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第3章 戸沢編
ACT.15 ブラインドアタック対策
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和食さいとうの奥で、作戦会議が始まった。
「戸沢って……無灯火で走るんですよね? どう対策すれば……」
「そうだな。暗闇は奴の土俵だ。こちらが“見失わない方法”を作らないとどうにもならん」
「じゃあ、どんな作戦なら通じる?」
場の空気が沈む。
そのとき。
「……エンジン音を消してみるのはどうだべ?」
クマさんが突拍子もなく言った。
「いや無理やろ!!」
川さんが即座にツッコむ。
「RB26積んだ180SXが静かに走れるわけないって。あれは“爆音で殴る車”だぞ。エコカーの真逆だからな」
智姉さんもあっさり同意した。
「うむ。あれを静かにしろっていうのは、熊久保、お前に黙って喋れって言うくらい無茶だ」
「うるせぇべ!」
(……どうしよう。対策、今夜中に見つけないと)
……結局、何も決まらないまま夕方になった。
店はすでに閉まり、リビングだけ灯りがついていた。
パジャマ代わりの作務衣姿で、おれと智姉さんはラジオを聞いていた。
『……地面すれすれを投げ、土煙と保護色でボールが“消えて見える”――消える魔球です』
その一言で、おれの脳に電撃が走る。
「それだ!! 煙だよ! ドリフトの白煙で姿を隠すんだ!」
しかし——。
「今のお前の覚醒技じゃ、その芸は使えん」
「……あっ」
せっかく思いついた作戦が崩れ落ちた。
「じゃ、じゃあ……気配を消すのはどうですか?」
「それも訓練が要る。簡単ではないな」
姿を隠せないなら、気配だけでも隠すしかない。
「暗いけど……今からやってきます!」
「気をつけろよ。事故るな」
作務衣のままワンエイティに乗り込む。
夜の赤城へ向かって走り出した。
「——<臨戦態勢>!」
集中と自制を極限まで高める覚醒技。
気配を消すつもりだった。
だが――前を走るS15はおれに気づき、きっちりブロックしてくる。
「くそっ……気配ゼロのつもりなのに、全部読まれる……!」
第1高速区間でもダメ。
ハンマーヘッドヘアピンでも読まれる。
最後はパワーでS15を抜いたが、目的の“気配遮断”は完全に失敗だ。
(どうすれば……できるんだよ……)
その後数台と走ってみたが全滅。
深夜0時、ようやく帰宅した。
「ただいま、智姉さん……」
「おかえり。どうだった?」
「……ダメでした」
「残念だな。でも、明日は本番だろ? 朝も練習するんだよな」
「はい。作務衣のまま行きます」
「じゃ、私も付き合う。応援してやる」
「本当ですか!?」
胸の重さが少し軽くなった。
朝6時。赤城の空が淡く色づく。
おれと六荒は作務衣姿のまま走り始めていた。
「——<臨戦態勢>!」
だが六荒にも読まれる。
「……できない!」
そのとき、R35の音が近づく。智姉さんだ。
いつものパジャマではなく、黒タイツにセーター姿。
「苦戦してるな」
「……はい」
「スモークで隠す技な。昔あったんだ。名前は《スケルトン・アタック》。だが今の覚醒技仕様だと使えん」
「じゃあ、どうするんですか?」
「代わりの技を見せる。ワンエイティに乗れ」
走り出すと、背後から“気配ゼロ”のR35が亡霊のように迫ってきた。
ブレーキ音も存在感もなく、ただ影のように——。
「なっ……!」
「小山田疾風流《幽霊群馬》! ——気配を消して、影のように抜く技だ」
音より先に姿を消し、気づけばアウトから抜いてくる。
(……なにこれ……!)
二度目の進入も完全に読めない。
まるで気配のない生き物だ。
「すごい……!」
胸に火が灯った。
(絶対に……あれを自分のものにしてみせる!)
