17 / 52
第2.5章 新しい覚醒技編
ACT.12.5 弱まる力
しおりを挟む
覚醒技――それは、車とドライバーに奇跡をもたらす力。 タキオン粒子で構成されたオーラを、ドライバーの精神力で発生させる。 物理法則を超えた“人馬一体”の走りを可能にする力だ。 ただしその発動には多大な気力と体力を必要とし、一度使えばしばらく再使用はできない。
しかし、そんな力に異変が起きていた。 強化ではなく、弱体化。
――柳田マリアとのバトルから一夜明けた、4月4日・午前5時45分。
赤城山のヒルクライムコースを、2台の車が登っていた。 車種はR35 GT-Rと180SX。
5連続ヘアピンをドリフトで駆け抜ける。
おれとR35は第3高速セクションに突入。 パワー差で、徐々に引き離されていく。
「……次で技を使おうか」
そう宣言し、集中力を高めた。
だが、悲劇はここから始まる。
“サクラ・ゾーン”の最初のコーナー、中速右曲線。 おれはサイドを引き、車体を滑らせる。 そして、オーラを発生させようとした。
「<コンパクト・メテオ>! イケイケイケイケーッ!!」
しかし――オーラは現れない。
「な、何だ!? 使えない……だと!?」
いつもなら視界に現れるはずの、あの透明な光──だが、今回は何も出なかった。胸の奥がざわつく。ステアリングを握る手に、じっとりと汗が滲む。
左ヘアピンへと差しかかる。 また距離が開く。
直線に入っても、R35との差は縮まらない。
「覚醒技が……使えなくなったのか!?」
信じられない。 あれだけ頼りにしていた力が、今、まったく反応しない。
頂上に着いた後。
「本当に起きてるのか……? <コンパクト・メテオ>が使えなくなる現象が?」
「そうです……何が起きてるんでしょうか」
智姉さんが助け舟を出してくれた。
「調べてみよう。サラマンダー財団と連絡を取る」
――サラマンダー財団。 福井県を拠点とする組織で、災害救助やボランティア活動の傍ら、覚醒技に関する研究も行っている。 代表は智姉さんの盟友•龍宮沙羅子だ。
かつ峠を共に制覇した──智姉さんと沙羅子さんは、あの頃からの盟友だった。命を賭けた戦場を走った、戦友だ。
智姉さんはスマホで財団の「特殊能力活動課」に連絡を取る。
通話を終えた後、彼女はこう訊いてきた。
「オオサキ。覚醒技のオーラって、何でできてると思う?」
「タキオン粒子……でしたよね?」
「「正解。でも、もうひとつ足りない。技を成り立たせるもう一つの鍵……『マナニウム』だ」
「マナニウム……ほんとにあったんですね」
「まったく……お前、それくらい覚えときな!」
――マナニウム。 それはタキオン粒子と融合することで、覚醒技のオーラを形作るエネルギー源。 自然界の元素(火、水、風、土など)を内包し、ドライバーの意思と結びついて技を発動させる。
「技を使ったあとクールタイムがあるのは、マナニウムが消耗するからだ」
「なるほど……」
「……覚醒技は、今や“供給不足”の時代に入ったってことだ。タキオン粒子とマナニウムでできた地球外物質。あれが落ちた地には、“隕石草”っていう特殊な植物が芽吹くんだ。覚醒技のエネルギー源を、自然に作り出す草だよ。」
しかし……。
「隕石草ってやつも、もう芽吹かないらしい。あれ、根っこにマナニウムの結晶を抱えて育つ植物なんだ」
他にも、東京で覚醒技を持つ超人による大規模テロが起きた。被害は数百人規模。国は覚醒技保持者を『危険存在』として扱い始めた。
政府は覚醒技の元になるタキオン粒子を回収に急いでいる。
「財団の話では、特に車に関する技が使えなくなっているらしい」
「……そうだったのか」
力が、使えない。 じゃあ、どう戦えばいいんだ?
