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第1章 胎動編
ACT.5 ドリフト走行会
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3月20日、金曜日。いよいよドリフト走行会の日がやってきた。
赤城山のある前橋の隣町、高崎市でもその噂は広まりつつあった。 その夜、とあるレストランで夕食をとる4人の集団が話し込んでいる。男1人と女3人のメンバーだ。
灰色の長いポニーテールにチャイナ服風のワンピースをまとった、背の高い女性が口を開いた。
「戸沢、今夜のドリフト走行会で16歳のワンエイティ乗りが走るじゃん。子供っぽい走り屋だけど、赤城ナンバー2の葛西サクラとバトルするらしいじゃん……一緒に走れると思う? でも“なんかやる”気がするんじゃんよ」
オオサキという名前の走り屋の存在もどうやら耳にしているらしい。
白い長髪に女性的な顔立ちをした男、戸沢は静かに答える。
「無理だな、柳田。一瞬で千切られる。JZA80はコーナーでも速ぇ。先行しても、すぐ喰われて終わりだ。コーナリング性能とトルク特性からして秒で食われる」
戸沢の冷静な分析は、ドリフト走行会を悲観視していた。
「でも、本当にどうなるかは今夜見てみないと分かりませんよ、戸沢さん」
灰色のツインテールの女性が口を開いた。
彼女はオオサキが不利だとは考えていないようだ。
「そうね。彼女、10代で最速と呼ばれた斎藤智の弟子らしいし、年齢の割にかなり上手いって聞くわ。どうなるかは赤城山で見てみないとね」
右手のセミロングの女性も同意する。「斎藤智」と聞いた途端、戸沢の瞳が一瞬大きく見開かれた。
「伝説の走り屋の弟子か……サクラについて行けるようなら俺も戦ってみたいけど、引き離されたらヘタクソだって言ってやる。まあ、どうせついて行けないと思うがな」
戸沢の意見は変わらなかったが、結果は今夜にならなければ分からない。オオサキは16歳だからといって下手だとは限らないのだ。
10分後、4人は食事と会話を終えて席を立つ。レストランの駐車場へ向かい、それぞれの愛車に乗り込む。
戸沢の車は、無限製のエアロとイングスのリアバンパーを装着した白のDC5型インテグラタイプRだ。
前モデルであるDC2インテグラタイプRのFF最速神話を継いで進化したマシンだ。 さらに、白いボディの両サイドには緑の“稲妻風のステッカー”が描かれ、リアフェンダーには「White.U.F.O」のロゴが貼られている。
戸沢はキーを回してドアを開けると、ガルウイングに改造されたドアが翼のように開いた。
「16歳のガキが、サクラとバトるだと……? どこまでやれんのか、見せてもらおうか」
そう呟きながら、DC5に乗り込む。 一方、柳田はZ33型フェアレディZに乗り込んだ。
このモデルは、V35型スカイラインクーペと兄弟車となったモデルだ。進化を重ねたZ33の中でも、これは初期型の1台だった。
戸沢のDC5と柳田のZ33に続き、白いZN6(86)と白いV36型スカイラインクーペもエンジンをかける。
4台は夜の街を抜けて、赤城山へと向かっていった。
夜7時。おれと智姉さん、六荒はいつもの仕事に取り掛かっていた。
お客さんを待ちながら、今夜のドリフト走行会の話題で盛り上がる。
「今日の走行会だけど、葛西サクラは覚醒技を使わないらしいな」
智姉さんがそう言うと、六荒も頷いた。
「噂通りだな。どうやら本気を出さずに勝つつもりらしい」
いよいよ今夜だと思うと、身体が震えだす。
武者震い、というやつだ。
「正直、おれは緊張してるんです……不安で昨夜は眠れませんでした」
頭の中が重く、まるで錘でも入っているようだ。 考えすぎて、パンクしそうになる――そんなおれに、智姉さんと六荒が声をかけてくれた。
「大丈夫だ。前にも言ったけど、『ドリフト走行会は勝ち負けはないが、勝負はある』。相手に勝つことより、自分に勝つことを考えろ」
智姉さんの言葉が、心に響く。
「そうだ。俺もワンメイクレースに出てた頃、常に自分との戦いだった。結局、一番の敵は自分の弱さだ。それに負けるなよ」
六荒まで、こんな良いことを言うなんてな。 今回だけは見直したよ。
「それに、走行会は楽しむ場だ。相手に勝てなくてもいいんだ。重要なのは自分を満足させること。負けても自分を笑ってやれるくらい、全力で走れ」
「分かりました! 精一杯頑張ります! 楽しみます!」
その言葉を聞いた瞬間、身体全体から緊張がスッと消えていく。 おれは心の中で、やり切ることを誓った。
「そうだ、私のオオサキだ」
智姉さんが笑顔でそう言うのを見て、おれも自然と口角が上がる。
いよいよ――今夜だ。 16歳だからってナメられるような走りはしない。
葛西サクラに負けない走りを、きっと見せてやる!