昼、作務衣から疾風Tシャツに着替え、黒タイツを履いて気分を変える。
仲間がテーブルに集まり、作戦会議が始まった。
クマさんが腕を組み、言い切る。
「サキさんは先行で行くべ! 序盤は回転数落として走って、後半で本気出す。FFは熱ダレしやすいから、タイヤが死んで勝手に遅くなるべ!」
「おお、いい作戦だ」
「うちも賛成や!」
だが智姉さんが眉をひそめる。
「熊久保。前と同じ作戦だと、相手が対策してくるぞ」
空気が止まる。
「……ダメなんだ、クマさん……」
タカさんが肩を落とす。
「この作戦なら勝てると思ったんだけどな……」
クマさんの表情に影が落ちる。
そのとき。
「戸沢がライトを消すのは“後攻のときだけ”だ」
智姉さんがひとこと。
全員の視線が向く。
「先行だと前が見えなくて危険だからな。相手の光を頼りにするために、後攻だけライトを消す」
「……それだ!」
「今回は後攻を狙います! 大詰めで抜きにかかる!」
作戦が決まった。
――視点:WHITE.U.F.O(戸沢)
午後6時。前橋のレストラン。
WHITE.U.F.Oのメンバーがテーブルを囲む。
「……今日、ちょっと嫌な予感がする」
戸沢がぼそりと言う。
「何だよ急に」
「大崎翔子……あいつのオーラ、異常だ。赤城の怪物・雨原芽来夜に匹敵する」
重い沈黙。
「でもやるしかない。新参に負けたらチームの汚点だ」
皆がうなずいた。
――視点:ギャラリー(雨原・サクラ)
午後10時45分。赤城山はギャラリーで埋まっていた。
雨原芽来夜と葛西サクラも五連ヘアピンに立つ。
「ここで決まるな」
「おう」
彼らの視線は、まだ来ぬワンエイティを待っている。
――視点:ギャラリー(ヒマワリ・モミジ)
黄緑のSW20とオレンジのアルテッツァが静かに停止する。
「着いたぜ……イィーネ」
「ここなら全部見えるね」
二人は予測を語り合う。
「ワンエイティは後攻を取ると思う」
「賢いな、モミジ」
赤城山の駐車場に、2台の車が音もなく停まった。車のドアが開き、2人の女性が降り立つ。その姿はまるで異世界から来たかのように、静かな美しさを放っていた。
100クレスタと110マークIIが並ぶ。
「教え子のバトル……楽しみだな!」
「私が育てたんだ。期待している」
「覚醒技は進化する。あの子はやれる」
WHITE.U.F.Oの車列。
DC5が帰還する。
「……待つだけだな」
無線が鳴る。
『赤い車を先頭に6台が登っています!』
「来たか……」
10分後、ワンエイティを先頭に6台が滑り込んだ。
クマさんが前に出る。
「戸沢龍! 今度はサキさんが行くべ! 倍返しだべ!」
「You head、ボロンしてみいや!」
(タカさんと川さんの斎藤一ごっこ)
しかし戸沢は冷たく言い放つ。
「残念だ。お前らに興味はない」
視線はおれだけに注がれていた。
「待たせたね、戸沢龍——ライトを消す前に、君の背中を見せてよ」
ワンエイティのドアを閉め、シートに収まる。
DC5と180SXが並ぶ。
「カウントするべ!」
クマさんの手が上がる。
「5! 4! 3! 2! 1――GOッ!!」
白煙。
獣の咆哮。
闇を裂く赤と白。
こうして——赤城と榛名のダウンヒル対決が幕を開けた。
TheNextLap
「戸沢って……無灯火で走るんですよね? どう対策すれば……」
「そうだな。暗闇は奴の土俵だ。こちらが“見失わない方法”を作らないとどうにもならん」
「じゃあ、どんな作戦なら通じる?」
場の空気が沈む。
そのとき。
「……エンジン音を消してみるのはどうだべ?」
クマさんが突拍子もなく言った。
「いや無理やろ!!」
川さんが即座にツッコむ。
「RB26積んだ180SXが静かに走れるわけないって。あれは“爆音で殴る車”だぞ。エコカーの真逆だからな」
智姉さんもあっさり同意した。
「うむ。あれを静かにしろっていうのは、熊久保、お前に黙って喋れって言うくらい無茶だ」
「うるせぇべ!」
(……どうしよう。対策、今夜中に見つけないと)
……結局、何も決まらないまま夕方になった。
店はすでに閉まり、リビングだけ灯りがついていた。
パジャマ代わりの作務衣姿で、おれと智姉さんはラジオを聞いていた。
『……地面すれすれを投げ、土煙と保護色でボールが“消えて見える”――消える魔球です』
その一言で、おれの脳に電撃が走る。
「それだ!! 煙だよ! ドリフトの白煙で姿を隠すんだ!」
しかし——。
「今のお前の覚醒技じゃ、その芸は使えん」
「……あっ」
せっかく思いついた作戦が崩れ落ちた。
「じゃ、じゃあ……気配を消すのはどうですか?」
「それも訓練が要る。簡単ではないな」
姿を隠せないなら、気配だけでも隠すしかない。
「暗いけど……今からやってきます!」
「気をつけろよ。事故るな」
作務衣のままワンエイティに乗り込む。
夜の赤城へ向かって走り出した。
「——<臨戦態勢>!」
集中と自制を極限まで高める覚醒技。
気配を消すつもりだった。
だが――前を走るS15はおれに気づき、きっちりブロックしてくる。
「くそっ……気配ゼロのつもりなのに、全部読まれる……!」
第1高速区間でもダメ。
ハンマーヘッドヘアピンでも読まれる。
最後はパワーでS15を抜いたが、目的の“気配遮断”は完全に失敗だ。
(どうすれば……できるんだよ……)
その後数台と走ってみたが全滅。
深夜0時、ようやく帰宅した。
「ただいま、智姉さん……」
「おかえり。どうだった?」
「……ダメでした」
「残念だな。でも、明日は本番だろ? 朝も練習するんだよな」
「はい。作務衣のまま行きます」
「じゃ、私も付き合う。応援してやる」
「本当ですか!?」
胸の重さが少し軽くなった。
朝6時。赤城の空が淡く色づく。
おれと六荒は作務衣姿のまま走り始めていた。
「——<臨戦態勢>!」
だが六荒にも読まれる。
「……できない!」
そのとき、R35の音が近づく。智姉さんだ。
いつものパジャマではなく、黒タイツにセーター姿。
「苦戦してるな」
「……はい」
「スモークで隠す技な。昔あったんだ。名前は《スケルトン・アタック》。だが今の覚醒技仕様だと使えん」
「じゃあ、どうするんですか?」
「代わりの技を見せる。ワンエイティに乗れ」
走り出すと、背後から“気配ゼロ”のR35が亡霊のように迫ってきた。
ブレーキ音も存在感もなく、ただ影のように——。
「なっ……!」
「小山田疾風流《幽霊群馬》! ——気配を消して、影のように抜く技だ」
音より先に姿を消し、気づけばアウトから抜いてくる。
(……なにこれ……!)
