光速の走り屋オオサキショウコ

まとらまじゅつ

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第1章 胎動編

ACT.3 DUSTWAY

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 午前10時。朝食を終えて、六荒が帰っていく。彼が帰ると、部屋にやっと静けさが戻った。悪友ってやつは、いないと寂しいけど……今日は違う。今だけは、二人きりになりたかったから。部屋に残ったのは、おれと智姉さんだけ。少しほっとした。おれは玄関に出て、智姉さんと一緒に外出の準備をしていた。

「ちょっと、R35のガソリンを入れに行ってくるけど、一緒に来るか?」

 智姉さんがそう言うと、迷わずおれは答えた。

「行きます!」

 愛する人からの誘いなら、断る理由なんてない。智姉さんが車のキーを手に取ったのを見た瞬間、胸が高鳴る。

「R35を持つってのはな、維持費だけじゃない。自分の速さと向き合う覚悟も必要だ」

「うーん、スーパーカーだからかなり高いんでしょう? 10万くらい?」

 智姉さんは少し笑ってから言った。

「答えは5万円だ。ちょっと高いけど、政府の減税のおかげで、それで済むんだ。ガソリン代もその中に入ってる。」

「5万円!? 思ったより安いですね。」おれは驚いた。普通の車とは比べ物にならないほど高性能なのに、維持費は意外と現実的だった。
 準備が整い、二人で車に乗り込む。智姉さんがエンジンをかけると、R35のVR38エンジンが唸りを上げた。その音だけで、おれの心は高鳴った。

「行くぞ。シートベルト、しっかりつけておけ。」

 智姉さんの言葉に従い、おれはシートベルトをきつく締める。次の瞬間、軽くタイヤを鳴らし、R35が街道へ滑り出す。車がスムーズに曲がりながら、目的地に向かって走り出す。その感覚が、まるで世界が少しだけ速くなったかのように感じさせた。

 前橋のとあるガソリンスタンド。R35が停車し、店員がやってきて注文を聞いてきた。

「なににしましょうか?」

「ハイオク満タンで。」

「かしこまりました。」

 店員がR35のフェンダーにあるキャップを開け、給油ノズルを差し込んだ。その隣、青いFD3S型RX-7もガソリンを入れていた。リトラクタブルヘッドライトと美しいデザインが特徴の、まさに日本が誇る名車だ。
 近くで練習バトルを観戦していたと思われる二人の女性が立ち、FD3Sに目を留めた。
 ただの視線、じゃなかった。むしろ――何かを知っているような目だった.
 そう思わせる目だった。 気づけば、息を止めていた。まるで心を覗かれたような――そんな錯覚に襲われていた。
 切れ長の紫の瞳。表情は何も浮かべていないのに、まるで胸の内を見透かすようだった。

「……なんなんだよ、あいつ」

 無理やり視線を切り、タオルで手を拭く。手が少しだけ汗ばんでいた
 視線を感じて、ふと顔を上げた。
 FDの隣に立っていたのは、黒髪で切れ長の目をした女だった。
 ――目が合う。
 その瞬間、時間が止まったような錯覚に囚われた。まるで、すべてを見透かされたような、凍るような感覚――

「見て、あれ、斎藤智のクルマだ……」

 黒髪の女性が言うと、横にいる茶髪の女性も反応した。

「ガソスタで会えるなんて、運がいいな」

 その茶髪の女性、雨原芽来夜は、伝説の走り屋として名を馳せた智姉さんのことを知っているようだった。
 二人の女性がこちらに向かって歩いてくると、智姉さんが運転席の窓を開け、声をかけた。