夜8時。赤城道路ではドリフト走行会の準備が進んでいた。
路面の状態を確認していたサクラが戻ってくる。
「どうだった?」
雨原が結果を尋ねると、サクラは冷静に答えた。
「悪くない……でも、傷んでいる部分もあるけどな」
サクラの確認が済み、メンバー全員の士気が高まる。
「路面は問題なし、と。次はガソリンとタイヤだな。私のFDは燃費が悪いけど、今日は満タンだし問題ない」
「オレのJZA80はガソリンを必要な部分だけ入れてきた。タイヤも良好だ」
「私のクルマも完璧!」
それぞれの愛車のコンディションは万全だった。 準備が整っていない者は、誰一人いない。 午後9時になると、観客が次々と集まってきた。スタート地点となる資料館前の駐車場にも、多くのギャラリーが詰めかける。
その中には、高崎から来たグループの姿もあった。
戸沢のDC5を筆頭に、Z33やその他のメンバーのクルマが停まっている。 柳田のZ33はニスモ380RS用のバンパーを装着したその姿は、まるでレーシングカーのようで目を引く。
「いよいよ始まるな」
「そうじゃん」
彼らの間にも緊張と期待が漂う。
「ほんとに16歳かよ……どこまでやれんだ?」
「まだ来てないじゃん」
そう言われているのは、おれのことだ。
一方、和食さいとうでは、準備を整えていた。
今まさに赤城道路へ向かおうとしている。
「もうすぐ始まる時間だ。行こう、赤城道路へ!」
「そうだな」
そこに大荒のヴィッツが現れる。
「俺も行くぞ」
「別に来なくてもいいんだけどな……」
おれと智姉さんは、ワンエイティに乗り込む。 運転席のキーを回すと、RB26のエンジンが轟音を響かせた。
「行こう、ワンエイティ──見せてやろう」
エンジンが奏でる爆音という名の楽器を響かせながら、おれとワンエイティは戦場へ向かっていった。
資料館前の駐車場。
DUSTWAYのメンバーたちが集まり、スタートの時を待ち構えている。
「まだ来ていないな、大崎翔子」
ふと、トランシーバーから報告が入った。
「こちら折り返し地点のある第1高速セクション! 赤いボディに黒と灰色のラインを纏ったクルマが走っています!RB26の爆音が聞こえます!」
無線の声を聞くや否や、雨原は即座に確信した。
「あれは……オオサキちゃんに違いない。あの音、あの走り……他にいるもんか」
おれが来るとわかると、雨原は満面の笑みを浮かべた。
「よく来たな、オオサキちゃん」
その頃、おれのワンエイティと六荒のヴィッツは、赤城の暗い山道を駆け上がり、スタート地点である資料館前の駐車場に到着した。
「来たぜ、雨原芽来夜」
「私も準備万端だ」
「待ってたよ。今は午後9時40分だな」
時計の針は着実に時を刻み、スタートの瞬間が近づいてくる。六荒は静かに第1ヘアピンへと移動した。
午後9時45分、ルール説明が始まった。
「これからルールを説明する。この走行会は速さを競うものではない。ドリフトでギャラリーを魅了するのが目的だ」
ルールは以下の通り。
コースはまずダウンヒルからスタートし、第1高速セクションのパイロンを過ぎたらターンしてヒルクライムで戻ってくる形式だ。2台ずつ走行し、往復の途中で先攻と後攻を入れ替える。
さらに、重要な注意事項も伝えられる。
覚醒技と呼ばれる特殊な技術を使うことは許可されている。
「覚醒技ってのは、感情とマシンが融合してる“アレ”かよ」
「そんな感じだ」
ただし、やってはいけない行為がある。例えば、相手を挑発して心を乱すことや、故意に接触して事故を誘発するような卑怯な手段は絶対に禁止だ。
「勝ち負けにこだわるよりも、観客と自分自身が楽しめる走りを目指してくれ」
簡潔ながらも、明確なルールと注意事項が示された。
午後9時55分、抽選によって走行順が決定する。おれとサクラは4番目に走ることになった。
時間は刻一刻と進み、いよいよ――午後10時、赤城道路でのドリフト走行会がついに幕を開けた!
「まずはあたしたちからだ」
赤城の夜空を切り裂くように、ドリフト走行会の第1走者がスタートした。DUSTWAYのリーダー・雨原芽来夜が駆るFD3Sと、アースウインドファイヤーのリーダー・谷村が操るZN6が並ぶ。後者は先日、おれを見下した張本人だ。
2台が同時にスタートし、直線を疾走。最初のヘアピンに差し掛かると、タイヤから煙を上げ、スライドが炸裂する。2台とも見事なドリフトで攻め込んでいく。
「いやぁ、雨原のドリフトは圧巻だな。さすがドリフトでも名を馳せた走り屋だ」
六荒が目を輝かせながら感嘆する。
「雨原さん、速いし安定してる! 角度も完璧だし、煙がまるで芸術みたいに舞ってる! あのコーナリング、マジでやばいって!」
雨原のドリフトはZN6を徐々に引き離していく。その走りを見て、ギャラリーは歓喜の声を上げた。
「おおっ、さすが赤城最速!」
「本気で走ってるのか?」
「いやいや、あれでも手加減してるだろ。雨原さんの“本気”なんて見たことないぜ!」
雨原の技術は目を見張るものがある。これほどのドリフトをこなすには、とてつもないテクニックが必要だ。
おれもその走りを見て感じた。ZN6は先日、おれが追い抜いたクルマだが、ここまで大きく距離を離すなんて自分には到底できない。折り返し地点に着いた雨原は、15秒もZN6を待ったらしい。
ダウンヒルを終え、ヒルクライムに突入。ここで先攻と後攻が入れ替わる。
「後攻でも食らいつく!」
「赤城最速の実力、ここで見せつけるか」
雨原のFD3Sは、後攻でも圧倒的だった。前を行くZN6に食らいつき、まるで背後に張り付くような走りを見せる。そのプレッシャーに、谷村は顔中から汗を流していた。まるで天敵に追い詰められた草食動物のようだ。
「おい、これ手加減してないだろ!」
「前のクルマもすごい腕って聞くけど、完全に霞んでるぞ」
ZN6も決して遅いわけではない。しかし、雨原のFDに追われ続け、徐々にその差が明らかになっていく。そして2台はゴール地点に到着。駐車場へと戻ってきた。
「どうだった……雨原さん?」
「クルマの性能が良いだけだよ。実力の50%も出してない」
おれは驚きを隠せなかった。あの圧倒的な走りが、半分の力だなんて……本当に信じられるのか? 一瞬で谷村を置き去りにしたあのドリフトが、まだ“本気”ではないなんて……。
次に2組目がスタートした。2台は美しいドリフトを披露し、ギャラリーの喝采を浴びる。
しかし、3組目が走り出した途端、事件が起きた。 先攻は銀色のC33型ローレル、後攻は赤のV36型スカイラインクーペ。それぞれのエンジン音を響かせ、長い直線を駆け抜ける。そして第1ヘアピンに差し掛かった瞬間――。
金属同士がぶつかり合う鋭い音が夜空に響いた。
「何が起きたんだ!?」
六荒が驚きの声を上げる。ギャラリーたちも目を見開いて状況を見守った。
コーナリングの最中に2台はコントロールを失い、スピン。そのままガードレールに突っ込んでしまったのだ。
「くそっ、スピンしやがった!」
「なんだよ、下手くそだな! つまんねー!」
ギャラリーの一部は失望し、肩をすくめて帰り始める者もいた。
「あんな事故を見せられるとはね……」
「あたしもがっかりだよ」
コース近くで見守っていた戸沢と柳田も顔をしかめる。
「あの16歳、全然期待できないな。これ以上こんな下手な走りを見る気にはなれない」
「そうだよな……時間の無駄じゃん」
2人の不満げな表情を横目に、ギャラリーの何人かが静かにその場を後にする。
ダウンヒルのスタート地点。トランシーバーから緊急の報告が入る。
「ピッ……こちら第1ヘアピン! 参加者が事故を起こしました!」
雨原はすぐに応答した。
「ドライバーに怪我はないのか?」
「幸い怪我はありません」
その言葉を聞いた瞬間、おれの手が震え始めた。
「これは……武者震いってやつか?」
緊張が襲いかかる。それでも、おれは負けるつもりはなかった。
しばらくして、事故を起こした3組目が戻ってきた。駐車場ではギャラリーからの罵声が飛び交っていた。
「事故りやがって、何してんだよ!」
「楽しみにしてたのに台無しだ!」
腹を立てた観客たちが次々と声を荒げる。期待を裏切られた失望感がその場を支配していた。 ついに4組目――おれとサクラの出番だ。この瞬間をずっと待っていた。
緊張が手にじんわりと汗をかかせる。スタートラインに立つと、隣にはJZA80を操る赤城のナンバー2、葛西サクラの姿。年齢や経験の差を考えれば、勝てるはずがない。でも――。
「……せいぜい、見せてみろよ。16年分の走りってやつをさ」
サクラの低い声が耳に届く。その余裕ある表情が、逆におれの闘志に火をつけた。
「――なら、全力で応えさせてもらうよ!」
2台がスタート。エンジン音が山間にこだまする。
最初の直線を駆け抜ける。
「小娘のワンエイティが走ってるのか」
「果たしてドリフトできるじゃんか」
帰宅しようとする戸沢と柳田の眼が、走るクルマに向く。 彼らはどう見るのか? そこには六荒もいた。
2台はヘアピンに入る。
「オオサキちゃんが来た」
「ワンエイティは16歳が運転している。できるんだろうか?」
多くのギャラリーが心配する中、おれたちはヘアピンをドリフトで攻めていく。 ハンドルを強く握り、シフトを下げる。
「ここからが本番だ!」
アクセルを抜くタイミング、シフトダウン、全てが一瞬の判断で決まる。
「追いつくぞ!」
サクラのJZA80が迫る気配を背中に感じる。それでも――負ける気はしない。
2台はほぼ同時にヘアピンへ突入した。減速ギリギリでブレーキングを終え、鋭い角度で侵入する。タイヤがアスファルトを切り裂くような音を響かせ、後輪から白煙が舞い上がる。ギャラリーの歓声が遠くから聞こえた。
ワンエイティの挙動は完璧だ。だが、後ろのJZA80も遅れを取らない。まるで、互いに引き寄せられるように距離が保たれている。
「次のコーナーで決める――!」
脱出した瞬間、ギャラリーは一斉にどよめいた。口を開けたまま動けない者、目を見開き驚きの声を上げる者――誰もが目の前の光景に釘付けだった。
「あのワンエイティ……本当に16歳が運転してるのか?」
「信じられるかよ。サクラさんが置いていかれてる!」
歓声とも動揺とも取れる声が山間に響く。目の前で繰り広げられる信じられない光景に、彼らの視線は釘付けだった。
「……まさか、あの子がここまでやるとはな」
「年齢のくせにやるな・・・・・・・怪物か?」
谷村と同じことをサクラは言う。 16歳なのに速い腕にぴっくりしている。 おれは1人の走り屋にそんな感情を抱かせた。
「サクラさんが本気じゃないだけだろ……そうだよな?」
「……ひょっとして今日、伝説になるかもしれね?」
ギャラリーのざわめきは徐々に静まり、代わりに一様な圧倒感が漂う。言葉を失った者もいれば、肩を落とす者もいた。目の前で起きていることを受け入れるには、彼らの常識が足りなかった。
次のコーナーに2台は入った。 おれが先に攻める!
「ここで決める!」
アクセルを踏み込み、タイヤが悲鳴を上げる。舞い上がる白煙、耳を突き刺すようなスキール音――その全てが鼓動に同調するようだった。
「離されている!」
「……あれ、マジで天才なんじゃねえの?」
ワンエイティはまたJZA80を離していく。
そのクルマに乗るのは、ただの16歳の少女――のはずだ。だが、この瞬間、ギャラリーの誰もが思ったはずだ。「あれは怪物だ」と。 ギャラリーたちはそう思っているだろう。
実はどんなドリフトができる妖怪だったりして。
スタート地点に緊張が漂う中、トランシーバーから興奮混じりの報告が響いた。
「こちら、3連続ヘアピンの第一セクション!16歳の少女が操るワンエイティが先行しています! 後ろのサクラさんは全く追いつけていません。それどころか、JZA80をさらに引き離しています!」
報告を受けた雨原は、息を呑んだあと、ぼそりと呟く。
「……ドリフトで離されるなんてな。信じられねーが、オオサキちゃんの腕は本物だ」
その言葉を聞いた智姉さんの顔がほころぶ。頬が緩み、口元に笑みが浮かぶ。
「あいつ、やってるな……!」
彼女の声には、自分のことのような喜びが滲んでいた。
最初の直線では、ギャラリーにいた戸沢と柳田のもとに無線が入る。
「戸沢さん、柳田さん! ワンエイティがサクラさんのJZA80を引き離しています!」
その報告に、戸沢が驚いた声を上げた。
「マジかよ! ワンエイティがここまで速いなんて、俺が見くびってたみたいだな」
柳田も目を見張りながら言葉を続ける。
「すげえ……これは自分の目で見て確認するしかねーな」
帰ろうとしていた二人だったが、報告を聞いた途端、足を止めてギャラリーを続けることにした。
「これがオオサキちゃんの本気の走りか。心臓を直接握られてるみたいだ……これは」
そして、六荒もまた、コーナーを駆け抜けるワンエイティを見て興奮を隠せない。
「……あいつ、本当に16歳かよ。バケモンだな」
2台は3連続ヘアピンを抜け、U字ヘアピンへと進入する。ワンエイティの旋回は衰えず、JZA80をさらに引き離していった。
「サクラさん……負けてる?」
誰かの小さな声が、山の冷気に溶けた。
次の瞬間、誰もが言葉を飲み込む。静寂が、山を支配した。
「16歳にドリフトで引き離されるなんて……信じられねえ! しかも、運転が異様に綺麗だ!」
「このままじゃ、とんでもない差がつく……そうだ、使わないと決めていた“あれ”を……!」
ギャラリーの驚きは止まらない。
赤城ナンバー2の実力者が、16歳の少女に置いていかれている――誰もがその光景に目を疑った。
「なぁ、サクラさんと小娘が戦ったら、どっちが勝つんだ?」
「サクラさんに決まってるべ。」
「けど……サクラさん、置いていかれてるじゃねえか。あのワンエイティ、ただの小娘じゃねえな。」
ギャラリーの間にどよめきが広がる。誰もが驚きを隠せない。
走行中のため、その声は聞こえない。だが、もしクルマを降りていたら、おれも同じことを考えていたかもしれない。
(勝負をしたら、どうなるのか?)
胸の奥が熱くなる。
「クルマの調子が悪いのか・・・・・・? いや、悪くない。このクルマは30年落ちだがメンテナンスをたくさんしているた め調子は良いはずだ・・・・・・離されている・・・・・・」
サクラは離されているのは何が原因かって考え始める。
車の悪さはおれも感じなかった。 ひょっとして、自分のほうが上手いのか? 智姉さんに離されるばかりの毎日を過ごすのに、相手を引き離す日が来るのは練習の成果か?