二度目の進入も完全に読めない。
まるで気配のない生き物だ。
「すごい……!」
胸に火が灯った。
(絶対に……あれを自分のものにしてみせる!)
昼、作務衣から疾風Tシャツに着替え、黒タイツを履いて気分を変える。
仲間がテーブルに集まり、作戦会議が始まった。
クマさんが腕を組み、言い切る。
「サキさんは先行で行くべ! 序盤は回転数落として走って、後半で本気出す。FFは熱ダレしやすいから、タイヤが死んで勝手に遅くなるべ!」
「おお、いい作戦だ」
「うちも賛成や!」
だが智姉さんが眉をひそめる。
「熊久保。前と同じ作戦だと、相手が対策してくるぞ」
空気が止まる。
「……ダメなんだ、クマさん……」
タカさんが肩を落とす。
「この作戦なら勝てると思ったんだけどな……」
クマさんの表情に影が落ちる。
そのとき。
「戸沢がライトを消すのは“後攻のときだけ”だ」
智姉さんがひとこと。
全員の視線が向く。
「先行だと前が見えなくて危険だからな。相手の光を頼りにするために、後攻だけライトを消す」
「……それだ!」
「今回は後攻を狙います! 大詰めで抜きにかかる!」
作戦が決まった。
――視点:WHITE.U.F.O(戸沢)
午後6時。前橋のレストラン。
WHITE.U.F.Oのメンバーがテーブルを囲む。
「……今日、ちょっと嫌な予感がする」
戸沢がぼそりと言う。
「何だよ急に」
「大崎翔子……あいつのオーラ、異常だ。赤城の怪物・雨原芽来夜に匹敵する」
重い沈黙。
「でもやるしかない。新参に負けたらチームの汚点だ」
皆がうなずいた。
――視点:ギャラリー(雨原・サクラ)
午後10時45分。赤城山はギャラリーで埋まっていた。
雨原芽来夜と葛西サクラも五連ヘアピンに立つ。
「ここで決まるな」
「おう」
彼らの視線は、まだ来ぬワンエイティを待っている。
――視点:ギャラリー(ヒマワリ・モミジ)
黄緑のSW20とオレンジのアルテッツァが静かに停止する。
「着いたぜ……イィーネ」
「ここなら全部見えるね」
二人は予測を語り合う。
「ワンエイティは後攻を取ると思う」
「賢いな、モミジ」
赤城山の駐車場に、2台の車が音もなく停まった。車のドアが開き、2人の女性が降り立つ。その姿はまるで異世界から来たかのように、静かな美しさを放っていた。
100クレスタと110マークIIが並ぶ。
「教え子のバトル……楽しみだな!」
「私が育てたんだ。期待している」
「覚醒技は進化する。あの子はやれる」
WHITE.U.F.Oの車列。
DC5が帰還する。
「……待つだけだな」
無線が鳴る。
『赤い車を先頭に6台が登っています!』
「来たか……」
10分後、ワンエイティを先頭に6台が滑り込んだ。
クマさんが前に出る。
「戸沢龍! 今度はサキさんが行くべ! 倍返しだべ!」
「You head、ボロンしてみいや!」
(タカさんと川さんの斎藤一ごっこ)
しかし戸沢は冷たく言い放つ。
「残念だ。お前らに興味はない」
視線はおれだけに注がれていた。
「待たせたね、戸沢龍——ライトを消す前に、君の背中を見せてよ」
ワンエイティのドアを閉め、シートに収まる。
DC5と180SXが並ぶ。
「カウントするべ!」
クマさんの手が上がる。
「5! 4! 3! 2! 1――GOッ!!」
白煙。
獣の咆哮。
闇を裂く赤と白。
こうして——赤城と榛名のダウンヒル対決が幕を開けた。
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