「おいおい、伝説の走り屋、斎藤智じゃねーか!こんなところで会うなんて、偶然だな!」

 智姉さんは少し面倒くさそうに言った。

「別に、ガソリンを入れに来ただけだ。赤城最速のチーム・DUSTWAYのリーダー、雨原芽来夜。」

 智姉さんも雨原芽来夜のことを知っていた様子だ。芽来夜という名前には少し驚いたが、そんな余裕はなくて、すぐに反応した。

「朝走ってたのを見てたよ。」

「ギャラリーしてたのか?」

「そうだよ。お前が5連続ヘアピンの3つ目で抜いてるのを見てた。あの走りはかっこよかった。でも、赤いワンエイティも走ってたな。あれは誰だ?」

 智姉さんは少し誇らしげに答えた。

「それは私の弟子であり、妹分であり、恋人でもある。」

 “恋人”なんて言葉が口にされただけで、心臓が跳ね上がる。……ほんとにもう、からかうのはやめてほしい

「ちょっ……ちょっと、智姉さん!?」「ふふ、冗談だ。でも――あながち嘘でもないだろ?」

「へぇー、この娘がワンエイティのドライバーか。あんな車運転できるなんて、見えなかったな。」

「おれは、大崎翔子。……智姉さんには、昔から面倒を見てもらってる。」

 智姉さんが紹介すると、おれは思わず頬を赤らめた。

「16歳で免許持ってんのか?」

 雨原が驚いて言い、免許証を見せるように言った。

「2か月前に取ったばかりだけど、覚醒技も使ってる。」

「本当に、斎藤智から教えてもらったのか?」

「うん、覚醒技もね。」

 雨原は話題を変えた。

「今週金曜日にドリフト走行会を開催するんだけど、興味ある?」

「ドリフト走行会?」

「そう。開催したけど、チーム以外の参加者が少なくてな」

「そうか……ちょっと考えておく。」

 急な誘いだったが、すぐに決めることはできなかった。

「分かった。参加は当日まで受け付けてるから、いつでも言ってくれよ。」

 雨原は笑いながら、黒髪の女性と共にRX-7に乗り込んだ。 そのまま、ロータリーサウンドを響かせて走り去っていった。

 昼12時。和食「さいとう」の1階、仕事が始まる前の店内は穏やかな雰囲気だった。六荒も制服姿でテーブルについている。
 3人は名物「赤城山とんこつラーメン」を前に、さっきのガソリンスタンドでの話題に夢中になっていた。

「雨原芽来夜って、あの赤城最速の走り屋ですか?本当にそんなに速いんですか?」

 おれが興味津々で尋ねると、智姉さんは頷きながら答えた。

「お前が言った通りだ。バトルでは本気を出さなくても勝てる腕前だし、最近は覚醒技すら使わないって話だ。」

「覚醒技を使わないって……どれほど速いんですか?」おれはスープをすすりながら驚いた顔をした。

 六荒は少し目を細め、過去を思い出すように話し始めた。

「あいつは、俺がいたところでも有名だった。レース荒らしって呼ばれていて、彼女が出場したレースはほとんど壊滅状態だ。見たことがあるならわかるだろうけど、あの速さは異常だ。」

「閃光のような速さって、そういうことか……」おれは納得したように頷いた。

 智姉さんは新人時代の彼女について語る。

「彼女がデビューしたのは17歳だったな。その速さに赤城の走り屋たちが手も足も出ず、外に流れ出るようになったくらいだ。」

「そんなに影響があったんですか?」おれは驚きながら箸を止めた。

「そうだ。群馬の人口にまで影響を与えたって話だ。最速になったのは19歳頃だな。」

「それほどの腕なら、どんな車に乗ってるのか気になりますね。」おれが興味津々の顔で尋ねる。

 智姉さんは軽く微笑みながら続けた。

「FD……タービン替えて、465馬力ってとこだな。競技用パーツも詰め込んでる。軽さも、えげつない」

「そんな車を操れるなんて……」おれは無意識に息を飲んだ。

 智姉さんはさらに話を進める。

「彼女が率いるチーム、DUSTWAYは全員女性の走り屋だ。お酒や薬物はもちろん、喫煙や恋愛も禁止っていう厳しいルールがある。でも、赤城山を走る女なら誰もが憧れる存在だ。」