S字ヘアピン。
焦りを感じたサクラは、ついに封印していた技を解き放った。
「――コンパクト・メテオ!!」
瞬間、JZA80が一気に角度をつけてドリフトに入る。今までよりも鋭く、より速く――まるで重力が軽くなったかのようなスライド。
このままだとついて行くことができないほど、おれが強敵だと分かった。 JZA80のボディがわずかに光を帯びたように見えた。サクラの走りが変わる――あり得ない速度での白煙が月光を裂くように浮かび上がる。
「覚醒技を使った……!?」
これにはおれもやる気になっていく。
負けてられない。次の左コーナー、おれも“コンパクト・メテオ”を発動させる。 限界をわずかに超えるラインで攻める――そして、縮まった距離を再び広げた。
第1高速セクションに入ると赤い三角パイロンが見えてくる。 そこを抜けたらダウンヒルは終了だ。
おれはワンエイティをドリフトさせ、Uターンで向きを変えた。 遅れてサクラのJZA80も滑り込むようについていく。 2台が揃った瞬間、ヒルクライムの幕が開けた!
「ダウンヒルでは離された……ならば、ヒルクライムでは……!」
2台のポジションが逆転する。 先ほどは逃げる立場だったが、今度は追う番だ――逃がさない! 最初のコーナーをドリフトで抜け、S字ヘアピンへ。
先行するサクラのJZA80が、フェイントモーションを使いながら慣性ドリフトで駆け抜ける。
「いきなり仕掛けるか……!」
ギャラリーの歓声が上がる。しかしその直後、ワンエイティがJZA80のケツに食らいつく!
「JZA80は大径シングルタービンでトルクがある。ヒルクライムでは有利なはずなのに、食われてるだと……!?」
「ここでもついていくとは……速いな、小娘。」
3連続ヘアピンが迫る。 おれは抜くための技を発動させた――!
「……あの技を使う! 《フライ・ミー・ソー・ハイ》!」
1つ目のヘアピン、おれのワンエイティは軌跡が残る。魂の軌跡が──空間を縫い、山を割るように、走った。
「もう……いつもの自分じゃない。マシンと一緒に、走ってる……違う、“マシンで”じゃない。“マシンが”走ってる――おれがその中にいるだけだ」 さらに2つ目、3つ目のヘアピンでも先行するJZA80を詰め、バンパーが接触寸前まで迫る!
「こちら3連続ヘアピンの3つ目! JZA80が減速ドリフトで空間を封じる!しかしワンエイティがそれを力で押し返した! バトルじゃねえ、まるで戦場みてぇだ」
しかし、3連続ヘアピンの後の直線。 サクラのJZA80は強烈なトルクで加速し、おれを引き離す――が、次の広いコーナーでまた距離を詰めた。 そして、いよいよ最終ヘアピン。
「もう後がない……ドリフト勝負は、先行なら離したほうが、後攻なら食いついたほうが勝ち。 だが、今のままじゃどっちでも負ける……!」
サクラは決断した。
「……最終兵器を使う!」
「《サンズ・オブ・タイム》!」
“空間が伸びるような錯覚” サクラのJZA80が、大きな角度をつけながら、1km/hずつ減速する奇妙なドリフトを仕掛ける!
「だったらこっちも――!」
おれも覚醒技を発動する!
「《フライ・ミー・ソー・ハイ》! イケェェェェェェェェェェ!!!」
“弾けた魂が軌跡を描くような閃光” 萌葱色のオーラを纏い、最速のドリフトでJZA80を追い詰める!
「どっちが勝つんだ!?」
ギャラリーの熱気が最高潮に達する。
「やっぱ来てよかったじゃん、このドリフト走行会!」
「そうだな……ワンエイティ、素晴らしい走りだ。」
間近で見守る戸沢と柳田も、興奮を隠せない。
「……あれがオオサキちゃんの言っていた"特殊能力"の走りか……。」
六荒も見つめていたが、目の前の戦いがどんな理屈で成り立っているのか、理解できなかった。 覚醒技同士が激突する――!
「行かせない……行かせない……行かせない……!」
JZA80のラインが空間を引き延ばし、すべての動きが“スローモーション”のように歪む。
だが――その静寂を引き裂くように、ワンエイティが咆哮する。
「イケェェェェェェェ!!!」
萌葱色の光が弾ける。その瞬間、空間が──跳ね返された。
「すげえ! 最後のドリフト、まるで戦闘みてぇだった!」
「熱い! 汗が出るほどだ!!」
最終ヘアピンでの激突に、ギャラリーの興奮はトップギア! 2台は直線を駆け抜け、ゴールへ飛び込んだ――。 駐車場へ入り、停車。 おれとサクラは、互いのクルマから降りた。
おれは智姉さんのもとへ戻る。サクラもDUSTWAYのメンバーたちと一緒に帰ってきた。
「お疲れ、オオサキ。楽しめたか?」
「久しぶりに熱くなりました。心臓が破裂しそうです。」
「お前はよくやったな。サクラを離したり、食いついたり……そして、覚醒技まで使わせたんだからな。」
「はい! すべては智姉さんのおかげです! D1のDVDを見て勉強しましたし、智姉さんに"覚醒技に頼るな、駆け引きで勝負しろ"と言われましたからね!」
「……なるほど。そういう駆け引きだったわけか。」
智姉さんが満足そうに頷く。 今日はすべてを出し尽くした。
「追いつけなかった……あの小娘……」
サクラが小さく呟く。
「お前が遅いんじゃない。相手が速かったんだ。」
「……なんでだよ。あんな走り、見せられて……胸が、苦しい……なんだ、これ……」
サクラは表情こそ変えないが、その声には悔しさが滲んでいた。 この4組目のバトルが最高潮に達し、0時まで続けられた。
深夜、暗い赤城山の道をオレは黒いJZA80で走っている。周囲には他の車の気配はなく、道は闇に包まれている。
現在は第2高速セクションを走行中だ。コーナーをドリフトで抜ける。静かな夜に響くエンジン音の中、ふと後ろから何かが迫ってくるのを感じる。
「流面形のクルマ……あれは…」
瞬時に思い浮かべる。雨原さんのFD3Sか、母さんのJZA70。しかし、すぐにそれは違うことに気づく。後ろの車は固定式のヘッドライト、赤いワンエイティのヘッドライトが、夜霧を貫くように射し込む。
「ドリフト走行会でオレを追い詰めたワンエイティ……」
窓は暗くて相手の顔は見えない。しかし、見覚えのある形と影から、あれは奴だと確信する。奴は、オレを煽っている。
「第2高速セクションを抜ければ、あのサクラ・ゾーンだ。ここはオレの得意な場所……」
ゾーンとは、オレが名付けた赤城山の一部だ。絶対に逃げ切ってみせる。 ナイフ型のヘアピンを抜け、S字直線に差し掛かる。オレのJZA80は軽量化されており、旋回性能には自信がある。しかし、後ろから迫るワンエイティの勢いが止まらない。
「逃げられない……?」
この区間でオレが負けるはずがない。直線では差をつけられるが、コーナーでは負けていないはずだ。しかし、次の連続ヘアピンで、ワンエイティはドリフトで内側を突き、オレを追い抜いていく。
「サクラ・ゾーンで……負けてしまった……オレの城で……」
オレとバトルすれば、奴はきっとあの場所で抜いてくるだろう――。──正夢、いや、悪夢かもしれない。 サクラ・ゾーンで、またあいつに──現実を叩きつけられる 間違いなく、ワンエイティのドライバーは普通の人間ではない。あいつは、まるで怪物だ――。
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赤城山のある前橋の隣町、高崎市でもその噂は広まりつつあった。 その夜、とあるレストランで夕食をとる4人の集団が話し込んでいる。男1人と女3人のメンバーだ。
灰色の長いポニーテールにチャイナ服風のワンピースをまとった、背の高い女性が口を開いた。
「戸沢、今夜のドリフト走行会で16歳のワンエイティ乗りが走るじゃん。子供っぽい走り屋だけど、赤城ナンバー2の葛西サクラとバトルするらしいじゃん……一緒に走れると思う? でも“なんかやる”気がするんじゃんよ」
オオサキという名前の走り屋の存在もどうやら耳にしているらしい。
白い長髪に女性的な顔立ちをした男、戸沢は静かに答える。
「無理だな、柳田。一瞬で千切られる。JZA80はコーナーでも速ぇ。先行しても、すぐ喰われて終わりだ。コーナリング性能とトルク特性からして秒で食われる」
戸沢の冷静な分析は、ドリフト走行会を悲観視していた。
「でも、本当にどうなるかは今夜見てみないと分かりませんよ、戸沢さん」
灰色のツインテールの女性が口を開いた。
彼女はオオサキが不利だとは考えていないようだ。
「そうね。彼女、10代で最速と呼ばれた斎藤智の弟子らしいし、年齢の割にかなり上手いって聞くわ。どうなるかは赤城山で見てみないとね」
右手のセミロングの女性も同意する。「斎藤智」と聞いた途端、戸沢の瞳が一瞬大きく見開かれた。
「伝説の走り屋の弟子か……サクラについて行けるようなら俺も戦ってみたいけど、引き離されたらヘタクソだって言ってやる。まあ、どうせついて行けないと思うがな」
戸沢の意見は変わらなかったが、結果は今夜にならなければ分からない。オオサキは16歳だからといって下手だとは限らないのだ。
10分後、4人は食事と会話を終えて席を立つ。レストランの駐車場へ向かい、それぞれの愛車に乗り込む。
戸沢の車は、無限製のエアロとイングスのリアバンパーを装着した白のDC5型インテグラタイプRだ。
前モデルであるDC2インテグラタイプRのFF最速神話を継いで進化したマシンだ。 さらに、白いボディの両サイドには緑の“稲妻風のステッカー”が描かれ、リアフェンダーには「White.U.F.O」のロゴが貼られている。
戸沢はキーを回してドアを開けると、ガルウイングに改造されたドアが翼のように開いた。
「16歳のガキが、サクラとバトるだと……? どこまでやれんのか、見せてもらおうか」
そう呟きながら、DC5に乗り込む。 一方、柳田はZ33型フェアレディZに乗り込んだ。
このモデルは、V35型スカイラインクーペと兄弟車となったモデルだ。進化を重ねたZ33の中でも、これは初期型の1台だった。
戸沢のDC5と柳田のZ33に続き、白いZN6(86)と白いV36型スカイラインクーペもエンジンをかける。
4台は夜の街を抜けて、赤城山へと向かっていった。
夜7時。おれと智姉さん、六荒はいつもの仕事に取り掛かっていた。
お客さんを待ちながら、今夜のドリフト走行会の話題で盛り上がる。
「今日の走行会だけど、葛西サクラは覚醒技を使わないらしいな」
智姉さんがそう言うと、六荒も頷いた。
「噂通りだな。どうやら本気を出さずに勝つつもりらしい」
いよいよ今夜だと思うと、身体が震えだす。
武者震い、というやつだ。
「正直、おれは緊張してるんです……不安で昨夜は眠れませんでした」
頭の中が重く、まるで錘でも入っているようだ。 考えすぎて、パンクしそうになる――そんなおれに、智姉さんと六荒が声をかけてくれた。
「大丈夫だ。前にも言ったけど、『ドリフト走行会は勝ち負けはないが、勝負はある』。相手に勝つことより、自分に勝つことを考えろ」
智姉さんの言葉が、心に響く。
「そうだ。俺もワンメイクレースに出てた頃、常に自分との戦いだった。結局、一番の敵は自分の弱さだ。それに負けるなよ」
六荒まで、こんな良いことを言うなんてな。 今回だけは見直したよ。
「それに、走行会は楽しむ場だ。相手に勝てなくてもいいんだ。重要なのは自分を満足させること。負けても自分を笑ってやれるくらい、全力で走れ」
「分かりました! 精一杯頑張ります! 楽しみます!」
その言葉を聞いた瞬間、身体全体から緊張がスッと消えていく。 おれは心の中で、やり切ることを誓った。
「そうだ、私のオオサキだ」
智姉さんが笑顔でそう言うのを見て、おれも自然と口角が上がる。
いよいよ――今夜だ。 16歳だからってナメられるような走りはしない。
葛西サクラに負けない走りを、きっと見せてやる!
