光速の走り屋オオサキショウコ

まとらまじゅつ

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第2.5章 新しい覚醒技編

ACT.12.5 弱まる力

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 覚醒技――それは、車とドライバーに奇跡をもたらす力。 タキオン粒子で構成されたオーラを、ドライバーの精神力で発生させる。 物理法則を超えた“人馬一体”の走りを可能にする力だ。 ただしその発動には多大な気力と体力を必要とし、一度使えばしばらく再使用はできない。
 しかし、そんな力に異変が起きていた。 強化ではなく、弱体化。

 ――柳田マリアとのバトルから一夜明けた、4月4日・午前5時45分。
 赤城山のヒルクライムコースを、2台の車が登っていた。 車種はR35 GT-Rと180SX。
 5連続ヘアピンをドリフトで駆け抜ける。
 おれとR35は第3高速セクションに突入。 パワー差で、徐々に引き離されていく。

「……次で技を使おうか」

 そう宣言し、集中力を高めた。
 だが、悲劇はここから始まる。

 “サクラ・ゾーン”の最初のコーナー、中速右曲線。 おれはサイドを引き、車体を滑らせる。 そして、オーラを発生させようとした。

「<コンパクト・メテオ>! イケイケイケイケーッ!!」

 しかし――オーラは現れない。

「な、何だ!? 使えない……だと!?」

 いつもなら視界に現れるはずの、あの透明な光──だが、今回は何も出なかった。胸の奥がざわつく。ステアリングを握る手に、じっとりと汗が滲む。 
 左ヘアピンへと差しかかる。 また距離が開く。
 直線に入っても、R35との差は縮まらない。

「覚醒技が……使えなくなったのか!?」

 信じられない。 あれだけ頼りにしていた力が、今、まったく反応しない。
 頂上に着いた後。

「本当に起きてるのか……? <コンパクト・メテオ>が使えなくなる現象が?」

「そうです……何が起きてるんでしょうか」

 智姉さんが助け舟を出してくれた。

「調べてみよう。サラマンダー財団と連絡を取る」

 ――サラマンダー財団。 福井県を拠点とする組織で、災害救助やボランティア活動の傍ら、覚醒技に関する研究も行っている。 代表は智姉さんの盟友•龍宮沙羅子だ。
 かつ峠を共に制覇した──智姉さんと沙羅子さんは、あの頃からの盟友だった。命を賭けた戦場を走った、戦友だ。
 智姉さんはスマホで財団の「特殊能力活動課」に連絡を取る。
 通話を終えた後、彼女はこう訊いてきた。

「オオサキ。覚醒技のオーラって、何でできてると思う?」

「タキオン粒子……でしたよね?」

「「正解。でも、もうひとつ足りない。技を成り立たせるもう一つの鍵……『マナニウム』だ」

「マナニウム……ほんとにあったんですね」

「まったく……お前、それくらい覚えときな!」

 ――マナニウム。 それはタキオン粒子と融合することで、覚醒技のオーラを形作るエネルギー源。 自然界の元素(火、水、風、土など)を内包し、ドライバーの意思と結びついて技を発動させる。

「技を使ったあとクールタイムがあるのは、マナニウムが消耗するからだ」

「なるほど……」

「……覚醒技は、今や“供給不足”の時代に入ったってことだ。タキオン粒子とマナニウムでできた地球外物質。あれが落ちた地には、“隕石草”っていう特殊な植物が芽吹くんだ。覚醒技のエネルギー源を、自然に作り出す草だよ。」

 しかし……。

「隕石草ってやつも、もう芽吹かないらしい。あれ、根っこにマナニウムの結晶を抱えて育つ植物なんだ」

 他にも、東京で覚醒技を持つ超人による大規模テロが起きた。被害は数百人規模。国は覚醒技保持者を『危険存在』として扱い始めた。
 政府は覚醒技の元になるタキオン粒子を回収に急いでいる。

「財団の話では、特に車に関する技が使えなくなっているらしい」

「……そうだったのか」

 力が、使えない。 じゃあ、どう戦えばいいんだ?

「戦い方を変える必要がある」

「覚醒技に頼らないドライビング……」

「その通り。次からは基礎を鍛えよう。六荒も呼んで、特訓を再開する」

 技が使えない中での戦い。 それが、これからのテーマになる。
 他の走り屋たちの覚醒技も、変化していくのかもしれない。

The Next Lap
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