「でもさ、そんな厳しいルールで、50人もやってけるもんですか?」

「厳しい分、ルールを破ったら赤城山を追放される。改善しない場合はチームを脱退させられるんだ。」

「それでも、そんなチームに入りたいと思う人がいるんですね。」

「それだけDUSTWAYの名前が重いんだよ。」智姉さんは最後の一口を食べ終えると、満足げに箸を置いた。

 夜11時、赤城山。DUSTWAYのステッカーを貼った黒いFD3Sが、ヒルクライムの最後のヘアピンでトヨタ・JZA80スープラに追い抜かれた。Veilside製エアロを纏った黒いJZA80は、一瞬の隙を突き、暗闇へと消えていく。
 資料館前の駐車場には、雨原とDUSTWAYのメンバーが集まっていた。そこに、例のスープラが到着する。

「今、戻った。」

 黒髪で片目を隠した女性が静かにドアを閉める。その仕草には迷いのない自信が漂っていた。彼女の名前は葛西サクラ。

「速いよ……サクラさん。」

 FD3S乗りのメンバーが息を切らしながら近づく。「私のFD、コーナリングには自信あったのに、抜かれた……。重いJZA80であの速さ、さすがだね。」

「お前のFDも悪くないさ。」サクラは淡々と答える。「けど、このJZA80は軽量化で100kg以上削ってる。誰が乗っても速い車だけど、オレはその先を狙ってる。」

 雨原が近づいてきて、さりげなくガソリンスタンドでの話題を持ち出す。

「サクラ、大崎翔子って子、どうだった?」

「近くで見たら、思ったよりオーラがあったな。けど、あいつ16歳だろ。負けたら赤城最速の名が泣く。」

「確かに。けど、あいつまだ走行会に出るか決めてないみたいだぞ。明日、和食さいとうで話を聞いてみよう。」

 駐車場に、新たな車のエンジン音が響いた。黒のZN6型86を先頭に、黄色いCPV36型スカイラインクーペ、銀のGRX130型マークX G’sが続く。車体には「アース・ウインド・ファイヤー」のステッカーが目立つ。

「雨原芽来夜! ドリフト走行会、開催するんだって?」

 ZN6から降りた黒髪ツインテールの女が挑発的に言う。

「参加させてもらうッスよ!」

「当日、あんたらをギャフンと言わせるドリフト見せてやる!」

 金髪セミロングと銀髪ストレートのおさげの2人が便乗して挑発する。だが、雨原は冷ややかな笑みで返した。

「あたしたちに勝てるつもりか? 赤城最速は伊達じゃない。そんな腕前じゃ、挑むだけ無駄だ。」

 3人組は顔を歪めつつも、車に戻っていく。

「く……まだ雨原には勝てないってか……」

 黒髪ツインテールが悔しげに拳を握った。

「明日の朝だ。経験値稼げそうな相手を探そう。弱いやつを狩れば、次は雨原に挑める。」

「うんうん、そうッスね!」

「賛成だわ。」

 経験値を稼げる相手を探すと決めたのだった。 3人組を一蹴した雨原は、口を開いた。

「アース・ウインド・ファイヤー……あいつら、DUSTWAYを潰そうとしてた。脱退してくれたおかげで、正直助かったよ。」

 彼女たちのことを思い出すと、雨原は無意識に顔をしかめた。どうやら、DUSTWAYにいた頃から問題の多かったメンバーらしい。その嫌悪感が彼女にとっては自然なものだった。