夜8時。赤城道路ではドリフト走行会の準備が進んでいた。
路面の状態を確認していたサクラが戻ってくる。
「どうだった?」
雨原が結果を尋ねると、サクラは冷静に答えた。
「悪くない……でも、傷んでいる部分もあるけどな」
サクラの確認が済み、メンバー全員の士気が高まる。
「路面は問題なし、と。次はガソリンとタイヤだな。私のFDは燃費が悪いけど、今日は満タンだし問題ない」
「オレのJZA80はガソリンを必要な部分だけ入れてきた。タイヤも良好だ」
「私のクルマも完璧!」
それぞれの愛車のコンディションは万全だった。 準備が整っていない者は、誰一人いない。 午後9時になると、観客が次々と集まってきた。スタート地点となる資料館前の駐車場にも、多くのギャラリーが詰めかける。
その中には、高崎から来たグループの姿もあった。
戸沢のDC5を筆頭に、Z33やその他のメンバーのクルマが停まっている。 柳田のZ33はニスモ380RS用のバンパーを装着したその姿は、まるでレーシングカーのようで目を引く。
「いよいよ始まるな」
「そうじゃん」
彼らの間にも緊張と期待が漂う。
「ほんとに16歳かよ……どこまでやれんだ?」
「まだ来てないじゃん」
そう言われているのは、おれのことだ。
一方、和食さいとうでは、準備を整えていた。
今まさに赤城道路へ向かおうとしている。
「もうすぐ始まる時間だ。行こう、赤城道路へ!」
「そうだな」
そこに大荒のヴィッツが現れる。
「俺も行くぞ」
「別に来なくてもいいんだけどな……」
おれと智姉さんは、ワンエイティに乗り込む。 運転席のキーを回すと、RB26のエンジンが轟音を響かせた。
「行こう、ワンエイティ──見せてやろう」
エンジンが奏でる爆音という名の楽器を響かせながら、おれとワンエイティは戦場へ向かっていった。
資料館前の駐車場。
DUSTWAYのメンバーたちが集まり、スタートの時を待ち構えている。
「まだ来ていないな、大崎翔子」
ふと、トランシーバーから報告が入った。
「こちら折り返し地点のある第1高速セクション! 赤いボディに黒と灰色のラインを纏ったクルマが走っています!RB26の爆音が聞こえます!」
無線の声を聞くや否や、雨原は即座に確信した。
「あれは……オオサキちゃんに違いない。あの音、あの走り……他にいるもんか」
おれが来るとわかると、雨原は満面の笑みを浮かべた。
「よく来たな、オオサキちゃん」
その頃、おれのワンエイティと六荒のヴィッツは、赤城の暗い山道を駆け上がり、スタート地点である資料館前の駐車場に到着した。
「来たぜ、雨原芽来夜」
「私も準備万端だ」
「待ってたよ。今は午後9時40分だな」
時計の針は着実に時を刻み、スタートの瞬間が近づいてくる。六荒は静かに第1ヘアピンへと移動した。
午後9時45分、ルール説明が始まった。
「これからルールを説明する。この走行会は速さを競うものではない。ドリフトでギャラリーを魅了するのが目的だ」
ルールは以下の通り。
コースはまずダウンヒルからスタートし、第1高速セクションのパイロンを過ぎたらターンしてヒルクライムで戻ってくる形式だ。2台ずつ走行し、往復の途中で先攻と後攻を入れ替える。
さらに、重要な注意事項も伝えられる。
覚醒技と呼ばれる特殊な技術を使うことは許可されている。
「覚醒技ってのは、感情とマシンが融合してる“アレ”かよ」
「そんな感じだ」
ただし、やってはいけない行為がある。例えば、相手を挑発して心を乱すことや、故意に接触して事故を誘発するような卑怯な手段は絶対に禁止だ。
「勝ち負けにこだわるよりも、観客と自分自身が楽しめる走りを目指してくれ」
簡潔ながらも、明確なルールと注意事項が示された。
午後9時55分、抽選によって走行順が決定する。おれとサクラは4番目に走ることになった。
時間は刻一刻と進み、いよいよ――午後10時、赤城道路でのドリフト走行会がついに幕を開けた!
「まずはあたしたちからだ」
赤城の夜空を切り裂くように、ドリフト走行会の第1走者がスタートした。DUSTWAYのリーダー・雨原芽来夜が駆るFD3Sと、アースウインドファイヤーのリーダー・谷村が操るZN6が並ぶ。後者は先日、おれを見下した張本人だ。
2台が同時にスタートし、直線を疾走。最初のヘアピンに差し掛かると、タイヤから煙を上げ、スライドが炸裂する。2台とも見事なドリフトで攻め込んでいく。
「いやぁ、雨原のドリフトは圧巻だな。さすがドリフトでも名を馳せた走り屋だ」
六荒が目を輝かせながら感嘆する。
「雨原さん、速いし安定してる! 角度も完璧だし、煙がまるで芸術みたいに舞ってる! あのコーナリング、マジでやばいって!」
雨原のドリフトはZN6を徐々に引き離していく。その走りを見て、ギャラリーは歓喜の声を上げた。
「おおっ、さすが赤城最速!」
「本気で走ってるのか?」
「いやいや、あれでも手加減してるだろ。雨原さんの“本気”なんて見たことないぜ!」
雨原の技術は目を見張るものがある。これほどのドリフトをこなすには、とてつもないテクニックが必要だ。
おれもその走りを見て感じた。ZN6は先日、おれが追い抜いたクルマだが、ここまで大きく距離を離すなんて自分には到底できない。折り返し地点に着いた雨原は、15秒もZN6を待ったらしい。
ダウンヒルを終え、ヒルクライムに突入。ここで先攻と後攻が入れ替わる。
「後攻でも食らいつく!」
「赤城最速の実力、ここで見せつけるか」
雨原のFD3Sは、後攻でも圧倒的だった。前を行くZN6に食らいつき、まるで背後に張り付くような走りを見せる。そのプレッシャーに、谷村は顔中から汗を流していた。まるで天敵に追い詰められた草食動物のようだ。
「おい、これ手加減してないだろ!」
「前のクルマもすごい腕って聞くけど、完全に霞んでるぞ」
ZN6も決して遅いわけではない。しかし、雨原のFDに追われ続け、徐々にその差が明らかになっていく。そして2台はゴール地点に到着。駐車場へと戻ってきた。
「どうだった……雨原さん?」
「クルマの性能が良いだけだよ。実力の50%も出してない」
おれは驚きを隠せなかった。あの圧倒的な走りが、半分の力だなんて……本当に信じられるのか? 一瞬で谷村を置き去りにしたあのドリフトが、まだ“本気”ではないなんて……。
次に2組目がスタートした。2台は美しいドリフトを披露し、ギャラリーの喝采を浴びる。
しかし、3組目が走り出した途端、事件が起きた。 先攻は銀色のC33型ローレル、後攻は赤のV36型スカイラインクーペ。それぞれのエンジン音を響かせ、長い直線を駆け抜ける。そして第1ヘアピンに差し掛かった瞬間――。
金属同士がぶつかり合う鋭い音が夜空に響いた。
「何が起きたんだ!?」
六荒が驚きの声を上げる。ギャラリーたちも目を見開いて状況を見守った。
コーナリングの最中に2台はコントロールを失い、スピン。そのままガードレールに突っ込んでしまったのだ。
「くそっ、スピンしやがった!」
「なんだよ、下手くそだな! つまんねー!」