「戦い方を変える必要がある」
「覚醒技に頼らないドライビング……」
「その通り。次からは基礎を鍛えよう。六荒も呼んで、特訓を再開する」
技が使えない中での戦い。 それが、これからのテーマになる。
他の走り屋たちの覚醒技も、変化していくのかもしれない。
The Next Lap
しかし、そんな力に異変が起きていた。 強化ではなく、弱体化。
――柳田マリアとのバトルから一夜明けた、4月4日・午前5時45分。
赤城山のヒルクライムコースを、2台の車が登っていた。 車種はR35 GT-Rと180SX。
5連続ヘアピンをドリフトで駆け抜ける。
おれとR35は第3高速セクションに突入。 パワー差で、徐々に引き離されていく。
「……次で技を使おうか」
そう宣言し、集中力を高めた。
だが、悲劇はここから始まる。
“サクラ・ゾーン”の最初のコーナー、中速右曲線。 おれはサイドを引き、車体を滑らせる。 そして、オーラを発生させようとした。
「<コンパクト・メテオ>! イケイケイケイケーッ!!」
しかし――オーラは現れない。
「な、何だ!? 使えない……だと!?」
いつもなら視界に現れるはずの、あの透明な光──だが、今回は何も出なかった。胸の奥がざわつく。ステアリングを握る手に、じっとりと汗が滲む。
左ヘアピンへと差しかかる。 また距離が開く。
直線に入っても、R35との差は縮まらない。
「覚醒技が……使えなくなったのか!?」
信じられない。 あれだけ頼りにしていた力が、今、まったく反応しない。
頂上に着いた後。
「本当に起きてるのか……? <コンパクト・メテオ>が使えなくなる現象が?」
「そうです……何が起きてるんでしょうか」
智姉さんが助け舟を出してくれた。
「調べてみよう。サラマンダー財団と連絡を取る」
――サラマンダー財団。 福井県を拠点とする組織で、災害救助やボランティア活動の傍ら、覚醒技に関する研究も行っている。 代表は智姉さんの盟友•龍宮沙羅子だ。
かつ峠を共に制覇した──智姉さんと沙羅子さんは、あの頃からの盟友だった。命を賭けた戦場を走った、戦友だ。
智姉さんはスマホで財団の「特殊能力活動課」に連絡を取る。
通話を終えた後、彼女はこう訊いてきた。
「オオサキ。覚醒技のオーラって、何でできてると思う?」
「タキオン粒子……でしたよね?」
「「正解。でも、もうひとつ足りない。技を成り立たせるもう一つの鍵……『マナニウム』だ」
「マナニウム……ほんとにあったんですね」
「まったく……お前、それくらい覚えときな!」
――マナニウム。 それはタキオン粒子と融合することで、覚醒技のオーラを形作るエネルギー源。 自然界の元素(火、水、風、土など)を内包し、ドライバーの意思と結びついて技を発動させる。
「技を使ったあとクールタイムがあるのは、マナニウムが消耗するからだ」
「なるほど……」
「……覚醒技は、今や“供給不足”の時代に入ったってことだ。タキオン粒子とマナニウムでできた地球外物質。あれが落ちた地には、“隕石草”っていう特殊な植物が芽吹くんだ。覚醒技のエネルギー源を、自然に作り出す草だよ。」
しかし……。
「隕石草ってやつも、もう芽吹かないらしい。あれ、根っこにマナニウムの結晶を抱えて育つ植物なんだ」
他にも、東京で覚醒技を持つ超人による大規模テロが起きた。被害は数百人規模。国は覚醒技保持者を『危険存在』として扱い始めた。
政府は覚醒技の元になるタキオン粒子を回収に急いでいる。
「財団の話では、特に車に関する技が使えなくなっているらしい」
「……そうだったのか」
力が、使えない。 じゃあ、どう戦えばいいんだ?
「戦い方を変える必要がある」
「覚醒技に頼らないドライビング……」
「その通り。次からは基礎を鍛えよう。六荒も呼んで、特訓を再開する」
技が使えない中での戦い。 それが、これからのテーマになる。
他の走り屋たちの覚醒技も、変化していくのかもしれない。
The Next Lap
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる