同時にレヴィは話し始める。
「さて、とりあえず礼を言っておこう。先程は私のピンチを助けてくれてありがとう」
「あ、あぁ」
「それで、お前は何が目的だ?」
「へ?」
言っている意味がよく分からなかった。
「貧民街なんかに何の用が合ってきた? と、聞いている」
「何の用……か」
「私を捕まえに来たのか? ゴールド目当てで。」
重々しい表情で俺を見つめるレヴィ。
「うん、そうだよ」
俺は正直に言った。
「やっぱり──」
「──そのつもりだったんだけどね、ここに来る前までは」
「え……?」
「でも、無理だった。子供達のあの笑顔を奪うような真似は俺にはできない」
レヴィは、真剣な目で俺を見つめてくる。
「所詮レヴィは泥棒で、どんな理由があろうと泥棒は泥棒。悪い人間に変わりはない、そう思っていた。でもレヴィの子供達に向ける笑顔は、悪人とは程遠いものだったんだ。あぁこの子達からレヴィは奪えない、奪っちゃいけないんだってさ」
これは紛れもない俺の本音だ。
「そうか……」
最早疑いの目などなく、安堵とも笑みとも取れないような表情をしているレヴィ。
「それにさ、好きになっちゃんだよ。貧民街のみんなのこと」
「そう……か……」
と、レヴィは突然泣き出した。
「お、おい。どうしたんだ?」
「いや、その……他所の奴が、貧民街の人達を好きになってくれたっていうのがなんか嬉しくてさ」
潤みを帯びた瞳で上目遣いに俺を見る。
その姿が、その仕草がとても可愛くって、俺は不覚にもときめいてしまった。
「あ、そ、そうか……」
俺は慌てて目をそらす。
こ、こんなん惚れてまうやろ!
「なぁ、その……お前のことなんて呼べばいい? ていうか、名前知らないし」
と、レヴィは聞いてくる。
「あぁ、俺は凪 隼人。隼人でいいよ」
「わかった、ハヤト。私はレヴィだ」
「あ、あぁ。わかったよ、レヴィ」
なんかこんな可愛い子に下の名前呼ばれるのって少し照れ臭いな。
なんか恥ずかしくて、別の話題を出すことにした。
「レヴィって何をきっかけに泥棒をはじめたの?」
少し間を開け、レヴィは話し始めた。
「私は元々貧民街に捨てられた子でね。3歳だった私には帰る場所もゴールドを稼ぐ方法もなかった。そんな私を暖かく迎えてくれたのは、ジェイルおじさんだった。
それから10年後、家にメルがやってきて、一気に家計は苦しくなった。
でも、ちょうどその頃、貧民街という制度を無くそうという声が、貴族から上がり始めてたらしいんだ。その中心人物は、ドレッド・グランベルクだった」
グランベルク……。そういえば超勇者もそんな名前だったな。
「つまり、超勇者の父ね。で、その人が働きかけてくれたお陰で、一応は暮らしていけてた。もちろん私も簡単なクエストで稼ぎに出てたけど。
でも……3年前になって、突然グランベルク家が、また税金を増やそうと言い出した。意味がわからないだろ」
「流石あいつの親、やはりクズだったか」
「そう、結局貴族にとっては、貧民街のことなんてただの暇つぶし程度だったんだ。
だから私は思った。こんなに理不尽なのは間違ってる。貧民街の人達も貴族の奴らも同じ人間のはずなのに!ってさ。
だから、私のスキルを使って、貴族専門の泥棒を始めたわけ。迷惑をかけないように、別の家で暮らし始めたのもその頃」
「そうか……。レヴィはすごいな……」
「え、何が?」
「いや、俺と同い年くらいなのに、色々抱えて、頑張っててさ」
「そ、そう?」
〇△〇
俺達は二時間以上話していた。
メルの子供の時の話、ジェイルさんの話、
面白かった話、悲しかった話、なんでも話した。
それから、俺達は普通に同い年だったらしいことも判明した。話している間はとてもたのしかった。
そんな楽しかった時間も終わりへと近づいていた。
「じゃあ俺そろそろジェイルさんの家に戻るわ」
「なぁ、ハヤト?」
「ん?」
「私がもし誰かに捕まったりしたら、あの子達の事頼んでもいいか?」
「あぁ、もちろんだよ」
「良かった! ありがとう、ハヤト! まぁ捕まる気なんて全然ないんだけどな」
と言って、少年のような無垢な笑顔を浮かべるレヴィ。
「もし捕まりそうになったら、俺がまた助けてやるよ」
と言って、俺もニカッと笑った。
「じゃあ」
「あぁ……また明日、な?」
「おう、また明日」
俺はジェイルさんの家に戻り、メルとジェイルさんを起こさないように布団に潜った。
明日はまた子供達と遊んで、それから新しいクエストでも探しに行こう。
それで夕方には、レヴィとまた話そう。
そうだ! 明日は俺の暮らしていた世界について話そう。
と、明日を楽しみにしながら、俺は眠りについた。
しかし、そんな明日が訪れることはなかった。
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