ギャラリーの一部は失望し、肩をすくめて帰り始める者もいた。
「あんな事故を見せられるとはね……」
「あたしもがっかりだよ」
コース近くで見守っていた戸沢と柳田も顔をしかめる。
「あの16歳、全然期待できないな。これ以上こんな下手な走りを見る気にはなれない」
「そうだよな……時間の無駄じゃん」
2人の不満げな表情を横目に、ギャラリーの何人かが静かにその場を後にする。
ダウンヒルのスタート地点。トランシーバーから緊急の報告が入る。
「ピッ……こちら第1ヘアピン! 参加者が事故を起こしました!」
雨原はすぐに応答した。
「ドライバーに怪我はないのか?」
「幸い怪我はありません」
その言葉を聞いた瞬間、おれの手が震え始めた。
「これは……武者震いってやつか?」
緊張が襲いかかる。それでも、おれは負けるつもりはなかった。
しばらくして、事故を起こした3組目が戻ってきた。駐車場ではギャラリーからの罵声が飛び交っていた。
「事故りやがって、何してんだよ!」
「楽しみにしてたのに台無しだ!」
腹を立てた観客たちが次々と声を荒げる。期待を裏切られた失望感がその場を支配していた。 ついに4組目――おれとサクラの出番だ。この瞬間をずっと待っていた。
緊張が手にじんわりと汗をかかせる。スタートラインに立つと、隣にはJZA80を操る赤城のナンバー2、葛西サクラの姿。年齢や経験の差を考えれば、勝てるはずがない。でも――。
「……せいぜい、見せてみろよ。16年分の走りってやつをさ」
サクラの低い声が耳に届く。その余裕ある表情が、逆におれの闘志に火をつけた。
「――なら、全力で応えさせてもらうよ!」
2台がスタート。エンジン音が山間にこだまする。
最初の直線を駆け抜ける。
「小娘のワンエイティが走ってるのか」
「果たしてドリフトできるじゃんか」
帰宅しようとする戸沢と柳田の眼が、走るクルマに向く。 彼らはどう見るのか? そこには六荒もいた。
2台はヘアピンに入る。
「オオサキちゃんが来た」
「ワンエイティは16歳が運転している。できるんだろうか?」
多くのギャラリーが心配する中、おれたちはヘアピンをドリフトで攻めていく。 ハンドルを強く握り、シフトを下げる。
「ここからが本番だ!」
アクセルを抜くタイミング、シフトダウン、全てが一瞬の判断で決まる。
「追いつくぞ!」
サクラのJZA80が迫る気配を背中に感じる。それでも――負ける気はしない。
2台はほぼ同時にヘアピンへ突入した。減速ギリギリでブレーキングを終え、鋭い角度で侵入する。タイヤがアスファルトを切り裂くような音を響かせ、後輪から白煙が舞い上がる。ギャラリーの歓声が遠くから聞こえた。
ワンエイティの挙動は完璧だ。だが、後ろのJZA80も遅れを取らない。まるで、互いに引き寄せられるように距離が保たれている。
「次のコーナーで決める――!」
脱出した瞬間、ギャラリーは一斉にどよめいた。口を開けたまま動けない者、目を見開き驚きの声を上げる者――誰もが目の前の光景に釘付けだった。
「あのワンエイティ……本当に16歳が運転してるのか?」
「信じられるかよ。サクラさんが置いていかれてる!」
歓声とも動揺とも取れる声が山間に響く。目の前で繰り広げられる信じられない光景に、彼らの視線は釘付けだった。
「……まさか、あの子がここまでやるとはな」
「年齢のくせにやるな・・・・・・・怪物か?」
谷村と同じことをサクラは言う。 16歳なのに速い腕にぴっくりしている。 おれは1人の走り屋にそんな感情を抱かせた。
「サクラさんが本気じゃないだけだろ……そうだよな?」
「……ひょっとして今日、伝説になるかもしれね?」
ギャラリーのざわめきは徐々に静まり、代わりに一様な圧倒感が漂う。言葉を失った者もいれば、肩を落とす者もいた。目の前で起きていることを受け入れるには、彼らの常識が足りなかった。
次のコーナーに2台は入った。 おれが先に攻める!
「ここで決める!」
アクセルを踏み込み、タイヤが悲鳴を上げる。舞い上がる白煙、耳を突き刺すようなスキール音――その全てが鼓動に同調するようだった。
「離されている!」
「……あれ、マジで天才なんじゃねえの?」
ワンエイティはまたJZA80を離していく。
そのクルマに乗るのは、ただの16歳の少女――のはずだ。だが、この瞬間、ギャラリーの誰もが思ったはずだ。「あれは怪物だ」と。 ギャラリーたちはそう思っているだろう。
実はどんなドリフトができる妖怪だったりして。
スタート地点に緊張が漂う中、トランシーバーから興奮混じりの報告が響いた。
「こちら、3連続ヘアピンの第一セクション!16歳の少女が操るワンエイティが先行しています! 後ろのサクラさんは全く追いつけていません。それどころか、JZA80をさらに引き離しています!」
報告を受けた雨原は、息を呑んだあと、ぼそりと呟く。
「……ドリフトで離されるなんてな。信じられねーが、オオサキちゃんの腕は本物だ」
その言葉を聞いた智姉さんの顔がほころぶ。頬が緩み、口元に笑みが浮かぶ。
「あいつ、やってるな……!」
彼女の声には、自分のことのような喜びが滲んでいた。
最初の直線では、ギャラリーにいた戸沢と柳田のもとに無線が入る。
「戸沢さん、柳田さん! ワンエイティがサクラさんのJZA80を引き離しています!」
その報告に、戸沢が驚いた声を上げた。
「マジかよ! ワンエイティがここまで速いなんて、俺が見くびってたみたいだな」
柳田も目を見張りながら言葉を続ける。
「すげえ……これは自分の目で見て確認するしかねーな」
帰ろうとしていた二人だったが、報告を聞いた途端、足を止めてギャラリーを続けることにした。
「これがオオサキちゃんの本気の走りか。心臓を直接握られてるみたいだ……これは」
そして、六荒もまた、コーナーを駆け抜けるワンエイティを見て興奮を隠せない。
「……あいつ、本当に16歳かよ。バケモンだな」
2台は3連続ヘアピンを抜け、U字ヘアピンへと進入する。ワンエイティの旋回は衰えず、JZA80をさらに引き離していった。
「サクラさん……負けてる?」
誰かの小さな声が、山の冷気に溶けた。
次の瞬間、誰もが言葉を飲み込む。静寂が、山を支配した。
「16歳にドリフトで引き離されるなんて……信じられねえ! しかも、運転が異様に綺麗だ!」
「このままじゃ、とんでもない差がつく……そうだ、使わないと決めていた“あれ”を……!」
ギャラリーの驚きは止まらない。
赤城ナンバー2の実力者が、16歳の少女に置いていかれている――誰もがその光景に目を疑った。
「なぁ、サクラさんと小娘が戦ったら、どっちが勝つんだ?」
「サクラさんに決まってるべ。」
「けど……サクラさん、置いていかれてるじゃねえか。あのワンエイティ、ただの小娘じゃねえな。」
ギャラリーの間にどよめきが広がる。誰もが驚きを隠せない。
走行中のため、その声は聞こえない。だが、もしクルマを降りていたら、おれも同じことを考えていたかもしれない。
(勝負をしたら、どうなるのか?)