 3月17日の火曜日。今日は智姉さんよりも遅く起きた。
 下りて1階に降りると、いつもの服に着替えた。

「おはようございます。」

「あれ、元気がない顔をしてるな。」

「昨日のドリフト走行会への誘いが頭から離れなくてさ。本当に参加すべきか迷ってるんだ。」

「やるかどうかは、お前が決めろ」

 つまり、自分の選択だ。考えがまとまらず、落ち着かない気持ちを抱えているおれは、

「今日の朝は少し落ち着きたいから、気分転換に走ってくるよ。」

 と言って、答えを見つけようと思った。もしかしたら、走ってる間に見つかるかもしれない。頭の中の混乱も晴れるかもしれない。

「走るんなら、早めに戻ってきてくれ。あと、事故やマナーの悪い走り屋には気をつけろ。」

 家を出るとき、鍵を持って外に出た。そこにあるワンエイティに乗り込んで、

「行こう、ワンエイティ。今日も最高の走りを見せてくれよ。」

 エンジンが目覚め、金属の咆哮が静寂を破る。その音は、まるで野獣が牙を剥く瞬間のようだった。ステアリングを握って、おれは赤城道路を駆け抜けていく。上り下りを繰り返し、ハイスピードで峠を攻めていった。

 ダウンヒルのスタート地点にある資料館の駐車場。3台の車が停まっていた。黒のZN6、黄色のCPV36型スカイラインクーペ、銀のマークX G’s。それぞれに「アースウインドファイヤー」のステッカーが貼られている。

「誰も来ないじゃん。朝早すぎたか?」

 黒髪ツインテールの女が、苛立たしげに言う。

「まぁ、来るまで待とうッス」

 金髪セミロングの少女が軽く肩をすくめた。

「いや、待ってる時間がもったいない! 出て来い、走り屋! あたしは経験値が欲しいんだ!」

 その叫びに応えるかのように、駐車場にワンエイティが現れる。

「来たな、走り屋!」

 ツインテールの女が笑みを浮かべた。翔子が車から降りると、すぐに声をかけられる。

「君、その車、本当に自分の?」

「ああ、自分の車だよ。」

「へぇ、16歳で180SXって……。親に買ってもらったんじゃないの?」

「違う。今は親と離れて暮らしてる。」

 おれの答えに、リーダー格の女は鼻で笑った。

「クスクス……葛西サクラがこんな子に警戒するなんて、恥ずかしい話だわ。」

「16歳の運転なんてたかが知れてるでしょ!」

「何がおかしいんだよ!」

 抑えきれない怒りが沸き上がる。

「悔しいなら、あたしたちを追いかけてみなよ。笑わせてくれるなら、それで十分だわ。」

 挑発の言葉が、胸に刺さる。その上――

「お前を走り屋にした人の顔が見てみたいね。」

「ふざけんなよ……! 智姉さんをバカにするなんて──絶対に許さない!」

 視界が赤く染まるほどの怒り。大切な人を馬鹿にされる怒りに突き動かされ、おれはワンエイティに飛び乗った。
 エンジンが怒りを叫び、赤城の闇を裂いていく。最初のヘアピンをドリフトでクリアし、コーナーを攻めるたびに感情が溢れ出す。

 直線の中で、銀色のマークXが現れた。

「来たわね……でも抜かせないわよ!」

 だが、おれのワンエイティは直線加速で圧倒的に勝る。すぐに追い越した。相手の318馬力では、350馬力のRB26を積んだおれの車には及ばない。

「速い……しかもコーナーでも安定してる! 小娘が……怪物か!」

 マークXのドライバーが怯えた表情を浮かべるのがバックミラー越しに見えた。その瞬間、3連続のヘアピンが迫る。

「行くぞ!」

 ハンドルを切り、すべてのヘアピンを滑るようにドリフトで攻めた。さらに、続くU字カーブも一気に抜ける。その先には、黄色のV36型スカイラインクーペがいた。

「抜けるもんなら抜いてみなッス!」

 スカイラインのドライバーが挑発するように叫ぶが、次の右ヘアピンでおれはアウト側から一気に抜き去る。

「速い……ふざけてた割にはやるじゃないか!」

 これで2人目だ。残るはリーダー格のZN6。彼女は第1高速区間で待ち構えていた。

「大崎翔子……来たか。でも、ここからは私が本気を見せる番よ!」

 リーダーはそう呟き、鋭い目つきでステアリングを握り直した。

 第1高速区間後のハンマーヘッド。
 リーダーのZN6が、一瞬でカーブを抜ける。その動きに違和感を覚えた。

「<コンパクト・メテオ>……か?」

 ZN6の挙動は異常だった。タイヤがアスファルトを噛む音が鋭く響き、まるで車体が吸い込まれるようにカーブを抜けていく。

「なるほど……技を使ったな。」

 おれは冷静にアクセルを踏み込み、距離を詰める。
 第2高速セクション。曲がりくねった道ではZN6が優位だ。だが直線では、RB26のパワーが勝る。

「どうやって抜こうか……いや、やるしかない!」

 ナイフ型の右ヘアピンが迫る。おれは覚醒技を解放した。

(迷ってるヒマなんかない。あいつらの挑発、走りで黙らせるしか──いや、違う。これはおれ自身の誇りの問題だ)「……行くよ、ワンエイティ。《フライ・ミー・ソー・ハイ》!」

 ワンエイティが赤いオーラをまとう。閃光のようにコーナーを駆け抜ける。タイヤが激しく路面を削り、白煙が上がる中、ZN6を追い越した。

「……今だ! イケイケイケイケーッ!」

 立ち上がりで完全に前に出る。その直後、ZN6がバランスを崩し始めた。

「……まだ抜かせない……でも、踏みすぎた?」

 一瞬、躊躇ったその踏み込みが――命取りだった。 結局、リーダーのZN6はスピンし、追撃は途絶えた。 ガードレールに軽く接触して停止していた。仲間たちが駆け寄る。

「谷村、大丈夫か?」

「……アイツ、笑ってたクセに……」

 谷村は拳を握りしめ、悔しさを滲ませながら言った。

「……“怪物”って、ああいう奴のことを言うんだな。笑ってるクセに、ブレーキの入りが人間離れしてた……」

 見かけによらず速い走りを見せた彼女に抜かれたことを思い出し、彼女たちは恐怖に襲われた。

「……ちくしょう、何なんだあいつ……」

「あれが、16歳……?」

 誰もが口を閉ざしたまま、車に乗り込む。冷や汗だけが残っていた。

 まるでホラー映画でゾンビを見たかのように、怖がり始めてしまった。3人は顔を引きつらせたまま、言葉もなく車へ駆け込んだ。

 3台を追い抜いた後、ワンエイティを路肩に停めた。エンジン音が消え、朝の静寂が耳を包む。

「くそ……あいつらにバカにされっぱなしじゃ終われない!」

 ハンドルを握りしめながら、これまでのレースを振り返る。負けたわけじゃないが、どこか悔しさが胸を締め付ける。

「勝ちたい。でも、それだけじゃない。あの走りに……」

 胸の奥に小さな火が灯るのを感じた。その火は、次の瞬間には炎へと変わり、確固たる決意となった。 和食さいとうに戻ったのは6時45分。
 カウンターの奥に立つ店主の智姉さんが、おれに気づいて手を振る。

「おかえり、オオサキ。どうだった?」

「決めました。金曜日のドリフト走行会に出ます」

 力強い声で言い切ると、智姉さんは微笑みながら頷いた。

「いいぞ。その意気だ。お前ならやれるさ。」

 その言葉に背中を押されるような感覚を覚えた。
 こうして、今日からおれの走り屋としての活動が本格的に始まった。初めての挑戦には期待と不安が入り混じっている。
 これで、おれだけのアイデンティティを探したいんだ。勝つことじゃない。ただ、走りで、何を届けられるかだ。 果たしておれは、自分の力で走り抜けることができるだろうか?

 バカにされたっていい。勝てなくてもいい。――でも、走りだけは、誰にも嘘をつかない。
 それが、おれの全部なんだ。たった一人でも、届けばいい。だから、おれは走る。

TheNextLap
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