胸の奥が熱くなる。
「クルマの調子が悪いのか・・・・・・? いや、悪くない。このクルマは30年落ちだがメンテナンスをたくさんしているた め調子は良いはずだ・・・・・・離されている・・・・・・」
サクラは離されているのは何が原因かって考え始める。
車の悪さはおれも感じなかった。 ひょっとして、自分のほうが上手いのか? 智姉さんに離されるばかりの毎日を過ごすのに、相手を引き離す日が来るのは練習の成果か?
S字ヘアピン。
焦りを感じたサクラは、ついに封印していた技を解き放った。
「――コンパクト・メテオ!!」
瞬間、JZA80が一気に角度をつけてドリフトに入る。今までよりも鋭く、より速く――まるで重力が軽くなったかのようなスライド。
このままだとついて行くことができないほど、おれが強敵だと分かった。 JZA80のボディがわずかに光を帯びたように見えた。サクラの走りが変わる――あり得ない速度での白煙が月光を裂くように浮かび上がる。
「覚醒技を使った……!?」
これにはおれもやる気になっていく。
負けてられない。次の左コーナー、おれも“コンパクト・メテオ”を発動させる。 限界をわずかに超えるラインで攻める――そして、縮まった距離を再び広げた。
第1高速セクションに入ると赤い三角パイロンが見えてくる。 そこを抜けたらダウンヒルは終了だ。
おれはワンエイティをドリフトさせ、Uターンで向きを変えた。 遅れてサクラのJZA80も滑り込むようについていく。 2台が揃った瞬間、ヒルクライムの幕が開けた!
「ダウンヒルでは離された……ならば、ヒルクライムでは……!」
2台のポジションが逆転する。 先ほどは逃げる立場だったが、今度は追う番だ――逃がさない! 最初のコーナーをドリフトで抜け、S字ヘアピンへ。
先行するサクラのJZA80が、フェイントモーションを使いながら慣性ドリフトで駆け抜ける。
「いきなり仕掛けるか……!」
ギャラリーの歓声が上がる。しかしその直後、ワンエイティがJZA80のケツに食らいつく!
「JZA80は大径シングルタービンでトルクがある。ヒルクライムでは有利なはずなのに、食われてるだと……!?」
「ここでもついていくとは……速いな、小娘。」
3連続ヘアピンが迫る。 おれは抜くための技を発動させた――!
「……あの技を使う! 《フライ・ミー・ソー・ハイ》!」
1つ目のヘアピン、おれのワンエイティは軌跡が残る。魂の軌跡が──空間を縫い、山を割るように、走った。
「もう……いつもの自分じゃない。マシンと一緒に、走ってる……違う、“マシンで”じゃない。“マシンが”走ってる――おれがその中にいるだけだ」 さらに2つ目、3つ目のヘアピンでも先行するJZA80を詰め、バンパーが接触寸前まで迫る!
「こちら3連続ヘアピンの3つ目! JZA80が減速ドリフトで空間を封じる!しかしワンエイティがそれを力で押し返した! バトルじゃねえ、まるで戦場みてぇだ」
しかし、3連続ヘアピンの後の直線。 サクラのJZA80は強烈なトルクで加速し、おれを引き離す――が、次の広いコーナーでまた距離を詰めた。 そして、いよいよ最終ヘアピン。
「もう後がない……ドリフト勝負は、先行なら離したほうが、後攻なら食いついたほうが勝ち。 だが、今のままじゃどっちでも負ける……!」
サクラは決断した。
「……最終兵器を使う!」
「《サンズ・オブ・タイム》!」
“空間が伸びるような錯覚” サクラのJZA80が、大きな角度をつけながら、1km/hずつ減速する奇妙なドリフトを仕掛ける!
「だったらこっちも――!」
おれも覚醒技を発動する!
「《フライ・ミー・ソー・ハイ》! イケェェェェェェェェェェ!!!」
“弾けた魂が軌跡を描くような閃光” 萌葱色のオーラを纏い、最速のドリフトでJZA80を追い詰める!
「どっちが勝つんだ!?」
ギャラリーの熱気が最高潮に達する。
「やっぱ来てよかったじゃん、このドリフト走行会!」
「そうだな……ワンエイティ、素晴らしい走りだ。」
間近で見守る戸沢と柳田も、興奮を隠せない。
「……あれがオオサキちゃんの言っていた"特殊能力"の走りか……。」
六荒も見つめていたが、目の前の戦いがどんな理屈で成り立っているのか、理解できなかった。 覚醒技同士が激突する――!
「行かせない……行かせない……行かせない……!」
JZA80のラインが空間を引き延ばし、すべての動きが“スローモーション”のように歪む。
だが――その静寂を引き裂くように、ワンエイティが咆哮する。
「イケェェェェェェェ!!!」
萌葱色の光が弾ける。その瞬間、空間が──跳ね返された。
「すげえ! 最後のドリフト、まるで戦闘みてぇだった!」
「熱い! 汗が出るほどだ!!」
最終ヘアピンでの激突に、ギャラリーの興奮はトップギア! 2台は直線を駆け抜け、ゴールへ飛び込んだ――。 駐車場へ入り、停車。 おれとサクラは、互いのクルマから降りた。
おれは智姉さんのもとへ戻る。サクラもDUSTWAYのメンバーたちと一緒に帰ってきた。
「お疲れ、オオサキ。楽しめたか?」
「久しぶりに熱くなりました。心臓が破裂しそうです。」
「お前はよくやったな。サクラを離したり、食いついたり……そして、覚醒技まで使わせたんだからな。」
「はい! すべては智姉さんのおかげです! D1のDVDを見て勉強しましたし、智姉さんに"覚醒技に頼るな、駆け引きで勝負しろ"と言われましたからね!」
「……なるほど。そういう駆け引きだったわけか。」
智姉さんが満足そうに頷く。 今日はすべてを出し尽くした。
「追いつけなかった……あの小娘……」
サクラが小さく呟く。
「お前が遅いんじゃない。相手が速かったんだ。」
「……なんでだよ。あんな走り、見せられて……胸が、苦しい……なんだ、これ……」
サクラは表情こそ変えないが、その声には悔しさが滲んでいた。 この4組目のバトルが最高潮に達し、0時まで続けられた。
深夜、暗い赤城山の道をオレは黒いJZA80で走っている。周囲には他の車の気配はなく、道は闇に包まれている。
現在は第2高速セクションを走行中だ。コーナーをドリフトで抜ける。静かな夜に響くエンジン音の中、ふと後ろから何かが迫ってくるのを感じる。
「流面形のクルマ……あれは…」
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オレとバトルすれば、奴はきっとあの場所で抜いてくるだろう――。──正夢、いや、悪夢かもしれない。 サクラ・ゾーンで、またあいつに──現実を叩きつけられる 間違いなく、ワンエイティのドライバーは普通の人間ではない。あいつは、まるで怪物だ――。
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